【プレスリリース】「第 7 版 世界チョコレート成績表(2026)」発表

後退する日本のチョコレート企業、その中に見えた一筋の光

一般社団法人 熱帯林行動ネットワーク

 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)は、5 月 13 日、協力団体として参加した『第 7 版世界チョコレート成績表(2026)(チョコレート・スコアカード)』(以下、チョコ成績表)を発表した。オーストラリアの人権団体であるビー・スレイバー・フリーが率いるプロジェクトであるチョコ成績表は、世界の大学、市民団体、コンサルタント会社など 28団体が協力して実施し、今年で 7 回目となる。

 チョコ成績表では、世界のチョコレート業界の商社、加工業者、製造業者、小売業者など、チョコレートの関連企業 80 社を調査対象(回答 49 社、無回答 31 社)として、各社の調達方針と取り組みを評価している。今回、日本企業では、中・大規模企業が 7 社、小売業者が 2 社の合計 9 社が調査対象となった(うち小売業者 2 社が無回答)。


【日本企業の総合評価】

  • 日本企業の中では、総合評価において、組合レベルまでのトレーサビリティの情報開示を進めた明治ホールディングスが前回よりも大幅に順位を上げ、日本企業の中で 1 位となった。欧米企業とは依然として大きな格差があるが、二極化が進む日本企業の中でリーダーとなりうる。 

  • EUDR(欧州森林破壊防止規則)注1)は「規制による牽引力」として欧米企業の取り組みを向上させている。しかし、日本や東アジアには規制がないために取り組みが進まず、年々上がり続ける評価のハードルに日本企業はついていけず、得点を上げられなくなっている

  • 参加した日本企業 7 社のうち 6 社が、ここ何回かのチョコ成績表でトレーサビリティと透明性の評価を下げている

  • SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)注2)の認定を受けた日本企業が4社に増えた。これからは方針だけでなく、実務レベルでの具体的な取り組みが必要

  • カカオがどこから来ているかを「知る」だけでなく、それを第3者が検証できるような「情報の開示」ができるかが重要。さらには将来的に貧困問題の解決に向けた生計維持所得注 3)の支払いも求められる。


 チョコ成績表では、対象企業を①中・大規模企業、②小規模企業(カカオ取扱量 1,000トン以下)、③小売業者のカテゴリーに分け、それぞれ異なるアンケートを行った。8 つの分野(1.トレーサビリティと透明性、2.生計維持所得、3.児童・強制労働、4.森林破壊、5.アグロフォレストリーと気候、6.農薬、7.ジェンダー、8.農家の健康)(うち、農家の健康は非公開)で、企業を「緑」(方針と実行で業界をリードする)から「黒」(透明性に欠け、無回答) まで 5 段階に評価している。 

 消費者、小売業者、政策立案者は、誰が業界をリードし、誰が追随し、誰が評価されることを拒否しているのかを、チョコ成績表により一目で確認することができる。 

第 7 版 世界チョコレート成績表(英語)へのリンクはこちら

*チョコ成績表(日本語版)はチョコレート・スコアカードのサイトにて後日公開予定

                                        

第7版世界チョコレート成績表 日本企業の成績 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)作成

【世界の規準と日本企業の現状】

欧米の8社は明日にも欧州の監査に合格できる

調査に参加した49社のうち、すでにEUDR(欧州森林破壊防止規則)の基準をすでに満たしているのは欧米の8社のみ。その顔ぶれは、専門のクラフトメーカーからグローバルブランドに至るまで、あらゆる業態を含んでいる。

その8社が他社と異なってているのは、衛星監視テクノロジーの有無ではなく、「衛星が問題を検知した後に、何を行うか」にある。先進的な企業は、調達契約の中に「サプライヤーの排除」を明文化しており、農場のために森林を切り拓いた場合、サプライヤー企業の買い付けを停止する。

また、それらの先進的企業は、その「排除」と「再統合への道筋」をセットで運用している。失われた環境を復元すれば、農場は再びサプライチェーンに戻ることができる。さらに、無実の農家を罰しないよう、衛星データを現地で確認(グラウンド・トゥルーシング)している。

