『次世代医療「メガ水素療法」の提案』が学術誌Medical Gas Researchに掲載
MiZ株式会社(佐藤文武 代表取締役)と慶應義塾大学 環境情報学部(武藤佳恭 教授)とのコメント論文 Proposal of Next-Generation Medical Care "Mega-hydrogen Therapy" が2020年9月30日(欧州時間)にオランダを拠点とする医療ガスに関する学術誌「Medical Gas Research」のオンライン版に掲載されました(2020 ,Volume 10 , Issue 3 , Page 140-141)。
Medical Gas Research URL : http://www.medgasres.com/text.asp?2020/10/3/140/296045
Medical Gas Research URL : http://www.medgasres.com/text.asp?2020/10/3/140/296045
タイトル:次世代医療「メガ水素療法」の提案
著者:市川祐介1、佐藤文平1、平野伸一1、黒川亮介1、武藤佳恭2、佐藤文武1
所属:1. MiZ株式会社 研究開発部 2. 慶應義塾大学 環境情報学部
イントロダクション
ライナス・ポーリングは、ビタミンCのコラーゲン繊維を合成する機能によるがん増殖抑制の可能性に着目し、ビタミンCを大量に摂取し続けると、癌の予防および治療に貢献できるという「メガビタミン療法」の考えを発表した1。現在、ポーリングの提唱した「メガビタミン療法」は否定されているけれども、もしポーリングがビタミンCに変えて水素に着目して「メガ水素療法」を提唱していたならば、彼の医療革命は成就していたであろう(図1)。
ミトコンドリア内におけるヒドロキシルラジカル
細胞呼吸の際にミトコンドリアで発生する活性酸素(ROSs)は種々存在するが、そのうち、老化や治療が難しい疾患の原因となる細胞傷害を引き起こすROSsはヒドロキシルラジカルだけであるといっても過言ではない2。ヒトはヒドロキシルラジカル以外のROSsを消去する機構を備えているけれども、細胞内のあらゆる物質を攻撃し、老化や癌などの難病の原因物質となることが知られている酸化活性の最も強いヒドロキシルラジカルを特異的に消去する機構を備えていない。ミトコンドリア内は、呼吸の際に種々の活性酸素を生成する場であることから、ヒドロキシラジカルもまた発生しやすい場所である3。したがって、細胞質だけでなく、ミトコンドリア、細胞核など細胞内小器官の内側におけるヒドロキシルラジカルを如何にして消去するかが疾病の予防と改善のための課題となる。すなわち、重要なことは、ヒドロキシルラジカルが発生し得るミトコンドリア内部のマトリックスのあらゆる場所において、ヒドロキシルラジカルを消去する技術を確立することである。
ビタミンCはミトコンドリア内部に透過することはできないけれども、大量の水素ガスを吸入するとミトコンドリア内部で発生するヒドロキシルラジカルが消去され、ミトコンドリア機能障害を抑制し、疾病の予防と改善することができる。
抗酸化物とミトコンドリア
ポーリングはビタミンを過剰摂取することで病気の予防または改善に役立つというメガビタミン主義を提唱した4。ビタミンCの過剰摂取で期待できる効果はROSsが消去されることである。しかしながら、ミトコンドリア内部に抗酸化剤を送達するためには、抗酸化剤がトリフェニルフォスフォニウム(TPP)やミトコンドリアシグナルペプチドといった特殊な構造を有することが必要であるが、ビタミン類にはそのような構造はないため、細胞質に入ることはできたとしても、ミトコンドリアの内部にまで入ることができない5。また、ミトコンドリアの内膜をターゲットとしたTPPが結合した抗酸化剤も存在する。しかし、これらの抗酸化剤を用いた試験では疾病の改善効果は認められていない。したがって、ミトコンドリア内部のマトリックスで発生するヒドロキシルラジカルを消去することはできないため、ビタミン類によるミトコンドリアの酸化ストレス障害に対する有効性は悲観的である。
ポーリングと「メガビタミン療法」
