良い堆肥と悪い堆肥の識別法の開発

合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)は、病原菌に対する堆肥の影響を評価し、良質な堆肥の製造と販売を促進し、農業生産者の安心安全を確保する取り組みをご紹介します。

図1. 3種類の評価で堆肥の良否を識別

合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)(本社:佐賀県伊万里市、代表:橋本 好弘)は、サツマイモ基腐病菌を用い、同菌の増殖を抑える「良い堆肥」と、同菌の増殖を助け増殖させる恐れのある「悪い堆肥」の識別法を開発しました。本手法は、バイオセンサーを用い、電極に固定する微生物を替える事と、微生物に与える餌の種類を変更する事を組み合わせた3種類の条件を設定する事で堆肥の良否判定を行うものです。1つ目は、堆肥に含まれる成分が病原菌の餌となり病原菌の増殖を助ける恐れがあるか、堆肥中の微生物が病原菌を抑え込むことができるかを調べます。2つ目は、堆肥を施用した土壌を用い、土壌が病原菌を抑える力があるか、病原菌の増殖を許すかの評価を行います。3つ目は、堆肥中の微生物が落ち着き安定した状態にあるか、活発に発酵中で安定性に欠ける状態にあるかの評価を行います。これらの3条件で評価する事で堆肥の良否を予測する事が可能となりました。


背景

病害を抑制する堆肥と病害を助長する堆肥の例

堆肥には、病原菌を抑制する効果のあるものと、病原菌を増やし、病害を拡大するものがあることが知られています。その1例として、松田氏により表1にまとめられています。しかし、同じ鶏ふん、豚ふん、牛ふんなどとして販売されている堆肥であっても、その品質や腐熟度は様々で、生産者が畑で実際に使用してみないと分かりません。試験研究機関や営農指導員などが未熟な堆肥を使わない様に指導してはいますが、多くが完熟堆肥と明記して販売されています。

サツマイモ基腐病は、国内に急速に広がっており、生産者にとっては大きな問題となっています。そのため、薬剤を使用した土壌消毒などの対策が講じられていますが、農林水産省が推進している「みどりの食料システム戦略」、持続可能な食糧生産に向けての施策とは乖離してきています。病害の更なる拡大を食い止めるためにも、施用する堆肥や土づくり資材の面からも再度見直していく必要があります。生産者にとって、病害の拡大は死活問題であり、人体や環境にとって良くないと分かっていても化学農薬を使った土壌消毒に頼らざるを得ない状況にあります。

堆肥や土づくり資材を製造・販売しているメーカー、販売店および生産者を指導する立場の方々が、一致協力してこの問題にあたる必要があります。良質で病害を抑制する効果のある堆肥を責任をもって製造し、販売し、生産者が安心してこれを使える社会になる事を目指していく必要があります。

そのためにも、「良い堆肥」と「悪い堆肥」をきちんと識別していく必要があります。

実験方法

図2.堆肥評価の3条件

試験には、27種類の堆肥や土づくり資材を用いました。試験は、左図の3つの条件で行いました。

(1)病原菌に対して、堆肥を施用する事により、病原菌の呼吸活性の変化を調べました。

(2)病原菌に対して、堆肥を混和した土壌を1か月間インキュベート後に施用する事により、病原菌の呼吸活性の変化を調べました。

(3)堆肥中の微生物を電極に固定化し、餌(酵

母エキス)を与え、呼吸活性の変化を調べました。

実験結果

図3. サツマイモ基腐病菌の応答
図4. 堆肥の腐熟度評価

図5.3つの試験結果のまとめ

図3.の横軸(X軸)に堆肥単独施用により、サツマイモ基腐病菌の呼吸活性を抑制または促進の結果を示しました。堆肥中の微生物達の力が強く病原菌の呼吸活性を抑え込む力がある場合には、プラスの値を示しました。逆に病原菌の餌などが豊富に含まれていて病原菌の呼吸活性を高める場合には、マイナスの値となりました。

図3.の縦軸(Y軸 )には、堆肥混和土壌の施用により、サツマイモ基腐病菌の呼吸活性を抑制ま

たは促進の結果を示しました。堆肥を含む土壌が、病原菌の呼吸活性を抑え込む力がある場合には、プラスの値を示しました。逆に病原菌の呼吸活性を高めた場合には、マイナスの値となりました。

図4.の堆肥の腐熟度評価では、未熟な堆肥は、まだ活発に発酵中であり微生物活性が高い状態であるため、餌(酵母エキス)を与えた場合に高い応答を示しました(1.0mgO2/L以上)。中熟堆肥は、堆肥中の微生物がやや落ち着き始めているので、中間的な値となりました(0.4以上、1.0未満)。完熟堆肥は、微生物が落ち着いているため低い値を示しました(0.4mgO2/L未満)。この他に、微生物活性を示さない堆肥が1点(No.55)がありました。

図5.にこれら3つの試験結果をまとめました。

図1.(再褐)3種類の評価結果で堆肥の良否を識別
        図6.箱ひげ図

これらの結果をまとめ、堆肥の良否を識別した結果、図1を再褐しました。また、資材単独評価結果と資材混和土壌評価結果を掛け合わせた値を用いて、堆肥腐熟度別に箱ひげ図を作成しました(図6)。その結果、完熟堆肥と中熟堆肥、未熟堆肥が異なる箱ひげ図として識別できることが明らかとなりました。

尚、各堆肥の製品名など詳細情報の開示に関しては、個別にご相談ください。

期待される効果

  • 土壌病害の発生に悩む生産者が、良質で病害抑制効果のある堆肥を安心して使用できるようになります。

  • 堆肥メーカーは、良質で病害抑制効果のある堆肥を製造するための明確な基準が設定されることにより、堆肥製造の品質維持管理に取り組む事が可能になります。

  • 堆肥メーカーおよび販売店は、良質で病害抑制効果のある堆肥であることを数値データで示すことができ、自信をもって販売できるようになります。

  • 営農指導員や試験研究機関など生産者に技術指導する立場の方々も堆肥の良否について、データに基づく明確な説明が可能となります。

  • 今回は、サツマイモ基腐病菌に対する堆肥の施用効果に限定した試験でしたが、今後、他の病原菌に対する影響についても同様に調べることが可能となります。

合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)について

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【会社概要】

社名:合同会社土壌診断用バイオセンサー研究会(SDB研)

本社所在地:佐賀県伊万里市黒川町福田745-1

代表取締役:橋本好弘

事業内容: 土の健康診断事業

設立: 2021年4月1日

事業内容: (1)土の生物性診断、(2)資材評価・委託試験、(3)土づくり等セミナー、(4)堆肥・肥料等技術指導・コンサル、(5)資材高速選抜試験、(6)装置製造・販売

HP:土壌診断用バイオセンター研究会 | SDB研 

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会社概要

URL
https://soil-biosensor.jp
業種
サービス業
本社所在地
佐賀県伊万里市黒川町福田745ー1
電話番号
080-5009-2119
代表者名
橋本 好弘
上場
未上場
資本金
200万円
設立
2021年04月