介護保険居宅サービスの最新データと業界動向の解説
~「介護保険居宅サービスデータ〔全国版〕」2021年度下半期号を用いて~
高齢者住宅・施設のデータベースとコンサルティングを提供する株式会社タムラプランニングアンドオペレーティング(東京都千代田区、代表取締役:田村 明孝)では、この度TPデータ・サービス「介護保険居宅サービスデータ〔全国版〕」2021年度下半期号を発行しました。
このデータは、全国・全17種類・約18.1万ヶ所の介護保険居宅サービスの事業所を収録し、介護保険居宅サービスの業界動向をワンストップで把握できるデータになっています。
本リリースでは、この2021年度下半期号のデータを元に、最新の介護保険居宅サービスのデータを分析した、いくつかのトピックスをご紹介します。
※本資料に掲載の情報・図表の無断転載を禁じます。
■トピックス
- 事業主体ランキングの変動
- 急増する訪問看護の要因
- タイプ別に見たコロナの影響
まず当社で取り扱う介護保険居宅サービスについて、訪問や通所、居宅介護支援や地域密着型など、17種類のタイプ別に事業所数をとりまとめ、2022年1月時点での事業主体ごとにランキング集計すると、次表のようになります。
※事業主体に関連するグループ会社やフランチャイズ展開については、当社独自の基準においてグルーピング処理。コロナ禍前との比較のため、2020年同時期の事業所数も併記。
ランキング1位は「㈱ニチイ学館」になり、訪問介護を中心に全国で幅広く事業を展開しており、事業所数2,629ヶ所は突出しています。但し2年前の同時期の集計(以下、前回)と比較すると、事業所数は減少して、特に「居宅介護支援」が半減しており(2020年1月比で428ヶ所減)、グループ内での事業所の統合・廃止等が行われていると推測されます。
一方で事業数を増やしてきているのが、近年M&Aに積極的な7位の「ソラスト グループ」(㈱ソラスト)になり、前回より162ヶ所増となっています。大分県の「恵の会グループ」、訪問介護大手の「㈱エルダリーケアサービス」等を買収しており、事業エリアやサービスを拡充して事業所数を伸ばしています。
同様にM&Aに力を注ぐ18位の「グッドタイム・アライアンス グループ」(㈱創生事業団)や、旧茶話本舗のデイサービスを引き継いだ20位の「Care Nation グループ」(㈱Care Nation)も前回より100ヶ所以上の増加となっています。また上位ランキングには入らなかったものの、26位の「㈱ケアリッツ・アンド・パートナーズ」はITによる事業効率化を掲げ、首都圏・名古屋を中心に急激に事業所数を伸ばしています。
2.急増する訪問看護の要因
続いて個別のタイプごとのサービスにフォーカスしていくと、「訪問看護」の事業所は急増しており、病院から在宅ケアへとシフトが進む中で、事業所の増加が見られます。
国が主導する地域包括ケアの推進に伴い、病院から在宅における医療ケアのニーズが高まることを受けて、 「訪問看護」の事業所数は右肩上がりで増加(毎年5.0%以上)しており、2022年1月では13,000ヶ所を突破しました。
これは他の主要な居宅サービスである「訪問介護」の増加率(0.6%~1.6%)や「デイサービス」の増加率(0.8%~1.3%)と比べても、高い成長力を見せています。
訪問看護の法人種別ごとの開設数(割合)
さらに「訪問看護」の法人種別ごとの開設数割合を見ると、営利法人が最多となっており、2021年時点では85.0%までに達する一方で、これに次ぐ医療法人は6%まで減少しています。
訪問看護での事業主体ランキング
先ほどの事業主体について、今度は訪問看護にフォーカスして事業所数をとりまとめ、2022年1月時点でのランキング集計すると、次表のようになります。
※当社独自の基準においてグルーピング処理。2020年同時期の事業所数も併記。
ランキング1位には、精神科ケアに特化して幅広いエリアに展開している「㈱N・フィールド」(「デューン」ブランド)が挙がり、その事業所数は全国で100ヶ所を超えます。
その他に事業数を増やしてきているのが、4位「㈱ファーストナース」の81ヶ所になり、前回との比較では66ヶ所増と急拡大しています。同社は2010年8月に設立して、東北、首都圏、甲信越、東海エリアにて「あやめ」ブランドの精神科ケアに特化した訪問看護を展開しています。
