―いのちをつなぐ宝物が、ここにある― 杜の財団x風土再生学会が第6回環境シンポジウム<今を生き抜く風土学~平和学>を開催します!
日光・東照宮の風土と歴史から学ぶー「地の脈」、「こころの脈」の危機的寸断と再生 …日本古来の建築土木の世界観や自然共生機能を読み解き、災害激甚化時代の命と暮らしを守る実践を市民レベルの活動へとつなぐ。

風土― 自然の「脈」機能の寸断と、今ここにある危機
私たちの日常の暮らしは、人間が作り上げた複雑高度なシステムで秩序立てられています。一方、有 史以来私たちの祖先は、日本列島の移ろいゆく四季のなかで、世代を超えて生命をつなげるため自然へ の祈りを捧げてきました。日本古来の自然観、山岳信仰にみられる自然崇拝、あるいはアイヌの人々の 自然と動植物たちへの畏敬に満ちた儀式は、人間が自然そして宇宙の緻密かつ繊細なシステムの一部 であり、人間はその恩恵にあずかる立場であることを前提にしているといえます。天体や季節の巡りと変容 のなかに自身の姿をとらえ、儀式や祭りによってそれら大いなる存在と一体化する「ハレ」の場が日常であ る「ケ」の場を支えていました。その源泉となる日本列島の風土は、植生や気候、その根源である水の循 環、そこに 立脚する人の暮らし、文化、智恵、祈り、あるいはそれらの 時間的、空間的な集積の全体 性、言わば生きる基盤そのものです。
戦後80年を経て、日本の風土は人が作り出したシステムによってその様態を大きく変えられてきまし た。山々を貫き川に重い支柱を立てて全国を貫く高速道路、津波を防ぐために岸辺に擁壁のように建て られた堤防など、現代構造物は人間と自然の関係性を寸断してきました。一般財団法人杜の財団 (代表理事・矢野智徳)と風土再生学会(会長・堀信行)は、日本列島にあたりまえに存在してい た自然生態系すなわち風土が加速度的に損なわれてゆく事態に対し、これを健全な姿へ戻していくには 日本社会の行動変容が短期間のうちにどうしても必要であるという危機感のもと、2024年9月より 列島各地の市民の協力を得ながらこれまでに五回の環境シンポジウムを開催してきました。そして、このた び第6回目を日光の地で迎えることとなりました。

私たちが目指す「風土再生」は、自然の根本原理である水と大気の循環機能 (「脈」機能)を回 復・保全したうえに人間の社会が成り立つ、健全な自然生態系のあり方を取り戻そうとする営みです。当 財団代表理事である矢野智徳は、30年前の阪神大震災を契機に災害の現場に立ち続けてきました。 この「大地の再生®」活動を通して現代の土木・建築技術によって「脈」機能が寸断され動脈硬化のよう に詰まりを生むことで自然災害が激甚化、「人災」化していることを見出し、風土再生学会とともにそのメ カニズムの裏付けを進めています。
先人たちから受け継いできた「宝物」とは
本シンポジウムの開催地・栃木県日光市では、1999年12月に「日光の社寺」がユネスコ世界文化 遺産に登録され、その価値が世界に認められました。しかしこの日光でも、自然環境に変化が起こってい ることをどのくらいの人々が知っているでしょう。家康の死後約20年を費やして整備された日光街道の5 万本の杉並木は、380年の時を経て約1万2千本にまで減少しています。特に、そのうちの4千本 以上がこの60年間で姿を消していることから、戦後、何らかの環境変化が起きている可能性が予想で きます。古寺名刹の古木・大樹が大雨や強風などによって倒木するという現象は、この約10年間に各 地で相次いでいます。現代まで守り育て受け継がれてきたはずの遺産が、なぜ今になって急速に痛んでい るのでしょうか。
日光東照宮をはじめとして、山内に信仰の場を設けているのが日本の古寺名刹の一般的な姿です。 当時の日本人が本来の自然環境の機能を損なうことなくその内部に自然共生型の人為空間を造成し た技術には、自然の機能に倣(なら)い、自然の機能を損なわないという原理原則があります。当時の 建造物や治水土木の遺構は、自然生態系の基盤である「脈」機能を侵さず、かつ、それらが形作る「地 の利」を利用することで、千年から数百年の時を超え自然災害さえも乗り越えて健全な姿を今に伝えて います。日光東照宮を建造した江戸幕府は、全国各地の技術の粋を集め、湿地帯であった江戸で都 市整備を進め、自然共生型空間の造成と治水土木を実現していました。これらの視点と技術は、日光 東照宮境内の設計、建造物の配置にも活かされていると考えられます。この時代の人々は自然(自然 現象)と共存こそすれ、それらを現代人のように硬く締め付け、抑制し、凌駕しようとはしなかったのです。
当シンポジウムでは、「八州の鎮守」となった家康の霊魂が鎮座する地と定められた日光の「地の利」と それに根差した空間づくりの意図と機能を読み解いていきます。現代の私たちが忘れ、失いつつあるこれら の宝物は、今私たちの目の前にある危機を生き抜くための思想と技術となるはずです。


