コロナ禍収束期のミーティング開催方法は「職場で対面」の意向が合計35%「そのつどオンライン/リアルを判断」が30%で拮抗
「企業の組織ケイパビリティ調査」結果報告 〜コロナ禍へ能動的な適応が、今後の出社状況に影響することが明らかに〜
組織の実態や本音の思いを語り合うまじめな雑談「オフサイトミーティング」をベースに組織づくりを支援する株式会社スコラ・コンサルト(本社:東京都品川区、代表取締役:簑原麻穂)は、2022年1月に会社員2577名に対しアンケート調査を実施しました。調査の目的は、環境変化に適応できる組織がコロナ禍にどう対応してきたか、ならびに、変化適応力に関連する社員行動や文化要因を明らかにすることです。今回は第1弾として、コロナ禍の対応力に焦点を当て、社内でとられた行動、ツールの導入状況と効果、今後のミーティング方法を中心に分析結果を報告します。
- コロナ禍収束期のミーティング開催方法は、「職場で対面」の意向が合計35%。「そのつどオンライン/リアルを判断」が30%で拮抗
- コロナ禍に能動的に対応できた企業ほど、今後のミーティングもオンライン志向が強い
- 雑談を効果的に行なうことと自社のコロナ禍対応に対する評価は相関する
- 1.コロナ禍収束期のミーティング開催方法は、「職場で対面」の意向が合計35%。「そのつどオンライン/リアルを判断」が30%で拮抗
(小数第1位を四捨五入して%表示)
(注:本アンケートでは、新型コロナウィルス蔓延が常態化した期間(2020年~2021年)を「コロナ禍」と記載して質問した。なお、2022年にある程度「収束」に向かう前提で「コロナ禍が落ち着いたら」という設問にしたが、2022年7月現在、感染は再拡大し、収束時期が読めない状況が続いている。そのため、当設問は「”終息”後」ではなく「感染状況が比較的落ち着いている時期に企業はどう対応するか」の参考にしていただきたい。)
コロナ禍収束期の社内ミーティングの開催方法(図表①)は、「『職場で対面』とオンラインをその都度判断」が30%で最も多い。一方、「職場で対面」が標準になりそうな3つの項目を合計すると、“職場標準派”が35%存在する。本調査は一人の社員の認識によるため、企業動向の推測としては参考値にとどまる面はあるが、両者は拮抗、あるいは職場回帰志向がやや強いと言える。
「オンラインが標準として定着」も21%と一定割合を占めるが、企業規模が大きいほどこの傾向が強い。逆に「100人~300人未満」の企業では「絶対に『職場で対面』」という雰囲気が強くなる。規模別分析が本調査の主目的ではないので割愛するが、一般的に言われるとおり、規模が小さい会社ではITツールの導入が進んでおらず、導入しても効果を発揮しづらい傾向が本調査の他の設問でも確認できた。そこで、世の中の実態に少しでも近づけるべく、従業員規模を考慮して再計算した「今後のミーティング開催方法」が図②である。世の中には中小企業の数が多いのでその傾向を反映した結果だ。
図②:コロナ禍収束期のミーティング開催方法(従業員規模別の企業数を反映)
以下従業員の規模別の企業数分布に合わせてウェイトバック集計を行った。
※総務省統計局 平成28年経済センサス第3巻 常用雇用者規模別企業数
100-299人規模=32069社/300-999人規模=10392社/1000-1999人規模=1973社/2000-4999人規模=1177社/5000人以上=544社
『職場で対面』が標準となりそうと答えた割合は合計42%、「その都度判断」が27%、「オンラインが標準として定着」が15%となる。この結果からは職場回帰が進みそうに見える。
図①②とも、「『その都度判断』して使い分け」と、「オンラインも『相談は可能』」を合わせれば、約4割が柔軟に対応予定と解釈することもできるが、両者の差は大きいかもしれない。「『職場で対面』が標準」となっていくと、職場のミーティング参加者がメイン、リモート参加者がサブの位置づけに陥りやすい。”職場にいないと不利”と感じるようになり、コロナ禍以前の職場ベースの仕事の仕方に戻るのであろうか、今後の動向に注目したい。
- 2.コロナ禍に能動的に対応できた企業ほど、今後のミーティングもオンライン志向が強い
図③:コロナ禍対応評価(従業員規模別)
1000~5000人規模の企業で「危機的状況をとらえて対応」が多いなど、企業規模ごとに多少の違いは見られるが、いずれの規模でも「対応できた」から「対応できていない」まで評価が分散している。そこでここから先は、企業規模にとらわれずにコロナ禍での自社の対応力評価を軸に分析していく(「わからない」と回答した402名を除く)。
