RNAi治療薬リーディングカンパニーのアルナイラム、トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療の新たな選択肢としてアムヴトラ®の適応追加の承認を取得
Alnylam Japan株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締社長 岡田裕、以下「アルナイラム」)は、「アムヴトラ® 」 (一般名:ブトリシランナトリウム、以下「アムヴトラ」) についてトランスサイレチン型心アミロイドーシス (ATTR-CM) を対象とした治療薬として医薬品製造販売承認事項一部変更の承認を取得しましたので、お知らせします。
アルナイラムの代表取締役社長、岡田裕は次のように述べています。「ATTR-CMは、肝臓で産生されるトランスサイレチン (TTR) がアミロイドとなり、心筋に沈着・蓄積することで発症する進行性の疾患です。心不全を引き起こす原因疾患としての認識が広まりつつあり、早期診断や有効な治療介入が求められる中で、依然として多くのアンメットメディカルニーズが存在しています。アムヴトラは、ATTR-CMの原因タンパク質であるTTRの産生を抑制することで、疾患の根本にアプローチする治療薬です。アムヴトラをATTR-CM患者さんにお届けし、治療に貢献できることを期待しています。」
高知大学医学部老年病・循環器内科学の北岡裕章教授は、「ATTR-CMは肝臓で産生されるTTRが加齢や遺伝子変異によりアミロイド化し心臓に沈着することが原因で発症する疾患です。近年では早期診断が進んできているものの、未診断の症例が多く存在し、本邦の人口高齢化を踏まえると今後さらに罹患患者が増加することも想定されます。アムヴトラはTTRmRNAを分解することでTTRの産生を抑制するRNAi治療薬です。第Ⅲ相臨床試験であるHELIOS-B試験では4量体安定化薬がベースラインで40%投与されていた患者背景で実施され、事前に規定された主要評価項目、副次評価項目すべて (10項目中10項目) を達成しました。アムヴトラがATTR-CM治療の新たな治療選択肢として、ATTR-CM治療に変革をもたらすことを期待しています。」と述べています。
この適応追加は、第Ⅲ相HELIOS-B試験の結果に基づき、2024年11月に申請されました。本試験は、ATTR-CM (変異型及び野生型) と診断された成人患者655名を対象にした、第Ⅲ相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同の国際共同試験です。全死因死亡及び再発性心血管関連イベントの主要複合評価項目の減少というアムヴトラの有効性及び安全性を評価しました。
アムヴトラは、主要評価項目及びすべての副次評価項目を達成し、死亡及び再発性心血管関連イベントのリスクの統計学的に有意な減少と許容可能な安全性及び忍容性プロファイルを実証しました。HELIOS-B試験の結果は2024年8月の欧州心臓病学会で発表され、同時に 『The New England Journal of Medicine』誌にも掲載されました。
本試験において、アムヴトラ投与群はプラセボ投与群に比べて死亡及び再発性心血管関連イベントのリスクを統計学的に有意に減少させました。全体集団において、アムヴトラは全死因死亡及び再発性心血管関連イベントのリスクを28%減少させ、主要評価項目の構成要素である全死因死亡のリスクと再発性心血管関連イベントにおいて同様の減少を示しました。この集団における全死因死亡のリスクは、二重盲検期間中に31%、42ヵ月までに36%と有意に減少しました。単剤投与部分集団において、アムヴトラは全死因死亡及び再発性心血管関連イベントのリスクを33%有意に減少させ、42ヵ月までの死亡リスクを35%有意に減少させました。アムヴトラ投与群は、6分間歩行試験、カンザスシティ心筋症質問票、NYHA 分類、心臓バイオマーカーNT-proBNP など、複数の確立された疾患進行の臨床的指標におい ても、プラセボ投与群と比較して効果を示しました。
また、アムヴトラは、確立された薬剤のプロファイルと一致する許容可能な安全性及び忍容性プロファイルを示しました。有害事象、重篤な有害事象、重度な有害事象、及び治験薬の投与中止に至った有害事象の発現頻度は、アムヴトラ投与群とプラセボ投与群で同程度でした。プラセボ投与群と比較すると、アムヴトラ投与群では心臓関連の有害事象の発現頻度が同程度、またはそれより低い数値でした。全患者の15%以上に発生した有害事象 (心不全、COVID-19、心房細動、痛風、呼吸困難、転倒) の発現頻度は、プラセボ投与群と比較するとアムヴトラ投与群では同程度、または低い数値でした。プラセボ投与群と比較して、アムヴトラ投与群で3%以上発現頻度の高い有害事象は認められませんでした。
アムヴトラは、厚生労働省からATTR-CM (野生型及び変異型) を対象にした希少疾病用医薬品に指定されました。2025年3月に成人におけるATTR-CMの治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の適応拡大の承認を取得しており、6月5日に欧州委員会 (EC) から同様の承認を受けました。その他、ブラジルにて適応拡大の承認を取得しています。
アムヴトラ® (ブトリシラン) について
