猛暑で「働ける時間」はどう変わるのか——SHIRO & Co.、高知・東京53日間のWBGTデータから「使える時間」を比較

同じ8時間勤務でも、地域によって実際に使える時間の形は異なる。気候リスクを「気温」ではなく「失われる時間」から捉える実験的Assessmentを公開

株式会社SHIRO & Co.

SHIRO & Co.は、気候変動が人間の活動時間や労働、都市、インフラに与える変化を観測する「Climate Observatory」において、高知市と東京都の53日間のWBGTデータを用い、屋外労働における「使える時間」の違いを比較する実験的評価を公開しました。

今回の比較では、2026年7月1日から8月22日までの53日間について、環境省が公開する時間別の推定WBGTデータを同一の実験的方法で分析しました。

その結果、同じ勤務制度・同じ時計上の時間であっても、暑熱条件によって実際に利用可能と推定される時間の形が地域ごとに異なることが確認されました。Climate Observatory(気候変動の構造変化を観測するリサーチプロジェクト)では、この変化を「Climate Temporal Compression(気候による時間圧縮)」という観点から観測しています。

Climate Temporal Compressionの概要と実験的評価は、プレス向けページで公開しています。

Climate Observatoryでは、気候変動を環境問題だけでなく、身体、時間、労働、インフラ、経済、都市などへ波及する構造変化として観測しています。

気候変動を「度」ではなく「時間」で見る

気候変動は通常、気温の上昇として表現されます。

一方、人間の生活や経済活動は「時間」の中で行われます。

Climate Observatoryでは、

Temperature Change(気温が変化する)

             ↓

Viable Conditions Shrink(活動可能な条件が狭まる)

             ↓

Usable Time Shrinks(使える時間が短くなる)

という構造に着目しています。

Climate Temporal Compression(暑熱による実働可能時間の圧縮)とは、気候条件が厳しくなることで、人間、労働、都市活動、生物活動などが、より狭い「活動可能時間」に押し込められていく現象を捉えるための観測概念です。

SHIRO & Co.では「Usable Time(利用可能時間)」を、ある活動を、その時点の気候条件下で安全かつ現実的に実行できる時間量として定義しています。

高知・東京を53日間、同じ方法で比較

今回公開したClimate Usable Time Assessment(気候条件下での「使える時間」の実験的評価)では、高知市と東京都について、2026年7月1日〜8月22日の53日間を比較しました。使用したのは、環境省の時間別推定WBGTデータです。

実験的モデルによる結果は以下の通りでした。

高知市

東京都

比較期間

53日

53日

利用可能時間損失の中央値

1.0時間

0.0時間

最大損失

7.0時間

7.0時間

暑熱による強い制約が生じた日数

28日

19日

損失0時間の日数

25日

34日

同じ53日間でも、高知市ではVery-high constraint(強い暑熱制約)と分類された日が28日、東京都では19日となりました。

一方で、これは高知と東京の「暑さランキング」を示すものではありません。

Climate Observatoryが観測しているのは、気候条件によって「利用可能な時間の形」が地域ごとにどう変わるかです。

2026年7月28日の実験的評価。高知市では6.0時間、東京都では0.0時間の利用可能時間損失が推定され、同じ暦日でも地域によって「使える時間」が異なる結果となりました。

同じ7月28日、高知では6時間、東京では0時間

同じ暦日を比較すると、その違いがより明確になります。

2026年7月28日の実験的推定では、高知市では標準的な屋外作業時間帯のうち6.0時間が利用可能時間の損失として推定されました。

一方、同日の東京都では、同じ方法による推定損失は0.0時間でした。

高知では、8:00〜10:00は活動可能、10:00〜12:00と13:00〜17:00は暑熱による制約がある時間帯と推定され、12:00〜13:00は所定の休憩時間として扱われています。

東京では、8:00〜12:00と13:00〜17:00が活動可能と推定されました。

時計上の一日は同じです。

しかし、実際に活動へ利用できる時間は同じとは限りません。

SHIRO & Co.では、同じ時計の時間でも地域ごとに実際に使える時間が異なる構造を、Temporal Geography(時間の地理性)と呼んでいます。

高知県ではすでに「標準労働時間」と「屋外で使える時間」の分離が制度に現れている

高知県では、屋外作業を主体とする県発注工事を対象に「クールワークタイム」が導入されています。

ガイドラインでは、原則として6月1日から9月30日の期間、11:00〜14:00を休憩時間として作業を中止し、

08:00〜11:00 14:00〜17:00

を作業時間とする例が示されています。

また、この運用によって1日あたり約2時間の作業時間短縮が生じることを前提に、工期延長として扱う考え方も示されています。

Climate Observatoryでは、この制度を今回の評価結果とは分けて扱っています。

高知県のクールワークタイムは実際に観測された制度的対応であり、Climate Usable Time Assessment(気候条件下での「使える時間」の実験的評価)はWBGTデータを使ったSHIRO & Co.の実験的推定です。

