ビル・ゲイツ、「人類は岐路に立っている」。数百万の子どもの命が危機に瀕する時代に。

ゲイツ財団

ゲイツ財団が毎年主催している「Goalkeepers」イベントがニューヨークにおいて開催され、政府関係者、地域コミュニティーのリーダー、フィランソロピー(慈善団体)、民間企業のリーダーら1000名以上が世界各国から集まりました。財団の議長であるビル・ゲイツは「2045年までに何百万もの子どもの命を救い、最も致死性の高い疫病のいくつかを過去の歴史のものとする」と厳しくも希望に満ちた呼びかけを行いました。

人類は岐路に立っています。何百万の子どもの命がかかっている今こそ、世界のリーダーたちにとって、一世代に一度のかけがえのない機会です。国際保健支援の大幅削減を進めるのか、それとも、世界中の子どもたちが健やかに生きる機会をつくっていくのか、リーダーたちが今下す決断が、次世代に残す未来を決定づけるのです。

ビル・ゲイツ ゲイツ財団 議長

開発援助を提供するドナー国は今年、国内の課題、高水準の債務、高齢化に直面し、国際保健開発援助(DAH)を大幅に削減しました。保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation - IHME)の最近の研究によると、2024年から2025年にかけて世界のDAHは21%減少し、過去15年間で最低水準となりました。主要な世界保健資金に関しては年末までに決定される見込みであり、その結果、総資金額は増加する可能性はあります。しかし、このまま削減が続けば、2000年以降、年間の子どもの死亡数を1000万人から500万人未満へと半減させてきた、数十年にわたる人類の大きな成果を脅かすことになります。

今年の年次イベントでは、子どもの命を救うという共通の決意を再認識することに焦点が当てられ、ゲイツは、財団として今後3年間で世界エイズ・結核・マラリア基金(グローバルファンド)に9億1200万ドルを拠出することを発表しました。グローバルファンドは21世紀で最も効果的に命を救う取り組みの一つです。2029年までの事業計画のための増資サイクルは11月に終了するため、今後数週間から数か月の間に各国政府が数百万人の命に関わる決定を下す緊急性を浮き彫りにしています。

世界の子どもたちの健康をめぐる状況は、多くの人が思っている以上に深刻です。しかしながら、長期的な見通しには多くの人が想像する以上の希望があります。各国政府が直ちに対外援助を過去の水準まで回復させることは期待していません。それでも私は楽観主義です。各国政府には可能な限り多くの子どもを救うために必要な行動を取る力と意思があると信じています。

とゲイツは述べました。Goalkeepersイベントでは、世界的な国際保健予算の縮小を背景に、限られた資源でより多くの成果を上げるための解決策を加速させる人々、科学とイノベーション、政策に焦点が当てられました。

より健康な未来へのロードマップ

私たちには、数百万の子どもの命を救い、最も致死性の高い小児疾患のいくつかを2045年までに過去のものとするためのロードマップがあります。

私は世界のリーダーたちに対し、すべての人々、特に子どもたちの健康に投資し、この未来を実現するよう求めます。

とゲイツは強調しました。

ゲイツ財団と保健指標評価研究所の分析によると、子どもの健康への世界的な投資を持続させ、命を救う革新的技術を拡大すれば、今後20年間で子どもの死亡数をさらに半減させることができると示されています。

このロードマップには以下が含まれています:

  • 実績のある取り組みへの投資を更新すること。例えば、グローバルファンドやGaviワクチンアライアンスを通じ、各国がより賢明で費用対効果の高い判断をし、実績のあるワクチンや医薬品、治療法へのアクセスを確保し、持続可能性と自立への移行に焦点を当てる。

  • 厳しい予算状況下でも、プライマリヘルスケアを優先し、小児疾患の早期予防・発見・治療を実現する。

  • さらなる研究開発への投資と、画期的なイノベーションを効果的に普及させる。これには以下が含まれます:

