【イベントレポート】2025年2月21日「第3回 話す力を育成する官民合同シンポジウム」を開催しました
2025年2月21日、「第3回 話す力を育成する官民合同シンポジウム」を、都内の会場で開催しました。本シンポジウムは、アルバ・エデュの活動報告に加え、行政、グローバル企業、スタートアップ企業といった多様な視点から見た「話す力」の必要性、進化したSPEAK STARによるイノベーションの可能性等について意見交換を行うことを目的に開催したものです。

1. アルバ・エデュの事業報告
まず、アルバ・エデュ代表理事の竹内より、アルバ・エデュの沿革と今年度の活動についてご報告申し上げました。

【一般社団法人アルバ・エデュ代表理事 竹内 明日香】
日本財団より3か年の助成を受けて、「話す力」の育成のために、保護者・世論、大学・教育行政・政財界、学校&自治体・教育委員会の3つのレイヤーへのアプローチを進めてきた。
具体的には、学校や自治体と連携し、9自治体で効果検証を行ったほか、東京書籍と連携した冊子の作成も進めてきた。また、アドバイザリーボードを開催して有識者から活動へのご意見を頂戴したり、政財界へのロビイング活動にも取り組んできた。さらに、各種書籍の出版やメディアへの露出を通じて、一般世論へのアプローチにも取り組んできた。
このような取組を進める中で、学校の教員のほとんどが「話す力」を重視したいと考えているが、1学級あたりの人数の多さなどを理由として指導が難しいと感じていることがわかった。そこで、アルバ・エデュのプログラムと生成AIを組み合わせることで、主体的・対話的で深い学びを実現するためのアプリ(SPEAK STAR)の開発を進めてきた。
2. SPEAK STAR(生成AIを利用した対話型アプリ)の紹介、活用事例、今後の展開について
続いて、株式会社フィラメントの西沢様、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの野田様、アルバ・エデュの竹内より、SPEAK STARの機能や活用事例、今後の展開について紹介いたしました。


【株式会社フィラメント 取締役/クリエイティブディレクター 西沢 学 様】
2023年末より、アルバ・エデュと連携してSPEAK STARの開発を進めており、現在プロトタイプで検証を行っているところ。かなりの手ごたえを感じており、2025年からの製品化に向けて準備を進めている。

【三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 野田 鈴子様】
SPEAK STARを実際に活用した中学校において、授業前後でアンケートを実施した。結果をみると、アプリ使用を通じて、子どもたちが「自分の意見を持つこと」にポジティブな意識を持つようになっていることがわかった。また、自分の意見や話す内容・テーマを決めたりするうえで、アプリが特に役に立ったとの結果がみられた。ウェビングマップや自由回答の結果からも、アプリの使用が「広げる」「深める」「選ぶ」それぞれの段階に寄与していることがうかがえた。
【アルバ・エデュ竹内】
今後の展開については、子どもの「イイタイコト」の発話を促す英語版アプリや教科書の各教科・単元に準拠した整理に加え、メタバース空間や海外展開の可能性を探りたい。
3. 若手起業家によるプレゼン
株式会社MEMORY LABの畑瀬様より、生成AIを活用した事業の内容や、生成AIの将来性についてプレゼンいただきました。

【株式会社MEMORY LAB 代表取締役CEO 畑瀬 研斗 様】
MEMORY LABでは、世の中にある科学技術の集合体で社会課題を解決するというミッションに向かい、生成AIを活用した事業を行っている。具体的には、既存の論文や知的財産、企業の取組などを分析し、企業や大学が着目しているテーマの今後の可能性を示してくれる「Memory AI」をというサービスを提供している。
社会課題の解決に活用できる可能性を持つ科学技術は日々アップデートされているが、大学や企業に隠れており、必要な情報を見つけ出すのが難しい。そこで、様々な領域を組み合わせて社会課題の解決に寄与するという「science of science」の考え方をもとに、生成AIを活用することで、誰もが専門的な情報にアクセスでき、理解できるような枠組みを目指している。
4. パネルディスカッション
続いて、お集まりいただいた官・民のみなさまにて、「『生成AI』を活かした『話す力』向上の可能性」をテーマに意見交換を実施しました。