キャメロンとポーリングは、1976年に様々な種類の末期癌患者100人に大容量ビタミンC(1日10g)を10日間静脈内注射しその後経口投与した患者と、ビタミンCの投与を受けていない1000人の患者を比較したところ、ビタミンCを投与した患者で非常に良好な全身状態であったことを報告した6。しかし、キャメロンとポーリングの検証は、コントロールの患者は同じ病院における過去の患者である遡及的比較であり、科学的客観性に欠けるものであることが後に明らかとなった。そこで、エドワード等は無作為二重盲検比較により、キャメロンとポーリングの報告を改めて検証したところ、ビタミンC投与群とプラセボ群では進行がんに対する知覚可能な抗腫瘍効果を実証することができなかったことを報告した7。癌以外の疾患については、腎障シスチン症に対するビタミンCの改善効果が見られなかった報告もある8。むしろ、細胞が強い酸化ストレスを受けたときに過剰摂取するとビタミンCがプロオキシダントとして働きヒドロキシルラジカルの発生を促進する報告さえもある9。このように、ビタミンCを用いた癌を含む多様な病態に対する治験において薬効を示すことに失敗している。これはビタミンCをはじめとする抗酸化剤をヒドロキシルラジカルの発生源であるミトコンドリア内部のマトリックスにまで到達させようという思想がなく、疾病の改善につながるような適切な抗酸化物質を開発することができなかったためであると考える。
分子状水素医学
水素は、このようなビタミンCをはじめとする抗酸化剤の弱点を克服する分子である。分子状水素医学は急速に開発が展開している研究分野で、水素の摂取によってパーキンソン病、癌など現代医学では治療が難しい疾患に対する改善効果があることが多数報告されている10, 11。水素の生体内での作用機序は炎症の原因となるヒドロキシルラジカルを消去する抗酸化作用により抗炎症作用を奏し、この抗炎症作用を通じて活性酸素の発生をも抑制することができる。水素は最小の2原子分子であるために細胞膜を容易に透過し、ミトコンドリアマトリックスにまで入り込み、ミトコンドリア内で発生するヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素原子引抜反応によって水分子に変換する1。また、水素分子の水素-水素結合は比較的強い共有結合であることから、水素はヒドロキシルラジカル以外の細胞を構成する物質と反応して細胞に傷害をもたらすことはない。水素とヒドロキシルラジカルとの反応生成物は水なので過剰摂取しても他の抗酸化物質や医薬品のような副作用が生じることはない12。
これまで、ヒト腸内細菌における最優勢菌でもあるブラウティア・コッコイデス (Blautia Coccoides) は高齢者では腸内における菌数は子供や大人よりも減少している報告がある13。ブラウティア・コッコイデスはヒドロゲナーゼを有する水素産生菌であるが、水素産生菌の産生する水素量と敗血症との関連について指摘した報告がある14。また、加齢に伴う腸内の水素産生菌の減少は、腸内で産生される水素量の減少に他ならないと言える。そして、加齢とともに水素産生菌が減少し水素の発生量も減少すれば、全身で常に発生しているヒドロキシルラジカルの量も増加して、老化が加速され、様々な治すことが難しい疾患にも罹りやすくなる15。老化についても、水素産生菌のブラウティア・コッコイデスの減少によって、腸内で産生される水素量が減少し、老化が促進されるのであるとすれば、水素と長寿には密接な関係があることが明らかになるだろう。
メガ水素療法
ここで、我々は「疾病の予防と改善のために大量の水素を積極的に摂取すべきである」という「メガ水素主義」をここに提唱する。ヒトは生まれてから死ぬまでに腸内で生成される水素によってミトコンドリア内で生成されるヒドロキシルラジカルを制御してきたと考えられる。しかし、腸内細菌で作られる水素だけでは老化や疾病の予防と改善は不十分なのである。不足している水素を積極的に体内に補給することによって、疾病や老化を予防することは可能であるし、すでに進行してしまった老化や疾病を元に戻すことさえ可能となるのである。最近では、水素ガスの吸入によって外傷性脳障害を顕著に改善することに成功した報告もなされている16。ヒトの細胞の数はおよそ37億個あるといわれており、それぞれの細胞にはヒドロキシラジカルの発生源であるミトコンドリアが300~400個存在する。そのすべてのミトコンドリアで発生するヒドロキシルラジカルを消去するためには、大量の水素を吸入して身体の隅々にまで水素を送り届ける必要がある。「メガ水素療法」は「メガビタミン療法」のみならず、現代医学によっても今なお治すことが困難な癌などの慢性炎症疾患の改善効果を実現するだろう。
参考文献
1) Ewan Cameron, Linus Pauling, and Brian Leibovitz (1979) Ascorbic Acid and Cancer: A Review CANCER RESEARCH 39, 663-681.
