―水を加えるだけで水素を発生― ガスアトマイズ Ca–Mg 合金粉末が常温で高効率水素生成を達成

高知工科大学

【概要説明】

 水素エネルギーは、利用時に二酸化炭素を排出しないため、クリーンエネルギーとして期待が高まっています。しかし、水素は可燃性が高く、安全性の観点から、貯蔵・輸送・供給が難しいという課題が存在します。

 また、水素を発生させる方法として、水の電気分解やスティームリフォーミングといったものがありますが、前者は電気を必要とし、後者は高温環境を用意しなければならず、水素の生成に特別な環境を必要とします。

 高知工科大学のKajai Chayanonさん(当時:大学院修士課程2年、2025年9月修了)と藤田 武志教授(理工学群/総合研究所 カーボンニュートラル材料研究センター)は、安全かつ大量に製造することが可能な「ガスアトマイズ粉末」に着目し、ガスアトマイズ法(*1) で製造したCa–25 at.% Mg合金粉末(カルシウム:マグネシウム=3:1の割合で混ざり合っている)を常温の水で加水分解したところ、高効率で水素が発生することを明らかにしました。

 この方法は、常温環境でも利用可能で、携帯性にも優れるという点から携帯型水素供給装置や緊急用電源ユニットへの応用が見込まれます。

 また、この合金粉末の微細構造を評価したところ、微細なCaリッチ相と Mg₂Ca相が反応効率を高めていることを確認しました。

 この成果は、2026年1月1日、International Journal of Hydrogen Energyに掲載されました。

【研究内容と成果】

  • 1gの合金粉末に常温(25℃)の水100mLを加えると、ほぼ完全に加水分解が進行し、短時間で高い水素収率を得ることに成功しました。約10分間で得られた水素量が(水蒸気補正後)約737~760mL/gに相当する高い生成性能を示しました。

  • 水温を60℃まで上昇させると、反応速度および総生成量はさらに向上し、最大で約835mL/g(未補正値)を達成しました。

  • 微細構造解析(SEM/TEM/EDS)により、ガスアトマイズ粉末が直径約6~65µmの球状で、酸化が少なく、ナノスケールでCaリッチ相とMg₂Ca相が緻密に分散していることが確認されました(図2)。この微細構造が水の浸透経路を短縮し、連続的な加水分解反応を可能にしていると考えられます。

図1 Ca–25 at.% Mg(共晶)合金粉末のSEM像

図2 左:走査電子顕微鏡像 中央:カルシウム、右:マグネシウムのマッピング  ナノスケールでCaリッチ相とMg₂Ca相が緻密に分散していることがわかる。

【他材料との比較】

 単一元素のCaフレーク(カルシウム切片)は、反応速度が速いものの制御が難しく、MgH₂は表面に形成される緻密なMg(OH)₂皮膜により途中で反応が停止する傾向があります。一方、本研究で得られたガスアトマイズ粉末は、高出力・反応制御性・安全性・製造拡張性のバランスに優れていることが明らかになりました。

【実用化の可能性と今後の展望】

 本粉末は、携帯型水素供給装置、緊急用電源ユニットなどへの適用が期待されます。

 今後は、反応に水ではなく海水を用いた時の成分影響評価、合金粉末を長期保存しても同程度の効果が得られるのかといった安定性評価、スケールアップ時の安全対策・製造コスト評価を進める予定です。

【用語解説】

*1)ガスアトマイズ法

溶融金属を微細な球状粒子に変えるプロセス。高速のガス流を用いて溶融金属を液滴に分解し、それを粉末状に固めることで実現します。

*2)加水分解

物質が水と反応して化学結合が切断され、新たな化合物や生成物(本研究では水素)を生じる反応。

【研究資金】

 本研究は、東北大学金属材料研究所新素材共同研究開発センター共同研究(Proposal No. 202412-CRKEQ-0007)の一環として実施されました。

【論文情報】

タイトル:Hydrogen generation through hydrolysis of gas-atomized Ca–Mg eutectic alloys(ガスアトマイズ法で作製した Ca–Mg 共晶合金の加水分解による水素生成)

著者:Chayanon Kajai, Takeshi Fujita

掲載誌:International Journal of Hydrogen Energy

公開日:2026年1月1日

DOI:https://doi.org/10.1016/j.ijhydene.2025.153319

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会社概要

URL
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業種
教育・学習支援業
本社所在地
香美市土佐山田町宮ノ口185
電話番号
0887-53-1111
代表者名
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上場
未上場
資本金
-
設立
1997年04月