フィリピンへの海外からの純直接投資額 2018年1月-8月期通期は、前年同期の57億ドルから31%増の74億ドルに増加
フィリピン中央銀行は、2018年1-8月期通期の海外からの直接投資(以下、FDI)純流入額が、前年同期の57億ドルから31%増の74億ドルになったと発表しました。これはフィリピン経済の強固なファンダメンタルズや成長見通しを支えとして、投資家心理が引き続き上向いたことにより堅調に推移しました。特に純自己資本投資額は、前年同期の9億9,000万ドルから2倍増の20億ドルに達しました。これは自己資本の増資額が前年同期比で63.7%増の22億ドルになった一方、資本の払い戻し額が45.9%減の1億9,600万ドルに減少したことに起因します。当月期通期の自己資本の増資は主にシンガポール、香港、米国、日本、中国などで、製造業、金融・保険業、不動産業、芸術・娯楽業、電気・ガス・蒸気・空調供給事業活動に振り分けられました。当月期通期の債権投資は、前年同期の41億ドルから17.9%増の49億ドルとなり、利益の再投資額は5億3,600万ドルでした。
2018年上半期における日本のフィリピン向けFDI(国際収支ベース、ネット、フロー)について日本貿易振興機構マニラ事務所・所長の石原孝志氏は、「日本の財務省及び日本銀行によれば、業種別に見ると電気機械器具が大幅に伸びたほか、輸送機械器具も高い水準で推移している。自動車部品、電子部品等の工場新設または拡張が続いた」と指摘。また、FDI先としてのフィリピンの評価点については、「豊富な労働人口に恵まれたフィリピンでは、英語堪能で優秀な作業員を大量に確保でき、人件費の上昇圧力も近隣諸国より緩やかである。また、PEZA(フィリピン経済特区庁)のエコゾーンに立地する輸出関連企業は、ワンストップサービスを活用して効率的な事業運営が可能となっている。さらに、安定的な経済成長により内需が拡大しつつあることも魅力」とした上で、今後さらなるFDIが期待される分野については、「フィリピン貿易産業省から自動車産業の国内生産を推進するプログラムを適用された日系自動車メーカーは大型設備投資を行い、本格生産体制を整えている。製造業の国際競争力向上には裾野産業の集積が不可欠であり、自動車部品メーカー等のさらなる進出を期待したい。インフラ整備、不動産開発に関連する産業も活発な投資活動が見られる」(石原氏)としています。
2018年8月のFDIの流入額は、前年同期の13億ドルから41.2%減の7億5,200万ドルになりました。FDIの全ての項目でプラス残高となりましたが、当月の流入額は前年同期より低い水準となりました。当月のFDIの純流入額の大半は、主に海外直接投資家とそのフィリピン現地法人の間の貸借からなる債権投資の形で行われ、その額は5億3,400万ドルになりました。
純自己資本投資額は、前年同期の6億5,200万ドルから1億7,200万ドルに減少しました。自己資本の増資額(6億7,100万ドルから1億8,700万ドルに減少)は、資本の払い戻し額(1,900万ドルから1,600万ドルに減少)を上回りました。自己資本の増資は主に、シンガポール、米国、日本、香港、中国で行われました。投資は主に、製造業、不動産業、電気・ガス・蒸気・空調供給事業、情報通信業、金融・保険業活動に振り分けられました。当月の利益の再投資額は4,700万ドルでした。
i これらの数値は、直接投資統計資料にある資産及び負債原則を⽤いた、国際収⽀・対外資産負債残⾼マニュアル第 6版(BPM6)に基づきます。資産及び負債原則に基づき、フィリピン居住直接投資家のフィリピン⾮居住直接投資会社に対する債権は、対外負債の純増による逆投資またはフィリピン⾮居住投資家によるフィリピンへの投資と記載されます。従来の国際収⽀・対外資産負債残⾼マニュアル第 5 版(BPM5)では、資産のマイナス勘定またはフィリピン居住者による海外投資と記載されていました。反対に、海外投資家のフィリピン居住直接投資会社に対する債権は、純⾦融資産の取得による逆投資またはフィリピン居住投資家による海外投資と記載されます。従来の国際収⽀・対外資産負債残⾼マニュアル第 5 版(BPM5)では、負債のマイナス勘定またはフィリピン⾮居住投資家によるフィリピンへの投資と記載されていました。
ⅱ.フィリピン中央銀⾏の直接投資に関する統計は、⾃⼰資本、利益の再投資、関連会社間の借⼊の形を含む、投資実績を対象にします。その他の政府筋の投資データとは異なり、フィリピン中央銀⾏の直接投資データにおける投資は外国企業による所有が少なくとも 10%含まれます。⼀⽅、投資促進⽀援委員会(IPA)の直接投資データは、10%の基準値を使⽤し、国内企業の関連会社ではない海外資本からの借⼊を含みます。また、フィリピン中央銀⾏の直接投資データはネット・ベース(⾃⼰資本の増額から⾃⼰資本の引き下げを差し引いた値)である⼀⽅、IPA の直接投資データは⾃⼰資本の引き下げを指し引くものではありません。
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