省エネ・脱炭素ビルがもたらすビルオーナー・テナント双方のメリットを定量化
約4万㎡のテナント型のオフィスビルをモデルとした場合、オーナー側は年間2,000万円、テナント側は合計年間2.2億円の効果が発現、うちテナント間のシナジーによる効果額は約1,400万円
株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長:松原和彦、以下「NTTファシリティーズ」)はデロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(代表執行役:神山友佑、以下「デロイト トーマツ」)と共同で、省エネ建築物の新築・改修による効果を総合的に定量評価する指標を開発し、エネルギー・光熱費削減以外の効果を「Non-Energy Benefits(NEBs [ネブズ])」と呼称、NEBs指標および定量化ロジックを2023年12月に発表*1しています。
これまでNEBs指標は自社所有のオフィスビルを対象としていましたが、このたびテナント型のオフィスビルを対象に定量化ロジックを作成し、ビルオーナーとテナント企業それぞれに発現するNEBsを算定、ビルオーナー・テナントが省エネに取り組むそれぞれのベネフィットを分けて評価できるようになりました。
日本において、オフィスビルは自社所有型よりテナント型の形態が多いため、本指標の作成によりさらに多くのオフィスビルにおける省エネの取り組み効果を定量化することができるようになります。本指標の普及を通じて、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)等の省エネ建築物の新築・改修の投資判断を支援することで、企業や自治体の保有資産の脱炭素化に貢献していきます。
取り組みの背景・目的
既報*1のとおり、NTT ファシリティーズとデロイト トーマツでは、省エネ建築物の新築・改修による効果のうちエネルギー・光熱費削減以外の効果であるNEBsを、自社所有のオフィスビルを対象に「健康増進」「知的生産性の向上」等12項目とその定量化ロジックを作成しました。
しかしながら、自社所有ビルを対象とした評価指標では、日本において多くを占めるテナント型のオフィスビルにおける効果を適切に定量化することが難しいという課題がありました。また、テナント型のオフィスビルにおいては、建物の開発・運用者(ビルオーナー)と使用者(テナント)が異なることで、費用負担者と受益者が異なるため、このことが脱炭素化の取り組みを加速させる上で課題となっていました。テナント型オフィスのNEBsの作成により、ビルオーナー・テナント企業がそれぞれの効果を定量化し同じ目線で適切に投資判断を行うことが可能となります。これにより、さらにZEB等の省エネ建築物の新築・改修の投資判断が後押しされると考えています。

*1省エネ建築物の新築・改修に取り組むメリットを総合評価する12の指標を共同開発
─「健康増進」「知的生産性向上」など、省エネ建築物の副次・間接・相乗的効果(NEBs)を定量化(2023年12月11日)
取り組みの詳細
①テナント型オフィスビル版NEBs算定ロジックの作成
既存の自社所有の事務所ビルを対象としたNEBs12指標をベースに、テナント型のオフィスビルにおいて発現するベネフィットをオーナー企業・テナント企業それぞれについて整理しました。また、それらのベネフィットを定量化するロジックを作成し、整理しました。
【検討のイメージ】

【オーナー企業・テナント企業に発現するベネフィットのイメージ】

NEBs評価指標-テナント型オフィスビル版

②日本国内に実在のモデルビルでのNEBs算定
今回作成した評価指標に基づき、約40,000㎡程度のオフィスビルにおいて、オーナー側のNEBsは20百万円/年規模、テナント側のNEBsは217百万円/年規模(専有部27,000㎡程度)と算出されました。NEBs算定にあたっては、オーナーへの対象ビルに関する情報収集やオーナー・テナントへのアンケート・ヒアリングを実施し、検証を行いました。オーナーに発現するNEBs効果は対象ビルの共用部の面積を対象に算定を実施しました。また、テナント側に発現するNEBs効果は、一部のテナントにおける算定結果を、他のテナントの業種に応じて調整しながら、テナント全体へ拡大推計しました。
そのうち、自社所有ビル向けNEBsには無かった新たな効果として、スタートアップ企業のイノベーションを促進する施設など、テナント型オフィスビルならではの様々な用途の施設の活用により、各企業のコミュニケーションやイノベーションの促進などのシナジー効果が発現していると算出されました。その他にも、充実したアメニティ施設を共有することで、自社ビルの場合と比較して費用を抑えながらも健康増進や生産性向上効果を得られるなどテナント企業におけるNEBsが発現していると算出され、こうしたテナント間のシナジーによる効果額は約1,400万円と算出されました。さらにこれにより、企業のブランディングや地域貢献につながるというベネフィットがオーナーに発現していると想定されます。
今後の展望について

今後は、テナント型オフィスビルの開発・運用を行うNTTアーバンソリューションズをはじめとしたテナント型オフィスビルの開発・運用を行うグループ各社と効果検証を進め、NTTファシリティーズが設計を手掛ける建築物を含めた、より多くの建物においてNEBsの定量評価を行うことで知見を蓄積していきます。
また、テナント型オフィスビルにおいては、本NEBs指標での総合的な効果の定量化のみならず環境省より発表の「リーディングテナント行動方針」*2との整合を図りながら、さらなるZEB化の推進をめざします。
NTTファシリティーズは本取り組みを通じて、ZEBをはじめとする省エネ建築物の採用促進を通じたカーボンニュートラルの貢献はもちろん、従業員のウェルビーイングの向上や、Scope3のCO2排出量削減にも貢献することをめざし、幅広いステークホルダーと連携し、地域社会全体での脱炭素化を推進していきます。
*2リーディングテナント行動方針とは | 環境省「ZEB PORTAL - ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル」
<報道機関の方からの問い合わせ先>
株式会社NTTファシリティーズ 経営企画部 広報担当
pr@ntt-f.co.jp
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