UTEC、上部消化管出血の診断とモニタリングのためのセンサー技術を開発するアイルランド発ベンチャーEnteraSense Ltd.へ出資を実行
2021年11月、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(本社:東京都文京区/代表取締役社長:郷治 友孝/以下、UTEC)は、アイルランドの上部消化管出血(UGIB)のピル型非侵襲的診断医療機器「PillSense(ピルセンス)」を開発する医療機器ベンチャーEnteraSense(エンテラセンス)Ltd. (本社:アイルランド共和国ゴールウェー/ Chief Executive and Co-founder:Donal Devery(ドナル デバリー)/以下、EnteraSense)に対してリード投資を実行しました。本投資はアイルランドの政府系金融機関であるEnterprise Ireland(エンタープライズ アイルランド) (世界40拠点、従業員数700人、年間投資額約600億円)との共同投資となります。なお、米国カリフォルニア州サンディエゴで2022年5月に開催される世界最大規模の消化器学会「Digestive Disease Week」※1で、「PillSense」の臨床試験結果を発表することが2022年2月に承認されましたので、あわせてお知らせいたします。
上部消化管出血は内視鏡による診断と救急処置を必要とする緊急疾患であり、その発生率は10万人中100人※2、致死率は10%※3に達します。米国では、上部消化管出血による年間入院患者数が30万人※4にのぼり、救急外来において上部消化管出血が疑われる患者に麻酔、輸血、挿管をしてから内視鏡診断が施されます。その過程で平均27時間の待ち時間が生じ、関連費用は年間80億ドルにのぼる一方で、実に6割以上の患者が上部消化管出血ではないと判定されます。
EnteraSenseは2016年にハーバードメディカルスクール消化器病学教授のChris C Thompsonとシリアル医療機器ベンチャー起業家のDonal Deveryにより、ヨーロッパの医療機器開発の中心地であるアイルランド共和国ゴールウェーで創業されました。欧州最大の研究・イノベーション推進プログラム※5であるHorizon 2020の採択を経て、ピル型非侵襲的医療機器「PillSense」の開発を行っています。「PillSense」が実用化されることで、内視鏡検査を行うことなく15分以内に上部消化管出血の有無を正確に診断することが可能になります。「PillSense」の普及による上部消化管出血が疑われる救急外来患者や入院患者の診断治療プロセスの大幅な短縮と患者の予後改善及び医療費削減が期待されます。現在EnteraSenseは「PillSense」の米国での上市に向けた臨床試験を米国ミネソタ州のメイヨー・クリニック(Mayo Clinic、US News Health 全米消化器内科病院ランキングにおいて1位※6) で進めています。なお、「PillSense」の臨床試験結果を、2022年5月に米国で開催される世界最大規模の消化器学会「Digestive Disease Week」で発表することも承認されております。
今回の資金調達はEnteraSenseにとって総額約240万ユーロのシリーズAラウンドとなります。調達した資金は、同社の臨床試験実施、FDA承認、商業展開、技術開発、サプライチェーンの構築を加速するための成長資金に充当されます。UTECは、同社が米国に限らず先進国での大きな社会課題の解決に資する差別化された技術を保有すると同時に、医療機器事業の経験の豊富なチームを有すると判断し、投資を実行しました。なお、日本の独立系VCからアイルランドのベンチャーへの直接投資は今回が初めてとなります。
※1:Digestive Disease Week https://ddw.org
※2:参照 https://emedicine.medscape.com/article/187857-overview
※3:参照https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5738843/#:~:text=Upper%20Gastrointestinal%20Bleeding%20is%20defined,%25%20%5B2%2C%203%5D.
※4:参照 https://bmcgastroenterol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12876-019-1131-9
※5:Horizon 2020 https://ec.europa.eu/info/research-and-innovation/funding/funding-opportunities/funding-programmes-and-open-calls/horizon-2020_en
※6:参照 https://health.usnews.com/best-hospitals/rankings/gastroenterology-and-gi-surgery
Chris C Thompson教授は、内視鏡の分野で数多くの研究・臨床実績を残すハーバードメディカルスクール病院の現役臨床医です。Boston Scientific社、Olympus社など数々のグローバル医療機器会社のアドバイザーも務め、更には消化器系医療機器ベンチャーを3社創業しているシリアル起業家です。CEOのDonal Devery氏はゴールウェー発の医療機器ユニコーンであるAerogen社での製品開発責任者を務めた後、Steris社(米国オハイオ州、従業員数1万2千人、年商2800億円)へ診断医療機器ベンチャーのM&Aを成功させるなど、医療機器業界で30年近くの経験を持つ経営者です。他にもEnteraSenseには10年以上医療機器開発に携わってきたエンジニアチームや大手医療機器メーカーで米国、EMEA地域への製品展開を務めたシリアル医療機器ベンチャー起業家など、医療機器の技術開発・商業展開において経験豊富な人材が揃っています。
▼EnteraSenseからのコメント
Chris Thompson教授
「EnteraSenseの「PillSense」は、メイヨークリニックで卓越した成果を出しています。ハーバードディカルスクール系列の病院をはじめとする、米国の主要な消化器系病院での今後の商業展開に期待しています。「PillSense」は上部消化管出血の診断治療プロセスの大幅な改善・患者の予後改善を実現し、世界的には医療費の削減も可能にする医療機器だと信じています。我々EnteraSenseにとって、数々のグローバルな内視鏡関連医療機器会社が拠点を置く日本は注目の市場です。「PillSense」は少子高齢化により年々増加している日本の医療費の削減にも貢献できると考えています。」
Donal Devery氏
「当社の「PillSense」は、既に上部消化管出血を非侵襲的に15分以内に正確に診断することを実現しています。今回、UTECが出資を通して我々のチームの一員となったことを嬉しく思います。今後はUTECと共に日本に拠点を置くグローバル光学機器、電子医療機器会社との研究開発を進め「PillSense」の技術を更に発展させていきたいと思います。またUTECのアカデミア・産業界におけるネットワークを通じ、日本市場での「PillSense」の商業展開を目指します。」
▼EnteraSenseに関するお問合せ
日本市場への進出、研究開発パートナー希望、「PillSense」の詳細等については下記までお問い合わせください。
UTEC鈴木 john@ut-ec.co.jp
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