2) Shin-ichi Hirano, Yusuke Ichikawa, Ryosuke Kurokawa, Takefuji Yoshiyasu, Fumitake Satoh (2020) A “philosophical molecule,” hydrogen may overcome senescence and intractable diseases. Medical Gas Research, Vol.10, Issue 1, Page 47-49
3) Zhang, W. Hu, X. Shen, Q. & Xing, D. (2019) Mitochondria-specific drug release and reactive oxygen species burst induced by polyprodrug nanoreactors can enhance chemotherapy. Nat Commun. 10, 1704-1717.
4) Ewan Cameron, Linus Pauling. (1976) Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: prolongation of survival times in terminal human cancer. Proc Natl Acad Sci USA,73:3685-9.
5) Hazel H .Szeto (2006) Mitochondria-Targeted Peptide Antioxidants: Novel Neuroprotective Agents. The AAPS Jornal 8 (3) Article 62
6) Ewan Cameron, Linus Pauling. (1976) Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: prolongation of survival times in terminal human cancer. Proc Natl Acad Sci USA, 73:3685-9.
7) Edward T. Creagan, M.D., Charles G. Moertel, M.D. et al. (1979) Failure of High-dose Vitamin C (Ascorbic Acid) Therapy to benefit Patients with Advanced Cancer. N Engl J Med. Vol. 301, No. 13: 687-690. N Engl J Med. 1985, vol. 312, No. 3, 137 – 141
8) Jerry A. Schneider, M.D., James J. Schlesselman, Ph.D., et al. (1979) Ineffectiveness of Ascorbic Acid Therapy in Nephrophatic Cystinosis. N Engl J Med. vol. 300, No.14: 756-759
9) Yoko Inai, Wenixiang Bi, Noriyuki Shiraishi and Morimitsu Nishikimi. (2005) Enhanced Oxidative Stress by L-Ascorbic Acid within Cells Challenged by Hydrogen Peroxide. J Nur Sci Vitaminol, 51, 398-405
10) Malcom Dole, F. Ray Wilson, Williamm P. Fifi. (1975) Hyperbaric Hydrogen Therapy: A Possible Treatment for Cancer. Science, Vol.190, No. 4210, pp. 152- 154
11) Asako Yoritaka, et al. (2016) A randomized double-blined multi-center trial of hydrogen water for Parkinson’s disease: protocol and baseline characteristics. BMC Neurology 16:66
12) Alexis R Cole, Ali RAza, Humera Ahmed, Brain D Polizzotti, Robert F Padera, Nick Andrews, John N Kheir (2019) Safty of inhaled hydrogen gas in healthy mice. Medical Gas Research, volume 9, issue 3, page 133 -138,
13) Takashi Kurakawa, Kiyohito Ogata, et al. (2015) Diversity of Intestinal Clostridium coccoides Group in the Japanese Population, as Demonstrated by Reverse Trascription-Quantitative PCR. PLoS ONE, 10 (5). e0126226. doi: 10.1371/journal.pone.0126226.
14) Ikeda, Mitsunori; Shimizu, Kentaro; Ogura, Hiroshi; Kurakawa, Takashi; Umemoto, Eiji; Motooka, Daisuke; Nakamura, Shota; Ichimaru, Naotsugu; Takeda, Kiyoshi; Takahara, Shiro; Hirano, Shin-ichi; Shimazu, Takeshi (2018) Hydrogen-Rich Saline Regulates Intestinal Barrier Dysfunction, Dysbiosis, and Bacterial Translocation in a Murine Model of Sepsis. Shock, Volume 50, issue 6, p640-647
15) Anzu Suzuki, Mikako Ito, Tomonori Hamaguchi, Hiroshi Mori, Yuka Takeda, Ryuko Baba, Takeshi Watanabe, Ken Kurokawa, Susumu Asakawa, Masaaki HirayamaIDKinji OhnoD(2018) Quantification of hydrogen production by intestinal bacteria that are specifically dysregulated in Parkinson’s disease. PLoS ONE 13(12): e0208313.
