新レポート「IGES 1.5℃ロードマップ:日本の排出削減目標の野心度引き上げと豊かな社会を両立するためのアクションプラン」発表
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、テクニカルレポート「IGES 1.5℃ロードマップ:日本の排出削減目標の野心度引き上げと豊かな社会を両立するためのアクションプラン」(以下、「1.5℃ロードマップ」)を発表しました。
「1.5℃ロードマップ」は、パリ協定の1.5℃目標達成に向けてすべての国による更なる行動強化が求められる中、日本にとってより野心的かつ現時点で達成可能な排出削減レベルを検討し、同時にビジネスや社会にプラスの効果をもたらす行動を時系列でまとめたものです。前向きな取り組みを加速し、世界全体での1.5℃目標達成とより豊かな社会を目指すための道筋を示すものとして、幅広いステークホルダー、特にビジネス領域の方々に活用いただくことを目指しています。
こうしたアクションプランは科学的な知見を基に注意深く検討されるべきですが、それがそのまま社会にとっての最適解となるとは限りません。社会において合意形成が行われ、実行に移されていくことで初めて意味を持ち得ます。そのため、エネルギー分野の変革のみで最適解を模索するのではなく、分野横断的な視点に立ち、気候変動やその他の様々な社会的課題の統合的な解決につながるアクションプランを構築することが重要です。こうした背景の下、本レポートでは、気候変動に対する問題意識を共有しつつも、異なる関心を有する多様なステークホルダーとの対話にもとづき、各々が当事者意識を持ちうるアクションプランの構築を目指しました。
【本レポートのポイント】
1.デジタル化をはじめとする社会経済変化がもたらすエネルギー消費量の抑制とそのインパクト
エネルギー供給技術による脱炭素化のみならず、デジタル化を起点とする様々な付加価値やサービス向上を指向した社会経済を構築することで、2035年に2019年比60%以上(2013年比70%以上)といった温室効果ガス排出削減も視野に入ってくる。このような社会経済の変化に伴う排出削減効果は、エネルギー消費量の抑制において、省エネや電化と同等のインパクトを持ちうる。
2.再生可能エネルギーの普及と電化の促進でエネルギー自給率90%の達成が可能に
屋根置きを中心とする太陽光発電と浮体式洋上風力を速やか、かつ大幅に拡大し、産業の脱炭素化に必要なグリーン水素の国内生産も視野に入れ、また電化中心のエネルギー転換を推進することで、エネルギー自給率を約90%まで高められる可能性がある。そのためには、系統運用ルールの変革を含む柔軟な需給バランス調整が可能なシステム・環境整備も必要となる。
3.鍵は社会的課題の解決やウェルビーイングの向上を含めた統合的視点での政策の構築
今後起こる社会経済の変化においては、エネルギー分野などの供給側の関係者のみならず、社会の多様なステークホルダーを巻き込んだ政策議論が必須となる。気候変動対策の野心度引き上げと様々な社会的課題の解決やウェルビーイングの向上を両立する施策を、統合的に構築することが望まれる。
【章立て】
第1章本レポートの目的
第2章1.5℃ ロードマップの策定方法
第3章エネルギー需要はどこまで変わるか
第4章エネルギー供給はどこまで変わるか
第5章GHG排出量を早期に大幅削減し、低廉で自立したエネルギーシステムは実現するか
第6章1.5℃ ロードマップ
【概要】
発行日:2023年12月6日(水)
発行元:公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
執筆者:IGES気候変動とエネルギー領域 リサーチマネージャー 栗山昭久
IGES 関西研究センター リサーチマネージャー 田中勇伍
IGESビジネスタスクフォース リサーチマネージャー 岩田生
IGES気候変動とエネルギー領域 プログラムディレクター 田村堅太郎
ダウンロード:https://www.iges.or.jp/jp/pub/onepointfive-roadmap-jp/ja
【1.5℃ロードマップお披露目イベント】
12月19日(火)、パシフィコ横浜でIGESが開催する国際フォーラムISAP2023にて、本レポートのお披露目イベントを開催します。2017年に放送され話題となったNHKスペシャル「脱炭素革命の衝撃」プロデューサーを務めた堅達京子NHKエンタープライズエグゼクティブプロデューサーをゲストにお迎えし、本レポートの内容をもとに、「野心的な排出削減に取り組むことと、豊かな社会を実現することは両立するか?」、「どのような行動が必要か?」などについて4名の執筆者が議論します。ぜひご参加ください。
ISAP2023 パラレルセッション1 「IGES 1.5℃ロードマップ ~ 変革に乗り遅れない日本の未来地図 ~」
詳細と参加申込み: https://isap.iges.or.jp/2023/jp/ps1.html
12月6日(水)18時‐19時15分(日本時間)、アラブ首長国連邦ドバイで開催中の気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の日本パビリオンにて、本レポートに関するサイドイベントを開催します。国内外の有識者、企業の担当者と、本レポートについて議論します。オンライン配信され、日本語の同時通訳もあります。
詳細と参加申込み:https://www.iges.or.jp/en/events/20231206-0
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES: Institute for Global Environmental Strategies)について
IGESは、アジア太平洋地域における持続可能な開発の実現に向け、国際機関、各国政府、地方自治体、研究機関、企業、NGOなどと連携しながら、気候変動、自然資源管理、持続可能な消費と生産、グリーン経済などの分野において実践的な政策研究を幅広く行っています。1998年、日本政府および神奈川県の支援により設立。本部は神奈川県葉山町に所在し、約150名の研究者を擁し、その3分の1強が外国籍。関西(兵庫県)、北九州、北京、バンコク、東京の各センター・事務所と共に、グローバルおよびアジア太平洋地域のネットワークを生かした戦略研究を展開しています。
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