がん診療におけるリアルワールドデータ収集・利活用に資する新たな医療情報基盤を確立
京都大学医学部附属病院(所在地:京都市、病院長:宮本 享、以下『京大病院』)及び新医療リアルワールドデータ研究機構株式会社(本社:京都市、代表取締役社長:是川 幸士、以下『PRiME-R』)は、「がん診療におけるリアルワールドデータ収集に関する多施設共同研究(CONNECT)UMIN000044646」※1(研究代表者:武藤 学 京大病院 腫瘍内科 教授、研究事務局:松本 繁巳 京都大学リアルワールドデータ研究開発講座特定教授、以下『CONNECT』)に参加する医療機関を中心とした全国約40施設※2にCyberOncology®※3を導入し、PRiME-Rのデータセンターと接続することにより、がん診療におけるリアルワールドデータ(以下『RWD』)※4の収集・利活用に資する新たな医療情報基盤(以下『本システム』)を確立しました。本システムにより、自医療機関内及び本システム導入医療機関全体の治療内容や有害事象情報等の閲覧・分析が可能となることで、医療安全や医療技術の向上を実現します。
※1 がん診療におけるリアルワールドデータ収集に関する多施設共同研究(CONNECT)を開始(2021年2月26日):https://prime-r.inc/newsrelease/168/
※2 報道発表日時点の導入施設数(導入予定施設も含む)
※3 電子カルテ等の入力支援システム「CyberOncology®」の本格提供開始について(2020年9月28日):https://prime-r.inc/newsrelease/125/
※4 医療現場から得られる電子カルテデータ、検査データ、治療データ等の臨床情報
CyberOncology®導入マップ(報道発表日時点の導入施設数(導入予定施設も含む))
現在の医療がどのように実践され、どのような課題があるかを迅速かつ正確に把握することは困難です。また、医療の進歩はめざましく、医療技術や医療情報も高度化・複雑化していくことから、今後、医療の実態を把握することがますます難しくなると予想されます。
安全かつ最適な医療を提供するためには、実際の医療現場で得られたRWDを迅速に分析し、医療の現場に還元することが必要です。特に、がんの領域では有害事象(副作用)の発生も多く、少しでも早くそのデータを収集し医療現場に提供することができれば、より安全な医療に繋がるものと考えられます。
すなわち、以上のような課題を解決し、患者さんが安心して医療を受けられる環境を提供するために、RWDを可視化し、医療従事者間の情報共有ができる医療情報基盤の整備を進めることが重要です。
このような背景のもと、京大病院とPRiME-Rは、電子カルテにおけるがん薬物治療に関するデータを標準化/構造化してデータベース化するCyberOncology®を開発・発展させるとともに、多くの医療機関と協力し我が国におけるRWDを迅速かつ効果的に利活用することができる本システムの構築に向け、CyberOncology®の各医療機関への導入を推進してきました。
この度、CONNECTに参加する医療機関を中心とした約40施設に、CyberOncology®を導入し、各医療機関内のCyberOncology®で収集した統計データとPRiME-Rのデータセンターを接続することで、より最適な治療方針の立案や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上に活用することが可能な新たな医療情報基盤を確立しました。
2.取り組みの状況
(1)本システムの確立
国立大学法人京都大学を中心に実施した「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業(2016-2019)」※5において、複数の医療機関に設置された異なるベンダーの電子カルテ情報を、ネットワークを介して収集し、それらの情報を統合データベースとして統計解析等が可能であることを確認しました。こうした成果を基に、京大病院とPRiME-Rは、CyberOncology®の機能開発を進め全国の医療機関への展開を図るとともに、各医療機関内に設置したCyberOncology®とPRiME-Rのデータセンターを高セキュリティネットワークで接続し、多施設の統計データを統合・集計・分析する本システムを確立しました。
※5 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」:https://www.amed.go.jp/program/list/14/01/006.html
(2)本システムの機能
CyberOncology®へ搭載された集計アプリケーションにより、CyberOncology®のデータベースから自医療機関内の治療成績や有害事象情報等の診療データを集計・図式化することが可能です。これにより、自医療機関内での治療成績の可視化による医療実態の把握や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上を支援します。
また、エッジコンピューティング技術※6を駆使し、各医療機関内において個人を特定できないよう秘匿化した統計データを生成し、各医療機関から高セキュリティネットワークを通じてPRiME-Rのデータセンターへ日次で送信します。データセンターでは、異なるベンダーの電子カルテを利用する多施設から送信された統計データを統合・集計することができ、その分析結果を各医療機関へ提供することが可能となります。各医療機関においては、自医療機関および医療機関全体の統計データを参照・分析することで、より最適な治療方針の立案や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上に活用できます。
