大学1・2年生の約8割が成人となったことについて不安であると回答 約140年ぶりの成人年齢引き下げに伴う消費生活における学生の意識調査を実施
学生、親世代ができる対応策とは?
日本女子大学(東京都文京区、学長:篠原聡子)は、本学1・2年生を対象に「成人年齢引き下げに伴う消費生活における学生の意識調査」を実施しました。
今回の民法改正(2022年4月1日より施行)により、18歳、19歳の新成人は自らの判断で法律上有効な契約を締結できるようになりました。一方で、「未成年者取消権」※を喪失するため、契約に関する知識が十分でないまま成人となることで、消費者トラブルに巻き込まれる危険性も高くなります。そこで、本学学生の消費者トラブルの未然防止や注意喚起に役立てるため、意識調査を行いました。本学の調査によって、消費生活における学生の意識や不安要因が明らかになったため、今後の学生生活に関する指導に活かしていきます。
※「未成年者取消権」(民法5条2項)
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」
法定代理人(未成年者の親権者。通常は父母)が同意していない契約は取り消すことができる。
〈調査結果サマリー〉アンケート回答者の割合
〈調査概要〉
- 調査名称:「18歳、19歳成人アンケート」
- 調査方法:インターネット調査
- 調査時期:2022年5月23日~5月28日
- 調査対象:日本女子大学 1年生、2年生
- 回答数 :合計587名(1年生333名、2年生254名)
※3,110名にアンケートを配信し、587名が回答
〈調査レポート〉
①成人年齢引き下げについての意識
■ 「2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられたことを知っている」学生は99.3%。
まず、「2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられたことを知っているか」と質問したところ、知っていると答えた学生は99.3%と、学生の認知率はとても高く、1・2年生ほとんどの学生が自分が成人であることを認識しています。
半数以上が「良くないと思う」と回答。
続いて、成人年齢引き下げに伴う学生の気持ちを尋ねると、1年生の81.1%が不安を感じており(「とても不安(25.5%)」「少し不安(55.6%)」)、2年生も69.3%が不安に思っている(「とても不安(21.3%)」「少し不安(48.0%)」)ことが判明しました。成人になり、万が一トラブルに巻き込まれた場合の対処法や対応策について不安を感じている学生が多くいることが推察できます。
また、成人年齢の引き下げに対しどう思うか尋ねたところ、「どちらかといえば良くないと思う」「良くないと思う」と回答した学生は1・2年生合計で53.5%と半数以上にのぼりました。成人になったことに対する不安が、こうしたイメージにもつながっていると考えられます。
■ “親の同意なし”で契約可能な項目の認知率、いずれも7割超えに。
1年生の方が当事者意識が高い傾向。
続いて「成人年齢引き下げ」に伴い、消費生活において18歳以上が親の同意がなくても法律上有効な契約ができるようになったことについての認知率を調べました。認知率の最も高かった項目は1・2年生合計で94.5%の学生が知っていると回答した「クレジットカードを作ることができる」(1年生97.0%、2年生91.3%)で、次いで84.8%の「携帯電話の契約ができる」(1年生89.2%、2年生79.1%)、72.2%の「高額商品の購入のためローンを組むことができる」(1年生79.3%、2年生63.0%)、71.9%の「一人暮らしの部屋を借りることができる」(1年生78.4%、2年生63.4%)の順で認知率が高いことがわかりました。
いずれの項目も1・2年生合計で7割を超えていましたが、内訳をみると、全てにおいて1年生の認知率が2年生を上回っていました。18歳も多い1年生は、成人になった当事者意識が高い傾向がうかがえます。
未成年者の場合、親の同意がない契約には未成年者の消費者被害を抑止する観点から「未成年者取消権」によって、その契約を取り消すことができます。しかし、成人年齢引き下げに伴い18歳や19歳であっても「未成年者取消権」を喪失することを知っている学生は65.1%にとどまりました。今後、知らず知らずのうちに消費者トラブルに巻き込まれないためにも、18歳、19歳の新成人は契約の取消ができなくなることに注意する必要があります。
最後に、商品の購入やサービスの契約でトラブルに見舞われた際、誰に相談するかと尋ねたところ、「親」と答えた学生は84.3%と圧倒的に多い結果となりました。成人となり様々な契約ができるようになった一方で、まだ親から経済的に独立しきれていないことから親のサポートを必要とする学生が多い実態がみえます。
■調査実施後に、本学の細川幸一教授(家政学部 被服学科 消費生活研究室)と
今年4月1日に成人となった4人の学生が座談会を行いました。その中で、現在の意識などが語られました。
・まだ大きな契約を実際にしたことがなく、昨年までは受験に意識がいっぱいだったので、成人になった自覚がまだない。
・クレジットカードを自分で作ったので、責任感を持ちたい。事前に親からの承諾を得る必要はなかったが、作ったことは親に報告した。
