「がん相談ホットライン」新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言中の受付状況
―がん患者さん・ご家族から寄せられた主な相談内容―
公益財団法人日本対がん協会(東京都中央区、会長:垣添忠生・元国立がんセンター総長)は、がんに関する不安や心配がある方のために開設している無料電話相談「がん相談ホットライン」が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言(4月7日~5月25日)の期間中に受け付けた相談の状況をまとめましたのでお知らせします。
【がん相談ホットライン開設日数】
緊急事態宣言期間中の26日間に開設。
※通常は祝日・年末年始を除く毎日10時~18時の開設のところ、感染拡大防止と相談員の健康・安全確保のため開設日と時間を月・水・金・土、10時~13時、15時~18時に縮小して実施しました。
※緊急事態宣言解除に伴い、現在は毎日(祝日・年末年始を除く)の相談受け付けを再開しました。時間は引き続き短縮しています。
【相談件数】
緊急事態宣言期間中に寄せられた相談のうち、新型コロナに関わる内容を含んだ相談は全体の33.2%(217件)ありました。相談は国内初の感染者が確認された1月から徐々に増え、コメディアン志村けんさん死去の報道があった3月30日を機に、より強い危機感を感じている方からの相談が増えました。
実際、志村さん死去が報じられる前の1週間の相談で新型コロナ関係が占めた割合は12.3%でしたが、3月30日から緊急事態宣言発出の前日である4月6日までは27.5%に急増しました。緊急事態宣言中も33.2%を占めました。
日本対がん協会 https://www.jcancer.jp/
1958年(昭和33年)8月、がんの早期発見や早期治療、生活習慣の改善によって「がん撲滅」を目指す趣旨で設立されました。その前年の日本癌学会総会での提唱がきっかけとなり、朝日新聞社が創立80周年記念事業として支援し、設立の運びになったものです。その後、さまざまな団体、企業、個人の草の根の支援が活動を支えています。
がん相談ホットライン(03-3541-7830) がんをめぐる様々な悩み、不安の相談に看護師や社会福祉士が電話で応じます。無料。匿名も可。相談時間は1人20分まで。5月25日からはがん専門医と社会保険労務士が電話で応じる「がん患者のための新型コロナウイルス特別相談」(完全予約制、予約専用電話03-3541-7835、月~金の10:00~17:00)も実施しています。
新型コロナに関して寄せられた相談内容の詳細は下記をご参照ください。
【相談者の状況内訳】
がんの疑いがあり精査中の方、治療前の方、治療中の方、治療後間もない方、経過観察中の方、緩和ケアのみになっている方など様々な状況の方から相談がありました。治療中の方からの相談が最も多く41.9%、次いで経過観察中の方19.4%、治療前の方7.8%と続きます。
【共通して多く寄せられた相談】
相談者の状況が異なっても、「感染や重症化の不安・恐怖」については最も多くあった相談で25.8%でした。感染のリスクや感染した場合の重症化のリスクに関する不安が多く、そのほか、通院時に電車で感染しないか、受診時に病院で感染するのではないかといった不安などがありました。
【相談内容】
●治療中の方からの相談
共通した相談にあげた「感染や重症化の不安・恐怖」に関する相談がとりわけ多く、電話の声からも特にその不安が強い様子がうかがえました。
また、治療の継続を迷ったり、治療の中止を考えていたりと、がん治療の中断につながりかねない強い不安や恐怖を持っている方も少なくありませんでした。実際に、自己判断で治療を中断していて困っているご家族からの相談もありました。
例)
- がん治療中でリスクが高いので、感染したら死んでしまうのではないかと怖い。
- 抗がん剤を受けている方は注意が必要と報道されており敏感になっている。コロナでは死にたくない。
- ホルモン療法をしているが、抗がん剤のように免疫力は低下するのか。コロナの感染リスクが心配。
- コロナの患者を受け入れている病院で治療しているため感染しないか不安。
- 感染が怖いので受診をどうしようかと悩んでいる。
- 感染が怖いからスーパーにも行けない。
- 家族がコロナに感染したくないから免疫力を下げたくないと、薬を飲むのをやめていて困っている。
●経過観察中の方からの相談
「検査を予定通り受けた方がいいか」「行くのを止めてもいいか」「検査を受けないのも心配だが、病院に行くのも不安」といった、経過観察での受診をためらう相談のほか、復職の時期や就職活動の開始時期、通勤時の感染の不安など就労に関する相談も寄せられました。
例)
- 内視鏡とCTなどの検査があるが、コロナのことがあるため検査を受けることに不安がある。検査を受ける必要があるか。延期してもいいのだろうか。
