多職種連携による「プライマリ・ケア」提供体制などについて提言を発表

~有識者らと共に、診療報酬制度や国民的議論の推進なども検討~

株式会社日本総合研究所

株式会社日本総合研究所(本社: 東京都品川区、代表取締役社長: 谷崎勝教、以下「日本総研」)は、「健康・医療政策コンソーシアム」(以下「本コンソーシアム」/※1)の活動として、地域医療体制をはじめ、診療報酬制度の再構築、そして医療制度についての国民的議論の活性化などをテーマにさまざまな有識者やステークホルダーと意見交換を行い、「地域性を考慮し、国民的議論促進に貢献する 持続可能で質の高い医療提供体制構築に関する提言」(以下「本提言」)としてまとめました。

本提言は、社会保障の持続可能性に対する国民の不安を軽減させ、安心して豊かな人生を送れる社会の実現を目指して作成したものです。本提言は、以下からご覧になれます。
 地域性を考慮し、国民的議論促進に貢献する持続可能で質の高い医療提供体制構築に関する提言
 
(日本総研ホームページ/2023年4月20日)
 https://www.jri.co.jp/column/opinion/detail/14137/

 

■背景
 少子高齢化が進み、また、疾病構造が変化する中では、医療体制や診療報酬制度もそれらに応じた形に修正していくことが必要です。ただし、医療にはさまざまな立場や利害、考えがあることから、特に抜本的な変革を行う際には国民的な議論が欠かせません。
 そこで本コンソーシアムでは、医療・介護・生活の多職種連携を実現するプライマリ・ケアのほか、診療報酬制度の「価値」の観点からの再構成、そして、医療制度について国民的な議論を推進していくために必要な情報提供の在り方について検討し、本提言としてまとめました。

■概要
 本提言では、①地域ごとの多職種連携によるプライマリ・ケア提供体制の構築、②提供する医療の価値に基づいた診療報酬制度の構築、③医療制度の情報提供による国民的議論の活性化、という3つのテーマについて統合的に検討し、具体的な提言を行っています。

①地域ごとの多職種連携によるプライマリ・ケア提供体制の構築
 体調の不良や違和感があっても、受診すべきかどうか、そして何科を受診すべきなのかについて、患者自身で判断することが難しい場合が多いのが現実です。また、疾病構造が変化し、身体的・心理的・社会的など多面的に治療や支援を行う全人的アプローチの必要性が高まる一方で、医療・介護・生活関連のサービスを提供する機関は専門ごとに縦割りとなっているため、患者自身では適切なサービスを選択できないケースも少なくありません。
 そこで、医療・介護・生活の多職種連携を実現する「プライマリ・ケア」に期待が寄せられるようになりました。プライマリ・ケアでは、適切な診療科の選択をはじめ、複数のサービスの組み合わせが必要となることも多い介護領域や生活全般に関する悩みについての一次対応を包括的に行い、解決方法の検討も行います。医療だけでなく、介護・生活まで包括的に相談できることから、患者は適切なサービスに素早くアクセスできるようなるばかりでなく、医療が必要とまではいえない可能性がある、些細な心身の悩みも含めて遠慮なく利用しやすくなります。しかし、現在のところ、プライマリ・ケアやプライマリ・ケアチーム体制のあるべき姿は明確に定義されていません。
 そこで本提言では、プライマリ・ケアの先進的な事例を多くの地域で調査した上で、各地域の生活モデルや医療・介護・生活に関するサービスの提供体制を踏まえた全人的アプローチを行うプライマリ・ケアチーム体制を示しています。さらに、あるべき姿の実現に欠かせない、プライマリ・ケアの教育の充実を図る制度やデジタル活用などについての検討の必要性も提言しています。

