大竹伸朗の大規模個展を丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催。かつてない密度で展観する、大竹伸朗の〈網膜〉世界。
国内外での幾多の個展や作品発表を続けてきた現代日本を代表するアーティスト・大竹伸朗(1955-)の大規模個展、8月1日(金)開幕。

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)では、2013年の「大竹伸朗展 ニューニュー」に続いて12年ぶりに大竹伸朗(1955-)の個展を開催します。大竹は1970年代後半より作品発表を始め、ドクメンタ(ドイツ)やヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)など重要な国際展への参加を経て、近年では東京国立近代美術館を皮切りに愛媛、富山へと巡回した大規模な個展まで、国内外での幾多の展覧会を開催してきました。その半世紀におよぶ活動を通じ、圧倒的な熱量が生み出した膨大かつ多様な作品の数々から、本展は〈網膜〉にフォーカスすることにより大竹の作品世界をさらに掘り下げようとするものです。
〈網膜〉シリーズは、1988年に制作の拠点を移した宇和島のアトリエで着想され、1990年代初頭まで集中的に制作されたあとも、他のシリーズへの展開を伴いながら制作が続けられてきました。網膜とはそもそも眼球の最奥にある、光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える機能を担う薄い透明の膜ですが、大竹は、廃棄された露光テスト用のポラロイド・フィルムに残された光の痕跡を大きく引き伸ばし、その表面に透明の絵具としてウレタン樹脂を塗布する絵画作品のシリーズに、この名をつけました。分離している「写真像の色面」と「透明の塗膜層」の2つが私たちの網膜を介して脳内で統合され、「時間」と「記憶」を内包した新たな像として立ち現れます。現在制作中の新作の〈網膜〉でもさらなる更新が試みられる一方で、長期間放置され変質した感光剤は、そこに蓄積する時間を像として刻印し、その像を透明の塗膜層が幾重にも覆うことで、一貫して〈網膜〉が発する情景は未だ見ぬ記憶として見る者を揺さぶり続けます。
こうして新たに創り出された渾身の新作〈網膜〉12点に加えて、〈網膜〉に音と光を組み込んだ、高さ約3mのレリーフ状の新作、そして1990年代初頭に制作された未発表の大型〈網膜〉をはじめとした作品群が核となり、構想時のサイズに更新した大規模インスタレーション《網膜屋/記憶濾過小屋》(2024年)、2010年代半ばから続くグワッシュの連作〈網膜景〉や油彩のシリーズ〈網膜/境〉といった、「時間」や「記憶」を介して〈網膜〉と絶えず往還し続ける作品が骨格となります。本展では、さらに「眼」「フィルム」「写真」から〈網膜〉へと接続する膨大な数の作品をも取り込みながら拡がり続ける大竹伸朗の〈網膜〉世界を展観します。
1.本展の見どころ
1-1.大竹作品のなかでも〈網膜〉シリーズに注目した展示
本展では、大竹伸朗の半世紀に渡る幅広い活動をたどる上で重要な〈網膜〉シリーズを中心に掘り下げて紹介します。1988年にアトリエを宇和島に移した時期に構想されて以来、継続的に制作されてきた本シリーズを、宇和島と同じ四国・予讃線沿線に位置する丸亀(MIMOCA)で展観します。様々な作品群との連関から浮かび上がる〈網膜〉の変遷をたどることで、大竹作品の魅力をより深く感じられます。


1-2.〈網膜〉シリーズの最新作12点、未発表作品を一挙公開
本展にあわせて新たに創りだされた新作〈網膜〉12点に加え、〈網膜〉に音と光を組み込んだ高さ約3mのレリーフ状の巨大な新作や、1990年代初頭に制作された未発表の大型作品の〈網膜〉をはじめ、これまで目にすることのなかった貴重な作品群をMIMOCAで初展示します。平面からインスタレーションまで多様な表現で展開する大竹の〈網膜〉の世界を、新たな視点から体感いただけます。

1-3.12年ぶりのMIMOCAでの個展
2013年以来、12年ぶりに丸亀で大竹伸朗の個展を開催することとなりました。本展はエントランスから2階・3階の展示室まで全館を使った圧巻の展示構成になっています。MIMOCAでは1991年の開館以来150本を超える企画展を実施してきましたが、本展は当館の歴史においても最大規模と密度の高い展覧会となるだけでなく、大竹の現在地を示し、これからの展開を予感させる極めて重要な展覧会となることでしょう。

2.関連プログラム
オープニング・トーク
本展初日に、出品作家・大竹伸朗と本展担当キュレーター・中田耕市によるトークを開催します。
講師:大竹伸朗(出品作家)
聞き手:中田耕市(当館副館長兼チーフ・キュレーター)
日時:2025 年8 月2 日(土) 16:00ー17:30
会場:2 階ミュージアムホール
料金:無料
定員:150 名(当日11:00より会場前にて整理券を発行します)
*その他のプログラムは決まり次第、当館WEB サイト等でお知らせいたします。
3.関連商品
展覧会カタログ・オリジナルグッズも鋭意制作中!
〈網膜〉シリーズの新作を多数収録した展覧会カタログをはじめ、本展にあわせたオリジナルグッズも会期中に発売予定です!詳細は順次公開いたします。お楽しみにお待ちください。
出品作家プロフィール