- 経過観察中ではあるが、がん患者だからコロナの感染リスクが高いと考えた方がいいのか。それとも、健康な人と感染のリスクは変わらないと考えていいのか。
- 5年以上経過して経過観察も何もないが、コロナの感染のリスクは高いか。
- コロナもあり、今後いつ就職活動を開始すれば良いか悩んでいる。
- 職場復帰を考えていたが、コロナの問題があるので、通勤など考えるとどうするか迷っている。
- 家族からもう少しコロナが落ち着いてから働いてほしいと言われている。
●治療前の方からの相談
「手術を受けても大丈夫か」「治療を延期した方がいいか」といった治療を迷う相談や、「この状況下で治療するリスク」の相談があったほか、命を危険にさらすことになると危惧する声なども寄せられました。
例)
- 病院に通院する不安が大きい。抗がん剤治療を延期できるのか。たとえ治療を受けたとして、免疫が低下してコロナに感染するリスクを考えると、どうしていいか分からない。
- 今コロナ問題で入院が心配だが、数カ月治療を延ばすことを希望してもいいか。
- コロナの予防対策が物凄くて、こんな時期に手術をして本当に良いのか、不安になってきた。
- もし院内感染に巻き込まれたら、どうなってしまうのか。
- コロナのせいで患者会など全て中止なので、経験者に話を聞くこともできない。
- 治療した方がかえって命を落とすことにつながるのではないか。
●緊急事態宣言以降に寄せられた相談
家族と過ごす時間が増えたことによるストレスや、「気持ちが落ち着かない」「気分転換が難しい」など、ストレスや心のつらさを訴える相談が目立ちました。
また、緊急事態宣言が出される前から多くの患者さんは、それまで以上に感染予防に努め、外出を控えるなど自粛した生活をしていると話されました。緊張感や閉塞感などが長引く自粛生活で疲弊し、心の安定を図る難しさがうかがえました。
例)
- 治療以外では外出していない。そのせいか精神的に不安定になって、漠然とした不安感にさいなまれている。
- コロナ問題もあり気持ちが不安定で泣きたい気分。
- 家にいる時間が長くなったことで、がんのことを考える時間が増え気持ちがつらい。
- 手術が終わり、やっと気持ちが安定していたところにコロナの問題があり、気持ちはついていけない状況。
- コロナのせいで通院の電車が怖いし、外出を控えているので、上手く気分転換できない。
- 感染が心配で、なるべく家にいるようにしているが、気持ちが落ち着かず、何をどのようにしたら、気持ちが落ち着くか。
●コロナが患者・家族に与えた影響
治療や検査に影響が出たことや、面会が禁止になっていることなど切実な相談が寄せられました。
例)
- 通っている病院がコロナ病床を確保することになり、手術が延期になってしまった。
- 通院している病院でコロナの感染者が出た。このまま今の病院で大丈夫か。
- がんと診断されたのに、コロナが優先で診てもらえない。医療崩壊していて受診ができない状態になっている。政府に対して、コロナだけでなく、他の病気の人が治療を受けられない人がいることをもっと知って何とかしてほしい。
- 本当は○○病院に行きたかったのに、コロナのことがあり諦めた。
- 今の病院で治療を受けられると思っていたが、コロナの影響で症例の少ない他の病院を紹介されて不安。
- コロナのせいで面会ができず、状況が全くわからない。
- いつ亡くなってもおかしくないと言われているのに、面会禁止になっていて会うことができない。
●メディアの影響
1月以降、月を追うごとにコロナの報道は増え、国内感染者が増え始めると、連日、感染者数や死者数が報道されるようになり、常にコロナの不安や恐怖にさらされていた状態だったことが多くの相談者の様子からうかがえました。さらに、新型コロナによる著名人死去のニュースに接して動揺した患者さんからの相談もありました。
例)
- 毎日、朝から晩までコロナ一色。自分はリスクが高いから、いつこの数字の一人になるかと思うと不安で仕方がない。
- 放射線治療の影響で女優さんが亡くなったと報道された。自分にも同様のことが起こるのではないかと不安になった。
- コロナのことが心配だったところに、芸能人が亡くなり追い打ちをかけるように不安になった。
- 女優さんがコロナで亡くなったが、それに伴い乳がんに焦点が当たってしまい、自分も乳がんなので否が応でも自覚させられる。
- 考えないようにしてもテレビをつけるとコロナのことばかりで、考えたくなくても考えてしまう。
- 毎日コロナのことをニュースでやっていて怖い。
【本件に関するお問合せ先】
公益財団法人 日本対がん協会 広報担当:望月
電話:03-3541-4771 FAX:3541-4783
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