・もしトラブルに巻き込まれたら親に相談する。大学生なので、何かあった時に一番迷惑をかけてしまうと思う。時間が経つと取り返しがつかなくなることもあるので、すぐに相談したい。
・大学生を狙った悪質商法などのトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、これから大人として生きてくために正しい知識を身に付けたい。
<日本女子大学 家政学部 被服学科「消費生活研究室」 細川 幸一教授コメント>
今回のアンケート結果を踏まえて、「親に相談する」と答えた学生が多くいたことが意外でした。アンケート上では8割が「親に相談する」と答えてはいるものの、実際にトラブルにあった際に本当に親に相談できるのか、内容によっては心理的なハードルが高いのではないかと考えています。今はまだ成人年齢の引き下げが施行されたばかりですが、今後3カ月、6カ月経った時に、どういうトラブルが出てくるかを注視し、親はもちろん、教育機関もサポート体制を整えることが重要です。
新成人の学生ができる対応策として、一番は自分の意思で契約を結ぶことができる自立した消費者としての自覚をきちんと持つことです。特に18歳、19歳の学生は一人暮らしをスタートする人や、初めてアルバイトをする人も多く、不慣れな中で一人で契約を結ばなくてはならないケースも多くなると思います。そのうえで必要のない契約はきっぱりと断る力を身に付けること、そして不安な時にはすぐに相談をすることが肝心です。
親も、子どもの消費生活においてどのようなトラブルが発生する可能性があるか、万が一トラブルが発生した場合はどのような対処をするべきかを考え、子どもと共有しておくと良いでしょう。
また、新成人が被害を受けないための対策や心構えも大事ですが、逆にマルチ商法や振り込め詐欺など加害者となってしまうおそれもあります。被害者にも加害者にもならないためにリスクマネジメントする こと、自分で考えて自分で行動する“消費者力”をきちんと養っていくことが、今後さらに重要になってくるのではないでしょうか。
独立行政法人国民生活センター調査室長補佐、アメリカ・ワイオミング州立大学ロースクール客員研究員等を経て、現職。一橋大学法学博士。消費者問題としての医療トラブルや公共料金のあり方、持続可能な社会のための消費者教育(エシカル消費)などを研究。著書に『大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)がある。
本学は今回の調査結果を通じて、本学学生へ注意喚起を行うとともに、消費者トラブルに関する相談窓口を学生に周知することで、今後の消費者トラブルの未然防止に取り組んでいきます。
※「未成年者取消権」(民法5条2項)
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」
法定代理人(未成年者の親権者。通常は父母)が同意していない契約は取り消すことができる。
〈調査結果サマリー〉アンケート回答者の割合
〈調査概要〉
- 調査名称:「18歳、19歳成人アンケート」
- 調査方法:インターネット調査
- 調査時期:2022年5月23日~5月28日
- 調査対象:日本女子大学 1年生、2年生
- 回答数 :合計587名(1年生333名、2年生254名)
※3,110名にアンケートを配信し、587名が回答
〈調査レポート〉
①成人年齢引き下げについての意識
■ 「2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられたことを知っている」学生は99.3%。
まず、「2022年4月1日より成人年齢が18歳に引き下げられたことを知っているか」と質問したところ、知っていると答えた学生は99.3%と、学生の認知率はとても高く、1・2年生ほとんどの学生が自分が成人であることを認識しています。
■成人年齢の引き下げについて、約8割が18歳で成人となったことに「不安」を抱え、
半数以上が「良くないと思う」と回答。
続いて、成人年齢引き下げに伴う学生の気持ちを尋ねると、1年生の81.1%が不安を感じており(「とても不安(25.5%)」「少し不安(55.6%)」)、2年生も69.3%が不安に思っている(「とても不安(21.3%)」「少し不安(48.0%)」)ことが判明しました。成人になり、万が一トラブルに巻き込まれた場合の対処法や対応策について不安を感じている学生が多くいることが推察できます。
また、成人年齢の引き下げに対しどう思うか尋ねたところ、「どちらかといえば良くないと思う」「良くないと思う」と回答した学生は1・2年生合計で53.5%と半数以上にのぼりました。成人になったことに対する不安が、こうしたイメージにもつながっていると考えられます。
②消費生活における認知と意識
■ “親の同意なし”で契約可能な項目の認知率、いずれも7割超えに。
1年生の方が当事者意識が高い傾向。
続いて「成人年齢引き下げ」に伴い、消費生活において18歳以上が親の同意がなくても法律上有効な契約ができるようになったことについての認知率を調べました。認知率の最も高かった項目は1・2年生合計で94.5%の学生が知っていると回答した「クレジットカードを作ることができる」(1年生97.0%、2年生91.3%)で、次いで84.8%の「携帯電話の契約ができる」(1年生89.2%、2年生79.1%)、72.2%の「高額商品の購入のためローンを組むことができる」(1年生79.3%、2年生63.0%)、71.9%の「一人暮らしの部屋を借りることができる」(1年生78.4%、2年生63.4%)の順で認知率が高いことがわかりました。
