DG Daiwa Ventures、チームワーク重視で国内発のグローバルファンドを目指す── ポートフォリオのうち3社がユニコーンに

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DG Daiwa Venturesでは、今後チームワーク重視でスタートアップへの投資および支援を導き、国内発のグローバルファンドを目指すことを発表しました。


デジタルガレージと大和証券グループの合弁によって設立されたベンチャーキャピタル(以下、VC)、DG Daiwa Ventures(以下、DGDV)。この度新たにDGDVの投資部長に就任したマネージングディレクターの渡辺 大和は、今後DGDVがチームワーク重視でスタートアップへの投資および支援を導き、国内発のグローバルファンドを目指すことを発表しました。

DGDV渡辺 取材記事
  • 投資と技術それぞれのプロが連携。海外での知見を国内投資先の価値最大化に応用
──渡辺さんは前職でスタートアップのソーシングや成長戦略、CVCでの事業連携推進に携り、2020年からDGDVに参画したのですね。まずはDGDVの概要を教えてください。


渡辺 「DGDVは、国内外10社以上の機関投資家様・事業会社様からご出資いただいているVCです。2020年の秋に2号ファンドを組成完了し、1号・2号を合わせて運用総額は約200億円になります。
これまで、アーリーステージを中心に80社ほど(※2022年6月現在)の国内および海外のテクノロジースタートアップに投資し、昨年の2021年は、大きな進展があった年でした。セコイア・キャピタル (Sequoia Capital)やアクセル(Accel)、ゼネラルカタリスト(General Catalyst)、エスブイ・エンジェル(SV Angel)といった米国西海岸の名門VCとの共同投資実績を作ったほか、投資先である米Curv社が米フィンテック企業PayPal社に買収されるなど、EXIT機会にも恵まれました。

また、ポートフォリオのうち3社が、ユニコーン企業(※)に成長しております。我々のGPであるデジタルガレージ社は、黎明期からインターネットの発展を支えてきた会社です。投資面では2008年にTwitter社との資本業務提携を行うなど、グローバルでさまざまな先端テクノロジーを支えるプレイヤー達とのネットワークを築き上げてきました。
現在、デジタルガレージグループとしての事業領域は、スタートアップに対する投資・育成事業以外に、決済事業、デジタルマーケティング事業などを展開しており、決済とデータを融合したFintechシフトを推進しています。そのため、投資・事業の両面でのコラボレーションに価値を感じていただいている投資先も多くいらっしゃいます」

──DGDVが適切な投資対象を探す上では、 “DG Lab”が重要な機能を果たしていますよね。“DG Lab”についても、詳しく教えてください。

渡辺 「DGDVは、投資のエキスパートと技術の専門家によるハイブリッドなファンドです。先述のデジタルガレージ社内に、オープンイノベーションの研究開発組織である“DG Lab”があります。そこに在籍するメンバーと連携し、投資先の発掘や出資後の事業支援、LP出資企業様への情報提供などを行っています。

“DG Lab”は、ブロックチェーン・AI・xR・セキュリティ・バイオヘルスという5つの領域において一線級の研究者を有しております。たとえば、ブロックチェーン領域では、Bitcoinのコアコントリビューターであるエンジニアが複数名在籍しています。そうした方々のアドバイスを日々受けながら、今日活況となっているWeb3関連の技術に、DGDVは早い段階から投資をさせていただいておりました。

このように、”DG Lab”と協力しながら、投資先の技術面の精査・評価、スタートアップに対する投資・育成事業を共同で行い、その情報を参照しながら投資のエキスパート達が具体的な投資条件・ビジネス評価を詰めていくというようなプロセスで、各領域でのデュー・デリジェンスを進めております」

──投資先の内訳は、海外の方が多いのでしょうか? 

