宮城県栗原市大型トラックの衝突事故(令和5年発生)

事業用自動車事故調査報告書を公表

事業用自動車の重大事故の事故原因の調査・分析を行い、提言により事故の再発防止を図ることを目的として設置された、国土交通省の外部委託組織である事業用自動車事故調査委員会(委員長:酒井 一博)は、令和5年(2023年)5月16日に宮城県栗原市で発生した大型トラックの衝突事故に関する調査報告書を議決しましたので、公表いたします。

本事故は「特別重要調査対象事故」に該当し、社会的影響の大きさだけでなく、事故原因が事業者の組織的・構造的な問題に起因する可能性などを勘案して、事業用自動車事故調査委員会による特別な調査、要因分析及び再発防止策の提言が必要であると判断されました。

【本事故について】

事故概要

大型トラックが東北自動車道の第1車両通行帯を走行中、故障のため同通行帯に停車していた大型貸切バスと同バスの後方で故障対応していた運転者及び乗客2名に衝突。

事故原因

  • トラック

    ・併走車両に注意が集中し過ぎて前方不注視。

    ・長時間労働による疲労が注意力の低下に影響。

    ・運転特性が右後方車両に注意が集中し過ぎた運転行動に影響。

  • バス

    ・緊急停車時の後続車に対する危険防止措置が不十分。

対策

  • 適切な労務管理の徹底

    ・改善基準告示を厳守し実状に見合った運行計画を作成する。(トラック)

    ・行政から受けた改善指示は、指示を受けた営業所にとどめず、全営業所で共有する。(トラック)

  • 運転者に対する指導監督の徹底

    ・前方不注視につながる運転を行わないよう指導教育の徹底。(トラック)

    ・常に前方や周囲の交通状況への気配りの徹底。(トラック)

    ・高速道路上において、車両の故障等により緊急停車した時の適切な対応に関する指導を徹底。(バス)

本調査報告書は事業用自動車事故調査委員会によって事業用自動車事故及び事故に伴い発生した被害の原因を調査・分析し、事故の防止と被害の軽減に寄与することを目的として作成しており、事故の責任を問うために行われたものではありません。

今後も事業用自動車事故調査委員会は、交通事故の少ない社会を実現するために活動を続けてまいります。


大型トラックの衝突事故

追い越しのタイミングで右後方車両に注意が集中 前方に停車していたバスの発見遅れる

宮城県栗原市 令和5年5月16日 20時11分頃

事故概要

大型トラックが東北自動車道の第1車両通行帯を走行中、故障のため同通行帯に停車していた大型貸切バスと同バスの後方で故障対応していた運転者及び乗客2名に衝突した。この事故により大型貸切バスの運転者及び乗客2名が死亡し、大型トラックの運転者が重傷を負った。

 事故の状況

大型トラックが夜間に東北自動車道の第1車両通行帯を走行中、車両故障のため非常点滅表示灯を点滅させ同通行帯に停車していた大型貸切バスと同バスの後方で故障対応していた運転者及び乗客2名に衝突した。この事故により大型貸切バスの運転者及び乗客2名が死亡し、大型トラックの運転者が重傷を負った。事故は、 大型トラックの運転者が夜間に東北自動車道下りを約 92 ㎞/h で走行中、非常点滅表示灯を点滅させ第1車両通行帯左端付近に停車している大型貸切バスに気付かず、衝突したことで起きたものと推定される。

 状況図

原因

①トラックの前方不注視に加えて、緊急停車後の後続車に対する危険防止措置が不十分であったことも原因

  • 前方車両を追い越すため、右後方を併走する乗用車に注意が集中し過ぎて前方不注視。

  • 長時間労働による疲労が注意力の低下に影響。(トラック)

  • 運転特性(「判断動作のタイミングがかなり遅い」、「注意の配分が十分でない」)が、右後方車両に注意が集中し過ぎの運転行動に影響。(トラック)

  • また緊急停車時の後続車に対する危険防止措置が不十分。(バス)