※6 利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置して、データ処理を行う技術の総称
アプリケーション画面イメージ(数値はダミー)
データセンターの統計データイメージ(数値はダミー)
(3)CONNECTの取り組み状況
CONNECTでは、京大病院を中心に25の医療機関が参画し、2022年7月31日まで、がん薬物治療に関する症例登録を進めています。収集したRWDを解析し利活用することで、医療安全や医療技術の向上に貢献する新たな医療情報基盤の実現可能性を研究しています。また、本年7月の症例登録期間終了以降も継続してRWDを収集・利活用するため、第2期試験(症例登録期間:2025年3月31日まで)を開始します。
CONNECT参加医療機関(順不同)
(4)その他の取り組み
京大病院及びPRiME-Rは、CyberOncology®を活用したRWDの収集と利活用に関する様々な取り組みを支援しています。
西日本がん研究機構の「AIによる肺癌の予後予測モデル構築に向けた多施設レジストリ研究」※7においては、PRiME-R及びNTTデータが技術面でサポートしています。この研究では、RWDから予後予測モデルを構築し、臨床的背景、治療実態、予後を研究します。
また、製薬企業における臨床研究への支援として、アストラゼネカ株式会社の「オシメルチニブによるファーストライン治療の前向きコホート研究※8」や小野薬品工業株式会社及びブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社による「胃癌患者を対象にオプジーボ®で実施する企業主導型の多施設共同臨床研究※9」においてもCyberOncology®を活用したRWD収集を進めています。
※7 AIによる肺癌の予後予測モデル構築に向けた多施設レジストリ研究(REAL-WIND)を開始(2022年3月30日):https://prime-r.inc/newsrelease/431/
※8 「CyberOncology®」をアストラゼネカの肺がん治療薬、オシメルチニブにおける臨床研究へ活用(2020年11月25日):https://prime-r.inc/newsrelease/149/
※9 胃癌患者を対象としたオプジーボ®の臨床研究に「CyberOncology®」を活用(2022年2月4日):https://prime-r.inc/newsrelease/416/
3.各者の役割
・京大病院:臨床研究全体の運営管理
個人情報保護ならびに倫理の観点を遵守した臨床研究の推進
RWDの利活用における医学的知見の提供
・PRiME-R:本システムの導入及び運用保守
本システム導入医療機関の統計データの統合・集計・分析
個人情報保護ならびに倫理の観点を遵守した医療情報の適正な利活用の推進
4.今後の展開
京大病院とPRiME-Rは、RWDの利活用にご協力いただく患者さんの個人情報やプライバシーの保護など、個々人の尊厳や倫理を遵守し、医療情報の適正な利活用を担保してまいります。また、本システムが多数の医療機関・医療従事者や製薬企業等において利活用されるよう、今後もアカデミアや各がん学会等との連携・協働を進め本システムの機能向上や利活用拡大に取り組むとともに、がん領域における医療安全や医療技術の向上、医薬品・医療機器開発の効率化に貢献し、よりよい医療を患者さんに提供できるよう取り組んでまいります。
※2 報道発表日時点の導入施設数(導入予定施設も含む)
※3 電子カルテ等の入力支援システム「CyberOncology®」の本格提供開始について(2020年9月28日):https://prime-r.inc/newsrelease/125/
※4 医療現場から得られる電子カルテデータ、検査データ、治療データ等の臨床情報
CyberOncology®導入マップ(報道発表日時点の導入施設数(導入予定施設も含む))
1.取り組みの背景
現在の医療がどのように実践され、どのような課題があるかを迅速かつ正確に把握することは困難です。また、医療の進歩はめざましく、医療技術や医療情報も高度化・複雑化していくことから、今後、医療の実態を把握することがますます難しくなると予想されます。
安全かつ最適な医療を提供するためには、実際の医療現場で得られたRWDを迅速に分析し、医療の現場に還元することが必要です。特に、がんの領域では有害事象(副作用)の発生も多く、少しでも早くそのデータを収集し医療現場に提供することができれば、より安全な医療に繋がるものと考えられます。
すなわち、以上のような課題を解決し、患者さんが安心して医療を受けられる環境を提供するために、RWDを可視化し、医療従事者間の情報共有ができる医療情報基盤の整備を進めることが重要です。
このような背景のもと、京大病院とPRiME-Rは、電子カルテにおけるがん薬物治療に関するデータを標準化/構造化してデータベース化するCyberOncology®を開発・発展させるとともに、多くの医療機関と協力し我が国におけるRWDを迅速かつ効果的に利活用することができる本システムの構築に向け、CyberOncology®の各医療機関への導入を推進してきました。
この度、CONNECTに参加する医療機関を中心とした約40施設に、CyberOncology®を導入し、各医療機関内のCyberOncology®で収集した統計データとPRiME-Rのデータセンターを接続することで、より最適な治療方針の立案や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上に活用することが可能な新たな医療情報基盤を確立しました。
