福島第一原子力発電所の廃炉作業にbestatの3Dデータ処理技術を活用

建屋内を自動で3D化し、高放射線下での作業員の安全性と作業精度の向上を促進する取り組みを開始

bestat株式会社

2025年2月28日 09時00分

3Dデータ処理特化のbestat株式会社（本社：東京都文京区、代表取締役：松田尚子、以下bestat）は、東京パワーテクノロジー株式会社（本社：東京都江東区、代表取締役社長：塩川和幸、以下東京パワーテクノロジー）による、福島第一原子力発電所における廃炉作業のため、東大発スタートアップとして独自AIアルゴリズムで高精度の3Dデータ自動生成を実現する『3D.Core』を提供しました。これにより、高放射線下作業における安全レビューおよび作業品質管理向上に向けた取り組みを開始します。

3Dデータ処理技術の活用により、作業員の安全性と作業精度の向上が促進します。

◾️現状と課題

これまでの廃炉作業では、実装置を配置した模擬現場でのモックアップ訓練や、2D図面による位置把握、テキストマニュアルによる作業手順・安全性を確認していました。しかし、模擬現場の再現、図面やマニュアルの確認などの作業には膨大な時間がかかり、作業者の感覚に依存する工程もあり、作業者の認識共有やノウハウの蓄積がしづらい状況でした。

また、廃炉作業の中で、建屋内などを3D化し、デジタルツイン環境の構築は進められていましたが、撮影時点から3Dでの再現までに時間を要し、完成時点では状況が変化していることも多く、作業状況に合わせてシミュレーション環境を随時更新する必要があり、実務での活用には課題が多く残っていました。

＜２D図面イメージ＞　

出展：東京電力HD　福島第一原子力発電所における廃炉作業の取組み(2020年度)

◾️廃炉作業におけるデジタルツイン・3D技術活用の有効性

今回、福島第一原子力発電所における廃炉作業の作業精度・安全性向上と作業ノウハウの蓄積を目的に、特に以下の観点でbestatの3D自動生成のクラウドサービス『3D.Core』が評価され、導入されました。

特殊機材・撮影スキルがなくとも、撮影データからスピーディに精度の高い3D空間を構築できるため、デジタルツインを日常業務に取り入れられる
安全な場所にいながら3D空間での実作業シミュレーションができ、動画や図面などからは察知しづらいリスクの発見に寄与
作業者の経験や勘に頼るのではなく3D技術による体系化や作業の標準化が加速

◾️『3D.Core』を用いた今回の検証内容

1. 作業空間と放射線分布データを3D化し、高放射線の場所を容易に視覚的に把握

福島第一原子力発電所の作業空間の一部及び、放射線量の分布マップを生成するため、計測装置により画像、並びに点群データで取得。それらのデータをbestat独自のアルゴリズムで3D化。得られた、作業空間と高放射線の分布マップをマージし、現地のリアルな状況を再現し、放射線量の高い箇所や分布を3Dで可視化。さらに、VR技術を用いてメタバース空間に入りこみ検証を行います。

2. 作業員を3D化し、仮想空間上に配置することで、作業場のリスクを事前に検知

作業員・設備を3D化して仮想空間上に配置し、作業場のリスク（※）をシミュレーションし、作業関係者で共有、共通理解の向上を図ります。

※作業員がXの場所に立つと転倒や躓きの可能性がある、または、設備をXの場所に置くと作業の妨げになるなど

これらの検証を進め、3D技術を組み込んだ作業安全レビュープロセスを標準化することで、より高精度かつ安全な作業遂行の実現を目指します。

＜廃炉作業の3Dシミュレーションの様子＞

◾️3D技術を活用した、廃炉作業における今後の展望

東京パワーテクノロジー株式会社

執行役員原子力事業部原子力技術開発センター長

岡村祐一様

現場100回とよく言われますが、環境が厳しい場所や簡単に行くことが困難な場所は多々あり、廃炉の現場がまさにそれに当てはまります。そうした変化する過酷な現場・現物の安全評価をいかに、迅速かつ確実に実施することができるか。3D技術を使ったリアリティのある現場再現とメタバース環境を使用して皆で考える仕組みが、安全と品質の確保ための強力なツールになると確信しています。そのために、3D.Coreの特徴である迅速かつ個別にOrder-Madeで3Dデータを作成できるというのは決め手の一つとなりました。

加えて、スマホ等のアプリを活用して容易にその3Dデータ撮影・作成ができるだけでなく、放射線データなど様々な計測機器で取得したデータをアップロードするだけで、軽量化された扱いやすい3Dモデルをスピーディに作成できる点も評価したポイントです。

こうした現場作業における３D技術の活用は、災害や不適合を分析する安全工学上のSafety-Iのみならず、良好事例や優れた技を形式知化するSafety-IIにも適用が可能と思われ、深刻化する企業のBCPや技術継承などへの応用も今後進んで行くと考えています。

bestat株式会社

代表取締役　松田尚子

弊社の「3D.Core」は、点群や画像、動画をアップロードするだけで、誰もが簡単に3Dデータを活用できるサービスです。3Dデータを頻繁に業務で活用することで、「現場を直感的に理解し、現場の変化をすぐに仮想空間に反映し、シミュレーションする」ことが可能になります。

福島第一原子力発電所という危険作業が避けられない現場において、この3Dデータ活用のメリットを少しでも活かして頂き、現場で活躍される作業員や地域住民の方々の更なる安心・安全が実現することを願っております。

◾️独自アルゴリズムで高精度の3Dモデル生成を実現する『3D.Core』

『3D.Core』は東京大学発のbestatが独自開発、特許を取得したアルゴリズムにより、精緻な3Dデータを生成することができるクラウドサービスです。

1. 工数のかかる3Dデータ生成を独自のAIアルゴリズムで自動化し、省コストかつ迅速に高精度な3Dデータ生成を実現

従来は、多くの時間と労力を要した3Dデータ生成を独自のアルゴリズムでAIによって代替します。他のアルゴリズムに比べ、3Dデータの「破れ」「歪み」「不正確な表面の凹凸」が極端に少なく、またその精度は最大約99%を誇ります。このような高品質な3Dデータをスピーディに生成することが可能になり、高精度なデータ生成とデータ活用のための作業工数削減の両方を実現できます。