【ハンドボール】初のアジア制覇を振り返って ~女子日本代表U-20・新井翔太監督に聞く~

アジア1位で世界選手権にチャレンジ‼

日本ハンドボール協会

8月、ウズベキスタンで開催された第18回女子ジュニアアジア選手権で見事初優勝という快挙を達成し、来年に開催される第25回女子ジュニア世界選手権への出場権を手にした女子日本代表U-20(ジュニア)。

ここでは、チームを率いた新井翔太監督に、大会の激闘を振り返りながら、世界の大舞台も見据えて語ってもらったインタビューをお届けします。

大会開催地・ウズベキスタンでの新井翔太監督(写真右)

大会本番に向けて

大会前日のテクニカルミーティングの時間が当日に変更された以外は、入国からスムーズに大会に入ることができました。

日本も同様ですが、各チームとも一昨年のアジア選手権、昨年の世界選手権と、ユースの国際大会を経験してきた選手が多く、その映像を有効活用して、対戦が予想されるチームの分析を事前に進めてもらいました。

とくに優勝を争う韓国、中国については、個々の選手を掘り下げて分析してもらい、さらに韓国は監督が韓国リーグ(Hリーグ)のSKシュガーグライダーズの監督も兼務しているということで、SKの試合もチェックして大会に臨みました。

予選ラウンドの戦い

今回の代表チームは、事前の準備期間が極めて限られ、8月中旬の直前合宿も国内大会と日程が重なり、全員が揃わない状態での活動となりました。

そのため、「大会をとおして成長する」ことを、チームの大きなテーマに掲げました。試合はもちろん、現地での練習、日々のミーティングも大切にしました。

予選ラウンド(Bグループ)ではカザフスタン、イランと、体格を活かしてタテに力強く攻め込んでくる相手の攻撃を受けて守ってしまったり、大会をとおしての課題となったシュートを決め切れず、苦しい時間帯もありましたが、2連勝発進。

初参加で地力の差が明らかなキルギスに対しても、同じグループのライバル・韓国と引き分けた場合、得失点差の争いとなるため、1点でも多く取ろうと、全力を注いだ結果、95-8(日本協会の資料では、現時点で大陸選手権レベル以上の戦いで史上最多得点・得点差記録)という歴史的な試合となりました。

テーマに掲げたように、日々、成長しながら目の前の試合をクリアし、予選ラウンド最終戦はBグループ1位をかけた韓国との戦いです。キルギス戦後、2日間の休息日も有効活用し、今大会に入ってからの相手の動きも分析、データをインプットして試合に臨みました。

必勝を期しての戦いでしたが、DFはある程度機能したものの、OFで相手DFが高いラインで守ってきた時にリズムをつかみ切れず、大型GKに対してシュートを決め切れない、課題も克服しきれない展開となり、Bグループ1位での準決勝進出は果たせませんでした。

全力で挑んでの敗戦でしたから、ダメージは小さくありませんでしたが、試合後、ほどなくして選手たちが「準決勝で中国に勝てば、もう一度、韓国と戦える。この悔しさをエネルギーにして戦おう」と気持ちを切り替えてくれました。

準決勝、そして、決勝へ

準決勝は、大会に入って見たかぎりでは、韓国よりも強いと感じた中国との対戦。大きく、フィジカルも強い、さらには、シュート力も十分と、脅威の相手でした。

それでも、立体的なDFへの対応は苦手そうな印象を受けました。限られた時間でしたが、運動量豊かでフィジカルも強い阿部楓をトップに置いた3:2:1DFも準備し、戦いに備えました。

これまでどおりの6:0DFでスタートするか、それとも、3:2:1DFを仕掛けるか。頭を悩ませた結果、6:0DFでスタートして途中から3:2:1DFに変えた時、その3:2:1DFを崩されてしまうともう手がなくなってしまうと考え、急造ではありましたが、3:2:1DFでのスタートを決断しました。

結果的に、この3:2:1DFが当たった形となり、中国の足を止め、3分5-1とスタートダッシュに成功しました。その後、7人攻撃から点差を詰められる場面もありましたが、DFは終始安定。後半5分過ぎから14分過ぎにかけての7連取で、相手を突き放すことができました。

そして、リターンマッチとなった決勝の韓国戦。実際に対峙した予選ラウンドでの戦いも含め、個々の選手がシチュエーションごとに1対1でどんな動きをするのかといったことまで分析するなど、できる限りの準備をしての戦いでした。