大竹伸朗(おおたけしんろう)
1955年東京都生まれ。主な個展に東京国立近代美術館/愛媛県美術館/富山県美術館(2022-23)、熊本市現代美術館/水戸芸術館現代美術ギャラリー(2019)、パラソルユニット現代美術財団(2014)、高松市美術館(2013)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(2013)、アートソンジェセンター(2012)、広島市現代美術館/福岡市美術館 (2007)、東京都現代美術館 (2006) など。また国立国際美術館(2018)、ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(2016)、バービカン・センター2016) などの企画展に出展。ハワイ・トリエンナーレ(2022)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2018)、横浜トリエンナーレ(2014)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2013)、ドクメンタ(2012)、光州ビエンナーレ(2010)、瀬戸内国際芸術祭(2010、13、16、19、22) など多数の国際展に参加。また「アゲインスト・ネイチャー」(1989)、「キャビネット・オブ・サインズ」(1991)など歴史的に重要な展覧会にも多く参加している。なお香川県内では、直島、豊島、女木島(女木島は瀬戸内国際芸術祭会期中のみ)で作品を公開している。
開催概要
展覧会名:大竹伸朗展 網膜
会期:2025 年8月1日(金)ー11月24日(月・休)
開館時間:10:00ー18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし8月11日、8月12日、9月15日、10月13日、11月3日は開館)9月16 日(火)、10月14日(火)、11月4日(火)
主催:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団、「瀬戸芸美術館連携」プロジェクト実行委員会(事務局:公益財団法人 福武財団)、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
観覧料
一般1,500円(団体割引1,200円、市民割900円)
大学生1,000円(団体割引800円、市民割600円)
高校生以下または18 歳未満・丸亀市内に在住の65 歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1 名は無料
*同時開催常設展「猪熊弦一郎展(仮称)」観覧料を含みます。
*団体割引は20名以上の団体が対象です。
*市民割は丸亀市民が対象です。チケットご購入時に証明する書類(運転免許証、保険証など)のご提示が必要となります。団体割引を含み、他の割引との併用は出来ません。
同時開催の常設展
「猪熊弦一郎展(仮称)」
会期:2025年8月1日(金)ー11月24日(月・休)
「大竹伸朗展 網膜」以降の企画展のお知らせ(2本立てになります)
「ジャネット・カーディフ 40声のモテット」
「猪熊弦一郎展(仮称)」
会期:2025年12月13日(土)ー2026年2月15日(日)
◎お問い合わせ先:0877-24-7755(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)


令和7年度日本博2.0事業(委託型)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(愛称:MIMOCA)

1991年開館、30年を超える活動
1991年11月23日、JR丸亀駅前に開館。同時代の新しい表現を積極的に紹介する「現代美術館」を望んだ猪熊弦一郎の考えを受け継ぎ、猪熊作品を中心とした常設展、現代美術にフォーカスした企画展、子どものためのワークショップなど、多彩なプログラムを展開しています。さらに、当館は猪熊弦一郎の遺した絵画やドローイングなど作品約2万点を所蔵しています。猪熊が「対話彫刻」と名付けた小さな作品群、猪熊夫妻が各地で収集しその生活を彩っていたコレクションなどの多数の資料とともに、常設展や企画展を通して、猪熊の活動を深く、広く紹介しています。

現代美術に特化した美術館として
現代美術を中心とし、企画展として国内外のアーティストの活動を展観。これまでにヤン・ファーブル、マリーナ・アブラモヴィッチ、マルレーネ・デュマス、エルネスト・ネト、杉本博司、塩田千春、ホンマタカシ、石内都らの個展を開催する一方、金氏徹平、小金沢健人、志賀理江子、中園孔二ら気鋭のアーティストの紹介にも積極的に取り組み、近年では若手作家を対象とした公募展「MIMOCA EYE」を立ち上げました。また、同時代のクリエイティブな表現にも着目し、ファッションやファニチャーといったデザイン、現代建築にも拡張しています。

谷口吉生の設計による美しい建築
設計は、数々の美術館建築を手がけ、高い評価を受ける谷口吉生。猪熊との対話によって、アーティストと建築家の理念が細部に至るまで具現化されています。猪熊弦一郎の巨大な壁画《創造の広場》が眼を引く伸びやかなファサードは、駅前広場と建築をゆるやかに結びつけ、館内に入ると自然光をふんだんに取り込んだ、開放的な空間が広がります。2階には対照的なプロポーションをもつ2つの展示室があり、3階の天井高約7m の豊かなスケール感をもつ展示室へと続きます。さらに、正面左側の大階段はアートへのさまざまなアプローチを可能にするパブリックな空間へと接続しています。2階のアートセンターには、ライブラリー、ホール、スタジオが備わり、3階最奥部にあるカスケードプラザとカフェも来館者に心地よい時間を提供します。
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