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国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
会社概要

COVID-19後遺症について12万症例を超す日本初の大規模データ解析を実施

電子カルテ情報を用いた日本国内におけるCOVID-19後遺症の年齢やワクチン接種率による発症傾向を解明

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所

  • 全国にまたがる徳州会メディカルデータベースの電子カルテ情報を活用し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症について、0~85歳を対象とし、12万症例という規模では国内初となる大規模調査が実現しました。

  • 頭痛、倦怠感、味覚・嗅覚障害といった後遺症は急性期からみられ、その約1割が長期化する一方、うつや廃用症候群といった症状は、特に高齢者層で約2割から5割と高率に長期化する傾向を認めました。

  • 頭痛、倦怠感、うつ傾向、廃用症候群、味覚障害、嗅覚障害等のCOVID-19の後遺症の発症率は、流行の中心となるウイルス株や国民のワクチン接種率等によって異なることを明らかにしました。

  • 特に、うつや廃用症候群の発症率は、60歳以上の高齢者で有意に高いことが分かりました。

  • 60歳以上の高齢者では、COVID-19発症後に要介護度が上がる傾向が見られ、ほぼ寝たきりに近い要介護度4及び5の患者が増加する傾向のあることが分かりました。

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長:中村 祐輔、以下「NIBIOHN(ニビオン)」という。)の感染メディカル情報プロジェクトの今井 由美子プロジェクトリーダーらの研究グループは、医療法人徳洲会(東京都千代田区、理事長:東上 震一)及び徳洲会インフォメーションシステム株式会社(大阪府大阪市、代表取締役社長:尾崎 勝彦)との共同研究により、徳洲会メディカルデータベースに格納されている全国の患者約12万人分の電子カルテ情報を用いて、長期にわたり、後遺症の発症率と年齢、ウイルス変異株、ワクチン接種率等との関連性を調査しました。

これまでも日本国内において数千人規模の後遺症に係る調査は行われていましたが、10万人を超える全国規模での幅広い年齢層にまたがるCOVID-19後遺症の調査研究は国内初のものです。本研究成果は、日本におけるCOVID-19後遺症の要因の解明につながり、後遺症予防や治療への活用が期待できます。


本研究成果は2023年7月18日に『Japan Medical Association (JMA) Journal』に発表されます。ウェブサイト:https://www.jmaj.jp/


 研究の背景と意義

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症患者の大半は、感染後数週間以内に回復しますが、後遺症が数か月以上見られるケースが数多く報告されています。後遺症は呼吸器症状に留まらず、身体のいろいろな臓器に表れることが知られており、後遺症への対策や発症患者のリハビリテーション等の必要性が高まっています。しかし、COVID-19患者に対し長期間のフォローアップを行った報告は世界的にも限られており、後遺症発症の実態解明には遠く及びません。さらに、こうした後遺症の発症傾向は人種や地域によって異なる可能性が示唆されており、海外における報告はいくつか存在するものの、日本国内の大規模な調査は行われておらず、国内の後遺症発症傾向の大規模な調査は重要な課題であると言えます。

本研究では、国内のCOVID-19後遺症発症傾向を調査する目的で、日本全国の幅広い年齢層におけるCOVID-19 患者122,045症例の臨床データを収集し、解析を実施しました。その成果は、後遺症発症リスクの解明や、発症予防へと繋がると期待できます。


 本研究の内容

(研究の概要)

本研究は、2020年1月から2022年6月までにCOVID-19と診断され、徳洲会グループ病院に入院しあるいは外来を受診した12万症例に及ぶ発症患者を対象に、徳洲会メディカルデータベースに格納されている電子カルテ情報を用いて、COVID-19の急性期並びに慢性期(いわゆるLong COVID)の後遺症を3か月以上の長期にわたって調査を行いました。対象は北海道から沖縄までの日本全国の広い地域、0歳から85歳までの幅広い年齢層をカバーします。また、調査時期を流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV2)株の種類によって、第1期(起源株あるいはアルファ株の流行期)、第2期(デルタ株の流行期)、及び第3期(オミクロン株の流行期)の3期間に分けて解析を行いました(図1)。これらの期間は、ワクチンの接種率に着目すると、第1期はワクチンの接種率が日本国民の2割未満の低接種率期、第2期は約7割が接種、第3期は約7割以上が2回接種を完了している高接種率期にあたります。これらの期間について、頭痛、倦怠感、うつ、廃用症候群、味覚障害、嗅覚障害といったCOVID-19後遺症の発症について、解析を行いました。

(解析の結果)

解析の結果、COVID-19発症から後遺症発症までの日数で比較すると、頭痛、倦怠感、味覚・嗅覚障害については、急性期(発症から2週間以内)の発症率に対して、慢性期(発症から2週間以降)においても急性期の10分の1の発症率を示しており、約10人に1人の割合で症状が慢性期にまで継続していることが分かりました。特に60歳以上の高齢者層では、うつや廃用症候群は高率に(10人に2-5人ほどの割合で)慢性期まで及ぶ傾向があり、そのため高齢者層は長期的な経過観察が重要であると考えられます。