16) Yasushi Satoh, Yoshiyuki Araki, et al. (2018) Molecular Hydrogen Prevents Social Deficits and Depression-Like Behaviors Induced by Low-Intensity Blast in Mice. Journal of Neuropathology & Experimental Neurology, Volume 77, Issue 9, September, Pages 827 – 836.
著者:市川祐介1、佐藤文平1、平野伸一1、黒川亮介1、武藤佳恭2、佐藤文武1
所属:1. MiZ株式会社 研究開発部 2. 慶應義塾大学 環境情報学部
イントロダクション
ライナス・ポーリングは、ビタミンCのコラーゲン繊維を合成する機能によるがん増殖抑制の可能性に着目し、ビタミンCを大量に摂取し続けると、癌の予防および治療に貢献できるという「メガビタミン療法」の考えを発表した1。現在、ポーリングの提唱した「メガビタミン療法」は否定されているけれども、もしポーリングがビタミンCに変えて水素に着目して「メガ水素療法」を提唱していたならば、彼の医療革命は成就していたであろう(図1)。
ミトコンドリア内におけるヒドロキシルラジカル
細胞呼吸の際にミトコンドリアで発生する活性酸素(ROSs)は種々存在するが、そのうち、老化や治療が難しい疾患の原因となる細胞傷害を引き起こすROSsはヒドロキシルラジカルだけであるといっても過言ではない2。ヒトはヒドロキシルラジカル以外のROSsを消去する機構を備えているけれども、細胞内のあらゆる物質を攻撃し、老化や癌などの難病の原因物質となることが知られている酸化活性の最も強いヒドロキシルラジカルを特異的に消去する機構を備えていない。ミトコンドリア内は、呼吸の際に種々の活性酸素を生成する場であることから、ヒドロキシラジカルもまた発生しやすい場所である3。したがって、細胞質だけでなく、ミトコンドリア、細胞核など細胞内小器官の内側におけるヒドロキシルラジカルを如何にして消去するかが疾病の予防と改善のための課題となる。すなわち、重要なことは、ヒドロキシルラジカルが発生し得るミトコンドリア内部のマトリックスのあらゆる場所において、ヒドロキシルラジカルを消去する技術を確立することである。
図1:大量の水素はミトコンドリア内部のヒドロキシルラジカルを消去し、難治疾患を改善する。
ビタミンCはミトコンドリア内部に透過することはできないけれども、大量の水素ガスを吸入するとミトコンドリア内部で発生するヒドロキシルラジカルが消去され、ミトコンドリア機能障害を抑制し、疾病の予防と改善することができる。
抗酸化物とミトコンドリア
ポーリングはビタミンを過剰摂取することで病気の予防または改善に役立つというメガビタミン主義を提唱した4。ビタミンCの過剰摂取で期待できる効果はROSsが消去されることである。しかしながら、ミトコンドリア内部に抗酸化剤を送達するためには、抗酸化剤がトリフェニルフォスフォニウム(TPP)やミトコンドリアシグナルペプチドといった特殊な構造を有することが必要であるが、ビタミン類にはそのような構造はないため、細胞質に入ることはできたとしても、ミトコンドリアの内部にまで入ることができない5。また、ミトコンドリアの内膜をターゲットとしたTPPが結合した抗酸化剤も存在する。しかし、これらの抗酸化剤を用いた試験では疾病の改善効果は認められていない。したがって、ミトコンドリア内部のマトリックスで発生するヒドロキシルラジカルを消去することはできないため、ビタミン類によるミトコンドリアの酸化ストレス障害に対する有効性は悲観的である。
ポーリングと「メガビタミン療法」
