【「こどもの貧困」対策調査】1年半前の「法律」改正で対策が強化(貧困「対策」から「解消」へ)されるも、島根県内の自治体の動きは鈍く…。

 島根県内の自治体においては、改正法「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」(2024年6月)の趣旨を正面から受け止め、改めて貧困対策を強化するといった動きはほぼありませんでした。

【Ⅰ. 調査の概要】

1.目的:「こどもの貧困」対策(特にひとり親家庭支援)の実態把握

2.対象:島根県および県内市町村(全20自治体) 

3.方法:Googleフォームを利用したアンケート調査 

4.期間:2025年8月22日〜9月12日 

5.回答:17件(85.0%) ※無回答:美郷町、津和野町、知夫村 

6.調査事項:

 ①「こどもの貧困」対策全般

 ②「ひとり親家庭」支援

【Ⅱ.調査の趣旨】

 「こどもの貧困」問題に対しては、特に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の成立(2013年)以降、段階的に対策が講じられてきました。なかでも画期的だったのは、2024年6月に同法が改正され、名称も「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」(以下、解消法)へと改められたことです。これは、単なる貧困「対策」にとどまらず、その「解消」へ向けた強いコミットメントが宣言されたものと言ってよいでしょう。

 自治体の「責務」についても、「貧困対策」から「貧困の解消に向けた対策」へと文言が修正されました。つまり、第5条は次のように規定されています。

 「地方公共団体は、基本理念にのっとり、こどもの貧困の解消に向けた対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し及び実施する責務を有する」

 その責任は実に重いのです。

 では、この改正から約1年半、自治体はどう対応してきたのでしょうか。当法人では、その実態を明らかにするため、島根県内20自治体を対象にアンケート調査を行いました。また、この調査ではあわせて「ひとり親家庭」への支援にも焦点を当てています。もちろん、当法人の対象がそうだから、ということもありますが、解消法の成立にあたっては、附帯決議に次の一文が含まれていたからでもあります。

 「相対的貧困率が著しく高いひとり親家庭を対象とした多面的な支援に取り組むこと」

 本調査を通じ、「解消法」の理念がいかに実現されているのか、その一端を明らかにしたいと思います。

【Ⅲ. 調査結果:全体レポート】

 調査結果の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。

 

【Ⅳ. 調査結果:一部抜粋】

 

1. 自己評価

 「解消法」第5条に規定されている自治体の「責務」を果たしてきたと思うかどうか、たずねました。「まあ思う」を含めると半数ほどが肯定的ですが、他の回答も踏まえるとその根拠は定かではありませんし、実際、「貧困対策」に特化してきた取り組みはさほどなさそうです。

2. 具体的施策の実施状況

 次の表は、具体的な施策の実施状況を整理したものです。②と③が「解消法」への対応があったことを示す回答ですが、松江市に一つあるだけです。今後「予定」があるのも、4自治体・都合7項目にすぎません。

3. 実態把握

 効果的な対策には、現状の正確な把握が不可欠です。しかし、貧困の実態や指標に関する調査について、ほとんどの自治体が消極的でした。

 4. ひとり親家庭支援の状況

 この間、国は、ひとり親家庭への支援メニューをそれなりに拡充させてきました。けれども、島根県内自治体においては、昔からの事業が大半を占め、「解消法」を受けて新たに実施された取り組みは、ごく一部の自治体に限られています。

【小括: 法律上の「責務」でしょ!】

 当法人が「利用者」様を対象に行った調査では、二年連続で、厳しい生活実態が明らかとなりました。強いて言えば、今年の方がより困窮度が増しています。今回、自治体調査をしてみて、その理由(の一端、しかし大きな要因)が見えた気がします。早い話、十分な対策がなされてないのです。一刻もはやく、貧困の「解消」に向けて本腰を入れてもらいたいものです。

 だって、法律上の「責務」ですから。

 改めて「解消法」第5条を記しておきましょう。

 「地方公共団体は、基本理念にのっとり、こどもの貧困の解消に向けた対策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し及び実施する責務を有する」

【おわりに:ご支援ください!】

 当法人は、「コミュニティ・フリッジ」という事業を通じ、ひとり親のご家庭に、食料品や日用品等を提供させていただいております。勿論これは続けて参ります。

 しかし、それだけでは根本的な解決にはなりません。政治にも行政にも本気で取り組んでもらわねばなりません。また、一人でも多くのみなさんに「自分ごと」として考えて頂きたいところです。今回の調査もその一環ですが、そういったことを促す活動にも一層力を入れていく所存です。

 ご支援いただければ幸いに存じます。とくにマンスリー会員として、継続的にお支えいただければ幸甚に存じます。

<お問い合わせ:NPO法人「しまね子ども支援プロジェクト」>

  E-mail:ohyagi2000@gmail.com

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会社概要

URL
https://shimane-cspj.org/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
島根県出雲市塩冶町1607-6
電話番号
0853-31-5149
代表者名
毎熊浩一
上場
未上場
資本金
-
設立
2023年09月