また、世田谷・大田・目黒・品川区等の東京23区を中心に事業展開を行う8位の「ソフィアメディ㈱」や、住宅型有料老人ホームと連動して事業所数を伸ばしている13位の「㈱アンビス」など、特定の運営事業者による増加が目立つ結果となりました。
3.タイプ別に見たコロナの影響
社会的にコロナの影響が出始める前の2020年1月時点を基準として、主な居宅サービスの受給者数と事業数、およびコロナ感染者数を各月ごとにトレースしていくと、次のようなグラフになります。
※主な居宅サービスとして「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」にて作成。
《データ出所》
事業所数データ:T・Pデータ「介護保険居宅サービス〔全国版〕2021年下半期データ」
訪問介護・デイサービス・ショートステイ受給者数:厚生労働省「介護給付費実態調査」
感染者数:厚生労働省「感染症発生動向情報等」 (全国)(2020年1月の感染者数は1/16~1/31の集計)
前述のグラフでは、厚生労働省の「介護給付費実態調査」並びに「感染症発生動向情報等」と当社の「介護保険居宅サービスデータ〔全国版〕」を用いて、コロナ禍における「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」の3サービスについて、受給者数・事業所数推移とコロナ感染者数の推移を月ごとにトレースしています。
折れ線グラフ(青)は、コロナ禍が深刻化していく以前の、2020年1月時点・受給者数に対する2020年2月以降の各月毎の受給者数割合を示しており、これによると3サービスともに、感染者数増加に伴う緊急事態宣言(2020年4月、2021年1月、2021年4月、2021年7月)の発出に伴い、受給者数が減少するという共通の動きが見られます。
コロナ禍のサービス提供では、対2020年1月時点の受給者数に対して、2021年8月時点で104%と上回っている「訪問介護」に対して、「デイサービス」(96%)並びに「ショートステイ」(86%)は、対2020年1月時点の受給者数を下回っています。
その一方で事業所数は、同様に2020年1月を起点としてその増減を見ると、3サービスともに2021年8月時点では2020年1月時点の事業所数をやや上回っており(101~102%)、拠点となる事業所の数はやや微増となっています。
このようにコロナ禍においても、「訪問介護」、「デイサービス」、「ショートステイ」の事業所数は緩やかな増加傾向にあるが、受給者数がいち早く回復して増加傾向にある「訪問介護」に比べて、「デイサービス」や「ショートステイ」は、コロナ禍前の水準まで受給者数が回復していない状況にあります。
これらのことから、コロナ禍における影響は、通所型サービスである「デイサービス」と「ショートステイ」で顕著に表れており、これらのサービスでは利用者の減少や稼働率の低下など、事業所の採算性の悪化等が懸念されます。
今回活用したデータの紹介「介護保険居宅サービスデータ〔全国版〕」
全17種類・18.1万ヶ所以上(2022年1月末収集時点)の介護保険居宅サービス事業所のデータを収録し、一部については、人員配置・利用者数・介護保険報酬加算等の詳細情報も掲載しております。
今回ご紹介したプレスリリースにあわせて、データの参考情報もありますので、こちらもご覧ください。
https://www.tamurakikaku.co.jp/dataservice/data-kaigokyotaku.html
TPデータ・サービス
当社では、高齢者住宅・介護サービスに特化したデータベースとコンサルティングに長年の実績を持ち、2005年よりデータベースと分析レポートを組み合わせたTPデータ・サービスを提供しており、高齢者の住宅から介護サービスに関わる業界動向の情報を集約・提供しています。
次回のセミナーや勉強会
当社では、今後も高齢者住宅及び介護保険サービス業界に向けた、各種テーマや切り口のセミナーや研究会を開催していきますので、次回以降の内容についても、ご期待ください。
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