新型コロナによる世界三大感染症、エイズ、結核、マラリア対策への影響は甚大
―グローバルファンドが2021年の成果報告書を発表―
本日、世界エイズ・結核・マラリア対策基金 (グローバルファンド、事務局ジュネーブ) から2021年の成果報告書が発表されたことを受け、グローバルファンド日本委員会(公益財団法人 日本国際交流センター内、東京)は、補足として以下を発表いたします。
- グローバルファンド設立後初めて前年の実績を下回る結果。新型コロナウイルス感染症が、世界三大感染症であるエイズ、結核、マラリア対策の予防や治療に大きな影響を与えたことが明らかに。
- 一方、グローバルファンドの支援による、検査システムやサーベイランスなどが、低・中所得国の感染症対策の基盤として迅速に新型コロナと闘う上で大きく貢献。
- 今後、三大感染症対策への新型コロナの長期的かつ壊滅的な影響を防ぐとともに、新型コロナ自体を終息させるには、低・中所得国が4つの疾患に同時に取り組むための支援を拡大する必要性が示唆される。
本日、世界エイズ・結核・マラリア対策基金 (グローバルファンド、事務局ジュネーブ) から2021年の成果報告書が発表されました。本報告書により、2020年の1年間では、新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)が、エイズ、結核、マラリア対策の予防や治療に大きな影響を与えたことが明らかになりました。グローバルファンド設立以来、検査や治療の件数などの主要指標上の実績は、毎年順調に伸びてきましたが、2020年は、初めて前年の実績を下回りました(詳細は以下参照)。これは、2021年末までに三大感染症による死亡数が徐々に増えていく可能性があることを意味しています。
他方、これまでのグローバルファンドの支援による、検査システムやサーベイランス、コミュニティの保健人材などが、低・中所得国の感染症対策全般の基盤を作り、各国が迅速に新型コロナと闘う上で大きく貢献したことも明らかになりました。
長期的な実績を見ると、グローバルファンドの支援対象国では、エイズ、結核、マラリアによる死亡者数が、2004年の流行のピーク時からおよそ半分まで減少しました。これは、国際社会のコミットメントと低・中所得国の政府やコミュニティのリーダーシップがあれば、最も恐ろしい感染症でも退けられることを、コロナ危機下にある私たちに示しています。エイズ、結核、マラリア対策への新型コロナの長期的かつ壊滅的な影響を防ぐとともに、新型コロナ自体を終息させるには、低・中所得国が4つの疾患に同時に取り組むための支援を拡大し、イノベーションと適応策を拡大しなければなりません。
[成果報告書の主なポイント]
三大感染症の死亡者数は2004年のピーク時から46%減:近年、エイズ、結核、マラリアとの闘いが大きく進展し、2002年の設立から2020年末までの19年間に4400万人の命を救うことができた。特に、グローバルファンドが支援している世界の約100カ国では、エイズ、結核、マラリアによる死亡者数が、2004年の流行のピーク時から46%減少 (*¹)。
2020年、新型コロナの影響が顕著:しかし、2020年1年間を見ると、新型コロナの影響により、2020年のエイズ、結核、マラリアの検査・治療数などの主要指標の成果が、前年度比で大幅に減少した(詳細は下記参照)。前年度を下回るのは、グローバルファンド設立以来、初めての現象。
グローバルファンドの新型コロナ対策支援:グローバルファンドはこのパンデミックに対応し、かつ三大感染症への連鎖反応を防ぐため、2020年3月初頭に迅速かつ大規模な支援を開始。2021年8月までの間に、約100カ国に33億米ドル(約3624億円)の追加資金を承認している。迅速で確固たる対応がなければ、上記指標の成果はさらに悪い結果になっていたと考えられる。
これまでの投資が新型コロナ対策の基盤に:グローバルファンドが支援する低・中所得国は、エイズ、結核、マラリアとの闘いにおける数十年の経験が基盤となり、新型コロナに迅速に対応することができた。具体的には、三大感染対策のためにつくられた検査ラボ、疾病サーベイランス、コミュニティのネットワーク、研修を受けたヘルスワーカー、サプライチェーンなどは、コロナ対策で十分に活用することができた。
新型コロナによって促されたイノベーション:新型コロナによって、イノベーションが進んだこともある。例えば、複数の感染症の共同検査、複数月にまたがる薬の処方、予防や治療支援のためのデジタルツールなど、新型コロナによるロックダウンや社会的距離政策の中で、各国が工夫して導入した手法である。三大感染症の終息に向けた軌道に戻すために、これらは、今後も積極的に活用すべきである。
