【業界レポート Vol.4】素材・化学業界の新規事業・多角化 ── 上場60社の利益を事業単位で分解すると、稼ぎ頭は「機能性素材」だけではなかった

アーキタイプが素材・化学の業界レポートVol.4を公開。主要60社を有報で事業単位まで実数分解し、稼ぎ頭は塗料・医薬・半導体材料・住宅に分散、機能性素材は利益プールの3割にとどまることを示した。

アーキタイプ

事業開発支援のアーキタイプ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:菅野龍彦、以下「アーキタイプ」)は、素材・化学業界の新規事業・多角化に関する業界レポート 「Industry Report 2026 Vol.4 ── 素材・化学業界 新規事業・多角化 実態調査レポート」(全64ページ)を、2026年7月28日(火)に公開しました。本レポートは無料でダウンロードいただけます。

本レポートは、東証「化学」業種の上場企業のうち売上1,000億円以上の主要60社を母集団とし、そのうちセグメント単位まで利益を分解できた52社・186セグメントを分析、経営行動の6軸スコアリングは59社を対象としています。財務数値はすべて各社の有価証券報告書(FY2025・2026年3月期など)をEDINETから機械抽出し、海外参照(米ダウ、独BASF等)はSEC EDGAR・各社開示から一次取得しました。「だいたい何%」ではなく、どの会社のどのセグメントが何億円の営業利益を出しているかを、出所とともに確定させています。

■ レポートを無料でダウンロード

全64ページ/有報(EDINET)一次検証・主要60社(うちセグメント分解52社・186セグメント)


■ 主要な発見

発見1:利益を「率×規模」で見ると、稼ぎ頭は「機能性素材」だけではなかった

高い利益「率」の事業を並べると一見もっともらしい顔ぶれが上位に来ますが、利益「率」は、その事業が全社をどれだけ支えているかを語りません。そこで各セグメントの利益を「率×規模=営業利益額」で並べ直すと、地図が一変します。主要60社の利益プール(黒字セグメント計2兆6,979億円)の稼ぎ頭は、日本ペイントのアジア塗料(1,440億円)、住友化学の医薬(1,084億円)、レゾナックの半導体・電子材料(1,084億円)、旭化成の住宅(998億円)と、異なる機構の堀に分散していました。機構別に見ると、機能性素材にあたる「擦り合わせ素材」は利益プールの31%で最大級ですが、それでも全体の3割にとどまり、景気に左右されない事業(産業ガス・住宅・塗料など29%)とほぼ拮抗します。「機能性スペシャリティへ移れ」という処方箋が捉えるのは、この3割。残る7割は、規制で守られた事業(16%)や規模・寡占の汎用品(7%)など、別の堀が生んでいました。

利益プールの機構別構成(擦り合わせ素材31%・景気非連動29%が拮抗、規制16%・その他9%・規模寡占7%・汎用石化7%)

発見2:堀には2種類の「寿命」がある ── 景気に強い堀と、汎用化に強い堀は別物

堀の寿命は一様ではありません。景気の谷を越える力(景気耐性)と、10年単位の中国の追い上げに耐える力(汎用化耐性)は別の軸です。両者で機構を配置すると、機能性素材にあたる「擦り合わせ素材」だけが「景気には強いが、汎用化には弱い」唯一の象限に入ります。かつて日本勢が世界を握った液晶用偏光板や電池材料は、約10年で中国メーカーにシェアを明け渡しました。「機能性へ移れ」の号令が全員を向かわせる先が、最も汎用化の速い激戦地でもある――この時間軸のねじれが、本レポートの核心の一つです。

2つの寿命マップ(景気耐性 × 汎用化耐性・擦り合わせ素材だけが右下に単独)

発見3:汎用石化の赤字は「日本固有の弱さ」ではなく「原料ポジション」で決まっていた

市況が反発したFY2025でさえ、業界に残った赤字(営業利益段・▲368億円)の91%は、汎用石化・基礎化学の一機構に集中していました。ただしこれは「日本だから弱い」のではありません。海外も同じ構造で、米ダウはシェール原料に立脚する事業(P&SP)が谷でも黒字(+827百万ドル)、原料の優位を持たない中間体事業(II&I)は赤字(▲561百万ドル)でした。明暗を分けたのは、国でも企業でもなく「原料の立地」です。なお前年度(FY2024)の業界赤字は▲1,068億円で、FY2025の出血縮小は構造改善ではなく市況反発によるものである点も、あわせて示しています。

原料ポジションが分ける明暗(ダウ P&SP+827/II&I▲561百万ドル)
赤字の集中(FY2025でも業界赤字の91%が汎用石化)

発見4:多角化の成否を分けるのは「どこへ向かったか」ではなく「向かった先で堀を築き、掘り直せたか」

本レポートは経営行動を6軸でスコアリングし(59社・平均20.4点)、最も企業差が開いた軸が「判断基準・撤退ルール」であることを示しました。同じ「本業から遠い多角化」でも、写真フィルムの市場消失を越えてヘルスケア・電子材料へ組み替えた富士フイルム(6軸29点/60社中最高)は生き残り、素材を広く手がけた帝人(17点)は清算局面にあります。両者を分けたのは、本業からの距離ではありません。さらに20年分の新規事業3,523件の活動データも、財務とは独立に同じ結論――「堀を築く活動は旺盛でも、撤退と掘り直しが弱い」――を指していました。