 

しかし、森林破壊は止まらない― ただ場所を移しているだけだ

欧米の8社のリーダー企業はいまだに「例外」的な存在である。世界のサプライチェーンに流通するカカオ豆の大部分は、いずれの監視システムにも組み込まれておらず、この「監視の空白」がもたらす影響は決して小さくない。監視の届かないサプライチェーンに紛れ込むカカオは、管理体制が弱く、広大な森林が手つかずのまま残る新興地域から供給されている可能性が高い。世界の2大生産国であるコートジボワールやガーナで規制が厳格化するにつれ、森林破壊の圧力はリベリアのアッパーギニア森林地帯やコンゴ盆地のような地域へとシフトしている。

EUDRがもたらす前向きな変化

リーダー企業が築き上げてきた取り組みの多くは、EUDRという「規制による牽引力」がその裏で機能してきた結果である。第7版チョコ成績表ではそのことがうかがわれる。

例えば、スイスの小売業者大手コープ(Coop)は、4回前の調査ではトレーサビリティにおいて「赤」だったが、年を追うごとに評価を上げ、現在は「緑(最高評価)」に達している。これは、規制と小売業者の積極的な取り組みが、設計通りに機能している証拠である。

一方で、こうした欧州の規制による強制力が及ばない地域では、日本のチョコレート企業7社のうち6社が、同じ期間にトレーサビリティと透明性のスコアを後退させている。

中堅メーカーが環境部門で後退 ― 採点基準が「実務」重視へ

第6版から第7版にかけて、複数の企業が「森林破壊」「アグロフォレストリーと気候」「農薬」のうち少なくとも2分野で、評価を一段階以上下げた。第7版では、外部団体によるプログラムへの単なる加盟ではなく、実務レベルでの深化が求められるようになったためである。高評価を得るための要件が、方針などの美辞麗句から現場の実務的な具体性へと移行した。

このように毎年上がり続ける評価のハードルについていけない日本企業は、得点を挙げられず、多くが下位に沈んでいる。     

第7版 世界チョコレート成績表 調査チームが作成 

日本企業の透明性の確保は急務

「企業が盛んに主張する『透明性』の向上は、実際には『自社がサプライチェーンをより把握できるようになった』という意味で捉えるべきでしょう。この言葉を曖昧なまま使い続けることは、企業にとって都合が良いのです。なぜなら、実際の開示内容が必ずしもその主張を裏付けていなくとも、世間に対してはいかにも透明性が確保されているかのような印象を与えられるからです」

—— ヴァランタン・ギュイエ(トレーサビリティと透明性部門 採点担当、第7版チョコ成績表)

 「社内では把握している」という段階を「社会に対する透明性」と混同、あるいは意図的にすり替えて説明している。企業が認証(レインフォレスト・アライアンスなど)を受けていることをもって「透明性が高い」と説明することがあるが、チョコ成績表の基準では、認証を受けていることと、自らサプライチェーンの詳細を開示することは別物である。「認証マークがある=透明」という曖昧な表現を使うことで、具体的な開示義務から逃れているのではないか。

 このことから、日本企業は、「知っている」だけでなく、第3者が検証できるような情報を開示することが何よりも必要とされている。

 

世界は貧困への対策に目を向け始めた

第7版では農家の所得に関する項目に大きな変化が見られた。1年前、多くの企業は自社のサプライチェーンにいる農家がいくら稼いでいるかを知らず、農家の55%の所得状況が「不明」としていた。第7版では、その数字は15%にまで激減した。チョコ成績表上位の企業でさえも低い「生計維持所得」の分野にも光明が差している。

しかし、日本企業を含む参加企業の10社中8社がいまだに、カカオ農家が生計維持所得を得ることを保証できていない。農家の所得を把握し、農家の貧困に対して生計維持所得を支払うことは、児童労働や森林破壊の要因となる貧困を取り除くことにつながる。