アムヴトラ (ブトリシラン) は、標的となる特定のメッセンジャーRNA (mRNA) を分解し、野生型及び変異型TTRタンパク質が作られる前にその産生を阻害するように設計されたRNAi治療薬です。本剤は、3カ月に1回の皮下注射により投与され、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として15か国以上で承認・販売されています。
トランスサイレチン型アミロイドーシスについて
トランスサイレチン型アミロイドーシス (ATTR) は、ミスフォールドされたトランスサイレチン (TTR) タンパク質が原因で、神経、心臓、胃腸などの体の様々な部位にアミロイド沈着物として蓄積する疾患です。診断が難しく、急速に進行し、身体的に衰弱させ、死に至ることも多い疾患です。患者は、多発性神経症、心筋症、または両方の病状を示すことがあります。ATTRには2つの異なる形態があります。遺伝性ATTR (hATTR) は、TTR遺伝子変異によって引き起こされ、患者数は全世界で約50,000人います。一方、野生型ATTR (wtATTR) は、TTR遺伝子変異なしに発生し、推定患者数は全世界中で200,000人~300,000人におよびます1-4。
HELIOS-B第Ⅲ相試験について
HELIOS-B試験 (NCT:NCT04153149) は、全死因死亡及び再発性心血管関連イベントの主要複合評価項目の減少というアムヴトラの有効性及び安全性を評価した、第Ⅲ相無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同の国際共同試験です。この試験では、ATTR-CM (変異型及び野生型) を有する655人の成人患者が無作為に割り当てられました。患者は、最大36ヶ月間の二重盲検期間中、3ヶ月ごとにアムヴトラ25mgまたは同量のプラセボを皮下投与されました。二重盲検期間後、試験を継続している適格なすべての患者は、非盲検継続投与期間中にアムヴトラを投与することができました。
RNAiについて
RNAi (RNA interference:RNA干渉) は、遺伝子発現抑制 (サイレンシング) という細胞内の自然なプロセスであり、現在、生物学と創薬の分野で最も期待され急速に進歩している最先端領域の一つです5。RNAiの発見は「10年に1度の画期的な科学の前進」とされ、その功績に対して2006年にはノーベル生理学・医学賞が贈られています6。RNAi治療薬は、細胞内で生じるこの自然な生物学的プロセスを利用した新しい作用機序を持つ薬剤として誕生しました。RNAiの作用機序は、アルナイラム社のRNAi治療薬のプラットフォームであるsiRNA (small interfering RNA:低分子干渉RNA) が、疾患に関与するタンパク質をコードするメッセンジャーRNA (mRNA) の発現を抑制 (サイレンシング) することで、そのタンパク質の産生を阻害するというものです5。RNAi治療薬は、遺伝子疾患などの治療法を変える可能性が示唆されている新たなアプローチです。
Alnylam Pharmaceuticals社について
Alnylam Pharmaceuticals社 (Nasdaq:ALNY) は、RNAi技術を、希少疾患や一般的な疾患に苦しむ患者さんの治療や生活の質を改善することが期待される医薬品に応用するリーディングカンパニーです。RNAi治療薬はノーベル賞を受賞した科学に基づいており、アンメットニーズの高い難治性疾患を臨床的に実証されたアプローチで治療する革新的な医薬品です。当社は、2002年の設立以来、RNAi治療プラットフォームにより、科学的可能性を現実のものにするというビジョンを実現しています。当社は、後期開発段階の複数の製品候補を含む、充実したパイプラインを有しています。今後も引き続き、希少疾患と一般的な疾患の両方に対して変革をもたらす治療薬を生み出すことを目標とした「Alnylam P5x25」戦略を遂行し、持続可能なイノベーションと優れた財務実績を通して世界中の患者さんに貢献し、その結果としてバイオ医薬品のリーディングカンパニーとして認知されることを目指します。当社はマサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置きます。
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1 Hawkins PN, Ando Y, Dispenzeri A, et al. Ann Med. 2015;47(8):625-638.
2 Gertz MA. Am J Manag Care. 2017;23(7):S107-S112.
3 Conceicao I, Gonzalez-Duarte A, Obici L, et al. J Peripher Nerv Syst. 2016;21:5-9.
4 Ando Y, Coelho T, Berk JL, et al. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:31.
5 Elbashir SM, Harborth J, Lendeckel W, et al. Nature. 2001;411(6836):494-498.
6 Zamore P. Cell. 2006;127(5):1083-1086.
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AMV-JPN-01441 June 2025
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