2.取り組みの状況
(1)本システムの確立
国立大学法人京都大学を中心に実施した「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業(2016-2019)」※5において、複数の医療機関に設置された異なるベンダーの電子カルテ情報を、ネットワークを介して収集し、それらの情報を統合データベースとして統計解析等が可能であることを確認しました。こうした成果を基に、京大病院とPRiME-Rは、CyberOncology®の機能開発を進め全国の医療機関への展開を図るとともに、各医療機関内に設置したCyberOncology®とPRiME-Rのデータセンターを高セキュリティネットワークで接続し、多施設の統計データを統合・集計・分析する本システムを確立しました。
※5 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」:https://www.amed.go.jp/program/list/14/01/006.html
(2)本システムの機能
CyberOncology®へ搭載された集計アプリケーションにより、CyberOncology®のデータベースから自医療機関内の治療成績や有害事象情報等の診療データを集計・図式化することが可能です。これにより、自医療機関内での治療成績の可視化による医療実態の把握や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上を支援します。
また、エッジコンピューティング技術※6を駆使し、各医療機関内において個人を特定できないよう秘匿化した統計データを生成し、各医療機関から高セキュリティネットワークを通じてPRiME-Rのデータセンターへ日次で送信します。データセンターでは、異なるベンダーの電子カルテを利用する多施設から送信された統計データを統合・集計することができ、その分析結果を各医療機関へ提供することが可能となります。各医療機関においては、自医療機関および医療機関全体の統計データを参照・分析することで、より最適な治療方針の立案や有害事象情報等の可視化による医療安全の向上に活用できます。
※6 利用者や端末と物理的に近い場所に処理装置を分散配置して、データ処理を行う技術の総称
アプリケーション画面イメージ(数値はダミー)
データセンターの統計データイメージ(数値はダミー)
(3)CONNECTの取り組み状況
CONNECTでは、京大病院を中心に25の医療機関が参画し、2022年7月31日まで、がん薬物治療に関する症例登録を進めています。収集したRWDを解析し利活用することで、医療安全や医療技術の向上に貢献する新たな医療情報基盤の実現可能性を研究しています。また、本年7月の症例登録期間終了以降も継続してRWDを収集・利活用するため、第2期試験(症例登録期間:2025年3月31日まで)を開始します。
CONNECT参加医療機関(順不同)
(4)その他の取り組み
京大病院及びPRiME-Rは、CyberOncology®を活用したRWDの収集と利活用に関する様々な取り組みを支援しています。
西日本がん研究機構の「AIによる肺癌の予後予測モデル構築に向けた多施設レジストリ研究」※7においては、PRiME-R及びNTTデータが技術面でサポートしています。この研究では、RWDから予後予測モデルを構築し、臨床的背景、治療実態、予後を研究します。
また、製薬企業における臨床研究への支援として、アストラゼネカ株式会社の「オシメルチニブによるファーストライン治療の前向きコホート研究※8」や小野薬品工業株式会社及びブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社による「胃癌患者を対象にオプジーボ®で実施する企業主導型の多施設共同臨床研究※9」においてもCyberOncology®を活用したRWD収集を進めています。
※7 AIによる肺癌の予後予測モデル構築に向けた多施設レジストリ研究(REAL-WIND)を開始(2022年3月30日):https://prime-r.inc/newsrelease/431/
※8 「CyberOncology®」をアストラゼネカの肺がん治療薬、オシメルチニブにおける臨床研究へ活用(2020年11月25日):https://prime-r.inc/newsrelease/149/
※9 胃癌患者を対象としたオプジーボ®の臨床研究に「CyberOncology®」を活用(2022年2月4日):https://prime-r.inc/newsrelease/416/
3.各者の役割
・京大病院:臨床研究全体の運営管理
個人情報保護ならびに倫理の観点を遵守した臨床研究の推進
RWDの利活用における医学的知見の提供
・PRiME-R:本システムの導入及び運用保守
本システム導入医療機関の統計データの統合・集計・分析
個人情報保護ならびに倫理の観点を遵守した医療情報の適正な利活用の推進
4.今後の展開
京大病院とPRiME-Rは、RWDの利活用にご協力いただく患者さんの個人情報やプライバシーの保護など、個々人の尊厳や倫理を遵守し、医療情報の適正な利活用を担保してまいります。また、本システムが多数の医療機関・医療従事者や製薬企業等において利活用されるよう、今後もアカデミアや各がん学会等との連携・協働を進め本システムの機能向上や利活用拡大に取り組むとともに、がん領域における医療安全や医療技術の向上、医薬品・医療機器開発の効率化に貢献し、よりよい医療を患者さんに提供できるよう取り組んでまいります。
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