キャメロンとポーリングは、1976年に様々な種類の末期癌患者100人に大容量ビタミンC(1日10g)を10日間静脈内注射しその後経口投与した患者と、ビタミンCの投与を受けていない1000人の患者を比較したところ、ビタミンCを投与した患者で非常に良好な全身状態であったことを報告した6。しかし、キャメロンとポーリングの検証は、コントロールの患者は同じ病院における過去の患者である遡及的比較であり、科学的客観性に欠けるものであることが後に明らかとなった。そこで、エドワード等は無作為二重盲検比較により、キャメロンとポーリングの報告を改めて検証したところ、ビタミンC投与群とプラセボ群では進行がんに対する知覚可能な抗腫瘍効果を実証することができなかったことを報告した7。癌以外の疾患については、腎障シスチン症に対するビタミンCの改善効果が見られなかった報告もある8。むしろ、細胞が強い酸化ストレスを受けたときに過剰摂取するとビタミンCがプロオキシダントとして働きヒドロキシルラジカルの発生を促進する報告さえもある9。このように、ビタミンCを用いた癌を含む多様な病態に対する治験において薬効を示すことに失敗している。これはビタミンCをはじめとする抗酸化剤をヒドロキシルラジカルの発生源であるミトコンドリア内部のマトリックスにまで到達させようという思想がなく、疾病の改善につながるような適切な抗酸化物質を開発することができなかったためであると考える。
分子状水素医学
水素は、このようなビタミンCをはじめとする抗酸化剤の弱点を克服する分子である。分子状水素医学は急速に開発が展開している研究分野で、水素の摂取によってパーキンソン病、癌など現代医学では治療が難しい疾患に対する改善効果があることが多数報告されている10, 11。水素の生体内での作用機序は炎症の原因となるヒドロキシルラジカルを消去する抗酸化作用により抗炎症作用を奏し、この抗炎症作用を通じて活性酸素の発生をも抑制することができる。水素は最小の2原子分子であるために細胞膜を容易に透過し、ミトコンドリアマトリックスにまで入り込み、ミトコンドリア内で発生するヒドロキシルラジカルによる水素分子の水素原子引抜反応によって水分子に変換する1。また、水素分子の水素-水素結合は比較的強い共有結合であることから、水素はヒドロキシルラジカル以外の細胞を構成する物質と反応して細胞に傷害をもたらすことはない。水素とヒドロキシルラジカルとの反応生成物は水なので過剰摂取しても他の抗酸化物質や医薬品のような副作用が生じることはない12。
これまで、ヒト腸内細菌における最優勢菌でもあるブラウティア・コッコイデス (Blautia Coccoides) は高齢者では腸内における菌数は子供や大人よりも減少している報告がある13。ブラウティア・コッコイデスはヒドロゲナーゼを有する水素産生菌であるが、水素産生菌の産生する水素量と敗血症との関連について指摘した報告がある14。また、加齢に伴う腸内の水素産生菌の減少は、腸内で産生される水素量の減少に他ならないと言える。そして、加齢とともに水素産生菌が減少し水素の発生量も減少すれば、全身で常に発生しているヒドロキシルラジカルの量も増加して、老化が加速され、様々な治すことが難しい疾患にも罹りやすくなる15。老化についても、水素産生菌のブラウティア・コッコイデスの減少によって、腸内で産生される水素量が減少し、老化が促進されるのであるとすれば、水素と長寿には密接な関係があることが明らかになるだろう。
メガ水素療法
ここで、我々は「疾病の予防と改善のために大量の水素を積極的に摂取すべきである」という「メガ水素主義」をここに提唱する。ヒトは生まれてから死ぬまでに腸内で生成される水素によってミトコンドリア内で生成されるヒドロキシルラジカルを制御してきたと考えられる。しかし、腸内細菌で作られる水素だけでは老化や疾病の予防と改善は不十分なのである。不足している水素を積極的に体内に補給することによって、疾病や老化を予防することは可能であるし、すでに進行してしまった老化や疾病を元に戻すことさえ可能となるのである。最近では、水素ガスの吸入によって外傷性脳障害を顕著に改善することに成功した報告もなされている16。ヒトの細胞の数はおよそ37億個あるといわれており、それぞれの細胞にはヒドロキシラジカルの発生源であるミトコンドリアが300~400個存在する。そのすべてのミトコンドリアで発生するヒドロキシルラジカルを消去するためには、大量の水素を吸入して身体の隅々にまで水素を送り届ける必要がある。「メガ水素療法」は「メガビタミン療法」のみならず、現代医学によっても今なお治すことが困難な癌などの慢性炎症疾患の改善効果を実現するだろう。
参考文献
1) Ewan Cameron, Linus Pauling, and Brian Leibovitz (1979) Ascorbic Acid and Cancer: A Review CANCER RESEARCH 39, 663-681.