渡辺 「現在はおよそ6割が海外、残りの4割が国内ですが、海外投資が、国内の投資にも役立っています。先行する海外市場のビジネスモデルを精査することで知見を蓄積し、国内の投資先のバリューアップに貢献していくというコンセプトがここ最近は特にうまく機能しています。2021年の国内スタートアップへのリード投資件数は7件にのぼりました。

また、技術力を武器に、一気に海外市場に打って出られるポテンシャルがある日本企業にも積極的に投資しています。たとえば、投資先のひとつにフェアリーデバイセズ社という、工場などの騒音環境下でもクリアな音声認識ができる音声AIプラットフォームを開発している会社があります。海外でもその技術力が高く評価され、世界最大のテクノロジー見本市CESのイノベーションアワードで3部門同時受賞という快挙を遂げる、といった大変嬉しいニュースもありました」

※ユニコーン企業:評価額が10億ドル以上の未上場スタートアップ企業
 

  • 「スタートアップファースト」に対するDGDVなりの答え──チーム全員体制でサポート
──ファンドメンバーは、外資系金融機関・証券会社・PE・総合商社・大手銀行・業種トップの事業会社など、さまざまな分野で活躍し、高いスキルを培ってきた人ばかり、と聞いています。

渡辺 「一人ひとりが、それぞれの領域でトップレベルのバックグラウンドを持つプロで、与えられた仕事や役割を、オーナーシップを持って最後まで全うできる人たちです。投資先に対して、“できる支援はすべて、なんでもやる”というのが私たちのスタンス。投資時に担当したメンバーだけでなく、他のメンバーも含めた幅広い専門領域の知見を交えながら、多角的な視点から上場までの道のりを描くことができる支援体制となっていることを自負しています」

──そんなメンバーが遺憾なく力を発揮し、より良い支援につなげるために、どんなことを大切にしているのでしょうか?

渡辺 「支援先のフェーズに応じて、VCに求められる機能は変わっていくものです。起業家が日々ぶつかる課題をひとりの担当者だけが抱えるより、各分野のプロである全員のスキルや特技を結集したほうが、出資を受ける側である起業家にとってベネフィットがより大きいと考えております。

何が“スタートアップファースト”なのか、を突き詰めて考えたとき、“チームワークファンド”であることがその答えになると思っています。DGDVでは、個人プレーではなく、チームで働くというコンセプトを最重要視しています。“チームワークファンド”の特徴は、まずもって、ファンドのメンバー全員の心理的安全性が高いこと、そして互いを尊敬し、口に出して賞賛するコミュニケーションがあること。

あとは、チームで同じ島に座っているといつも賑やかなのですが、どんな時も笑いやユーモアを忘れない雰囲気もDGDVならではの文化だと常々思っています(笑)。上意下達な関係は極力取り払い、高い心理的安全性の中だからこそ失敗が積極的に共有され、全員で最善かつ最速の解決策を編み出すことができます。また、アジャイルにそれぞれの強みに応じた役割分担とチーム組成をしていくことで、結果的に最大のパフォーマンスが発揮でき、投資先の成長に貢献できると信じております。

投資検討においてもそれは同じで、ポジティブなフィードバックループが生まれるように仕組みの面で担保しています。一例を挙げると、DGDVの定例会議の中には、案件をどうしたら投資委員会に上げられるかを皆で知恵を絞り合う会議があります。我々にとって大切なスクリーニングプロセスなのですが、建設的な意見のみを挙手制で発言するルールを設けるなど、年長者が喋りすぎたり、否定のコミュニケーションが発生したりしてしまうことを、仕組みで未然に防止するようにしています」

──フラットな関係性ながらも、メンバー同士がお互いをリスペクトしているのですね。投資先のバリューの最大化を目指すにあたり、国内投資ではどんな軸を持って支援しているのでしょうか?

渡辺 「大きく分けると3つの軸があり、まず1つめは資金調達面での支援です。出資をしたらそれっきりではなく、次の資金調達の支援、検討可能性のある投資家様の紹介を精力的にやらせていただいています。また、DGDV自体も追加投資の枠を比較的多く確保し、初回投資だけではなく、2回、3回と追加投資するケースが少なくありません。アーリーステージでは数千万円だった投資額が、シリーズを追うごとに数億円にのぼるケースもあります。
また、海外投資を続ける中で得てきた、海外投資家のネットワークにアクセスして投資先を紹介するなど、海外も巻き込んだ大型ラウンドの組成サポートもしてきました。メンバーが全員バイリンガル以上であり、英語のPitch Deckのレビューなども積極的に行っております。

2つめが、業容拡大面での支援です。一般的なVCが行っている経営戦略の壁打ちだけでなく、デジタルガレージのFT(フィナンシャルテクノロジー)やMT(マーケティングテクノロジー)と連携し、プロダクトのセールス・マーケティングの拡大支援、事業開発、技術面での支援、海外投資先の日本展開支援や採用・育成面の支援など多岐にわたる支援提供を行います。CXOレベルの人材を紹介したり、投資先の人材採用の面接にキャピタリスト自身が参加したり、リクルーティングの具体的なプロセスまでに入れていただくこともあります。