韓国がスローオフ直後から7人攻撃を仕掛けてきたのは想定外でしたが、7人攻撃は中国戦でも経験済みで、かつ、韓国の7人攻撃は中国と同様、早い段階でウイングプレーヤーがベンチに戻るパターンで、選手たちは動揺なく対応してくれました。また、7人攻撃で日本のDFはズレていたにもかかわらず、それを活かし切れない韓国OFの詰めの甘さにも助けられました。

この試合もOFは思うように機能しませんでしたが、勝負強く、肝も据わっている中村真心が苦しい場面を救ってくれました。

予選ラウンドでは、中央を守る中尾藍、加藤真央への負担が大きくなり、勝負所での速攻やバックチェックにも影響する状態だったこともあり、この試合は前半から大堀ももをコートに送るなど、より60分を見据えた戦いもできたと思います。

こうして、大会に入ってからの経験も存分に活かして戦い、後半残り5分を切っての正念場を19-14と5点リードで迎えました。

ここから2点差まで詰められたように、最後まで苦しい戦いでした。あと1本でも相手のシュートを危うい場面で、GK尾崎羽南の好セーブもあり、勝ち切ることができました。

ミーティングも重ね、選手たちとともに成長して頂点へ

初のアジア女王として世界へ

終始、DFでは粘ることができたものの、OFではシュート確率、速攻の精度が低く、エアポケットの時間帯も多い、課題もたくさん残った大会でした。私自身も、だれをどこで起用したらいいのか、だれとだれでコンビを組ませたらいいのかと、最適解を求め試行錯誤しながらの戦いでしたが、選手たちはよく対応してくれました。チームとして成長できた結果が、アジアジュニア選手権初優勝という結果につながったと思います。

ライバルの中国は学業や所属チームの活動の制約もなく、2ヵ月ほどの合宿を組んでの臨戦、韓国にはHリーグで活躍するプロ選手もいる状況だったのに対し、限られた期間の活動で、最高の結果を出せたのは、選手たちのがんばり、スタッフのサポート、そして、選手が日々活動している各所属チームの指導者の皆さんのご指導の賜物と感じています。

アジアを制した喜び、感動の余韻が残る中ですが、来年の世界選手権(2026年6月24日から7月5日にかけて開催。開催地未定)までは、もう1年もありません。

世界の戦いは、相手の体格も戦術もアジアとは大きく違います。1人ひとりが世界と勝負できるフィジカルを身につけることは必須になります。

このチームの締めくくりでも、「世界はフィジカルがものを言う。所属チームの方針や活動もあるが、日々の食事、栄養補給も含めて、1人ひとり自立して取り組んでほしい」と伝えました。

世界選手権を見据え、この大会で成長した選手たちがさらに成長するとともに、サウスポーの発掘、登用は急務だと思っています。ユース世代との連携も欠かせません。

女子日本代表おりひめジャパンを率いるモーテン・ソウバク監督をコーチとして支える立場もありますが、今回も選手たちがフル代表に進むことを見据え、フル代表につながるような指導を心がけました。

この中から1人でも多く、フル代表に進む選手が出てくることを願っています。

所属チームでの戦いも含め、コートに立てない、ベンチに入れないといった逆境に置かれることもあるでしょうが、そこで他人のせいにすることなく、正当に自分に目を向け、悔しさやネガティブな気持ちをプラスのエネルギーに変えることができる選手といっしょに戦い続けたいと思っています。

新井翔太(あらい・しょうた)

1990年愛知県生まれ。愛知・御幸山中でハンドボールを始め、愛知高、中京大で活躍。中京大大学院を経て、2015年から1年間、ドイツでのコーチ留学を経験。16年からは9シーズンにわたり日本リーグ女子(現・リーグH)、HC名古屋のヘッドコーチを務めるかたわら、女子日本代表U-20チームのスタッフ(18年~)として強化・育成に尽力してきた。25年6月、モーテン・ソウバク新監督の就任とともに、女子日本代表『おりひめジャパン』のコーチも務めている。

アジア女王の初タイトルとともに凱旋した羽田空港で

・第18回女子ジュニアアジア選手権 大会結果(試合動画も視聴できます)

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会社概要

URL
https://handball.or.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都新宿区霞ケ丘町4-2 JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE 608
電話番号
03-6709-8940
代表者名
金丸恭文
上場
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資本金
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設立
1938年02月