また、起源株やアルファ株が流行した第1期に比べ、第2期のデルタ株、第3期のオミクロン株流行期ではCOVID-19後遺症の発症率が大幅に減少していることがわかりました(図2)。また、起源株やアルファ株流行期は人口の2割未満しかワクチンを接種していない時期であるのに対し、デルタ株・オミクロン株流行期は人口の7割以上がワクチン接種を完了している時期でもあることから、ウイルス株の種類に加えて国民のワクチン接種率もCOVID-19後遺症の発症率に影響している可能性が考えられました。患者の年齢ごとに比較しても、この傾向は同じでした。

さらに、発症前後の要介護度に着目した解析では、60歳以上の高齢者では発症後にほぼ寝たきりに近い要介護度4、5の患者が増加する傾向のあることが分かりました。この点からも高齢者のCOVID-19発症は高い後遺症リスクを有していると言えます。

(本研究により明らかになったこと)

本研究における解析から、起源株からアルファ株、デルタ株、オミクロン株と流行株が変化し、国民のワクチン接種率が上昇するにつれて後遺症の発症率が低くなる結果が得られました。このことから、後遺症の発症には、感染株の種類、ワクチン接種率等が影響する可能性があると考えられます。また、頭痛、倦怠感、味覚・嗅覚障害といった症状は急性期からみられ、さらにその約1割が長期化することが分かりました。一方、うつや廃用症候群といった症状は、特に高齢者層で約2割から5割と高率に長期化する傾向を認めました。うつや廃用症候群は、生活の質(QOL)の低下のリスクを有していることから、高齢者においては、ワクチン接種を含めた事前の予防や長期的な経過観察が重要であると考えられます。

本研究で得られた知見を踏まえ、今後は大規模臨床データを基にしたAIモデル構築等を行い、後遺症を含めたウイルス感染症発症後の経過予測を行うシステムの開発へと繋げていく予定です。




 図1  国内のワワクチン接種率の推移と対象期間(第1期、第2期、第3期)


図2 COVID-19発症時期・後遺症発症日別のCOVID-19後遺症発症率



 研究機関

【代表研究機関】

•国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)(データの解析・研究の総括)

【協力研究機関】(五十音順)

•医療法人徳洲会(診療情報等の提供)

•徳洲会インフォメーションシステム株式会社(メディカルデータベース作成)


 用語解説

  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV2):新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因となるウイルスの名称。起源株からアルファ株、デルタ株、オミクロン株等といった様々な変異株の出現・流行が確認されています。

  • 要介護度:厚生労働省によって定義された日常生活に支援・介護を必要とするレベルの区分で、軽度のものから要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の7段階に分かれています。

  • 廃用症候群:厚生労働省によって定義された「身体の不活動によって引き起こされる二次的な障害」の総称で、廃用によって起こる様々な症候、関節拘縮や心肺機能低下、消化機能低下、知的活動低下等をまとめたもの。

 論文情報

論文タイトル:Post coronavirus disease 2019 syndrome in Japan: An observational study using a medical database

著者:Yasuha Kinugasa, Mara Anais Llamas-Covarrubias, Katsuhiko Ozaki, Yoshiaki Fujimura, Takeki Ohashi, Kou Fukuda, Shinichi Higashiue, Yusuke Nakamura, and Yumiko Imai

掲載雑誌:JMA journal


 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)について

2015 年 4 月 1 日に医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所が統合し、設立されました。本研究所は、メディカルからヘルスサイエンスまでの幅広い研究を特⾧としており、治らない病気を治せるようにすること、健康長寿社会の実現を目的とし、社会実装を意識した研究を行っております。

ウェブサイト:https://www.nibiohn.go.jp/


 担当研究者の略歴

今井 由美子:1992年昭和大学大学院医学系研究科修了、博士(医学)。国立研究開発法人成育医療研究センター博士研究員、トロント大学医学部博士研究員、オーストリア分子生物学研究所アソシエイトサイエンティスト、秋田大学教授を経て、NIBIOHNヘルス・メディカル微生物研究センター 感染メディカル情報プロジェクトリーダー、大阪大学蛋白質研究所特任教授、現在に至る。


【告知 研究成果のプレスリリースに係る記者説明会のご案内】

2023年7月18日(火)プレスリリース記事「日本国内におけるCOVID-19後遺症の年齢やワクチン接種率による発症傾向を解明」に関する説明会を開催いたします。


◆日時:2023年7月25日(火)13:00~14:00

◆会場:オンラインのみで開催します。

◆プログラム

1.挨拶

 ①国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ヘルス・メディカル研究センター 感染メディカル情報プロジェクト 今井 由美子(いまい ゆみこ)

 ②徳州会インフォメーションシステム株式会社 代表取締役 尾﨑 勝彦(おざき かつひこ)

2.研究概要説明

3.質疑応答

◆参加方法

参加を希望する方は2023年7月24日(月)18:00までに pr※nibiohn.go.jp へメールで、氏名と所属組織名、連絡先(携帯電話番号)のご登録をお願いします。

ウェブミーティング用のURLを送付致します。

◆主催・問い合わせ先

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 戦略企画部(TEL:072-641-9832 e-mail:pr※nibiohn.go.jp)

※を@に置換してください。

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種類
その他
ビジネスカテゴリ
医薬・製薬

会社概要

URL
https://www.nibiohn.go.jp/
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号 大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号
電話番号
072-641-9832
代表者名
中村 祐輔
上場
未上場
資本金
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設立
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