[2020年の成果]
2020年の1年間、グローバルファンドが資金を供与した国々で以下の成果が達成されました。
エイズ
- 2020年時点で、抗レトロウイルス治療を受けた数:2190万人(新型コロナにかかわらず前年比8.8%増)
- HIV予防サービスを受けた人数:870万人(新型コロナにより前年比11%減)
- HIV検査の件数:1億400万件(新型コロナにより前年比22%減)
- 結核の検査と治療を受けた人数:470万人(新型コロナにより前年比18%(約100万人)減)
- 薬剤耐性結核および超多剤耐性結核の検査と治療を受けた人数:10万5000人(新型コロナにより前年比でそれぞれ19%、37%減)
- 結核患者と接触があり、予防療法を受けた子供の数:19万4000人(新型コロナにかかわらず前年比13%増)
- マラリア検査数:2億5900万件(前年比4.3%減)
- 配布されたマラリア防除用の蚊帳の数:1億8800万張(新型コロナにかかわらず17%増)
- マラリア予防治療を受けた妊婦の数:1150万人(前年比1%増)
The Global Fund Results Report 2021(フルレポート/英語)
https://www.theglobalfund.org/media/11304/corporate_2021resultsreport_report_en.pdf
The Global Fund Results Report 2021 Executive Summary(要旨/英語)
https://www.theglobalfund.org/media/11309/corporate_2021resultsreport_summary_en.pdf
Global Fund Results Report Reveals COVID-19 Devastating Impact on HIV, TB and Malaria Programs (September 8, 2021)(グローバルファンドニュースリリース/英語)
https://www.theglobalfund.org/en/news/2021-09-08-global-fund-results-report-reveals-covid-19-devastating-impact-on-hiv-tb-and-malaria-programs/
■日本とグローバルファンド
日本は現在グローバルファンドの第5位のドナー国です。グローバルファンドを通じて途上国のエイズ・結核・マラリア対策と保健システムの構築を支援し、三大感染症の流行の終息に向けて、2002年からの累計で約39億4422万ドル(2021年4月時点)を拠出してきました。2002年に設立されたグローバルファンドは日本と深い関係にあります。日本が議長国を務めた2000年のG8九州・沖縄サミットで、感染症対策を国際的な主要課題として取り上げたことがグローバルファンド設立のきっかけとなりました。
■世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)
グローバルファンド(正式名称:世界エイズ・結核・マラリア対策基金)は、エイズ、結核、マラリアの三大感染症の流行を終息に導くための 21 世紀型パートナーシップ基金です。政府、市民社会、民間セクター、それぞれの疾患に影響を受けている人々によるパートナーシップとして、毎年約 40 億米ドルの資金を調達し、100か国以上でその国の専門家が運営するプログラムを支援しています。グローバルファンドは、流行終息を阻むものに果敢に挑戦し、革新的なアプローチを活用しながら、これらの感染症に影響を受けている人たちのために力を合わせて取り組んでいます。https://www.theglobalfund.org/en/
■グローバルファンド日本委員会(FGFJ)
グローバルファンド日本委員会は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)を支援する日本の民間イニシアティブ。グローバルファンドに対する理解を促進するとともに、感染症分野における日本の役割を喚起し、政策対話や共同研究、国際シンポジウム、視察プログラムなどを実施。(公財)日本国際交流センターのプログラムとして運営されています。http://fgfj.jcie.or.jp/
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