2025年度「国際交流基金賞」受賞者決定
マーティ・グロス氏(カナダ)、鄭 起永氏(韓国)に決定
株式会社毎日企画サービス(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:須山勉)は、独立行政法人国際交流基金の委託を受け、国際交流基金賞についてのリリースを行っています。
国際交流基⾦(JF)が実施する「国際交流基⾦賞」の2025年度の受賞者が決定しました。設立の翌年の 1973 年から実施している本賞は、これまで学術や芸術等のさまざまな文化活動を通じて日本と海外の相互理解促進に顕著な貢献があり、引き続き活躍が期待される個人または団体に授与しています。
第 52回となる今年度は、内外各界の有識者及び一般公募により推薦のあった 106件の中から、有識者による審査を経て以下の 2件を決定しました。10月22日(水)に授賞式を開催いたします。
●マーティ・グロス(Marty Gross)氏(マーティ・グロス・フィルム・プロダクション、プロデューサー/監督[カナダ]
●鄭 起永(ジョン・ギヨン/JUNG Giyoung)氏(釜山外国語大学校 教授)[韓国]
【本件に関するお問い合わせ先は、メディアユーザーページよりご参照ください】

マーティ・グロス(Marty Gross)氏(マーティ・グロス・フィルム・プロダクション、プロデューサー/監督[カナダ]
日本の伝統芸能や民藝運動を世界に紹介してきたカナダの映画監督、アーキビスト、コンサルティング・プロデューサー。名匠たちによる上演を記録した映像作品『文楽 冥途の飛脚』(1980)を監督して文楽の海外への紹介に大きな役割を果たし、北米における日本の古典的名作映画の販売や公開にコンサルタントとして尽力し、多数の関係者インタビューも担当した。現在進行中の大きな業績としては、1930年代から70年代に撮影された「民藝運動」の記録映像を発掘・修復して公開する「民藝運動フィルムアーカイブ」を手がけており、職人が作り出す日常の生活用品に美を見出した民藝運動の姿を現在に蘇らせることに大きな貢献を果たしている。
[授賞理由]
マーティ・グロス氏はカナダの映画監督、アーキビストであり、長年にわたって日本文化を世界に紹介してきたコンサルティング・プロデューサーである。
1948年トロントに生まれ、同地のヨーク大学で東洋学を専攻し、70年に来日して陶工の修行に励んだ。映像作家として活動を開始したグロス氏は、支援が必要な児童への、自らのスタジオでの美術教育に関するショート・フィルム『AS WE ARE』を製作し、次に、福岡県の小石原焼や大分県の小鹿田焼の陶工たちに密着取材した『陶器を創る人たち』(1976)を発表したのち、『文楽 冥途の飛脚』(1980)を監督。全編を1時間半にまとめた巧みな構成、人形・人形遣い・義太夫それぞれの見せ場を余すところなく伝える多角的なカメラワーク、ドナルド・リチーによる的確な英語字幕など、魅力的な要素に彩られた同作は、文楽の海外への紹介に大きな役割を果たした。

日本映画界との交流を深めたグロス氏は、米国の映画配給会社クライテリオンの日本部門コンサルタントとして多くの日本の古典的名作映画ソフトの販売・公開に尽力し、関係者インタビューも担当して日本映画史に係る数々の貴重な証言を引き出している。
そして現在も進行中のグロス氏の大きな業績は、映像作品を収蔵・修復するアーキビストとしての仕事である。氏は英国の陶芸家バーナード・リーチが1930年代に撮影した「民藝運動」の16ミリ記録映像を発掘・修復して公開する「民藝運動フィルムアーカイブ」を自身のプロダクションで手がけている。民藝運動とそれに関連する映像素材を求めて日本・韓国・英国・米国などを自ら訪れて収集した映像の集積は大きなアーカイブを形成するに至っており、職人が作り出す日常の生活用品に美を見出した民藝運動の姿を現在に蘇らせることに大きな貢献を果たしている。
このようにマーティン・グロス氏は長年にわたり日本の伝統芸能や民藝運動とその映像を通じた国際相互理解の促進に貢献してきており、その業績は国際交流基⾦賞にふさわしい。
鄭 起永(ジョン・ギヨン/JUNG Giyoung)氏
(釜山外国語大学校 教授)[韓国]
鄭起永(ジョン・ギヨン)氏は、韓国の日本語教育を30年以上にわたり牽引してきた第一人者である。釜山外国語大学校では日本語融合学部を創設し、学部内に三つの専門専攻を設置、1000名を超える学生が学ぶ韓国最大の日本語教育拠点を築いた。また、ICTの活用やCan-do評価など、日本語教育において先駆的な取り組みを先導してきた。さらに、対馬での漂着ごみ清掃活動、日本企業への就職支援、釜山日本村の設立による継承語教育の実践、日韓文化交流団体の運営など、言語教育を超えて国際相互理解と友好親善に寄与している。その多面的な貢献はまさに国際交流基⾦賞にふさわしく、今後のさらなる活躍が期待される。

【授賞理由】
鄭起永(ジョン・ギヨン)氏は、30 年以上にわたり韓国の高等教育機関において日本語教育の研究と実践を牽引し、教育者・研究者・大学経営者として多面的な業績を重ねてきた。釜山外国語大学校では日本語専攻を学部レベルへ昇格させ、「韓日文化コンテンツ専攻」「ビジネス日本語専攻」「日本IT 専攻」を設置し、1000 名超の学生を擁する「日本語融合学部」へと発展させた。これは日本語教育の専門化・多様化を先導する取り組みであり、学術的・実務的進路を支える基盤整備として高く評価される。
また、鄭氏は教育方法や教材開発においても先駆的で、ICT の活用、文字教育教材の開発、Can-do 評価の導入など、日本語教育が求められる課題に積極的に取り組み、研究成果を挙げ、国内外で評価されている。加えて、学会運営や教員養成、行政との連携にも携わり、日本語教育の制度的基盤の整備にも尽力してきた。
国際相互理解と友好親善への貢献も顕著である。2003 年からの対馬における漂着ごみ清掃活動では、日韓の学生・住民・NPO の協働により、環境保全と信頼回復の新たな実践モデルを構築。また、韓国人学生の日本企業への就職支援にも継続的に取り組み、2010 年以降、累計364 名以上を日本に送り出すなど、職業人材交流にも成果を上げている。

これらの活動は語学教育を超えて、人的・文化的なネットワーク構築に寄与している。さらに、2012 年には継承語教育の拠点として「釜山日本村」を設立し、日本語・日本文化の継承に尽力。その成果は出版・情報発信され、地域のモデルケースともなっている。2024 年には釜山韓日文化交流協会会長に就任し、地域社会に根ざした交流の深化にも貢献している。
このように、鄭氏は日本語教育を基盤に、環境・雇用・文化継承といった社会的課題と教育を結びつけ、日韓相互理解の橋渡し役として尽力してきた。その功績は国際交流基⾦賞の理念にふさわしく、今後のさらなる活躍を強く期待し、本賞を授与するものである。
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