コロナ禍対応評価別に、前述の「今後のミーティング方法」をみると(図④)、チャンスや危機をとらえて対応できた企業は、今後のミーティングもオンライン志向が強い。とりわけ、災禍にもかかわらず「チャンスととらえて対応」するマインドの企業では、今後は「オンラインが標準として定着」が高い割合となった(39%)。「その都度判断」(34%)と合わせると7割以上を占める。「危機ととらえて対応できた」企業では、「その都度判断」の割合が最も高い(39%)。一方、コロナ禍に「いまだに対応できていない」企業では、職場でミーティングを行なうべきという雰囲気が強い。
図④:コロナ禍収束期のミーティング開催方法(コロナ禍対応評価別)
- 3.雑談を効果的に行なうことと自社のコロナ禍対応評価は相関する
図⑤:コロナ禍の社内の動き(コロナ禍対応評価別)
「対応できた」と評価される企業ほど様々なアクションをとっていたことがわかる。(1)経営層は「通常時よりも意識して発信」し、(2)社員も「社内で広く意見を集め議論」、(3)打ち合わせの実施方法(リアルorオンライン)は「内容に応じて使い分け」していたのである。特に「自社が変化するチャンスととらえて対応」した企業では、これらのアクションが「積極的に」行われていた割合が高い。一方、「チャンス」や「危機」をとらえて対応できた企業が、必ずしも社員の「(4)仕事ぶりを管理する」傾向を強めたわけではない点は興味深い(項目(1)-(3)に比べて(4)管理強化の割合は低い)。
次に、コロナ禍におけるコミュニケーションツールの導入や雑談機会の設定状況、およびそれらの効果について分析した(図⑥)。
図⑥:コミュニケーションツールや雑談機会の導入/実施状況・効果(コロナ禍対応評価別)
コロナ禍に「対応できた」企業ほど、(1)ウェブ会議システムを使用する割合が高く、効果も出せている。なかでも「自社が変化するチャンスとしてとらえて対応できた」企業の約4割が「とても」効果を出せている。一方、コロナ禍に「いまだに対応できていない」企業の約3割は未導入である。
ウェブ会議システム自体の導入率や効果には及ばないが、(2)会議を録画して共有する動きもコロナ禍対応評価と比例関係にあることがわかった。
会議のオンライン化はこのような状況だが、オンラインで雑談は行われたのだろうか。(3)「雑談の場づくり」については、コロナ禍を「チャンスととらえた」企業でも未実施が44%、「いまだに対応できていない」企業では66%に達した。(4)「打ち合わせの中に雑談の時間をつくる」もほぼ同様の傾向だった。
雑談の機会を設けてうまく活用できている企業は全体的には少ないかもしれないが、逆に言えばまだまだ取り組む余地がたくさん残っているとも言える。上記分析とは逆に、「雑談の実施と効果」の度合別に「コロナ禍対応評価」を分析したところ (図⑦)、数は少なくなるものの雑談を実施して効果を出している企業(「とても/ある程度効果あり」)では、半数以上がコロナ禍に対応できているという評価になっている(「チャンスととらえて対応」+「しっかり対応」)。雑談未導入や効果を出せていない企業とはスコア差が見られるので、効果が出るように雑談に取り組んでみる価値はありそうだ。
図⑦:コロナ禍対応評価(雑談の実施・効果別)
(「雑談の場」について「わからない」と回答した298名を除く)
(「雑談の時間」について「わからない」と回答した282名を除く)
(報告第2弾に向けて)
コロナ禍に「対応できた」企業の多くは、コロナ禍以前の業績も堅調だった。通常時から根幹となる組織力を備えておくことが成長のみならず災禍への対応の意味でも重要である。
何をもってコロナ禍に対応できたと評価したかは回答者によって様々であろう。前述の「社内で実際にあった動き」や「ツールの実施および効果」もその要因と考えられるが、コロナ禍中の業績をもって評価した回答者が多いのではないだろうか。コロナ禍対応度別にコロナ禍の売上推移を分析したのが図⑧だが、コロナ禍に「対応できた」企業ほど渦中の売上は「上昇傾向」もしくは「影響は少なく安定」していた。
図⑧:コロナ禍の売上変化(コロナ禍対応評価別)
次に、コロナ禍以前の売上状況を見たのが図⑨。安定的な売上で推移している場合に良し悪しを判断してもらいにくかったが、コロナ禍対応の評価が高い企業は以前から成長傾向や高い水準にあったことがわかる。
そこで、図⑧⑨の2項目、つまり、新型コロナの渦中とそれ以前の売上傾向をクロス分析したところ(図⑩)、比例的な関係が確認できた。コロナ禍で対応が困難だった業界もあるだろうが、基本的にはコロナ禍以前から堅調に成長していた企業は、コロナ禍中の売上も「上昇傾向」もしくは「影響は少なく安定」していたといえる。
図⑩:コロナ禍の売上とコロナ禍以前の売上の関係
(「コロナ禍以前の売上状況」について「わからない」と回答した327名を除く)
