湘南ヘルスイノベーションパークと株式会社リサ・サーナが、患者経験を創薬の未来につなぐ「患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)」の場を共創
がん薬物治療に伴う副作用実態調査と化学療法に臨む患者の生の声を集めた座談会を実施。創薬に携わる研究者に向け患者実態に関する情報伝達を行なうとともに、患者に対しては研究者らの議論のフィードバックを試みた
女性向けがんSNSコミュニティとして日本最大級の「ピアリング」、および消化器がんを対象とした「ピアリング・ブルー」を運営する株式会社リサ・サーナ(本社:横浜市都筑区、以下、リサ・サーナ)は、湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、湘南アイパーク)に所属する製薬企業研究者等が中心となって運営している「World Café」と共同で、実際に経験してみないとわからないがん薬物治療の日常生活への影響とコミュニケーションの実態を明らかにするための調査を実施しました。
また、これまで患者と製薬企業研究者の間で薬の副作用に関する直接的な議論を行なうことは難しいとされてきましたが、リサ・サーナの媒介により、「オンライン座談会の動画共有」といった手法を駆使し、今まさにがん治療の最前線にいる患者の実体験を研究者に伝えることで、患者と企業研究者が、課題を共有する試みを実施しました。
これにより、研究者が患者の実体験を知って創薬を考えることの重要性が再認識されると同時に、患者自身が自らの経験を発信していくことの意義が確認されました。
本取り組みは、リサ・サーナとして患者・市民参画(PPI:Patient and Public Involvement)を進める共創活動の第一歩であり、今後もWorld Caféをはじめとした企業研究者、医療機関等と連携しながら、患者中心の医療を実現し、患者さんのQOL向上に繋げていくため、患者経験を社会にフィードバックする取り組みを進めて参ります。
1)がん薬物治療に伴う副作用に関する実態調査
がん薬物治療に伴う副作用の日常生活への影響、およびがん治療に伴うコミュニケーションの実態を明らかにすることを目的とした自主調査を実施しました。本調査では、記述式回答を通じて副作用による日常生活への具体的影響に関して、患者の生の声を得ました。また、コミュニケーションについては、共同意思決定(Shared Decision Making)や副作用に関しての医師とのコミュニケーションが充分でないと感じている一定割合の患者の存在が明らかとなった一方で、看護師・ 薬剤師など医師以外の医療職が患者とのコミュニケーションで果たす役割の大きさを再認識する結果となりました。患者を取り巻く医療職が、チームで薬物療法中の副作用の状況を把握し、それぞれの有する情報・知見を集約して患者側に共有する仕組みを構築することが、安心してがん治療に取り組める環境構築に繋がると期待されます。
2)化学療法の副作用を語る座談会
化学療法経験者と研究者の座談会を、リサ・サーナが伝達役となり間接的手法で実施し、双方の考えを共有しました。今回座談会に参加した患者経験者らにとっては、自らのがん治療経験を、研究者らに向けて発信する初めての機会であり、「辛かった副作用経験を伝えることが、未来の治療発展つながる」ことに大きなやりがいを感じ、「がん治療の最前線にいる自らの経験を役に立てていきたい」という思いが語られました。患者におけるPPI(患者・市民参画)という言葉の認知度は未だ低いものの、医療・創薬の発展に対する貢献意識の高さが印象的な会となりました。
●座談会の流れ
① 副作用について語る座談会
複数のがん種の治療経験者5人が参加。がん薬物療法(化学療法)による副作用が、日常生活にどのように影響するか、についての実体験の語りを、ファシリテ―ターが引き出す。
② 研究者座談会
「副作用について語る座談会」録画を製薬企業等研究者が視聴。「添付文書や論文などの情報から持っていた副作用のイメージ」と「患者さんのリアルな体験を聞いて知ったこと」のギャップ、それを踏まえてトータルケアの実現に向けて取り組んでいきたいことについて議論。
③ 患者へのフィードバック
「研究者座談会」で議論された内容を患者にフィードバック。
●座談会参加者の背景
Aさん(30代 乳がん ステージ4 ホルモン療法中)
Bさん(50代 S状結腸がん ステージ4 経過観察中)
Cさん(50代 子宮体がん ステージ4 2014年に罹患。休薬中。)
Dさん(40代 乳がん ホルモン療法中)
Eさん(50代 卵巣がん ステージ2 2024年6月にオペ)
※全員が、化学療法経験者
●副作用の具体的な症状や日常生活への影響に関する、化学療法経験者のコメント抜粋
倦怠感
· 一日ベッドから起きられない。張り付けられているような、上から何かを載せられているようなだるさ
· 朝目を開けたと同時にチーンとなる感じで、寝ていても疲れる、だるい、今まで経験したことがないような倦怠感。トイレには四つん這いで行った。インフルのだるさとは全然違う。
・無理して出歩くとベンチで横になってしまう。出かけている途中に具合が悪くなってしまうようなだるさであるが、先生にも説明するのも難しい。医師は真剣に取り合ってくれない。
