「働く人の本音調査2025」第1回を発表

【年収への満足度】「組織風土との相性」のほか、若手層は「個人の成果」、中堅・ベテラン層は「希望と実態の一致」が鍵に

 会社における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、昨年度に続き、今年度も従業員規模が50名以上の企業に勤める25歳~59歳の正社員7,105名に対して、『働く人の本音調査2025』を実施しました。第1弾となる今回は、働く人たちがマネジメントについてどのような希望をもち、マネジメントの実態をどのように捉えているかと、「年収への満足度」との関係性にまつわる分析結果を公開しました。

 1. 調査にあたり 

 夏の賞与に関する報道が増えたり、お盆休みといったまとまった休みがあったりするこの時期は、多くの人が自身の処遇や働き方を振り返るタイミングにあります。物価上昇や住宅ローン金利の上昇など生活コストの変化が注目されるなか、年収への満足度が「世代ごとの評価への納得感」や「組織風土との相性(組織フィット度)」と強く関係していることが、本調査から明らかになりました。

また昨今、人的資本経営や人的資本の情報開示の重要性が高まっており、社員一人ひとりの価値観や納得感に目を向けた人事施策が持続的な企業成長や社会的信頼性にもつながると、これまで以上に注目されています。実際に年収への満足度は、働く人のエンゲージメントや定着、業務パフォーマンスにも影響を与えうる重要な要素です。報酬制度や評価運用を見直す際には、社員からの捉え方を踏まえた施策検討が不可欠となっています。

 本調査では、特に20代と30~50代で「評価に求める観点」が異なり、その違いが年収満足度と関係することが明らかになりました。また、世代を問わず、組織風土とのフィット感が高いほど、年収への納得感も高まる傾向が見られました。評価制度や賃金制度といった仕組みだけでなく、「どのような観点で評価されるか」「どのような組織風土や価値観のもとで働くか」といった要素が、年収満足度を左右する重要な要因となっていることが示唆されます。

【エグゼクティブサマリ】

Topic1:年収への満足度・納得感を高める鍵は、「収入」だけでなく、「評価の妥当性」と「職場との相性」(図表1・2)

Topic2:20代は「個人での成果を適切に見てほしい」という思いが満足度を左右(図表3)

個人の成果を十分に評価されていないと感じていると、年収への納得感が大きく低い傾向

Topic3:30~50代は希望と実態のズレを気にする観点が、20代と比べて多岐にわたる(図表④4・5)

評価や制度面で希望と実態のズレが複数にわたるほど、年収満足度が低下

希望と実態が重なる観点が多いほど、納得感は高まる

Topic4:組織風土との相性が良いほど、年収への満足度も高い(図表6・7)

「自分に合った職場環境」という実感が、年収への満足度を支える

評価や制度の設計とあわせて、“組織風土とのマッチング”にも目を向けることが重要

*詳細は調査レポート( https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000001446/ )を参照ください。

2. 調査のポイント 

【Topic1:年収への満足度・納得感を高める鍵は、「収入」だけでなく、「評価の妥当性」と「職場との相性」 

  • 図表1では、年代別に年収への満足度を比較しています。全体の傾向として「年代が上がるほど、年収に満足している人が増える」という結果が見えてきました。

(図表1:「あなたの今の仕事や会社に関する考えについてお聞きします。選択肢のなかから最も近いものを1つ選んでください。/今の年収に満足している」の年代別の回答結果)

  • 収入への納得感を左右する鍵は、「収入」だけでなく、「評価の妥当性」と「職場との相性」

  • 一見すると、年齢と共に収入が上がることが年収満足度と関係しているように見えますが、本調査では、それだけでは説明しきれない要素が明らかになりました。年収への満足度を左右する要因として、「自身がどのような観点で評価されていると感じているか」「職場との相性をどう捉えているか」といった“納得感”の有無が関係していることが確認されました。

年収への満足度を高める鍵は、「収入」だけでなく、評価内容への納得感や職場との相性にあり

  •  この点を裏づけるのが、評価観や賃金制度に関して「個人の希望」と「会社の実態」がどの程度一致しているかと、年収満足度との関係を比較した結果です(図表2)。以下の5つの観点において、「希望」と「実態」が一致している場合、年収への満足度が高い傾向が一貫して見られました。

図表2:本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較

 図表2では、以下の①~⑤に対し、「どちらを重視してほしいか」「実際にどちらが重視されているか」について本人が回答し、回答が一致していれば“一致群”、一致していなければ“不一致群”としています。

① 評価:挑戦 vs 安定(「A.新しいことへの挑戦」と「B.定形業務を安定的に進めること」

② 評価:結果 vs プロセス(「A.結果」と「B.プロセス」

③ 評価:個人成果 vs 組織成果

「A.個人成果(個人であげた成果)」と「B.組織成果(個人の成果を合算したチーム全体の成果)」

④ 評価反映:給料 vs 仕事の機会

「A.給料(月給や賞与の増減)」と「B.仕事の機会(希望する仕事が任されたり、異動希望が叶うこと)」

⑤ 賃金:変動性 vs 安定性

「A.上がりやすいが下がりやすくもある」か「B.上がりづらいが下がることもめったにない」

【Topic2:20代は「個人での成果を見てほしい」という思いが満足度を左右】

図表3では、20代の回答者に対して、上記①~⑤の評価の観点や評価の反映内容、賃金制度に関して、「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、年収満足度と比較しています。