両者を同一のものとして扱うものではありません。

「人が足りない」だけでなく、「人が使える時間」が足りなくなる可能性

Climate Observatoryでは、暑熱と屋外労働の関係を、

Heat(暑熱が強まる)

    ↓

Safe Work Window Shrinks(安全に作業できる時間帯が狭まる)

    ↓

Available Labor Hours Decline(実際に働ける時間が減る)

    ↓

Project Duration Expands(工期が延びる)

    ↓

Execution Capacity Falls(実行可能な作業能力が低下する)

という構造として観測しています。

これは「人手不足」という従来の問題とは少し異なります。

人そのものが存在していても、気候条件によって実際に屋外で活動できる時間が短くなれば、実行可能な労働時間は減少します。

Climate Observatoryでは、この問いを「The Missing Worker Hour(失われる実働時間)」として扱っています。

暑熱によって人が活動できる時間が狭まるにつれ、補助作業、遠隔運用、勤務時間の変更、自動化など、作業方法そのものが変化する可能性を示した概念図。

同じ勤務制度でも、実効作業能力は地域によって異なり得る

Climate Usable Time Assessment(気候条件下での「使える時間」の実験的評価)では、この地域差を企業・インフラ運営の観点でも観測しています。

たとえば全国に拠点を持つ事業者が、各地域で同じ勤務制度や同じ名目上の作業時間を採用していたとしても、気候条件によって屋外で実際に使える時間が異なれば、実効的な作業能力も地域ごとに異なる可能性があります。

Assessment(評価)では、

Multiple Sites(複数拠点)

     ↓

Different Temporal Exposure(地域ごとに異なる暑熱へのさらされ方)

     ↓

Different Usable Capacity(地域ごとに異なる「使える時間」)

     ↓

Schedule / Staffing / Automation Strategy(スケジュール・人員配置・自動化戦略への影響)

という構造として整理しています。

osuke Protocolを通じて蓄積された気候関連の観測を、地域、産業、シグナルの段階、変化が現れている領域ごとに整理したClimate Observatoryの観測画面。

Kosuke Protocolから生まれた観測

Climate Temporal Compression(暑熱による実働可能時間の圧縮)は、SHIRO & Co.が開発するKosuke Protocolを通じて、気候、労働、身体、都市、公共政策など複数領域の断片的な変化を接続する過程から生まれた観測の一つです。

Climate Observatoryでは、観測事実と解釈を分け、

REALITY(現実に起きていること)

  • INTERPRETATION (どう解釈するか)

  • MEANING (何を意味するか)

  • RESPONSE (どう対応するか)

という形で、気候変動が身体、時間、労働、インフラ、経済へどう伝播していくかを継続的に観測しています。

今回のAssessment(評価)も、未来予測そのものではありません。

「同じ8時間」という制度上の時間と、気候条件下で実際に利用できる時間がどのように乖離し始めるのかを観測するための実験です。

Climate Observatoryでは、観測された気候シグナルを、身体、時間、労働、経済など複数の観点から分けて記録し、事実と解釈を区別しています。
limate Usable Time Assessmentでは、労働に関する複数の観測項目を整理し、気候条件が「使える時間」や実効作業能力に与える影響を実験的に評価しています。
Climate Observatoryが観測する「Heat Economy」の構造。暑熱が労働、健康、時間、都市活動などへ波及する可能性を複数の観測テーマとして整理しています。

Climate Usable Time Assessment(気候条件下での「使える時間」の実験的評価)について

本評価は、気候観測のための実験的ツールです。

法的な作業可否、労働安全基準への適合、個人の熱中症リスク、作業停止の義務を判定するものではありません。また、WBGTを単純な作業停止基準として扱うものでもありません。

プレス向けページ

Climate Temporal Compressionの概要、高知・東京の比較、Climate Usable Time Assessmentの考え方をまとめたプレス向けページを公開しています。

Climate Temporal Compression — Press Demonstration

https://www.shiroand.io/climate-temporal-compression

本ページは、Climate Temporal Compressionのプレス向けデモンストレーションです。

お問い合わせ

企業向け評価、本番利用、実装、共同検証、取材に関するお問い合わせは、SHIRO & Co.までご連絡ください。

SHIRO & Co.について

SHIRO & Co.は、社会、技術、市場、気候、人間行動に現れる小さな変化を観測し、それらのつながりから構造変化を捉える独立したリサーチ/デザインプロジェクトです。

Kosuke Protocolを通じて、断片的なSignalをObservation、Pattern、Simulation、Opportunityへ接続する試みを進めています。

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会社概要

株式会社SHIRO & Co.

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URL
https://lab.shiroand.io/
業種
サービス業
本社所在地
東京都大田区田園調布本町 25-6 APDC Cohaku
電話番号
-
代表者名
白子麻衣子
上場
未上場
資本金
-
設立
2025年05月