『絶滅危惧種シマアオジ』 ~フィンランドでの地域絶滅が発表される~

2019年3月8日に発表されたフィンランド版のレッドデータブックで、シマアオジが絶滅種(地域絶滅種)として公式に発表されました。シマアオジは2007年を最後に、フィンランドでの繁殖が確認されていないためです。

 2018年度の繁殖期に日本野鳥の会が北海道で行なった調査では、1地域25つがいの繁殖しか確認されませんでした。
 フィンランドでも、日本でも、シマアオジの繁殖環境の顕著な悪化は認められていないことから、渡りの中継地や越冬地における捕獲や湿地の減少が、シマアオジの生息数減少に影響していると懸念されています。
 日本野鳥の会では、2019年度も、繁殖地の東端であるロシアのサハリン、北海道のサロベツ湿原での調査や、各国との連携による保護の取り組みを進めていきます。

 

シマアオジ(学名:Emberiza aureola)  スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長約15㎝ 写真:kultasirkku-jari-peltomakiシマアオジ(学名:Emberiza aureola)  スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 全長約15㎝ 写真:kultasirkku-jari-peltomaki

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■最西繁殖地フィンランドでの地域絶滅
 シマアオジは、かつてユーラシア大陸の北部の草原で繁殖する最も個体数の多い種の一つでした。フィンランドは、その分布の最も西にあたる地域です(図1参照)。アジアから分布が拡大するなかで、1900年代のはじめにフィンランドまで分布が拡大しましたが、1980年代から減少傾向にありました。日本は シマアオジの分布の最も東に位置し、やはり1990年代から減少が指摘されています。

■中継地、越冬地での捕獲や、環境の改変が減少の要因か?
 繁殖地の大きな環境変化が認められないことから、シマアオジの減少は、繁殖地と越冬地を結ぶ渡りの中継地や越冬地になんらかの原因があると言われています。シマアオジは大きな群れを作って渡りをすることが知られており、その群れが中国で食料として違法に捕獲されていたという指摘があります。また、農耕地で越冬することから、農地の集約化や農薬の使用などの影響もあると言われています。

■日本では、繁殖数わずか25つがい
 日本でも1980年代当時、北海道の草原環境では最も個体数の多い種の一つでした。フィンランドと同じように1990年代から減少が指摘されはじめ、2007年の環境省版レッドリストではそれまでの「準絶滅危惧」から3段階アップして、「絶滅危惧Ⅰ類」と評価されました。2017(平成29)年には「種の保存法」で定める国内希少野生動植物種にも指定されています。現在では、北海道のサロベツ原野でしか繁殖は確認されていません。
 日本野鳥の会では、2018年からモニタリングのために地元の鳥類研究者とサロベツ原野での繁殖状況の調査をはじめました。その結果、2018年国内(つまりサロベツ原野)で繁殖したシマアオジはわずかに25つがいでした。この数はその2017年度に環境省が行なった調査よりも、さらに減少している数値でした。

■日本におけるシマアオジの保護活動--日本野鳥の会の取り組み
 シマアオジの保護のためには、継続したモニタリングと生息場所の保全が必要です。現状の日本の繁殖地・サロベツ原野は国立公園の中にあるため法的に守られていますが、個体数が回復に向かってきた際に、新たな繁殖地が発見された場合には、その場所を守っていくことが必要です。
 そのために、当会ではシマアオジのモニタリングと並行して、サロベツ原野周辺での新たな繁殖地の発見に努めていきます。
 また、渡り鳥であるシマアオジの保護には、国際連携が欠かせません。日本野鳥の会ではサハリンの研究者と協力して、繁殖状況や渡りのルートを探るためのカラーリングの装着、日本のシマアオジとの関係を調べるためのDNAサンプルの採取などを2018年から継続しています。サハリンの個体群が回復してくれば、北海道でもシマアオジの数が回復する可能性が高くなります。
 その他にも当会も加盟している国際NGOの「バードライフ・インターナショナル」と協力する形で、ロシア、モンゴルといった繁殖地での調査や越冬地である東南アジアでの越冬状況の調査などにも着手しつつ、中国の鳥類研究者とも関係を構築中です。

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■フィンランド環境省および環境研究所の紀要 2019年3月8日版 <抄訳>


フィンランドにおける野鳥の絶滅のおそれは増してきている。シマアオジの絶滅
 フィンランドで繁殖する野鳥の1/3は、絶滅のおそれにあります。絶滅のおそれの要因のうち、ほとんどの種に共通しているのは、森林、農地、原野や湿地などの生息環境の人による改変です。これらの環境に生息する野鳥には、保護対策が望まれます。
 フィンランドで繁殖する246種の野鳥のうち、86種について新たに評価したところ、18種が絶滅のおそれの高い状態(CR:絶滅危惧ⅠA)と評価されました。絶滅のおそれが最も高いと新たに評価された種の中には、ホシハジロやズアオホオジロが含まれています。これらの種では、3世代のうちに80%以上の個体数の減少が確認されています。2015年の評価時に比較して、EN(絶滅危惧ⅠB)種は33種と1種減りましたが、VU(絶滅危惧Ⅱ類)35種は同じでした。また35種は準絶滅危惧と評価され、絶滅のおそれのある種とそれに準ずるおそれのある種は増加しています。
 2007年を最後に、フィンランド国内で観察されていないシマアオジは、フィンランドでは絶滅状態と評価されました。この種の絶滅の一番の要因としては、中国の越冬地における食料としての捕獲が挙げられています。しかし、絶滅には湿地の減少も影響しています。

<レッドリストのランク>
●絶滅 (EX)  国内ではすでに絶滅したと考えられる種
●野生絶滅 (EW)  飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種
●絶滅危惧I類 (CR+EN)  絶滅の危機に瀕している種
●絶滅危惧IA類(CR)  ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
●絶滅危惧IB類(EN)  IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの
●絶滅危惧II類 (VU)  絶滅の危険が増大している種
●準絶滅危惧 (NT)  現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては絶滅危惧に移行する可能性のある種

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■「日本野鳥の会」について
 1934年(昭和9年)、野鳥研究者で僧侶・詩人・歌人でもあった中西悟堂が創設。創立時のメンバーには、柳田国男、山口蓬春、杉村楚人冠、山階芳麿、黒田長禮など、そうそうたる名が連なる。2019年に創立85周年を迎えた、日本で最古にして最大の自然保護団体で、現在、会員・サポーター約5万人。
 野鳥観察の楽しみや自然保護意識の普及活動を行うと同時に、タンチョウ、シマフクロウなどの絶滅危惧種の保護活動や、生息地の保全活動を展開。各都道府県に全88の支部・連携団体を持ち、各団体はそれぞれの地域での探鳥会や保護活動を担っている。

<組織概要>
組織名 :公益財団法人 日本野鳥の会
代表者 :理事長 遠藤孝一
所在地 :〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル / https://www.wbsj.org
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