書籍『持続可能な社会づくりへの統合的アプローチ』出版
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)は、2024年7月30日に書籍『持続可能な社会づくりへの統合的アプローチ』(武内和彦・高橋康夫 監修/IGES 編)を丸善出版より出版します。
世界は今、深刻化する気候変動や生物多様性の損失といった地球規模の諸課題に直面しています。それらの問題には多様な主体が関わっており、問題が生じる要因とその影響は相互に密接に関連しています。こうした中、IGESでは、環境・社会・経済の諸課題を俯瞰し、科学と政策を結び付け、包摂的に課題解決を図る「統合的アプローチ」を重視した研究活動を展開しています。
本書は、IGESの研究活動を通して得られた知見をもとに、統合的アプローチの実践に不可欠なプロセスを可視化し、国内外で試みられている豊富な実践例を紹介することで、持続可能な社会づくりへの具体的な道筋を示すものです。第1章~第3章では、統合的アプローチの背景と、これを構成する7つのプロセスについて詳しく解説します。後半の第4章以降では、統合的アプローチの実践例として、①持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みを加速するシナジー(相乗効果)の強化、②国・自治体・アジアの諸都市におけるネット・ゼロへの取り組みと気候にレジリエントな開発、③循環型の経済社会への移行、④ネイチャーポジティブ実現への取り組み、⑤ビジネスと金融の有機的連携について紹介します。
本書の出版に当たり、監修を務めた武内和彦IGES理事長は次のように述べています。「持続可能な地球環境と人類社会の未来を導く2030年までの「決定的な10年」もすでに折り返し点が間近に迫っています。こうした中、超学際的な思考と科学・政策のインターフェイス強化の視点から地球規模課題の解決に取り組む「統合的アプローチ」の重要性は国内外の議論において着実に認識されつつあります。持続可能な社会への変革を進めるあらゆるステークホルダーにとって、本書が力強い後押しとなることを期待しています。」
また、出版にあたり、各界識者より以下の推薦のことばをお寄せいただきました。本書籍の詳細、識者の皆様からお寄せいただいた推薦の言葉は、本書籍の特設ページからもご確認いただけます。
「気候危機と生物多様性の損失という複雑で相互に関係しあう現代社会の問題と対峙するには、要素還元主義に基づく既存の学術研究では限界があります。その限界を打破し問題を解決するために、個々の学術分野の知識を構造化し、全体像を構築する必要があります。そうした使命感から私たちは「サステイナビリティ学(Sustainability Science)」を開拓してきました。本書はサステイナビリティ学のこれまでの研究と問題解決に向けた実践を踏まえつつ、それをさらに発展させ、「統合的アプローチによる問題解決」のための7つのプロセスを具体的に提示しています。本書はサステイナビリティ学の最新の到達点であり、今後の研究と政策を考える上での必読書です。」
小宮山宏 様
株式会社三菱総合研究所理事長/国立大学法人東京大学第28代総長/一般社団法人プラチナ構想ネットワーク会長
「持続可能な社会の実現をめざすとき、相互に連関する環境問題とともに、様々な経済・社会の課題に私たちが直面していることに気づく。こうした環境・社会・経済の諸課題の解決には、科学の知見に基づき、社会の多様な主体と協働して、統合的に解決しようとする取り組みが鍵を握る。本書は、国内外で試みられている実践例を示しつつ、直面する問題の解決に果敢に取り組む人に多くのヒントを与えてくれるだろう。」
高村 ゆかり様
東京大学未来ビジョン研究センター教授/中央環境審議会会長
「気候危機と生物多様性の危機、そしてプラスチックなどによる汚染の危機が深刻化する中で、人類は三つの危機を同時に解決する道を探ることを求められている。しかも、貧困や格差という社会的課題への配慮も欠かせない。そうでないと何かの対策が別の危機を悪化させ、見せかけの環境対策、グリーンウォッシュになりかねない。三つの危機の現状と対策の詳述に留まらず、統合的な解決策の大切さとそれへの道筋を示す本書は、特に企業や金融機関にとっての有用な教科書となり得るだろう。」
井田徹治様
共同通信社編集委員
「持続可能な社会づくりへの統合的アプローチ」概要
武内和彦・高橋康夫 監修
地球環境戦略研究機関(IGES) 編
発行元:丸善出版
定価:4,180円(本体3,800円+税)
発行日:2024年7月30日
目次
第1章 IGESのこれまでの歩み
l 「地球環境戦略研究機関のあり方」とその実践・展開
l IGES中長期戦略(2016 年~2025 年)
l IGESの現在の研究体制
第2章 超学際的研究の展開と社会との連携・協働
l 俯瞰的科学としてのサステイナビリティ学の発展と深化
l サステイナビリティ学を支える基本概念とアプローチ
第3章 統合的アプローチによる問題解決
l 統合的アプローチとはなにか?
l 総合知としての科学的知見と国際環境政策への反映
第4章 持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた統合的アプローチ
l シナジー(相乗効果)
l フォローアップ・レビュー(FUR)
l ポストSDGsに向けて
第5章 ネット・ゼロでレジリエントな社会に向けて
l 国レベルにおけるネット・ゼロ:統合的なアプローチによる1.5℃目標達成シナリオ
l 国内自治体レベルにおけるネット・ゼロ
l 海外(アジア)都市におけるネット・ゼロ
l 気候変動適応の多面性:IGES の取り組みから
l 気候変動緩和策と適応策の統合的アプローチ
第6章 持続可能な移行(トランジション)への入り口としての循環経済
l 三つの地球危機(気候変動,生物多様性,汚染)と循環経済との相互関係
l 海洋プラスチック問題の国際政策動向と循環経済への移行
l 脱炭素ライフスタイルのための地域社会の共創
l 結論:循環型で持続可能な社会経済を作るには
第7章 ネイチャーポジティブな社会に向けて
l 生物多様性・生態系サービスの予測評価と政策立案支援
l 持続可能な木材生産につながる合法木材調達
l 生物多様性の国際政策とIPBESを通した科学政策連携
l SATOYAMAイニシアティブを通じた国際展開
第8章 統合的アプローチのビジネス・金融分野での展開
l 企業経営へのSDGsの統合
l ビジネス・金融による環境社会課題の統合的な解決
l 多様なステークホルダーとの統合的なエンゲージメントの実施
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES: Institute for Global Environmental Strategies)について
IGESは、アジア太平洋地域における持続可能な開発の実現に向け、国際機関、各国政府、地方自治体、研究機関、企業、NGO等と連携しながら、気候変動、自然資源管理、持続可能な消費と生産、グリーン経済などの分野において実践的な政策研究を幅広く行っています。1998年、日本政府及び神奈川県の支援により設立。本部は神奈川県葉山町に所在し、約100名の研究者を擁し、その約3分の1が外国籍。関西(兵庫県)、北九州、北京、バンコク、東京の各センター・事務所と共に、グローバル及びアジア太平洋地域のネットワークを生かした戦略研究を展開しています。
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