いずれの項目も1・2年生合計で7割を超えていましたが、内訳をみると、全てにおいて1年生の認知率が2年生を上回っていました。18歳も多い1年生は、成人になった当事者意識が高い傾向がうかがえます。
■成人年齢引き下げに伴う「未成年者取消権」の喪失を知らない学生、約35%。
未成年者の場合、親の同意がない契約には未成年者の消費者被害を抑止する観点から「未成年者取消権」によって、その契約を取り消すことができます。しかし、成人年齢引き下げに伴い18歳や19歳であっても「未成年者取消権」を喪失することを知っている学生は65.1%にとどまりました。今後、知らず知らずのうちに消費者トラブルに巻き込まれないためにも、18歳、19歳の新成人は契約の取消ができなくなることに注意する必要があります。
■トラブルに見舞われた際、学生の8割以上が「親」に相談すると回答。
最後に、商品の購入やサービスの契約でトラブルに見舞われた際、誰に相談するかと尋ねたところ、「親」と答えた学生は84.3%と圧倒的に多い結果となりました。成人となり様々な契約ができるようになった一方で、まだ親から経済的に独立しきれていないことから親のサポートを必要とする学生が多い実態がみえます。
<新成人のコメント>
■調査実施後に、本学の細川幸一教授(家政学部 被服学科 消費生活研究室)と
今年4月1日に成人となった4人の学生が座談会を行いました。その中で、現在の意識などが語られました。
・まだ大きな契約を実際にしたことがなく、昨年までは受験に意識がいっぱいだったので、成人になった自覚がまだない。
・クレジットカードを自分で作ったので、責任感を持ちたい。事前に親からの承諾を得る必要はなかったが、作ったことは親に報告した。
・もしトラブルに巻き込まれたら親に相談する。大学生なので、何かあった時に一番迷惑をかけてしまうと思う。時間が経つと取り返しがつかなくなることもあるので、すぐに相談したい。
・大学生を狙った悪質商法などのトラブルに巻き込まれる可能性もあるため、これから大人として生きてくために正しい知識を身に付けたい。
<日本女子大学 家政学部 被服学科「消費生活研究室」 細川 幸一教授コメント>
今回のアンケート結果を踏まえて、「親に相談する」と答えた学生が多くいたことが意外でした。アンケート上では8割が「親に相談する」と答えてはいるものの、実際にトラブルにあった際に本当に親に相談できるのか、内容によっては心理的なハードルが高いのではないかと考えています。今はまだ成人年齢の引き下げが施行されたばかりですが、今後3カ月、6カ月経った時に、どういうトラブルが出てくるかを注視し、親はもちろん、教育機関もサポート体制を整えることが重要です。
新成人の学生ができる対応策として、一番は自分の意思で契約を結ぶことができる自立した消費者としての自覚をきちんと持つことです。特に18歳、19歳の学生は一人暮らしをスタートする人や、初めてアルバイトをする人も多く、不慣れな中で一人で契約を結ばなくてはならないケースも多くなると思います。そのうえで必要のない契約はきっぱりと断る力を身に付けること、そして不安な時にはすぐに相談をすることが肝心です。
親も、子どもの消費生活においてどのようなトラブルが発生する可能性があるか、万が一トラブルが発生した場合はどのような対処をするべきかを考え、子どもと共有しておくと良いでしょう。
また、新成人が被害を受けないための対策や心構えも大事ですが、逆にマルチ商法や振り込め詐欺など加害者となってしまうおそれもあります。被害者にも加害者にもならないためにリスクマネジメントする こと、自分で考えて自分で行動する“消費者力”をきちんと養っていくことが、今後さらに重要になってくるのではないでしょうか。
日本女子大学 家政学部 被服学科「消費生活研究室」 細川 幸一教授
独立行政法人国民生活センター調査室長補佐、アメリカ・ワイオミング州立大学ロースクール客員研究員等を経て、現職。一橋大学法学博士。消費者問題としての医療トラブルや公共料金のあり方、持続可能な社会のための消費者教育(エシカル消費)などを研究。著書に『大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)がある。
本学は今回の調査結果を通じて、本学学生へ注意喚起を行うとともに、消費者トラブルに関する相談窓口を学生に周知することで、今後の消費者トラブルの未然防止に取り組んでいきます。
- 日本女子大学は、日本初の組織的な女子高等教育機関として創立し、昨年120周年を迎えました。私立女子大学唯一の理学部を有し、文理融合の教育環境をもつ女子総合大学です。幼稚園から大学院までの一貫教育、さらに卒業生以外にも門戸を開くリカレント教育など、誰もが生涯を通じて学び、成長し続ける社会を創るための機会を提供しています。多様で非連続に変化する社会において、新しい明日を共に創る人材を育てています。詳しくは、https://www.jwu.ac.jpをご覧ください。
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