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慶應義塾
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世界初! 量子渦と常流体の相互作用を解明

-量子渦の運動に関する大きな問題に終止符-

慶應義塾

<ポイント>
◇「粘性を持たない超流体の渦」と「粘性を持つ常流体」がお互いに及ぼす影響を
同時に計算することに成功
◇可視化実験により超流体の量子渦輪が収縮する様子を観測することに成功
◇実験結果に基づき、複数の理論モデルから最も整合性のとれたモデルを決定
◇今後多くの超流動現象の解析に貢献

<概要>
 大阪公立大学の坪田 誠教授、湯井 悟志特任助教(大学院理学研究科および南部陽一郎物理学研究所所属)、慶應義塾大学の小林 宏充教授(法学部日吉物理学教室および自然科学研究教育センター所属)らの研究グループは、極低温で超流動状態となった液体ヘリウム4における量子渦※1(粘性を持たない超流体の渦)と常流体(粘性を持つ流体)との間で及ぼし合う影響について数値計算によって調査し、フロリダ州立大学のWei Guo(Professor)、Yuan Tang(Postdoctoral Associate)、Toshiaki Kanai(Graduate Student)らが行った実験結果に基づき、複数の理論モデルから最も整合性のとれたモデルを決定しました。
本研究成果は、「どのモデルが実験結果と整合するのか」という今まで多くの量子流体力学研究者を悩ませてきた問いに終止符を打つものです。今後、多くの超流動現象の数値計算や解析に新しい指針を与え、同研究分野の発展が期待されます。



本研究の主題である量子渦と常流体の相互作用は、私がこの分野の研究を始めた頃から大きな謎でした。しかし、計算機の発達によりこの問題を扱えるようになったことと、今回のフロリダ州立大学の研究者による見事な可視化実験がブレイクスルーを生むこととなりました。ある時点で解けない謎が、その後の技術の発展により解明できるようになることは科学ではよくありますが、本研究はその好例です。





<掲載誌情報>
【発表雑誌】Nature Communications
【論 文 名】Imaging quantized vortex rings in superfluid helium to evaluate quantum dissipation
【著  者】Yuan Tang, Wei Guo, Hiromichi Kobayashi, Satoshi Yui, Makoto Tsubota and Toshiaki Kanai
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s41467-023-38787-w


<研究の背景>
絶対零度(−273℃)に近い極低温で超流動状態となった液体ヘリウム4では、量子力学的効果に由来する量子渦という特殊な渦が存在します。温度が比較的高いとき、超流動ヘリウム中には常流体も同時に存在し、量子渦が運動すると常流体との間に相互摩擦※2が発生することが実験結果から明らかになっています。しかし、量子渦がどのように常流体と相互作用をしながら運動するかを正確に説明することは難しく、今までに複数の理論モデルが提案されてきましたが、どのモデルが正しいか明らかではありませんでした。

<研究の内容>
量子渦の運動において、最も基本的なものは、渦輪の運動です。Guo教授らフロリダ州立大学の研究グループは、ヘリウムと密度が近い重水素の微粒子を量子渦に付着させ、量子渦輪の運動を可視化しました。その結果、量子渦と常流体との間に生じた相互摩擦により量子渦輪の半径が時間経過とともにどのように縮んでいくかを計測することに成功しました。
坪田 誠教授ら日本の研究チームは、実験結果とどの理論モデルが整合するかを数値計算により調査しました。その結果、常流体の変化を考慮し、より理論的に正確な相互摩擦を取り入れるモデルが最も整合すると明らかになりました。


左図:可視化された量子渦輪。 中・右図:計算結果により得られたイメージ図。緑線が量子渦輪、赤のチューブが常流体渦輪、常流体速度(赤が高速)の平面内分布と流線分布。渦輪は右上方向へ進行。中図のモデルでは、常流体渦は量子渦輪の前後にできるが、右図のモデルでは、常流体渦が量子渦輪の内外にできる。実験との比較の結果、右図のモデルに決定された。



<期待される効果・今後の展開>
実験結果と比較し、相互摩擦のモデルを決定した本研究成果によって、今後、実験結果と整合するモデル利用が推奨され、多くの超流動現象が解明されていくことが期待されています。

<資金情報>
本研究は、科研費JP22H01403の対象研究です。

<用語解説>
※1 量子渦:超流動中に出現する、渦芯周りの速度循環が量子化された(決まった値しかとれない)渦。
※2 相互摩擦:量子渦と常流体の間に働く相互作用。高温ほど摩擦が大きくなる。

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都港区三田2-15-45
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代表者名
伊藤 公平
上場
未上場
資本金
-
設立
1858年10月
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