【“仕事もラグビーも”を選んだ彼女たち】ラグビー選手のリアルが届く教室──スポーツの未来を支える生徒たちへ

 スポーツだけじゃない。「働く」彼女達の、少し意外な日常に触れるインタビュー記事第3弾。今回は川村雅未選手雇用先の東京リゾート&スポーツ専門学校の杉山誠ゼネラルマネージャー、陶山毅副校長に話を伺った。

 女子ラグビーの横河アルテミ・スターズの選手たちは、普段は一般企業で業務をこなしながら、日々のトレーニングに励んでいる。

 日本代表としてワールドカップに出場した川村雅未選手もそのひとり。川村選手が勤務するのは学校法人三幸学園が運営する東京リゾート&スポーツ専門学校だ。

 彼女は普段、どのような業務をこなしているのか。また川村選手を雇用した理由や狙いはどこにあるのか。三幸学園の東京地区専門学校・東京千葉広報室のゼネラルマネージャーを務める杉山誠氏と、東京リゾート&スポーツ専門学校の陶山毅副校長に、アスリート雇用のメリットなどについて話を伺った。

学校法人三幸学園東京リゾート&スポーツ専門学校前
左から杉山誠ゼネラルマネージャー、陶山毅副校長

――まず、こちらはどのような学校であるかをご紹介ください。

杉山誠ゼネラルマネージャー(以下、杉山) 当法人は北は北海道から南は沖縄まで、全国に学校を設置しています。元々は専門学校から始まり、現在も65校の専門学校を運営しています。また通信制高校を3つと大学、短大に加え、保育園も40園ほどあります。そのなかで、スポーツのインストラクターやトレーナーを養成する専門学校が全国に10校ありまして、今回、東京にある「東京リゾート&スポーツ専門学校」で川村選手と一緒に仕事をさせていただくような形になりました。

杉山誠ゼネラルマネージャー

――こちらの学校にはどれくらいの生徒が通われているのでしょうか

陶山毅副校長(以下、陶山) 東京校ですと、500人ぐらいですね。スポーツ専門学校全体では4000人ほどになります。

――具体的にどういった内容の講義が行われているのでしょうか。

杉山 主にインストラクターやコーチを目指す生徒たちに向けた内容となっていますが、最近ではビジネス学科を設置していますので、ショップだったり、スポーツイベントなどに関わる人材の育成もスタートさせています。

――競技を問わず、様々なスポーツに関わる人材を育成されているのでしょうか。

杉山 そうですね。この東京校に関しては、バスケやダンスに特化したコースもあるんですけど、トレーナーというくくりで考えると、いろんな種目で求められてきますので、サッカー、野球、ラグビーなど、プロ、アマ問わずいろんなスポーツに関わる形になっています。卒業生の中には、プロ野球やJリーグのチーム、個人のアスリートと契約するなど、様々なスポーツのトレーナーとして活躍する生徒を数多く輩出しています。

――スポーツの人材を育成する専門学校はいくつかあると思いますが、こちらの学校ならではの特色を教えてください。

杉山 ひとつは実践力を大事にしているところですね。また、私たちの教育理念に「技能と心の調和」というものがあります。専門的な知識・技術だけではなく、人間力を高める教育をしていきたいというものが柱にありますので、資格を取らせることだけがゴールではありません。人間教育を重視するなかで、とりわけ学校行事には力を入れています。学校行事を作り上げていく過程を通じて、協調性や主体性を身につけて育ってもらいたい。そういう形でプログラムされています。

――スポーツ業界の求人は以前に比べて増えているのでしょうか。

陶山 非常に増えています。10年、15年くらい前は、いわゆる大手総合フィットネスクラブなどの求人が多かったのですが、今はより業務が細分化されてきています。例えばパーソナルで個人事業を展開されている企業の数が非常に増えてきていて、それとともに求人も増加傾向にあります。一方でチームに所属するようフロントスタッフやアスレティックトレーナーといった業務は、チームの数が格段に増えたわけではないので、求人の数が同じような増え方をしているわけではありません。その意味では目指すべき職種によって多少、求人の数の差はありますが、我々が運営している他の分野の専門学校に比べても、スポーツの分野は求人数が多くなっている状況にあるかなと思っています。

――川村選手をアスリート雇用するようになったきっかけを教えてください。

杉山 私が着任する前の2019年に、ラグビーのワールドカップが日本で開催されましたが、その際にいろいろとご縁がありまして、うちの学園の生徒たちがボランティアという形で大会に関わらせていただいたんですね。それを機にラグビー協会さんとのつながりが強くなったのが、ひとつのきっかけではあります。またラグビー協会さんが大事にしている5つのコアバリュー(品位・情熱・結束・規律・尊重)が、私たちの教育理念に通じるところがあるとも感じました。そんな関係もありまして、ラグビーに対して私たちにできることがないかということを探していたところにちょうど話をいただきまして、2020年からラグビー選手の雇用をスタートしたという経緯があります。


――川村選手が最初でしょうか。

杉山 元女子ラグビー日本代表の中山潮音さんが1人目ですね。中山さんはもう引退されているんですが、今でも静岡でうちの職員として頑張ってくれています。川村選手は2人目の採用になります。

――アスリート雇用のメリットはどういうところにあると感じていますか。

杉山 根本的なところで言うと、頑張っている人や輝いている人から勇気や元気をもらえるというところですね。中山選手や川村選手が入ってくれたことによって、周りの職員がエネルギーもらって活気づきますし、エンゲージメントがたまっていくところも間違いなくあると思います。それに加えて私たちはスポーツに関わる人材を養成する学校ですから、そういった意味ではウインウインの関係を築けるのかなとも思っています。選手側は我々の施設だったり、専門的な講師の情報を入手することができますし、我々の生徒にとっては一流のアスリートに触れることによって、いろんなことを感じることができます。スポーツを極めた選手とスポーツ業界で働きたい生徒が触れ合うことによって、相乗効果が生まれることは、すごく大きなメリットだと思っています。