このように、コロナ禍以前からの売上状況とコロナ禍での売上変化、コロナ禍対応評価は連関している。災禍になってから急に対応できるようになるわけではなく、以前から変化に対応したり、価値を生み出したりできる組織のダイナミズムをもっていたかどうかが、不測の事態での行動として顕在化したと考えるほうが自然だ。
本調査では他にもコロナ禍に関係なく自社の変化適応力について評価してもらった。「環境変化に適応して自社を柔軟に変革することができるか」という設問で、問題に対応するための根っこにある組織能力(ケイパビリティ)のことだ。その度合別にコロナ禍対応を見ると(図⑪)、柔軟に変革できる企業ほどコロナ禍でもチャンスととらえたり、危機ととらえたりして対応できている。
図⑪:組織がもつ変化適応力とコロナ対応評価の関係
(「変化適応力」について「わからない」と回答した85名を除く)
そこで、第2弾レポートでは、コロナ禍というトピックから離れて、環境変化に適応して自ら変化できる組織能力に着目し、そこに影響を与える社員行動や組織文化について詳細に報告する。
- 調査結果を受けて
2020年初頭、新型コロナウィルスへの対応という、世界共通のお題が私たちに課されました。このような共通の問題への企業の対応結果の違いは、備えている組織力の違いを反映していると言えるのかもしれません。調査結果からも、(売上傾向からの推察ですが)コロナ禍以前から成長のダイナミズムをもっている企業がコロナ禍にも対応できたように見えますし、調査以外の場面でうかがった企業のオンライン化への対応、コミュニケーションの変化からも、元々もっていた改善能力や変化への対応力の差が、コロナ禍という共通テストであぶり出されたように思います。個々の調査結果について印象的だったのは次の2項目です。
今後のミーティング方法について、「職場で対面」で行なうか、オンラインで行なうかを「その都度判断して使い分ける」という割合が3割あったことからは、思考の柔軟性が感じられました。今後は、人が集まってするべきことは何か、集まって意味があったか、が問われる時代になりそうです。
一方、変更依頼や指示がない限りは「オンラインがデフォルト(標準)」という割合が21%(企業規模を反映した推計では15%)もあったのは、個人的には多すぎる感覚をもっています。インターネット調査でオンライン化について尋ねているという回答者特性のためか、それとも私の感覚が間違っているのか。数値の通りなら今後のオンライン化の進展は予想以上に速いのかもしれません。今後の動向が気になります。
オンライン雑談の状況については、実施率が意外に少ないというのが個人的な印象です。仕事がオンライン化したなかで足りない要素があれば補えばいいので、雑談はもっと実施されているものと私は思っていました。リアル職場でその習慣がなかった場合は、危機に際して急に「必要だからやろう」と思っても難しいのかもしれません。
雑談は、メンタル面の健康や、仕事に間接的につながるような情報の共有、思いつきを交わすことで創発するアイデアなど、さまざまな効果をもたらします。以前はリアル職場でなんとなくできてしまったために、雑談のプロセスや効果に気づいていなかったかもしれません。しかし、雑談を意図して自然に組み込めているか否かは、リアルであろうとオンラインであろうと重要な観点です。
調査結果では、災禍を「チャンスととらえて活かした組織」から「いまだに対応できていない組織」まで違いが見られました。調査はしていませんが、個人間でも認識や対応の差があるでしょう。特に個人の場合は、チャンスがあればこういう生活や働き方をしたいという願いを持っていた人ほど、機を見て俊敏に動いているように思います(移住して完全リモートワークなど)。コロナ禍によってリモート社会が10年早く訪れたと言われますが、個人の先端層では既に変化が始まっているようです。今後は企業社会においても、その変化を織り込んで対応する組織と、対応しない組織の間で差が開いていくのでしょう。変化に柔軟に対応する能力や文化を組織が備えているか否かが問われる時代であると私は感じました。
- 調査概要
【会社概要】
社 名 :株式会社スコラ・コンサルト
本 社 :東京都品川区東五反田5-25-19 東京デザインセンター6F
代 表 者 :代表取締役 簑原 麻穂
設 立 :1986年1月
資 本 金 :4,000万円
事業内容 :プロセスデザインによる企業風土改革コンサルティング
人 員 数 :プロセスデザイナー35名、スタッフ10名(2021年6月現在)
決 算 期 :12月
事 業 所 :大阪ブランチ
大阪府大阪市西区江戸堀1-10-2肥後橋ニッタイビル9階
TEL:06-6450-8708
ホームページ :http://www.scholar.co.jp/
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