エール株式会社 取締役 篠田 真貴子 様
コミュニケーションがキャッチボールに例えられることからも分かるように、「話す力」と「聴く力」はセットである。子どもが生き生きと話せるのは、友人や先生が聴いてくれるからであり、「聴く力」を育むことで「話す力」も向上すると考えている。話す準備をするときにも、聴き手に思いを致すことで、自信をもってメッセージを届けられるだろう。

文部科学省初等中等教育局 教育課程課長 武藤 久慶 様
次期学習指導要領では、日本人の弱点とされてきた分野に作用するような見直しを行いたい。これまで、読み書きや話す・聞くという力のうち、とりわけ話す・聞くという面が弱かったことは間違いない。日本人は英語が弱いと言われるが、そもそも母語で自分の考えを持ち、人に伝えることができていないのではないか。アルバ・エデュは「話す力」の前提として、好奇心を持つということからプログラムを作ってきている。話すことがクラスの中で当たり前になることで、心理的安全性も確保できるだろう。

関西学院大学総合政策学部 特別客員教授 小西 美穂 様
大学で講義をする中で、今の大学生には人前で褒められるのが苦手な人が多いと知った。以前は、人前で褒められることが成長の機会になると考えていたが、SNS時代の現在は、目立たないことを処世術としているようである。また、褒められたことを再現できる自信が無いため、人前ではなく個別に褒めてほしいという学生もいた。こうした学生の変化をふまえると、個別に評価してくれるツールであるという点で、生成AIは役立つだろう。

株式会社MEMORY LAB 代表取締役CEO 畑瀬 研斗 様
アメリカの大学では、発言をしなければ主体的に参加していることを示せない。自身は当初、英語がうまくなかったが、挙手して当てられてから、何を言うか考えていた。議論を中心とした授業であることや、発言しなければ出席扱いにならない評価基準など、大学の仕組みに日本との違いがあるのだろう。
続いて各パネリストから、話す経験を重ねることやフィードバックの重要さ、個別最適な学びと協働的な学びを両輪で進めるにあたっての生成AI活用の可能性などについて意見交換が行われました。フロアからは「フィードバックの重要性を踏まえ、1学級当たりの生徒数を縮小する見込はあるか」といった質問や、「生徒が話せないのは、クラスメートからの無言のプレッシャーを感じているからだろう。アプリの画面上に聴衆の映像を表示するのはどうか」といったコメントが寄せられました。
5. 閉会挨拶
最後に、公益財団法人日本財団の金子様よりご挨拶をいただきました。

【公益財団法人日本財団 公益事業部 子ども支援チーム チームリーダー 金子 知史様】
本日は、3年間助成してきたアルバ・エデュのプロジェクトの集大成が共有された。当財団が展開している「子ども第三の居場所」でもプログラムを実施しており、参加した子どもの成長が見られている。また、自己肯定感が低かった子どもにも変化が見られており、「話す力」は子どもの福祉にも大きな影響を及ぼす可能性があると考えている。今後もぜひ教育・福祉の両面で連携し、取組を進めていきたい。
アルバ・エデュでは、これまで公教育向けに教員研修やカリキュラムを届けてまいりました。「話す力」が全ての授業で当たり前となるためにも、子どもたちや先生方にとって使いやすいアプリSPEAK STARの普及を急ぎます。一人の子どもも取り残さず話せる日が来るまで、活動を広めていくために尽力してまいりたいと思います。
【実施概要】
日時:2025年2月21日(金)14:00~16:00
場所:ビジョンセンター東京虎ノ門
東京都港区虎ノ門2丁目4−7 T-LITE(トライト 5F 501A)
主催:一般社団法人アルバ・エデュ
登壇者:7名
現地出席・配信計279名
助成

協賛企業


【お問い合わせ先】
一般社団法人アルバ・エデュ 広報部
albapr@alba-partners.com
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