    • 新たなマラリア対策。蚊が寄生虫を媒介できないようにする技術や、疾患根絶を加速させる単回投与治療法を含む。

    • 毎日服用する錠剤に代わる長時間作用型HIV治療薬と予防法。これによりエイズによる死亡者数を一桁台に削減させることを目指す。

    • 呼吸器合胞体ウイルス(RSV)やB群溶血性連鎖球菌(GBS)に対する新たな妊婦用ワクチン。新生児を致死的な呼吸器疾患から守る可能性がある。

    • 人工知能を活用し、安全で費用対効果の高い医薬品をより効率的かつ迅速に、安価に供給し、人々の生活を改善する。

グローバルファンドへの新たな3年間のコミットメント

2002年以来、グローバルファンドは7000万人以上の命を救い、エイズ、結核、マラリアによる死亡を60%以上削減し、世界の保健安全保障を強化してきました。グローバルファンドへの1ドルの投資は、保健と経済の両面で推定19ドルのリターンをもたらします。

今回の新たな拠出により、ゲイツ財団の2002年以降のグローバルファンドへの累計拠出額は49億ドルに達し、財団の最大規模の投資のひとつとなります。この公約は、南アフリカとイギリスが共同主催するグローバルファンド第8次増資会合に向けて、各国政府、フィランソロピー、民間セクターが重要な投資を行うことを促すものです。数百万人の命がかかっている中、今後3年間のグローバルファンドへの投資規模が、世界が数百万の命を救い、HIV・結核・マラリアを抑え、そして経済と世界の保健安全保障を強化できるかを左右します。

今この瞬間にもすべての世代が命を繋いでいられるのは、世界の寛大さ、賢明な投資、そして各国政府とグローバルファンドのパートナーたちの努力のおかげです。今こそ、私たちはさらに前進しなければなりません。次の世代が、予防可能な原因で命を落とす子どもが一人もいない世界で育つことができるのです。

Goalkeeper Awardと Goalkeepers Champions

ゲイツ財団は、持続可能な開発目標(SDGs)の推進に尽力した功績を称え、スペイン政府首相ペドロ・サンチェス氏を2025年の「Global Goalkeeper Award」の受賞者として発表しました。サンチェス首相のリーダーシップのもと、スペインは今年、グローバルファンドへの拠出を約12%近く、Gaviワクチンアライアンスへの拠出を30%増加させ、政府開発援助(ODA)を拡大しました。また、2025年6月には開発資金国際会議を主催しました。

さらにこのイベントでは、世界の子どもの生存率向上を推進している「Goalkeepers Champions」も表彰されました。彼らは専門家、イノベーター、そして活動家であり、次の方々が含まれます:

  • アベイ・バン博士 & ラニ・バン博士(インド) – インドにおける地域密着型医療の先駆者

  • デビッド・ベッカム氏(イギリス) – 子どもの健康と教育の擁護

  • クリスタル・ムウェシガ・ビルンギ氏(ウガンダ) – アフリカ全土で若者中心の政策と公平な医療アクセスを推進

  • トニ・ガーン氏(ドイツ) – 女子教育と医療を拡大するための資金調達

  • ジョン・グリーン氏(米国) – ストーリーテリングと提唱活動を通じた若年層の結核・メンタルヘルスに関する対話の促進

  • オサス・イゴダロ氏(ナイジェリア) – マラリア対策における認知向上と行動の喚起

  • ドナルド・カベルカ博士(ルワンダ) – 効果的な保健システム強化と世界的な医療アクセス拡大のためのグローバルヘルスファイナンスを推進

  • ジェロップ・リモ氏(ケニア) – アフリカ全域における子どもと家族のためのHIV啓発とケアを推進

  • リーム・アル・ハシミ氏(アラブ首長国連邦) – 「ドバイ・ケアズ」などのイニシアチブを通じた保健・教育投資を推進

  • ナビーン・タッカー博士(インド) – 地域に根ざしたイノベーションを通じて子どもの健康を推進

「Almost(もう少しで達成)」では終われない

Goalkeepersイベントは、シンガーソングライターで作曲家のジョン・バティステ氏と女優で映画監督のオリヴィア・ワイルド氏が共同司会を務めました。バティステ氏は2年連続で音楽監督を務め、今年はニューヨークの公立小学校の合唱団(PS22 elementary school choir)と共演しました。彼らは聴衆に向けて、世界が進展を遂げてきたものの「私たちは“Almost(もう少しで達成)”で止まるわけにはいかない」というイベントのテーマを訴えました。

