SHEDを活用した脳性麻痺の基礎研究で重要な成果 ~名古屋大学との共同研究論文が国際学術誌に掲載~
当社グループの株式会社S-Quatre(エスカトル)は、有効な治療法のない小児疾患や希少疾患に対する新規細胞治療薬(再生医療等製品)の創出を目指して、乳歯由来の歯髄幹細胞(SHED: Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)を活用した研究開発に取り組んでおります。
S-Quatreは名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センターと、根本的な治療法のない脳性麻痺に対する画期的な治療法の創出を目指し、SHEDを用いた共同研究を進めてまいりました。その約6年間にわたる研究成果として、脳性麻痺モデル動物に対して、既に神経症状を呈している受傷後遠隔期(慢性期)からの治療介入でも効果を発揮することを世界で初めて実証し、さらにそのメカニズムの一端を明らかにしました。これらの研究成果をまとめた共著論文が、このたび世界トップ学術誌の一つ、「Stem Cell Research & Therapy誌」に掲載されましたので報告いたします。
本研究成果は、2025年11月に名古屋大学が公表した、脳性麻痺を対象とする臨床研究の中間解析結果を科学的に支持する基礎的知見であり、今後のSHEDの臨床開発推進における科学的根拠として、その妥当性を支えるものです。
S-Quatreは今後も、高度な研究レベルを有する外部研究機関と協力してSHEDの科学を追求するとともに、脳性麻痺をはじめとする難治性疾患に向き合う患者様とご家族に対し、この革新的な治療法を一日でも早く提供できるよう、研究開発を進めてまいります。
本研究の背景:
脳性麻痺は、周産期に何らかの原因により脳に損傷が起きることで発症する姿勢・運動障害で、生後間もない時期には症状が明確でないため、多くはその成長過程において神経症状が明らかになることで診断されます。また、その中でも低酸素性虚血性脳症は脳性麻痺の原因の一つであり、神経科学的後遺症の予防を目的として、低体温療法が施されることがありますが、適応例も効果も限定的です。こうした背景から、診断後の遠隔期からの治療介入でも神経機能を回復し得る、新たな治療法の開発が強く求められています。
神経機能の回復を目的とした遠隔期治療としては、骨髄や臍帯を由来とする幹細胞を用いた臨床研究報告がありますが、検証的臨床試験の報告はありません。また動物モデルにおいては、脳損傷後の急性期に介入して有効性を報告した例はありますが、神経症状の出た慢性期から介入した報告はありません。今回、SHEDを用いることで、慢性期からの治療介入による有効性を世界で初めて体系的に示すことに成功しました。
研究成果のポイント
脳性麻痺モデルとして幼若ラットを用いた低酸素性虚血性脳症モデルを作製し、その一か月後(慢性期)に病態が確立していることを確認の上、SHEDの静脈内投与による治療介入を開始した。投与は2週間ごとに3回行い、初回投与から4か月にわたって多角的な評価・解析を行ったところ、以下の知見が得られた。
・SHED初回投与後24及び48時間において、一部のSHEDが脳内に移行していることを確認した
・初回投与後2ヶ月において、脳内で神経の新生に関与するタンパク群の発現が変化しているこ
とを確認した
・初回投与後2ヶ月において未熟な神経細胞が、4ヶ月において成熟した神経細胞が、特定の脳領
域で増加していることを確認した
・初回投与後4ヶ月において、運動機能および記憶・学習機能の改善を確認した
・培養実験において、SHEDが神経幹細胞の増殖を促進することを確認し、その作用に寄与する因
子の一つとして、SHEDが分泌する「HGF」を同定した
以上のことから、静脈内投与されたSHEDはその一部が脳内に移行し、HGFなどの成長因子を分泌することで、神経新生を促進し、慢性期にもかかわらず、その失われた神経機能を回復させることが示唆された。
■発表論文
Kanzawa T et.al., ” Novel Stem Cell Therapy for Cerebral Palsy Using Stem cells from human
exfoliated deciduous teeth ” Stem Cell Research & Therapy 23 Jan 2026
URL:https://link.springer.com/article/10.1186/s13287-025-04828-y
■ご参考
2025年11月17日「SHED投与による脳性麻痺(遠隔期)治療の臨床研究 名古屋大学が中間解析結果を公開」
2026年1月26日「脳性麻痺慢性期に対するヒト乳歯歯髄幹細胞(SHED)の静脈内投与の治療有効性評価」

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