  • 個人の成果を十分に評価されていないと、年収への納得感が大きく低い傾向

  • 20代では、「自分の頑張りがきちんと見られているかどうか」が、年収の満足度と関係していることが明らかになりました。特に、「個人の成果を評価してほしい」という希望に対して、会社の評価が「チーム全体の成果重視」になっている場合、年収に対する納得感が大きく低い傾向が見られます(図表3)。

  • この世代はキャリアの初期段階にあり、自身の貢献が組織に認識され、適正に報われているという実感を重視する傾向があります。そのため、たとえ組織が「チーム全体の成果を評価する方針」を取っていたとしても、本人が「自分の成果が埋もれてしまっている」と感じると、不満や不安につながりやすくなります。また、個人の成果に自信がない場合、組織としての成果において自分が足を引っ張っているのではないかと懸念したり、逆に自分の上げた成果が、組織全体の成果とみなされて評価されてしまうことへのフラストレーションを感じたりするような可能性も考えられます。

  • こうした背景から、20代の社員に対して、「どのような努力や成果が評価されているか」を明確に伝えることが、年収への納得感の醸成において重要であると考えられます。マネジャーや人事担当者においては、日々のコミュニケーションのなかで、個人の努力をどれだけ“見える化”し、適切に評価をフォードバックできているかを振り返ることが、若手の満足度向上に寄与するひとつの手がかりとなるでしょう。

(図表3:20代で、本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較)

※質問項目、“一致群”および“不一致群”の分類は、図表2と同様です。

【Topic3:30~50代は希望と実態のズレを気にする観点が、20代と比べて多岐にわたる】

次に30~50代で、同様に①~⑤の項目に関して、「自分が重視してほしい観点」と「会社が実際に重視している観点」が一致しているかどうかを分類し、年収満足度と比較しています。

評価や制度面で希望と実態のズレが複数に渡るほど、年収満足度が低下

  • 図表4の結果からは、30〜50代において、評価や制度に対する希望と実態のズレが、複数の観点で満足度と関係していることが分かりました。いずれの観点においても、「希望」と「実態」の一致・不一致によって、年収への納得感に差が生まれています。こうした傾向は20代よりも差が大きく、ミドル層にとっては多面的な納得感が重要であることを示しています。

(図表4:30~50代で、本人の希望と会社の実態の一致/不一致別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較)

※質問項目、“一致群”および“不一致群”の分類は、図表2と同様です。

希望と実態が重なる観点が多いほど、納得感は高まる

  • 図表5の分析では、①~⑤について、希望と実態が一致している「数」が多いほど、年収満足度が高い傾向が明らかになりました。ミドル層の社員は、単一の制度設計だけでなく、制度全体の整合性を重視する傾向が強く、どれか1つの観点が満たされていても、他にズレがあると納得感が下がる可能性があります。処遇の設計やマネジメントにおいては、制度の“部分最適”に陥らないよう、複数の観点で希望と実態がどれだけ重なっているかを見極めることが求められます。

(図表5:30~50代で、本人の希望と会社の実態の一致数と年収満足度のスコアの関係性)

【Topic4:組織風土との相性が良いほど、年収への満足度も高い】

年収への満足度に関係するもうひとつの重要な要素が、「組織風土との相性(組織フィット)」です。図表6で示しているように、ここでいう組織フィット度とは、個人のパーソナリティタイプと職場の風土や価値観の一致度合いを指します。

(図表6:組織フィット度の説明)

「自分に合った職場環境」という実感が、年収への満足度を支える

  • 図表7では、組織風土との相性(いわゆる“フィット感”)の高低別に、年収満足度を比較しています。その結果、20〜50代のすべての世代において、「この職場は自分に合っている」と感じている人ほど、年収に対する満足度が高いという傾向が明確に表れました。

  •  これは、たとえ報酬水準が一定以上であっても、職場の仕事の進め方や雰囲気、価値観といった「働く環境との相性」が悪い場合、年収への満足度は下がる可能性があることを示唆しています。

  •  組織フィット度は、評価や制度のように可視化しにくい要素ですが、全世代共通で年収満足度に深く関係する“基盤的な要素”であることがわかります。

評価や制度の設計とあわせて、“組織風土とのマッチング”にも目を向けることが重要

  • 本調査結果からは、報酬制度や評価項目が整備されているかどうかに加えて、「その人が、その組織で働く意味や価値を感じられるかどうか」が、年収への満足感と関係することが読み取れます。

  •  実際、制度面が整っていても、組織風土や価値観とのミスマッチがあると、「自分の働き方や考え方が受け入れられていない」と感じ、納得感が損なわれるケースが少なくありません。
    逆に、本人の価値観や志向性と職場のあり方が重なることで、年収の「額」以上に、高い満足感を得られることもあります。

