細胞培養用の不織布マイクロキャリアを開発

スピーディーかつ大量に細胞培養が可能となる足場材

帝人フロンティア株式会社（本社：大阪市北区、社長：平田 恭成）は、長年培ってきた繊維加工および、不織布設計技術を用いるとともに、国立大学法人福井大学 工学系部門 工学領域 繊維先端工学講座 藤田 聡 教授の繊維材料におけるバイオ・医療分野に関する知見を合わせ、スピーディーかつ、大量に高品質な細胞培養が可能となる不織布マイクロキャリア(*1)「ｅｃｅｌｌｂａ(イセルバ)」を開発しました。(*1)マイクロキャリア：表面に細胞を接着させ、3次元的に培養するために使用する材料
この「ｅｃｅｌｌｂａ」は、7月5日から7日に東京ビッグサイトで開催される「第5回 再生医療EXPO」に出展します。（ブースNo.：東4ホール 30-35）

１．背　景

（１）近年、幹細胞研究および再生医学の進展にともない、再生医療製品やバイオ医薬品の実用化が進み、細胞培養の技術は再生医療の産業拡大に大きな役割を担っています。一般的に細胞培養は培養ディッシュやフラスコを用いた平面培養が主に用いられています。しかし、この方法では細胞の接着面積が小さく、数gの組織を培養するにも数百枚のディッシュが必要となり、作業に要する設備、人員および工数も大きくなることが問題でした。

（２）一方、これらの問題を改善するために、効率的で多量の細胞培養が可能なバイオリアクター(*2)を使用した方法が用いられています。バイオリアクターで細胞を培養する場合は、細胞の接着・増殖・分化を制御するための足場が必要であり、その足場材には、小片状のマイクロキャリアが注目されています。従来のマイクロキャリアは、ビーズタイプが一般的ですが、細胞種・培養方式の多様化にともない、より大量、高品質な培養が可能となる新たなマイクロキャリア開発のニーズが高まっていました。(*2)バイオリアクター：酵素等の生体触媒を用いて生化学反応を行う装置

（３）こうした中、帝人フロンティアは、長年培ってきた繊維加工および、不織布設計技術に、福井大学 藤田教授の繊維材料におけるバイオ・医療分野に関する知見を合わせることで、より効率的な細胞培養が可能となる不織布マイクロキャリア「ｅｃｅｌｌｂａ」を開発しました。

「ecellba]

２．「ｅｃｅｌｌｂａ」の特長

（１）細胞培養の足場に適した構造設計

「ｅｃｅｌｌｂａ」は、帝人フロンティア独自の繊維・不織布設計により、細胞が接着しやすく、さらに成長するために必要な培地や酸素が循環しやすい構造となっており、効率的に培養可能な足場材料です。また、生体内で細胞が増殖する空間に物理的に似た構造のため、繊維に沿って細胞が伸長し、立体的で高品質な３D培養が可能となります。さらに、幅広い細胞種に適用でき、間葉系幹細胞(*3)の培養も可能です。(*3)間葉系幹細胞：自己複製能と分化能を持つ多様性細胞で、神経や筋肉、骨などに分化する能力が高いため、近年、再生医療への応用が期待されている

（２）スピーディーかつ、大量に高品質な細胞培養が可能

 「ｅｃｅｌｌｂａ」は、固定床や撹拌式のバイオリアクターを使用した培養方式に対応が可能です。特に、バイオリアクター内に攪拌翼が無く、せん断力が緩やかな振盪培養との組み合わせが効果的であり、培地交換無しで一週間以内に十分量の細胞を回収することが可能です。また、不織布は多孔質なため表面積が大きく、他の足場材料よりも大量に細胞を培養することが可能です。４日間の培養期間において、従来のビーズタイプのマイクロキャリアと比較した場合、30％細胞数を増加させる(*4)ことができます。(*4)帝人フロンティア調べ

「ecellba」を使用した振盪培養

「ecellba」での培養細胞の光学顕微鏡画像

３．今後の展開

本年7月から、研究機関・大学や医薬品メーカーおよび化粧品メーカーなどにサンプル出荷を開始します。その後2024年以降、国内外に幅広く展開し、拡販を図り、2026年度に100百万円の売上を目指します。