2) Shin-ichi Hirano, Yusuke Ichikawa, Ryosuke Kurokawa, Takefuji Yoshiyasu, Fumitake Satoh (2020) A “philosophical molecule,” hydrogen may overcome senescence and intractable diseases. Medical Gas Research, Vol.10, Issue 1, Page 47-49
3) Zhang, W. Hu, X. Shen, Q. & Xing, D. (2019) Mitochondria-specific drug release and reactive oxygen species burst induced by polyprodrug nanoreactors can enhance chemotherapy. Nat Commun. 10, 1704-1717.
4) Ewan Cameron, Linus Pauling. (1976) Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: prolongation of survival times in terminal human cancer. Proc Natl Acad Sci USA,73:3685-9.
5) Hazel H .Szeto (2006) Mitochondria-Targeted Peptide Antioxidants: Novel Neuroprotective Agents. The AAPS Jornal 8 (3) Article 62
6) Ewan Cameron, Linus Pauling. (1976) Supplemental ascorbate in the supportive treatment of cancer: prolongation of survival times in terminal human cancer. Proc Natl Acad Sci USA, 73:3685-9.
7) Edward T. Creagan, M.D., Charles G. Moertel, M.D. et al. (1979) Failure of High-dose Vitamin C (Ascorbic Acid) Therapy to benefit Patients with Advanced Cancer. N Engl J Med. Vol. 301, No. 13: 687-690. N Engl J Med. 1985, vol. 312, No. 3, 137 – 141
8) Jerry A. Schneider, M.D., James J. Schlesselman, Ph.D., et al. (1979) Ineffectiveness of Ascorbic Acid Therapy in Nephrophatic Cystinosis. N Engl J Med. vol. 300, No.14: 756-759
9) Yoko Inai, Wenixiang Bi, Noriyuki Shiraishi and Morimitsu Nishikimi. (2005) Enhanced Oxidative Stress by L-Ascorbic Acid within Cells Challenged by Hydrogen Peroxide. J Nur Sci Vitaminol, 51, 398-405
10) Malcom Dole, F. Ray Wilson, Williamm P. Fifi. (1975) Hyperbaric Hydrogen Therapy: A Possible Treatment for Cancer. Science, Vol.190, No. 4210, pp. 152- 154
11) Asako Yoritaka, et al. (2016) A randomized double-blined multi-center trial of hydrogen water for Parkinson’s disease: protocol and baseline characteristics. BMC Neurology 16:66
12) Alexis R Cole, Ali RAza, Humera Ahmed, Brain D Polizzotti, Robert F Padera, Nick Andrews, John N Kheir (2019) Safty of inhaled hydrogen gas in healthy mice. Medical Gas Research, volume 9, issue 3, page 133 -138,
13) Takashi Kurakawa, Kiyohito Ogata, et al. (2015) Diversity of Intestinal Clostridium coccoides Group in the Japanese Population, as Demonstrated by Reverse Trascription-Quantitative PCR. PLoS ONE, 10 (5). e0126226. doi: 10.1371/journal.pone.0126226.
14) Ikeda, Mitsunori; Shimizu, Kentaro; Ogura, Hiroshi; Kurakawa, Takashi; Umemoto, Eiji; Motooka, Daisuke; Nakamura, Shota; Ichimaru, Naotsugu; Takeda, Kiyoshi; Takahara, Shiro; Hirano, Shin-ichi; Shimazu, Takeshi (2018) Hydrogen-Rich Saline Regulates Intestinal Barrier Dysfunction, Dysbiosis, and Bacterial Translocation in a Murine Model of Sepsis. Shock, Volume 50, issue 6, p640-647
15) Anzu Suzuki, Mikako Ito, Tomonori Hamaguchi, Hiroshi Mori, Yuka Takeda, Ryuko Baba, Takeshi Watanabe, Ken Kurokawa, Susumu Asakawa, Masaaki HirayamaIDKinji OhnoD(2018) Quantification of hydrogen production by intestinal bacteria that are specifically dysregulated in Parkinson’s disease. PLoS ONE 13(12): e0208313.
16) Yasushi Satoh, Yoshiyuki Araki, et al. (2018) Molecular Hydrogen Prevents Social Deficits and Depression-Like Behaviors Induced by Low-Intensity Blast in Mice. Journal of Neuropathology & Experimental Neurology, Volume 77, Issue 9, September, Pages 827 – 836.
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