②事業者・運行管理者の指導監督不足

  • 疲労を蓄積させ、安全な運行の確保に悪影響を及ぼす長時間労働を看過。(トラック)

  • 運転者個々の運転特性に配慮したきめ細かな指導が不足。(トラック)

  • 高速道路上で緊急停車したときの適切な対応に関する指導監督不十分。(バス)

 【参考】緊急停止時の後続車に対する危険防止措置の重要性

緊急停止時の後続車に対する危険防止措置は、特に車両故障などの緊急事態発生時において極めて重要です。高速道路では車両の速度が非常に高いため、車両故障などによりやむを得ず停車することになった場合、後続車が追突するリスクが高まります。

このような状況においては、後続車に対して下記のような迅速かつ効果的な危険防止措置を講じることが、過去の調査報告書においても提言されています。

  • 非常点滅表示灯で合図しながら車両をできる限り路肩に寄せて停車する

  • 発炎筒を点火し停止表示器材を設置するとともに、乗客・乗員当等を車両より後方でガードレールの外側等安全な場所に避難させる

再発防止策

 適切な労務管理の徹底

  • 改善基準告示で定める拘束時間を厳守すること。運行計画は実態に合わせて適切に作成すること。(トラック)

  • 行政から受けた改善指示事項は指示を受けた営業所にとどめず、全営業所で共有すること。(トラック)

  • 荷待ちなどのため勤務時間が改善基準告示違反となる場合には、運行計画の変更などの対応をとること。

 運転者に対する指導監督の徹底

  • 高速道路上で前方不注視の危険性を十分理解させ、前方不注視につながる運転を行わないよう指導教育を徹底すること。(トラック)

  • 高速道路上で夜間の運行において生じる様々な危険について、危険予測訓練の手法を用いることにより理解を深めさせ、常に前方や周囲の交通状況の確認を徹底させること。(トラック)

  • 高速道路上で車両の故障等により緊急停車した時の適切な対応に関する指導を徹底すること。(バス)


事業用自動車事故調査委員会について

「事業用自動車事故調査委員会」は、平成26年 (2014年) 6月24日に設立された事業用自動車が関わる重大事故について、その原因を分析し、再発防止策を提言するための事故調査機関。

概要

  • 人間工学、労働科学、健康医学、自動車工学、交通工学、道路工学などの専門知識を有する者で構成

  • 毎年4回開催し、報告書について審議

【委員会の様子】
【調査事例】軽井沢スキーバス事故※ 国土交通省ウェブサイトから
【公表の状況】特別重要調査対象事故:19件重要調査対象事故:46件

経緯

  • 社会的影響の大きな事業用自動車の重大事故については、事故の背景にある組織的・構造的問題の更なる解明を図るなど、より高度かつ複合的な事故要因の調査分析と、客観性のあるより質の高い再発防止策の提言を得ることが求められている。

  • 国土交通省は平成26年(2014年)6月、(公財)交通事故総合分析センターを事務局として、各分野の専門家から構成される「事業用自動車事故調査委員会」を設置し、事業用自動車の重大事故について事故要因の調査分析を行っている。

事故調査の流れ

事業用自動車事故調査委員会委員名簿

  • 酒井 一博

    公益財団法人大原記念労働科学研究所主管研究員

  • 今井 猛嘉

    法政大学法科大学院 教授、弁護士

  • 小田切 優子

    東京医科大学医学部医学科公衆衛生学分野 講師

  • 春日 伸予

    芝浦工業大学 名誉教授

  • 久保田 尚

    埼玉大学大学院 理工学研究科 名誉教授、日本大学 客員教授

  • 首藤 由紀

    株式会社社会安全研究所代表取締役 所長

  • 吉田 裕

    関西大学社会安全学部 教授

  • 廣瀬 敏也

    芝浦工業大学工学部 教授

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会社概要

URL
-
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都千代田区神田猿楽町2-7-8 住友水道橋ビル8階
電話番号
-
代表者名
佐々木真郎
上場
未上場
資本金
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設立
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