吐き気
· 吐き気止めが効かず、何も食べられない。吐いていない時でも胃に何かつっかえたたような重さ胃に石が入ったような重さ。吐き気止めを飲んで胃がやられてさらに辛い。水でも吐いてしまう。先生に言ってもスルーされる。我慢してもいいのかなと思っていたら脱水症状で緊急入院になった。
●World cafe 参加研究者からの感想
• 添付文書や論文の情報から持っていた副作用のイメージと日常生活への影響度のギャップを認識した。「CTCAEで副作用の重症度を評価する基準において、「生命を脅かすレベルに分類されない副作用」も想像を超える辛さがあることを知った。
• 副作用の実態をあまりに知らなすぎて自責の念を持った。
• これまで「あたりまえ」とされてしまっていた、抗がん剤による治療過程で生じる薬の副反応の緩和や解消にとても大きな意義や価値があることについての大きな気付きを得ることができた。
• 抗がん剤は患者さんの命を救う生死に関わる薬であるため、副作用が多少あっても仕方がない、目をつぶってもらえるという考え方が改められた。
• 普段の研究者目線とは違った視点から問題について知り、解決策について考える機会になった。
• 患者さんのお話を通じて副作用の実態を知ることが出来、理解が深まった。ニーズの把握だけでなく、実態を知ることで創薬に対する意欲ややりがいにつながった。
●研究者のフィードバックを得た、患者コメント抜粋
· 副作用の辛さをもっと世の中に知ってもらいたい気持ちはあったが、伝える機会はなかった。製薬企業や研究者の方へ、患者が経験している副作用の実状を伝えられてとても意義のある機会になった。患者の辛い治療経験を、患者中心創薬の実現に活かし、医療の進歩につながることを願います。
· 今回、治療経験を研究者に直接伝えることができて、すごいと思った。
· 「自分の経験が少しでも役に立てば」という想いで気軽に参加したが、研究者が真剣に受け止めてくれて感動した。
· 私たちは本気で伝えたし、企業の方も本気で向き合ってくれたことが嬉しい。自分の経験に価値があることを知り、治療を頑張って良かったと思えた。
· 患者として参加するなら、こういうことがあったという報告だけでなく、こうしたらよりよくなるのでは?というアイデアも患者目線で考えたい。
· 自分ができることは参加していきたい。それでがんの理解が進んだり、治療がもっと良くなっていけば本当にいいなと思う。
· 私たちはいつも最前線。自分の体験を無駄にしたら勿体無いんだなと実感できた。フィードバックすることで改善できる。遠慮しないで言っていいのだなと思った。
· 役に立つことが出来て本当に嬉しかった。何かできることがあれば喜んでやっていきたい。
本件に関するお問い合わせ
株式会社リサ・サーナ
Email: staff@risa-sana.co.jp

参考
· 株式会社リサ・サーナ
アプリ及びWEBサイトで展開されるSNS患者コミュニティであるピアリング(乳がんと婦人科がん対象、女性がんサバイバーコミュニティとして日本最大級)及びピアリング・ブルー(消化器がん女性対象)を運営し、オンライン上での交流の場を提供しています[会員総数19,870人 2025年3月13日現在]。患者経験価値を社会にフィードバックし、患者さんのQOL向上につなげるため、ピアリング、ピアリングブルーをパネルとして、企業・大学・研究機関・行政機関様からの依頼により、メディカルリサーチ・患者ニーズ調査、モニター調査等を多数実施しています。
ピアリング:https://peer-ring.com/
ピアリング・ブルー:https://bleu.peer-ring.com/
· World Café
湘南アイパーク内の製薬企業研究者を中心とした有志団体です。企業間の垣根を越えたコミュニケーションを通じて、新たな繋がり、アイデアの発掘を推進しています。Patient Centricity等をテーマに、様々な企業様ともコラボレーションしています。
https://ipark-world-cafe.hatenablog.jp
・湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)
湘南アイパークは、2018年4月に武田薬品工業が自社研究所を外部に開放して誕生した、日本初の製薬企業発サイエンスパークです。
幅広い業種や規模の産官学が結集してヘルスイノベーションを加速する場となることを目指しており、製薬企業のみならず、
次世代医療、細胞農業、AI、行政など約190社、2500人以上(2025年2月現在)の企業・団体が集積し、エコシステムを形成しています。
https://www.shonan-ipark.com
· 「がん薬物治療に伴う副作用に関する実態調査」に関する第62回日本癌治療学術集会 がん患者・支援プログラム ポスター発表
https://news.peer-ring.com/9057/
発表資料 https://drive.google.com/file/d/1uYYoE3ternv-A6QyOH5nyaxGDSll7h6-/view?usp=drive_link
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