「『日本にはできない』ということではありません。日本企業の1社が、それが可能であることを証明しています。問題は『残りの企業が努力していないのではないか』、そして『法規制の枠組みが彼らを牽引する力になっていないのではないか』ということなのです」

—— キャロリン・キットー(Be Slavery Free 運営チーム、第7版チョコ成績表)

注1)EUDR(欧州森林破壊防止規則):

 気候変動や生物多様性に対処するため、欧州域内で流通、あるいは域外に輸出されるカカオなど特定の品目が、森林破壊や森林劣化を伴っていないことを企業自らが確認・証明しなければならない規則。2023年6月に施行されたが、2回の延期を経て、大・中規模企業は2026年12月30日から、小規模企業は2027年6月30日から適用される予定。

注2)SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ):

 気候変動対策を推進する国際的な共同イニシアチブ。パリ協定の「地球温暖化を1.5℃以内に抑えるため 」水準に合わせた、企業の温室効果ガス(GHG)排出削減目標を認定する。企業の排出量を実質ゼロに義務付ける「ネットゼロ基準」や農業・林業、土地利用に関連する業種(FLAGセクター)の企業に求められる「SBTi FLAG」などは、森林破壊ゼロの方針と実践を義務付ける内容で、森林破壊の問題への対処に大きく関わっている。

注3)生計維持所得:

作物生産のコストを除き、衣食住、教育、医療だけでなく貯蓄など「人間らしくまともな生活」を送るために必要な最低限の年間純所得。

【カカオと森林破壊の関係について】

西アフリカでの不作が伝えられる中でも、日本に輸入されるカカオ豆の約6割以上は(2024年)はガーナ産のもので、日本とガーナのつながりは依然として深いと言える。一方で、過去 30 年間でガーナ国内の森林は65%を失なった。 過去 4 年間(2019 年~ 2022)を見ても、森林の約 4.7% が失われている。カカオのカカオの生産地域はガーナ南西部の熱帯雨林が広がる地域と重なっていて、森林破壊と深い関係がある。また、マイティー・アースによると、RADDアラートでは、2024年1月以降、ガーナのカカオ生産地域で16,000ヘクタール以上の森林攪乱が検出されており、依然としてガーナの森林破壊が止まっていない。森林破壊は生物多様性に影響を与え、ゴリラ、チンパンジー、ピグミーチンパンジー等の大型類人猿の生息地の多くを破壊している。

【参考URL】

・世界チョコレート成績表(第7版・2026年)(英語)

・『チョコレートの舞台裏~カカオと森林のつながりをたどって』(JATAN作成)

チョコレートについての基本情報(JATAN作成)

・マイティー・アースによるカカオ・アカウンタビリティ・マップ(ガーナ)(日本語版)       

【お問い合わせ先】

o   榎本肇(熱帯林行動ネットワーク) cocoa[@]jatan.org   


世界チョコレート成績表(チョコレート・スコアカード)はビー・スレイバリー・フリーが主導するプログラムです

ビー・スレイバリー・フリー(Be Slavery Free)について

ビー・スレイバリー・フリー(BSF)は、市民団体、コミュニティー、およびその他の組織からなる連盟で、オーストラリア、オランダ、そして世界各地で現代版の奴隷労働の防止、廃止、撤廃に向け活動を行っています。現代版の奴隷労働の防止、撤廃、対策を現地で行ってきた経験があり、特に、サプライチェーンにおける奴隷労働問題に注力し、豪州での現代奴隷法の可決に寄与しました。2007年以降はチョコレート業界との取り組みを行い、カカオ生産における児童労働と奴隷労働の問題への対応を求めてきました。

熱帯林行動ネットワークは、世界チョコレート成績表の協力団体として公開しています

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)について

熱帯林をはじめとした世界の森林の保全のために、森林破壊を招いている日本の木材貿易と木材の浪費社会を改善するための政府、企業、市民の役割を提言し、世界各地の森林について、生物多様性や地域の住民の生活が守られるなど、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。

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会社概要

URL
https://jatan.org
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-13-11 チャリ千駄ヶ谷204
電話番号
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代表者名
原田 公
上場
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資本金
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設立
1987年01月