法務省主催のミッションチャレンジ2025にて、京都刑務所との挑戦が「フロア大賞」を受賞
〜 受刑者の更生を信じられない社会課題への挑戦 〜
「10代の犯罪を減らす」をミッションに掲げる株式会社一(ICHI INC.)(京都市、代表:中馬 一登)は京都刑務所と共に、全国の刑事施設が独自の取り組みや構想を発表する法務省主催のコンテスト「ミッションチャレンジ2025」に参加しました。
本コンテストは、9月13日に東京都港区で開催。全国から84件の提案があり、法務省の審査により選ばれた11施設がプレゼンテーションを行いました。当日来場された観覧者139名の投票により、京都刑務所は最多得票を獲得し、「フロア大賞」を受賞いたしました。
チャレンジの概要
京都刑務所と株式会社一は、「職員も受刑者自身もそして社会も、更生を信じられない現状の構造」を課題ととらえ、「職員・受刑者・社会が更生を信じる」ために何が必要かを検討しました。具体的な課題の例として、刑務所の職員の方々の意見をもとに、下記の4点を提示しました。
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職員が更生を信じられない
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職員が仕事に意味を感じられない
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受刑者が行う刑務作業が社会復帰後の仕事につながらない
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受刑者の就職がうまくいかず更生できない
これらの課題を解決するために、株式会社一がハブとなり、企業・行政・教育機関・メディア・文化・金融機関などと京都刑務所との連携を促進しています。地域の民間事業者と共に、「オープンイノベーションによる、社会復帰を実現するための刑務作業・就労支援」の実施を目指します。

5月から9月にかけて、企業訪問や伝統産業の工房見学、刑務所での見学ツアーなどを実施し、様々な企業・団体の方々とも議論を重ねてきました。そして、新しい取り組みとして、3つのプログラムの始動に挑戦します。
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伝統産業
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ブランド企画
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起業家育成
3つのプログラムの特徴
伝統産業
内容:伝統工芸に欠かせない上流工程を刑務所が担う
例…西陣織「糸繰り」「整経」、黒谷和紙「かごそろえ」
意義:
・深刻な課題(担い手不足)を解決し、伝統産業を守る。
・職員と受刑者が誰かの役に立つ経験をし、仕事への意欲が高まる


ブランド企画
内容:企業とコラボし、高付加価値のブランド商品を開発
例…伝統工芸品のアップサイクル、スポーツブランドの横断幕やユニフォームのアップサイクル
意義:
・アップサイクルなどの商品によって新しい価値を創出する。
・職員と受刑者がビジネススキルを身につけ、誇りとやりがいを感じる


起業家育成
内容:起業家の講演、自分と向き合うワークを実践
意義:
・再犯や生活保護の税負担を抑え、起業や就労の税収を増やす
・職員と受刑者の視野が広がり、事業に役立つスキルとマインドを習得する


今後の展望
本質的な社会復帰を実現するために、下記の展望についてスキームの検討を進めていきます。
・受刑者本人の希望を尊重し、プログラム参加者を募集して書類選考や面談を行う
・企業にとっての参画メリットを設計し、民間の応援による資金の集め方を構築する
・企業の社員が刑務所内で指導を行い、出所後の採用につなげられる仕組みをつくる
・出所後もサポートが必要な受刑者をシームレスに支えられる研修付き入所施設をつくる

