テロワールという責任──ドメーヌ・ルフレーヴとブリス・ド・ラ・モランディエール、世界遺産登録10周年に寄せて
GEN DE ART × ヴォーヌ・ロマネ・アートセンター(Vosne-Romanée Culture & Arts Center) 共同取材記事
ブリス・ド・ラ・モランディエール(Brice de La Morandière)|ドメーヌ・ルフレーヴ当主
📍ピュリニー・モンラッシェ|現地日付2025年7月4日

ユネスコ世界遺産登録10周年記念式典──ドメーヌ・ルフレーヴのセラーにて
2025年7月4日、ブルゴーニュの「クリマ(Climats du vignoble de Bourgogne)」がユネスコ世界遺産に登録されてから10周年を迎える記念式典が開催され、その舞台として選ばれたのが、ピュリニー・モンラッシェに位置するドメーヌ・ルフレーヴ(Domaine Leflaive)の最新セラーであった。
この木造セラーは、ただの醸造施設ではない。自然との共生を意識した省エネ設計と、ブルゴーニュらしい静謐さを湛えた空間は、伝統と未来の橋渡しとなる象徴的存在である。
« Cette cave est faite de bois, très peu énergivore, respectueuse de notre environnement… elle incarne parfaitement l’esprit du Domaine Leflaive. »
「このセラーは木材で建てられ、極めて省エネルギーで環境に配慮されています。まさにドメーヌ・ルフレーヴの精神を体現した空間です。」
この特別な空間には、ユネスコ関係者、地方政府、ワイン生産者、文化関係者らが一堂に会し、風土と継承、そして責任というテーマのもと、語り合いの場が開かれた。


「Climat(クリマ)」──ブルゴーニュが生んだ文化の言葉
« Le mot “climat”, si particulier en Bourgogne, est devenu un bien commun de l’humanité. »
「“クリマ”という言葉は、ブルゴーニュにおいて特別な意味を持ち、いまや人類共通の財産となっています。」
“Climat”は単なる気象用語ではない。ブリス・ド・ラ・モランディエールはそれを、土地・歴史・人間の営みが織りなす文化的記憶であると捉えている。そして、それを語り、受け継ぐことこそが、造り手の責任であると強調する。
登録はゴールではなく、新たなスタート
« Cette inscription n’est pas une fin en soi, elle est un engagement, un devoir de transmission, une responsabilité. »
「この登録は決して終着点ではありません。むしろそれは、一つの約束であり、継承の義務であり、私たちが担うべき責任なのです。」
ブリス氏の語り口は穏やかだが、その言葉には土地を守る者としての揺るぎない覚悟が込められている。「クリマを祝うことは簡単だが、それを守り続ける意志と行動こそが真の価値を生む」と語るその姿には、軽やかな知性と深い情熱が宿っていた。
家族の歴史とともにある使命
« Le Domaine Leflaive est dans notre famille depuis 1717… nous sommes la quatrième génération. »
「ドメーヌ・ルフレーヴは1717年から私たちの家族によって受け継がれ、現在は4代目となります。」
300年以上にわたり、ルフレーヴ家はモンラッシェの偉大な区画を守り続けてきた。その精神は、単にワインを造るという営みを超え、土地に仕えるという思想と哲学の積み重ねに他ならない。
« Ce bâtiment utilise extrêmement peu d’énergie… c’est tout à fait dans la philosophie du Domaine Leflaive. »
「この建物はエネルギー消費を極限まで抑えており、まさにドメーヌ・ルフレーヴの哲学に沿ったものです。」


語り手としてのヴィニュロン(vigneron)
« Nous sommes des vignerons des lieux… ce que nous souhaitons exprimer, c’est justement les différentes personnalités des climats. »
「私たちはこの土地の造り手であり、語り手でもあります。私たちが表現したいのは、それぞれのクリマが持つ固有の個性なのです。」
ワインとは、ただの飲み物ではない。それは土地の個性を翻訳した“表現”であり、文化のメッセージでもある。ブリス氏は、「私たちは造り手というより通訳者。土地の声を丁寧に聞き取り、ワインという形で伝える」と語る。
« Nous souhaitons les exprimer tels que nous les ressentons, tels que les analyses les voient. »
「私たちは、それぞれのクリマを、自らの感覚と分析を通して、そのままに表現したいのです。」
10年という節目、それは未来への一歩
« Dix ans, ce n’est qu’un début… que les Climats rayonnent à jamais ! »
「この10年は、ほんの始まりにすぎません。クリマたちが、これからも永遠に輝き続けますように!」
セラーの静けさのなか、ブリス・ド・ラ・モランディエールの言葉は、まるで熟成を重ねたワインのように、静かに、しかし深く人々の心に沁み渡った。

結びに──ワインを通じて伝える、風土への祈り
« Ce que nous faisons aujourd’hui, c’est honorer les Climats comme une responsabilité vivante. »
「私たちが今日行っているのは、クリマという“生きた責任”を、敬意とともに引き継いでいくことなのです。」
ドメーヌ・ルフレーヴのワイン造りは、味わいの追求にとどまらない。それは、風土の記憶を未来へと繋ぐ“文化の営み”であり、世代を超えて語り継ぐ使命そのものである。
その中心に立つのが、ブリス・ド・ラ・モランディエール──静かに未来を見据える造り手である。
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