――実際に川村選手がいることで、生徒やスタッフに変化が生まれてきたことはありますか。

陶山 川村選手にはホームルームの一部入っていただいていて、自身の経験を話してもらっています。アスリートはどういう想いで活動しているのか。支えてくれるトレーナーやスタッフにどいういう想いを寄せているのか。そういう具体的な話をしてくれると、聞いている生徒の目の色が明らかに変わってくるんですよ。やっぱり、本物が話すと説得力がまるで違うので、生徒たちは感化されますね。もうひとつ言うと、誰かを一緒に応援するということが、職員の一体化であったり、想いをひとつにしてくれるんですよ。その意味でも、川村さんの存在が職場の雰囲気を良くしてくれていますし、我々がすごく助けられているなといういう風に感じています。

陶山毅副校長

――実際に川村選手はどういった業務を行っているのでしょうか。

陶山 基本的には事務業務を担当していただいています。職員が付けた成績をシステムに入力する作業であったり、電話の対応だったり、職員室に訪れる学生の対応などもやってもらっています。

杉山 今は現役の選手ですので、そちらの活動を第一に考えています。本来であれば授業も持てると思うんですけど、そこで労力を使ってしまうと練習に支障をきたしてしまいますから。

――働きぶりをどう評価されていますか。

陶山 非常に真面目にやってくれています。本来は人見知りで、当初は控えめだったんですが、今では自発的に業務に取り組んでくれています。先輩の事務職員に対しても食ってっかかるような気概もあって、負けん気の強さも感じますね。基本的には落ち着いて物事を確実に進めてくれるタイプで、手を抜かずにやってくれています。ラグビーの試合を観た時も、常に走り回っているんですよ。職場でも同じように献身的に取り組んでくれているので、本当に心強いですね。

職場で業務にあたる川村選手

――他の競技の選手を採用される予定はあるのでしょうか。

杉山 今のところは女子ラグビーの2人だけです。ただ私たちのミッションとして、「世の中の困難を希望に変える」というものがあるんですよ。女子アスリートをサポートすることも、そのミッションに関わってくることなのかなと思っています。やっぱりまだ日本のスポーツ界は、男性のほうが環境や待遇面で恵まれている現実があります。だからこそ、私たちの出番でもあるかなと。女子スポーツの環境が良くなれば、女性アスリートの人口も増えていくと思いますし、当然、競技レベルも高くなっていくはずです。そういった好循環が生まれてくればいいと思いますし、私たちの学校は女子生徒が多いんですけど、女子スポーツが盛んになれば、彼女たちの活躍する場所も増えていくと思います。もちろん、我々の受け入れ体制を整える必要がありますが、これからも女性アスリートの支援というものは、やっていきたいと思っています。

――アスリート雇用は、企業イメージやブランド価値の向上につながると思いますか。

杉山 ブランド価値というよりも、先ほども言ったように、エンゲージメントの部分のほうが大きいですね。職員や生徒の誇りにつながったり、一体化を生み出すことが、アスリート雇用の主目的になっています。


――今後、川村選手が所属するアルテミ・スターズと一緒に取り組んでいきたい活動はありますか。

陶山 すでに連携をさせていただいているんですが、今年の冬にアルテミ・スターズが主催する小中学生を対象とした女子ラグビーのイベントに、うちの学生も参加させていただきました。例えば、試合の合間に選手たちのマッサージをしたり、そこの空間にいる時間が楽しい思い出になるようなサポートをうちの学生がさせていただきました。生徒の実習先として、横河武蔵野スポーツクラブ様にはすでに受け口になっていただいているんですが、そういうイベントにも今後も継続的に関わらせていただきたいと考えています。また今後、川村選手が引退した場合にも、新たな選手をご紹介いただき、可能な限りアスリート雇用という形も継続させていただけれと思っています。

――今後の川村選手に期待したいことがあれば教えてください。

杉山 まず、選手としては怪我だけは気を付けてもらいたいなと思っています。社員としては今まで通り業務に取り組んでいただき、引退した後は、トレーニングの授業ですとか、新しい立場で生徒たちに還元してもらえたらと思っています。今まで通り、笑顔で、黙々と働いていただければ、私としてはありがたいですね。

陶山 今回参加するワールドカップの話をたくさんしてもらいたいですね。我々教職員はもちろんですが、生徒たちも楽しみにしていると思います。我々からすればワールドカップなんて、想像の世界でしかないじゃないですか。学生たちの新たな学びにもなると思いますし、擬似体験にもなると思いますから、貴重な経験を伝えていただきたいですね。


(ライター:原山 裕平)

■横河武蔵野スポーツクラブに関するリンク

横河武蔵野スポーツクラブのパートナーシップにご興味のある方は、

以下関連リンクからお問い合わせいただけると幸いです。

横河武蔵野スポーツクラブ公式サイト

横河武蔵野アルテミ・スターズ パートナーシップ問い合わせ

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


会社概要

URL
https://www.yokogawa-musashino.jp/
業種
財団法人・社団法人・宗教法人
本社所在地
東京都武蔵野市中町2-11-13 三鷹ビル3階
電話番号
0422-51-7751
代表者名
吉川 光
上場
未上場
資本金
-
設立
2017年02月