3つめは、EXIT面での支援です。LP出資企業でもある大和証券グループの知見やネットワークも活用し、IPOはもちろん、M&Aのストーリー構築支援や、最近では投資先のSPACでのEXITにも関わるなど、まだ他の日本のVCがあまり関わっていないような領域も含めて幅広い業務範囲で支援を提供しています。また、メンバーに監査法人出身者もおり、監査前・監査期間中の助言や、IPOに向けた監査法人のご紹介等も積極的に行っております」

──海外の投資先への支援については、いかがですか?

渡辺 「国内への支援と比較すると、起業家側の要請に応じての対応にはなりますが、強固な関係構築に努めています。たとえば、日本市場への進出意向があったときなどのサポートはメンバー全員が高いレベルで遂行できますし、デジタルガレージグループと協力しての支援実績もあります。また、DGDVが仲介者となって国内の事業会社とのパートナーシップ締結や資本業務提携に向けたお手伝いをすることもあります。

海外投資で良いディールに滑り込んで、投資活動を続けてきた中で、最近は機関投資家やVCとのネットワークが強化されてきました。先ほど申し上げた西海岸の著名VCや、タイガーグローバル(Tiger Global)、インサイト・パートナーズ(Insight Partners)、ホフ・キャピタル(HOF Capital)、テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)といった有力なVCとも定期的にミーティングを開催するなど、さまざまなVC・企業とも密に情報交換するよう心がけています」
 
  • 「ファクトの提供」こそVCのバリュー。多様なメンバーと多くの起業家を後押し
──DGDVは、2021年でいうと国内で14件もの投資実行に至ったそうですね。その中でも特に印象に残っている案件はありますか?

渡辺 「あるノーコードのツールを作っている会社の事業戦略やエクイティストーリーを経営陣と一緒になって構築し、ラウンドの組成に取り組んだ案件です。
当初は開発受託会社としてスモールビジネスを展開していく道もあった中で、スケールするビジネスへと成長させるべく舵を切るご決断を社長がされるにあたって、さまざまなお手伝いさせていただきました。ご支援にあたっては、DGDVがリード投資家となって、ほかの投資家も呼び込み、結果的にラウンドの組成に成功。私自身も社外取締役として、経営に関与するようにもなりました」

──ハンズオン投資のアプローチを取る際には、起業家やそのほかの従業員との対立が起こりがちかと思います。そうしたことはなかったのですか?

渡辺 「特にそのようなことはなかったです。逆に大きなビジョンを描けたことで、従業員のモチベーションもアップして、業績も拡大しています。社内にも、『社長がIPOを目指すのなら、皆でついていこう』という機運が満ちていると感じます」

──投資先ともとても良い関係を築いているのですね。多くの企業を支援するなかで、渡辺さんはVCの役割をどのように捉えていますか?

渡辺 「VCにできる役割の中で、特に重要なのは『ファクトの提供』だと考えています。VCの中には、過去の投資経験を経て『こういう事例があって、こんな施策を打ったらこうなった』という具体的な事例がnoteやTwitterには決して書けないながらたくさん蓄積してきています。それを抽象化・一般化した上で、事前に投資先に対して伝えられることが、一見地味で華のない仕事ではありながら、VCの大きな価値であると考えています。

たとえば、IPOにおいて何が課題になりうるのか、必要な許認可を取っていく上でのハードルがどこに生じたか、キャッシュが減っていくタイミングでどう対応したらいいのかなど、幾度となく起こってきた事象の中で得た気づきや学びを次に活かして、より良い結果につなげることができると考えています」

──自分たちのバリューを発揮できた事例を、ほかにも教えてください。

渡辺 「あるディープテックの会社の海外進出をご支援したときのことです。世界的に見ても、競争優位性の高い技術を開発している会社でしたが、海外のステークホルダーとのやりとりには不慣れでした。私自身、その会社の技術は、国内以上に先行して海外に高いニーズがあると感じていたため、私たちDGDVのチームがプレゼン資料の作成・レビューなどをお手伝いして、Y Combinator LLC(YC)開催のスタートアップ育成プログラム(※)に応募されたんです。
結果として、YCの最終的な選抜企業には惜しくも残らなかったものの、現在はエストニアに法人を設立して、着々と海外顧客をサポートする体制を整えています。私たちとしても、海外での投資実績は数多くありましたが、国内からの海外進出をしっかりとご支援したのはこれが初めてで、自分たちがお手伝いできることの新たな側面を感じた案件でした」

──このときの勝因というか、うまく進められた要因はどんなところにあったのでしょうか?