  • これらの点から、マネジャーや人事担当者においては、評価や処遇の設計・運用に加えて、採用時の配属、異動の判断、日々のフォローに至るまで、「社員個人と組織風土とのマッチング」にも目を向けることが重要です。制度や金額だけでは語りきれない“納得感”を高める上で、組織風土との相性という観点が1つの鍵を握っている可能性があります。

(図表7:組織フィット度別に「今の年収に満足している」の回答結果を比較)

【今回の調査を踏まえて:年収満足度を高める鍵は、「年代ごとの評価の実感」と「組織風土との相性」】

 本調査から、年収満足度は単なる「金額」だけでなく、「どのような観点で評価されているか」「自分に合った環境で働いているか」といった要素によって、大きく変動することが明らかになりました。

 20代では、「個人の頑張りがしっかり見られているかどうか」が満足度と強く関係しており、30~50代では、評価や制度に対する希望と実態の“複合的な一致”が求められる傾向が見られました。さらに、すべての世代に共通していたのが、「自分の価値観や働き方が、組織風土とフィットしているかどうか」が、年収満足度を下支えする重要な要素であるという点です。

 これらの結果は、今後の人事制度や評価設計、社員へのフォロー施策を考えるうえで示唆に富むものです。社員が「何を大切にし、どのような働き方に満足を感じるのか」という視点を取り入れ、例えば若手層は個人成果をより処遇に反映するなどの、世代ごとの価値観に寄り添った制度設計や個別フォローが、これまで以上に重要になってくるでしょう。

「評価の手応えを実感できる仕組み」や「社員と組織風土との相性」までを含めたアプローチが、人材の定着・活躍を支える基盤となるはずです。

3. 調査担当研究員のコメント

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

HR Analytics & Technology Lab. アナリスト

小澤 一平(おざわ いっぺい)

 今回のレポートでは、年収の満足度に対して「評価してほしい観点」や「職場との相性」がどのように関係しているかを確認しました。特に、評価されたい観点と会社が実際に評価している観点の一致度合いと、年収の満足度にどのような関係があるのか、年代別の違いに着目しました。

 まず、20代の若手層では「個人成果で評価されたい」という希望と実際の評価観点が一致している場合、年収の満足度は高い傾向が見られました。一方で、「個人成果で評価されたい」という希望を持っているにも関わらず、会社側が「チーム成果」など組織単位での評価を重視している場合、年収の満足度は低い傾向が見られました。

 若手社員は、職務や権限の範囲が限られる分、なおさら「個として見てほしい」「自分の成長や努力に目を向けてほしい」と感じることがあるのかもしれません。だからこそ、若手層に対しては、成果そのものだけでなく、挑戦や努力といったプロセス面を含めて、日々の仕事のなかでどれだけ丁寧に見て取れているかが重要になります。

 一方で、30~50代では、評価観点や評価の反映方法、賃金制度の方針など複数の条件が重なり合うことで、年収満足度の違いが表れる傾向も見られました。この年代になると、個別の評価観点に加え、「どのような方針で処遇されているか」「自分の希望や価値観と制度全体が合っているか」といった、より多面的な視点が満足感に関係してくるようです。

 また、本レポートでは、社員のパーソナリティと組織風土との一致度(フィット度)にも着目しています。20~50代の全世代において、組織風土に「フィットしている」と感じる人のほうが、そうでない人に比べて年収満足度が高い傾向が確認されました。この結果からは、たとえ処遇条件が同じであっても、「自分の価値観や働き方が職場に合っている」と実感できることで、年収に対する納得感が高まりやすい可能性が示唆されます。

 こうした結果を踏まえると、今後の人事制度設計や日々のマネジメント施策においては、「誰がどんな観点で評価されたいと感じているか」「自身の仕事観やスタイルと組織の風土がフィットしているか」といった、社員一人ひとりの認識や特性を把握したり目を向けて対応したりすることが可能かどうかということがより重要になると考えられます。

 特に若手層にとっては、「自分がどう見られているか」という実感が、働く意欲やキャリア選択にも影響を及ぼし得る時代です。社員の貢献や努力を“見える化”し、どのような価値を発揮しているかを伝えるフィードバックの仕組みや組織風土が、企業側にも今求められているのかもしれません。

⑥ 調査概要

※調査実施は株式会社クロス・マーケティングに委託

【リクルートマネジメントソリューションズがこれまでに実施した関連調査】

・「一般社員の会社・職場・仕事に関する意識調査」(第1回第2回第3回

・「働く人の本音調査2024」(第1回第2回第3回第4回

・「働く人のリーダーシップ調査2024」(第1回第2回

・「人材マネジメント調査

リクルートマネジメントソリューションズについて

ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。

●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス

また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」「HR Analytics & Technology Lab 」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。

※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

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会社概要

URL
https://www.recruit-ms.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区芝浦3-16-16 住友不動産田町ビル東館4F
電話番号
0120-878-300
代表者名
山崎 淳
上場
未上場
資本金
1億5000万円
設立
2005年12月