宇宙空間における大容量宇宙光通信用光源モジュールの性能実証に成功
産学連携の超小型人工衛星に搭載、短期間で低コストに実証試験を実施
近年、災害現場の状況把握や森林資源の保護など、さまざまな用途で人工衛星による撮影画像の活用が進んでいます。用途によっては、より早く高精度に地上の状況を把握する必要がありますが、従来の電波を利用した衛星通信では通信容量や通信時間、通信距離などの制約がありました。このような課題を解決するため、大容量かつ高速な宇宙光通信が求められています。この宇宙光通信用光源モジュールから放射されるレーザー光線は、電波に比べて波長が短く、地上の受信アンテナを小型化できることから設置も容易になり、さまざまな状況での利用拡大が期待できます。
地上各地とつながる宇宙光通信のネットワークイメージ
開発した光源モジュール
当社は、電波による通信に比べて10倍以上の大容量化や高速化、長距離通信が可能な宇宙光通信の実現に向けた技術開発を推進しています(※1)。今回、この大容量宇宙光通信に適用可能な波長1.5μm帯レーザー光源モジュールを、産学連携プロジェクトで開発した超小型人工衛星「OPTIMAL-1」(※2)に搭載し、宇宙光通信で重要なレーザー光周波数制御の宇宙空間での性能実証に成功しました。また、大規模な宇宙開発プロジェクトへの参画と比べて、短期間で低コストの実証が可能になりました。
当社は今後も技術開発を推進し、より早期の宇宙光通信の実現と社会実装を通じて、安心・安全・快適な社会の実現に貢献します。
■開発の特長
1.世界初、大容量宇宙光通信に適用可能な波長1.5μm帯レーザー光源モジュールにより、宇宙空間でのレーザー光周波数制御の実証に成功
・人工衛星間でレーザー光線を用いた通信を行うには、人工衛星がそれぞれの速度で動くために生じるドップラー効果(レーザー光周波数の変化)を人工衛星の相対速度に応じて補正することが必要。今回開発した光源モジュールで、世界で初めて(※3)このドップラー補正に十分なレーザー光周波数変化量60GHzを宇宙空間にて実証
2.産学連携の超小型人工衛星を活用し、短期間で低コストに実証試験を実施
・産学連携プロジェクトで開発した超小型人工衛星を活用し、宇宙空間での性能実証試験を実施
・従来の大型人工衛星への搭載による実証に比べ、約3分の1の期間と約100分の1の開発費用で実現(※4)
■関係者コメント
株式会社 アークエッジ・スペース 代表取締役 福代孝良氏 コメント
「近年、超小型の衛星開発が盛んになっています。特に、数キログラム程度の超小型衛星は、打上げ・開発コストが低いため、衛星の多数打上げにより高頻度な地球観測が実現できるなど、新たな活用方法が期待されています。OPTIMAL-1に搭載された光源モジュールの実証成功により、超小型衛星の活用が一層進むことが期待されます。」
福井大学 准教授 青柳賢英氏 コメント
「宇宙空間は放射線・真空・温度など機器にとって周囲環境が厳しく、宇宙環境での動作実証は衛星開発における重要な要素となります。今回のOPTIMAL-1での実証の成功をきっかけに、さらに超小型衛星の産業利用が進展していくことを期待します。」
■今後の予定・将来展望
今回の実証で活用した技術を、大規模な宇宙開発プロジェクトへも提案していきます。また、超小型人工衛星を宇宙空間での重要な実証プラットフォームと位置付け、引き続き産学連携の枠組みを活用した研究開発を推進していきます。
■お問い合わせ先
<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
http://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html
※1 2022年5月31日広報発表「世界初、宇宙光通信機能と受信方向検出機能を統合した光受信器を開発」
※2 株式会社アークエッジ・スペースが主導し、株式会社Pale Blue、セーレン株式会社、国立大学法人福井大学、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、三菱電機が開発に参画。国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟から2023年1月6日に宇宙空間への放出が完了。横10cm×奥行10cm×高34cmの直方体
※3 2023年6月20日現在。当社調べ
※4 当社の従来の宇宙空間での実証試験との比較
このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります
メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。
すべての画像