市民による風土の再生へ
全3日間のプログラムを通して、これらの智慧について、フィールドワークによる体感と実践、「大地の再 生®」現場からの報告、そして風土学(fudology)による複合的視点から市民の皆様と議論を重ね、 風土再生への想いと実践を共有していきたいと考えています。また、第2日目には、アイヌ活動家である アシリ・レラ氏、足尾に緑を育てる会 会長・斎藤正三氏をお招きし、現代人の暮らしからは影をひそめて しまった自然の根幹的な姿である「再生」をテーマに対談を行います。全3か所でのフィールドワーク、多 角的視点からの報告や提言と併せ、全3日間の体験を通して、自然を観る視点、自然と相対する術 (すべ)を日光の地にて体感し、考え、私たち自身のあり方を問うことで、市民としての具体的な次の一 歩を共に見つけていきたいと願っています。
《シンポジウム開催概要》
・日時: 2025年8月1日(金)、2日(土)、3日(日)(全3日間)
・主催: 一般財団法人杜の財団、風土再生学会
・プログラム (予定、登壇者敬称略)
● 8月1日(金) 日光東照宮フィールドワーク
集合:日光東照宮入り口石鳥居前
時間:9:00集合、10:00~16:00(途中昼休憩あり)
◆日光社寺保存を担う技師の方のご同行を調整中です。
●8月2日(土) シンポジウム
場所:日光自然博物館
時間:9:30開場、10:00~18:00(途中昼休憩あり)
【対談】 アシリ・レラ、齊藤正三、矢野智徳 「再生」
【発表1】 藤田盟児 「日光東照宮の建築配置について」
【発表2】 矢野智徳 「日光東照宮における「杜土木」 境内整備の地球的価値」
【発表3】 粟生田忠雄 「蛇行と渦と脈」
【発表4】 堀信行 「日光東照宮は なぜそこに そのようにあるのか」
【パネルディスカッション、質疑応答】 全登壇者
【懇親会】閉会後~20時前まで(参加費無料、申込み締め切り7月28日) ※ 懇親会ご希望の方は、本イベントへの参加お申込み時に、あわせてフォームからお知らせください。
● 8月3日(日) 足尾&日光街道杉並木
集合:足尾環境学習センター
時間:14:00集合、14:00~18:00
◆足尾エリアでは植樹を体験しながら「大地の再生®」による環境再生の手法を併せて学びます。
※ 電車参加者は、わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線「間藤」駅13:30集合。
※ 移動は乗り合わせです。
※ 東武鉄道日光線「上今市」駅近くで解散。
【参加申し込み】
https://morinozaidansympo-nikko.peatix.com/
一般財団法人杜の財団 公式ホームページ
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