②提供する医療の価値に基づいた診療報酬制度の構築
 医療を財政の面から見た時、提供する医療にムダ・ムリ・ムラが生じていると考えられるケースは少なくありません(※2)。少子高齢化によって拡大する医療需要と限られた医療財源での需給均衡を保つには、価値の観点から提供する医療を整理し、非効率な医療を削減しながら、価値の高い医療を提供しやすくすることが必要です。しかし、現在の診療報酬制度は、医療サービスの提供プロセスや医療機関の構造を基にして設計されているため、提供する医療が持つ多様な価値を反映させやすくはなっていないのが実態です。
 そこで本提言では、診療報酬制度を再構築するために、「価値に基づく医療」について継続的に議論する仕組みを政府内につくることを提言しています。その上で、社会保障制度として扱うべき多様な価値について、患者・医療機関・医療従事者・医療産業・保険者・行政など多様なステークホルダーと共に議論を重ねながらグランドデザインを策定していくべきとしています。
 また、医療の価値の評価と検証に欠かせない医療データの利活用については、事例を設定・整理した上で、具体的な医療データ基盤やデータガバナンスなどの検討を行うことを提言しています(※3)。

③医療制度の情報提供による国民的議論の活性化
 持続可能で質の高い医療提供体制を構築するには、医療のあるべき姿について国民的な共通認識を醸成しながら制度設計を進めていくことが不可欠です。しかし、医療や税の制度は非常に複雑な上に、多くの国民にとって教育や情報提供を受ける機会は限られています。そのため、医療制度について自らの意見を持ち、議論を行うために必要な基礎的な知識を有する国民は多くありません。
 そこで本提言では、医療制度の改革が生活にどのように結びつき、具体的にどのようなメリットをもたらすのかなどについて、国が国民に積極的に情報提供していくことを提言しています。また、その際には、医療や社会保障制度の現状と将来の選択肢などについて、国民が恐怖や不安を覚えることなく自分ごととして理解を深め、適切なコミュニケーションが行えるようになることを目指すべきとしています。

 日本総研は、本コンソーシアムの活動を通じて、多様なステークホルダーによる一体的な議論を進め、医療の多面的な革新を推進していきます。

(※1)健康・医療政策コンソーシアム
 持続可能で質の高い医療提供体制を構築することなどを目的に、医薬・医療機器の業界団体や医療・IT関連企業、医師が所属する学会、医療や経済の専門家、そして患者団体などと共に設立した研究会。
 「健康・医療政策コンソーシアム」設立について(日本総研ニュースリリース/2022年7月12日)
 https://www.jri.co.jp/company/release/2022/0712/

(※2)非効率な医療の特定とその改善に向けた提言
 医療における需要と供給のバランスから、需要に対して供給が過剰である状況を「ムダ」、需要に対して供給が過少である状況を「ムリ」、ムダとムリが混在・偏在化している状況を「ムラ」と定義した。これらの視点から定量化が可能な課題点に対し、政府統計資料・会議資料などの各種公開情報や有識者による意見を参考に、それぞれの事象・論点について、医療費・医療資源の非効率性の観点から課題があると考えられる範囲を可能な限り示すことを目指した。検討結果として、数兆円にも上る医療費の削減可能性を特定した。
 非効率な医療の特定とその改善に向けた提言(日本総研ホームページ/2022年10月18日)
 https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=103693

(※3)医療データの利活用促進に関する提言
 デジタル改革による医療データの連携と利活用を推進するため、森田朗東京大学名誉教授をはじめとした有識者と共に「ヘルスケアデジタル改革ラウンドテーブル」を開催し、「医療データ利活用で実現したい姿(グランドデザイン)と事例の作成」「医療データ利活用のプラットフォームであるデータ基盤の整備」「医療データ利活用に関する管理機関の設置などデータガバナンスの実装」の3つの提言が取りまとめられた。
 医療データの利活用促進に関する提言(日本総研ホームページ/2023年2月9日)
 https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=104461

 

以上

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会社概要

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業種
情報通信
本社所在地
東京都品川区東五反田2-18-1 大崎フォレストビルディング
電話番号
03-6833-0900
代表者名
谷崎勝教
上場
未上場
資本金
100億円
設立
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