審査員のコメント
審査員の方々からいただいたコメントより一部を抜粋し、読みやすいよう最低限の編集を加えて掲載させていただきます。いただいた言葉を励みに、活動を進めてまいります。
“冒頭の「更生を信じていない」というセリフで胸を鷲掴みにされました。”
“回復とか社会復帰というのは極めてイノベーティブなプロセスだと思うんです。受刑者にとってパラダイムシフトと言いますか、これまでなかったような創造性溢れるプロセスだと思うので(略)それを力強く進めておられるんだなということが伝わってきたので、本当に期待しています。”
“第一声は、ドキッとするというか、自分にも突きつけられているのかなと思う発表のテーマでした。発表を聞くと、どなたよりも更生を信じたい、信じようとしてるっていうお気持ちが溢れている取り組みかなと思いました。”
“組織がこのような活動に関わる際には内部の説得や許可を得るのが非常に難しいんですけども、その中で伝統のあるところから話をお取り付けになられているというのは、ものすごく丁寧に、受刑者の方への思いもあって進められてきているのかなと思いました。”
“面白いなと思ったのが、ブランディング。刑務所で作ったものを価値あるものにする。これはものすごく大きいことだなと。一つの施設がうまくいったら、ほかの施設にも波及しやすいし、すごく素晴らしい取り組みだと思いました。”
“少年院で話をさせていただくことがあるんですけれど、けっこう具体的に色々な起業についての質問をいただきます。その時の熱もすごく感じて。簡単ではもちろんないと思うんですけれど、自分の情熱があるところだと頑張れたりもするので、そっちの方向でできることが色々あるのかなと思いながら聞いていました。”
審査員
東京大学先端科学技術研究センター教授 熊谷 晋一郎 氏
NPO法人日本ファンドレイジング協会事務局長 小川 愛 氏
株式会社andu amet CEO 鮫島 弘子 氏
法務省 矯正局長
京都刑務所 所長メッセージ
「更生を信じていない」
今回のプロジェクトとそのプレゼンはこの言葉から始まりました。
中馬さんとは府中刑務所在勤時に知り合い、FC東京とのコラボ、Tシャツ作製などを一緒に取り組んでいたところ、まさかの中馬さんのホームタウンである京都への異動。今でも、それを伝えたときの中馬さんの驚き、喜んでくれた表情は鮮明に覚えています。
このようなつながりから始まった今回のチャレンジ。
京都刑務所という一つの点が株式会社一とつながって線となり、多くの協力者が関わっていただいて一つの円となりました。
当所でも、職種や雇用形態などが異なる多様性のあるメンバーが集まり、初めのうちは刑務所の慣習やタブーにとらわれがちだったものが、株式会社一のメンバーや協力者との議論などを進めていくうちに、心が動き出し、どんどん殻を打ち破って我々が目指すべき方向性を見つけ出し、行動し、形にしていきました。
メンバーそれぞれが「更生を信じられるかもしれない」、「更生を信じてみよう」と心が動いたこと、協力していただいている方々からの「一緒にやりましょう」との声、そして会場で多くの方が当所の発表に投票してくれたことは、このチャレンジを前に進めていく大きな勇気となります。
とはいっても、我々のチャレンジはまだまだ始まったばかりです。クリアにしていくべき課題も多く、持続可能なスキームとして根付かせるためには、もっと多くの職員、協力者を巻き込んでいく必要があります。
ぜひ、これまで矯正行政や京都刑務所と関わりがなかった皆さんこそ、我々に力を貸してください。よろしくお願いいたします。
5年後、10年後、20年後、京都刑務所が「罪と向き合い、社会とつながる場所」となり、皆さんとともに「更生を信じる力で、もっと安全で豊かな社会を」実現できるように進んでいることを信じて。
京都刑務所長 櫛引唯一郎

HIGH HOPEがめざす世界
代表メッセージ
ICHI INC.は「10代の犯罪を減らす」ことをミッションに掲げ、犯罪が起こってしまう社会構造の変革を目指します。地域の企業や自治体、教育機関、スポーツクラブ、アーティスト、メディア、金融機関などを巻き込んで、オープンイノベーションによって再犯防止・更生保護を実現する事業に挑戦します。
その一環として、少年たちが生きがいを見つけ、自律的に人生を歩み、社会に貢献するプレイヤーになっていくことを目指し、HIGH HOPEプログラムを少年院で展開しています。並行して、医療・福祉の面からのアプローチや、刑務所での受刑者・職員の意欲と誇りを育むプログラム開発なども進めています。
少年院に入る少年少女の約9割に、虐待や家庭内暴力など、幼少期の逆境体験があります。発達障害やメンタル疾患も増えています。帰る家がなく、頼れる大人もおらず、生きるために犯罪をするしかなかった子どもたちが日本にもいることを、僕はこの世界に関わるようになって初めて知りました。
会社設立から2年が経ち、HIGH HOPE事業に協力してくださる人・企業がずいぶん増えました。たった一人で創業した時のことを思うと、こんなに心強いことはありません。応援してくださる皆さんと共に、社会に希望を生む事業を広げていきます。よろしくお願いいたします。
代表プロフィール

中馬 一登
株式会社一(ICHI INC.) 代表取締役
1987年京都生まれ。26歳で弟2人と株式会社MIYACOを設立。代表を10年間務め、2023年、世界を良くする事業を生み出すためにICHI INC.を設立。罪を犯した少年少女の可能性に光を灯す「HIGH HOPE」事業を立ち上げ、少年院でのアントレプレナーシップを育むプログラム運営や、刑務作業製品のブランド開発を行う。経済合理性が低いとされる課題の解決に挑み、社会に大きな希望を生むことを目指す。
法人・施設概要
株式会社一(ICHI INC.)
代表取締役:中馬 一登
住所:〒602-0898 京都市上京区相国寺門前町643-6 風良都館3階
設立:2023年11月
「HIGH HOPE」webサイト:https://high-hope.ichi.jpn.com
京都刑務所
住所:〒607-8144 京都府京都市山科区東野井ノ上町20
法務省webサイト:https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00090.html
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