多角化の明暗(同じ「遠い多角化」で富士フイルム29点 ↔ 帝人17点・清算局面)

■ 本レポートの独自フレームワーク

技術や素材で優位を持ちながら、その優位を安定した利益や新しい事業の出口に変換しきれない企業が「自社はどこで、どう戦うか」を判断できるよう、本レポートは 5つの堀の機構 × 2つの寿命 × 掘り直す力(6軸) の3層で業界を読み解きます。

  • 5つの堀の機構:擦り合わせ素材/規制/景気非連動・ブランド・内需/規模・寡占の汎用品(+明確な堀を持たない汎用石化)に分類し、利益プールを「率×規模」で再構成

  • 2つの寿命:景気耐性・汎用化耐性の2軸で、堀が「何年もつか」を可視化

  • 掘り直す力(6軸):戦略の具体度・資源配分・撤退ルール・事業化の道筋・外部活用・データAI活用の6軸で、経営の意図と現場の実態のズレを定量化

海外メジャー(米ダウ、独BASF等)は「原料ポジションの参照」にとどめ、組織の作り方は日本企業の実例で論じています。6軸は、アーキタイプが提供する無料の組織診断ツール「新規事業が動く 組織スコア診断」と接続しています。


■ 代表コメント

菅野龍彦(アーキタイプ株式会社 代表取締役)
「『汎用から機能性へ』という処方箋は正しいのですが、不完全だと考えています。60社の決算を事業単位まで開いてみると、機能性素材が生む利益は全体の3割にとどまり、景気に左右されない事業や規制で守られた事業と、ほぼ肩を並べていました。しかも堀には『何年もつか』という寿命があり、機能性素材はむしろ最も汎用化が速い領域です。問うべきは『どの分野へ向かうか』という方向の問題ではなく、『向かった先で、何年もつ堀を築き、それを掘り直し続けられるか』という設計の問題です。この利益地図が、新規事業を構想される方の出発点になればと考えています。」

■ Industry Report 2026 シリーズについて

アーキタイプは、業界別の新規事業・多角化戦略を一次ソースから整理する「Industry Report 2026」シリーズを順次公開しています。

  • Vol.1 半導体・電子部品 多角化戦略(増補改訂版 Ver.2)(既刊・無料DL

  • Vol.2 農業参入・多角化戦略 実態調査(既刊・無料DL

  • Vol.3 メディア・エンタメ業界の新規事業(既刊・無料DL

  • Vol.4 素材・化学 新規事業・多角化戦略 実態調査(本日公開・無料DL

以降、自動車・機械・食品 等の業界別レポートを順次公開予定


■ 調査・整理の概要

  • 調査名: 素材・化学業界 新規事業・多角化 実態調査レポート

  • 発行主体: アーキタイプ株式会社

  • 母集団: 東証「化学」業種の上場企業のうち売上1,000億円以上の主要60社(消費財・化粧品を除く)

  • 分析対象: うちセグメント単位まで利益を分解できた52社・186セグメント / 6軸スコアリング: 59社(決算開示遅延の1社を除外)

  • 一次ソース: 各社有価証券報告書(EDINET・FY2025/2026年3月期など)を機械抽出。海外参照(米ダウ・独BASF等)はSEC EDGAR・各社開示から一次取得

  • 手法の確度と限界: 機構分類の確度・6軸の推定評価・活動データの読み方は、本文巻末「方法論と留意点」に開示。親子上場の連結重複(三菱ケミカルと連結子会社・日本酸素)は二重計上を避けて調整

  • ページ数: 全64ページ

  • 公開日: 2026年7月28日(火)

素材・化学業界 新規事業・多角化 実態調査レポート
■ レポートを無料でダウンロード

メールアドレスのご登録でお送りします


■ アーキタイプ株式会社について

アーキタイプ株式会社は、AIとデータを駆使して大企業の新規事業開発を支援する事業開発支援会社です。「未来の『原型』を築く」をミッションに、イノベーション組織戦略策定・社内新規事業創出・オープンイノベーション実行支援・AI駆動型事業開発の4つのサービスラインを提供しています。
会社名: アーキタイプ株式会社
所在地: 東京都港区
代表者: 代表取締役 菅野龍彦
コーポレートサイト: https://archetype.co.jp

■ 本件に関するお問い合わせ

お問い合わせフォーム: https://archetype.co.jp/contact


本リリースに記載の数値は、有価証券報告書(EDINET)・SEC EDGAR の一次ソースに基づきます。会計年度はFY2025(各社の決算期。多くが2026年3月期)に準じます。構成比・中央値は四捨五入のため合計が100%にならない場合があります。

すべての画像


ビジネスカテゴリ
化学
ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

アーキタイプ株式会社

0フォロワー

RSS
URL
https://archetype.co.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区麻布十番2-8-10 麻布松屋ビル4F
電話番号
-
代表者名
菅野 龍彦
上場
未上場
資本金
1000万円
設立
2023年02月