バングラデシュ、インドネシア、ケニア、マダガスカル、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、ウガンダ、米国から集まった地域のチャンピオン、科学者、医療従事者、宗教の指導者、活動家たちが、困難を乗り越えてきた力強いストーリーやイノベーションの事例を共有しました。なかには、すでに命を救い、致死性疾患の根絶に向けて世界を前進させている革新的技術も紹介されました。

ゲイツ財団のGoalkeepersキャンペーン副ディレクターであるダウダ・ジョバルテは次のように述べました。

Goalkeepersは毎年、チャンジメーカーを結集し、互いに鼓舞し合い、前進を促しています。ともに力を合わせれば、予防可能な子どもの死のない未来を再構想し、世界の子どもたちのための次の新たなブレークスルーを生み出していけるのです。

ダウダ・ジョバルテ 

イベントのセッションには、牧師で作家のリック・ウォレン氏、世界宗教者平和会議の共同議長エル・ハジ・マンスール・シー氏、バレエダンサーで活動家のイングリッド・シルバ氏、ジャーナリストで作家のクリスタ・ティペット氏、ラジオ番組「Radiolab」共同ホストのラティフ・ナセル氏、インドネシア保健大臣のブディ・グナディ・サディキン氏などが登壇しました。

今後の展望

今年の後半、Goalkeepersは初めて中東に進出し、12月8日にアブダビで同地域内外のリーダー、イノベーター、チェンジメーカーを集めて開催されます。

これに先立ち、財団は2025年版「Goalkeepers Report」を発表します。本報告書は、今年末までに各国リーダーが下す決断が子どもの命を救うためにどのような影響を与えるかに焦点を当てます。

また今年初め、ゲイツは自身の資産のほぼすべてを財団に寄付するという歴史的な発表を行いました。さらに、財団は今後20年間で2000億ドルを拠出し、パートナーと連携して次の3つの主要目標に向けて最大限の進展を図る方針を明らかにしました。

  1. 母子の予防可能な死をなくす

  2. 次の世代が致命的な感染症に苦しむことなく成長できるようにする

  3. 何百万もの人々を貧困から救い、繁栄への道に導く

20年の期間が終了した時点で、財団はその活動を終了する予定です。

ゲイツ財団について

ゲイツ財団は、「すべての命は平等に価値がある」という信念に基づき、すべての人々が健康で生産的な生活を送れるよう支援しています。開発途上国では、パートナーと協力して、人々が自らの未来を切り拓き、可能性を最大限に発揮できるよう、インパクトのある解決策を創出しています。米国では、すべての人々、特に最も貧しい人々が、学校や人生で成功するために必要な機会にアクセスできる環境の確保を目指しています。財団は、米国ワシントン州シアトルを拠点としています。ビル・ゲイツと理事会の指揮の下、CEOのマーク・スズマンが率いています。

「Goalkeepers」について

「Goalkeepers」は、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進展を加速させるためのゲイツ財団によるキャンペーンです。ゲイツ財団は、レポートを通じてSDGsの背景にあるストーリーとデータを共有することで、リーダーたちに説明責任を果たしてもらい進捗状況に対する認識を高め、新世代のリーダーたちにSDGsの達成に向けて行動を促すゴールキーパーを育成したいと考えています。

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会社概要

ゲイツ財団

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URL
https://www.gatesfoundation.org/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都港区元赤坂1-2-7 赤坂Kタワー4階
電話番号
-
代表者名
柏倉 美保子
上場
未上場
資本金
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設立
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