一休寺 庫裡前の松、役目を終えて ― 禅の心を映す景観の象徴
庫裡前で長年枝を広げ、訪れる人々を迎えてきた老松が、静かにその幕を下ろします。禅寺に息づく松の精神を胸に、これまでの歩みに深く感謝し、その姿を心に留めたいと思います。

拝啓 春暖の候、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
このたび、酬恩庵一休寺におきまして、庫裡前に長年立ち続けておりました松の伐採を行う運びとなりましたので、ご報告申し上げます。
この松は、その正確な樹齢こそ定かではないものの、庫裡が加賀前田家の寄進により建立された慶安三年(1650年)以降、境内を静かに見守り続けてきた非常に古い樹木でございます。年月を重ねる中で幹は太く育ち、枝先はその重みにより大きく垂れ下がり、庫裡前の景観を特徴づける存在となっておりました。訪れる方々の目を楽しませ、また境内に静かな趣を添えるものであり、私どもにとっても格別の思い入れがございます。
また、禅寺において松は特別な意味を持つ存在でもあります。臨済宗の宗祖である中国・臨済義玄禅師には「臨済栽松」の故事が伝わっております。禅師が松を植えたことは、仏道の清らかさと精神の根源的な力強さを象徴する行いであり、以来、禅寺において松は精神性の象徴として大切にされてまいりました。
一休寺においても、この松は単なる景観の一部にとどまらず、禅の教えと自然への敬意を体現する存在として、長らく大切に守られてきたものでございます。
このたび惜しまれつつも伐採を行うこととなりましたが、この松の姿をご覧いただけるのは、今年2025年のゴールデンウィークが最後の機会となります。
春の陽光のもと、長きにわたり境内を見守ってきた松の姿を、どうぞ心に刻みにご来山ください。
これからも一休寺は禅の精神を守りながら、境内の景観と心の安らぎを大切に育んでまいります。
皆様におかれましては、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
敬具
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