【「文化の日」の消滅危機】ミュージアムの「サイレント閉館」が3年で2倍に
独自調査のご報告と取材のお願い
物価の高騰やコロナの影響で博物館や美術館などが深刻な影響を受けています。
近年のミュージアムの閉館の状況を、一般社団法人「路上博物館」が独自に調査しました。結果、2022年までは年約10件だった閉館が2023年には21件と約2倍に増加。今年(2024年)は9月の時点ですでに14件に上っていることがわかりました。
こうしたミュージアムの閉館は、報道でもほとんど実態が明らかにされていません。そこで、私たち路上博物館はこれを「サイレント閉館」と名付けました。「サイレント閉館」とは、誰にも注目されずひっそりと閉館が進む状況です。
全国各地で進む「サイレント閉館」に注目し、貴重な資料をどう守り伝えていくか考え行動するきっかけを作るために報道関係者の皆様のご協力をいただければと思います。
※本調査でのミュージアムとは、博物館・美術館・資料館・動物園・水族館・植物園・科学館などの施設で、「有形及び無形の資料を研究、収集、保存、解釈し展示する施設」を指します。
■誰にも注目されずひっそり進む「サイレント閉館」の調査結果■
今回の調査は、インターネット検索(Google News)を用いてミュージアムの閉館に関する報道の件数を調査しました(2024年9月4日調査)。同一施設の報道については1件として数えました。個人のブログ等は利用せず報道機関(新聞、ウェブメディア、テレビ等)の情報のみを数えました。
その結果、2018年から2022年までは平均9.4件が閉館していました。2023年は22件と2倍超が閉館していたことがわかりました。2024年9月時点でも14件と2018~2022年の平均を上回っており、年末にかけてさらに閉館件数が増加する可能性があります。
このような状況について、文部科学省などの統計や調査報告書、大手メディアの過去の報道で同様の報告がないか調べたところ、2020年以降の情報は見つかりませんでした。
ミュージアムには1館あたり平均3万2,000点の資料があります。単純に計算すると、2023年の22件の閉館により約70万点の資料を観覧する機会を失ったことになります。
今回の調査は「報道された閉館件数」だけを数えたものであり、報道されずに閉館したミュージアムはまだまだあるのではないかと考えています。「誰にも注目されずひっそりと閉館が進む状況」が水面下で増えている現象を「サイレント閉館」と名付け「路上博物館」では社会的影響の調査や対策を行っていきます。
※1館あたりの資料点数の根拠:令和元年博物館白書(文化庁)による人文系資料の平均点数
■「『サイレント閉館』には社会全体の面的な取り組みが必要」路上博物館館長コメント■
路上博物館の館長を務めます、森健人(もり けんと)と申します。
一般社団法人である「路上博物館」は博物館の社会的な価値を高めるため、「博物館はもっと面白い」をビジョンにかかげ日々活動しています。このビジョンは「博物館って実は面白いよ」「博物館はもっと面白くなるポテンシャルを秘めているよ」という二つの意味を含んでいます。そしてそんな我々の活動にとって、社会に博物館(=ミュージアム)が存在することは活動の前提であり、非常に重要です。ミュージアムは古今東西の資料を保存・管理し、それらの資料が活用される機会を人類に提供するインフラなのです。
「必要とされていないから閉館するのだ」という意見もあるかもしれません。それも一理あります。しかし、そのような博物館にも貴重で重要な資料は山のようにあるのです。また、博物館資料は後になって重要性が増すことも往々にしてあります。つまり、サイレント閉館はは現代を生きる私たちだけの問題ではなく、50年後、100年後の人々にとっての問題でもあります。一度散逸し失われた資料は二度と手に入らないのです。
これまでにも、個別の施設を保存しようという取り組みもわずかながら事例があります。例えば、路上博物館でも2020年に閉館直前の水族館であった「京急油壺マリンパーク」のバーチャル移転に携わりました。
しかし、現状必要とされているのは、個々のミュージアムで行う「点」の取り組みではなく、社会全体の仕組みとして行われる「面」の取り組みであると感じています。
我々、路上博物館は、「サイレント閉館」が進んでいる現状を一人でも多くの人に知ってもらえる土台を築き、また私たちの社会全体の課題としてとらえ、今後につながる議論の礎を整えていきたいと考えています。
■「実態を調べ、データを残す」路上博物館の新規プロジェクト開始■
誰にも注目されずひっそりと閉館が進む「サイレント閉館」が広がる中で、私たちは次のようなプロジェクトを開始します。
1)サイレント閉館のさらなる実態調査と公表
今回の調査ではインターネット上にある過去の報道から、閉館した施設の名前と閉館年を抽出しただけでした。今後、より具体的なサイレント閉館の実態を把握するために、閉館原因やミュージアムの地理的分布、閉館したミュージアムのジャンルなどの調査を進め、なぜ閉館が進むのかや閉館を避けるための取り組みについて分析し、結果を公表します。
2)ミュージアムの展示のデジタル化と公開
「路上博物館」ではこれまで全国の博物館と連携して資料のデジタル化やその活用支援を推進してきました。過去には閉館する水族館のバーチャル移転プロジェクトも実施し、業界内でも先進的な取り組みを多数行っています。
こうした知見を活かしてすでに閉館が進んでいる状況に対して、展示のデジタル化と公開を行ってまいります。これらのデータはウェブ上で公開するだけでなく、国会図書館にもデータを提供します。
3)寄付を呼びかけます(クラウドファンディング)
路上博物館では「サイレント閉館」の実態調査及び閉館するミュージアムのデジタル化のための活動資金を集めるクラウドファンディングを2024年11月中旬から実施します。
集まった寄付金を基に上記の活動を行いその成果報告を2025年夏頃に実施する計画です。クラウドファンディングの詳細は路上博物館の公式ウェブサイト及びSNSで告知予定です。
一般社団法人路上博物館について
路上博物館は、普段は博物館に足を運ばない人々に博物館資料の面白さ先を伝えるべく、収蔵標本のレプリカを路上で展示する活動から始まりました。2020年5月18日の「国際博物館の日」に設立。博物館と標本・資料の魅力をより多くの人に伝えるべく様々な活動に取り組んでいます。
法人名 (英語表記) |
一般社団法人路上博物館 (The Museum on the Street Association) |
公式サイト |
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設立年 |
2020年5月18日(国際博物館の日) |
理事 |
森健人(代表理事)、齋藤和輝(理事)、竹形誠司(理事) |
住所 |
東京都文京区本郷2丁目25−15 宮﨑ビル1階 |
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