渡辺 「DGDVは、2021年からYCのDemo Dayにノミネートされた企業に対して、スピード投資できるというようなスキームを形成しました。S21、W22と具体的な投資実績を10件以上重ねてきた結果、YCのインナーサークルでも良い案件に投資している、アクティブなファンドとして一定認知していただき、YCのエコシステム内のさまざまな情報に触れることができる機会が増えました。

その中で、社内のネットワークにYCの内部に近い方がいらして、プレゼン資料を見てもらってフィードバックを受け取り、それを起業家に伝えるなどのサポートを行いました。どんな会社が評価され、投資対象となるのかについての知見を我々自身も学ぶことができました。チーム内でその情報も共有することで、別の案件に知見が活かされています。これこそが“チームワークファンド”の価値だと思っています」

※:Y Combinator LLC(YC)は、Airbnb・Dropbox・DoorDash等への投資実績を有する、世界でも有数かつ老舗のスタートアップ・シードアクセラレータ。YCが年2回開催するスタートアップ育成プログラムでは、最後にピッチイベントであるDemo Dayが行われ、参加企業の中の有望先に対して世界各国の投資家が投資を行う。当該プログラムへの参加許可率は約2%の狭き門となっている。
 
  • チームとしてこれからどこまで大きくなれるか。国内発のグローバルファンドを目指して
──DGDVの最大の魅力は「チームワークファンド」だというお話がありましたが、どのように強みが発揮されているのでしょうか?

渡辺 「個人ではなく、チームという単位で取り組むことで、投資先の資金調達のフェーズごとに、各自がこれまでのキャリアで構築してきたネットワークや知見をフルに活かすことができます。私たちがリード投資家となって海外の機関投資家を呼び込んだケースや、各人のネットワークを総当りし、資金調達や事業推進を成功させた事例は、どれもチームメンバー一人だけでは達成されず、チームプレーによって成し遂げられたものです。

金融に強いメンバーは守りの面やファイナンスの面で力を発揮しますし、事業経験が豊富なメンバーは、新規領域で収益を立てていく難しさと突破の兆しをよく知っています。VCにはいろいろなタイプがありますが、メンバーそれぞれの強みを活かすことができれば、x人数以上の何十倍ものバリューを提供できると考えています」

──最後に、DGDVで成し遂げたいことや夢があれば教えてください。

渡辺 「DGDVには、困ったときにすぐに『困った』といえる環境があり、そうやって誰かが手を挙げたときには、我先に助けようと手を差し伸べる風土があります。また、これまでいろいろな分野の専門家を積極的に集めてきた甲斐あって、とてもエキサイティングなファンドになりつつあります。今後は、そんな愛すべき仲間たちと、この『チームワークファンド』をどこまで大きくできるかがチャレンジです。

海外の名門ファンドでは今、かつてのレジェンド達が一線から退き、若返りが図られている端境期にあります。それらと並び立つようなファンドを目指すにあたって、今のDGDVはメンバーのフレッシュさと経験値の面で良いバランスのメンバーが揃っており、とてもいいポジションにいると考えております。日本発のグローバルファンドとして、“和魂洋才”の精神で、日本国内にイノベーションを起こし、日本の国力や国富の向上に資するようなリソース・アセットを仕入れられるような存在を目指していきたいですね」


■DG Daiwa Venturesについて
社名:株式会社DG Daiwa Ventures
住所:東京都千代田区丸の内一丁目9番1号
設立:2016年7月1日
代表:代表取締役 大熊将人、荻野明彦
URL:https://dg-daiwa-v.com/

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経営・コンサルティング
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会社概要

株式会社DG Daiwa Ventures

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URL
https://dg-daiwa-v.com/
業種
金融・保険業
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿南三丁目5番7号 デジタルゲートビル
電話番号
-
代表者名
中島 淳一 
上場
未上場
資本金
-
設立
2016年07月