AI関連求人は2017年度比で約6.6倍に拡大。未経験からの挑戦も ―「ちょっと使ってみた」経験も、機会につながる―
株式会社インディードリクルートパートナーズ(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:淺野 健)は、AIに関わる求人(※1)動向について、転職支援サービス『リクルートエージェント』のデータをまとめましたのでご報告いたします。
(※1)AI関連求人:求人票の仕事の名称または仕事の概要に、AIに関する単語が含まれる求人を抽出し、エンジニア系職種、営業・企画・管理部門職種で独自に定義(詳細な定義はP.5)。
1. AI関連求人が増加する背景とデータ
『リクルートエージェント』におけるAIに関わる求人は、2017年度比でエンジニア系職種が約6.6倍(※2)、営業・企画・管理部門など非エンジニア系職種でも約2.5倍に増加。転職者もそれぞれ約4.2倍、約2.2倍と大きく伸びており、AI活用のニーズがより広い職種に広がっていることが分かります。

(※2)「2017年度比◯倍」という表現は、年度集計(当該年4月〜翌年3月)データに基づいています。
■AI関連求人の業界別構成(2024年度)
業界別の傾向を見るとエンジニア系職種ではIT通信業界に加え、電気・電子・機械業界、メーカー、インターネット、コンサルティングといった産業でのニーズが強く、モデル開発やPoC(概念実証)推進を担うポジションが中心です。一方で営業・企画・管理部門職種では、IT通信・インターネット業界を中心にしつつも、電気・電子・機械業界、メーカー、コンサルティング、人材・教育など「既存業務にAIをどう組み込むか」という観点で、幅広い業界で登場しています。

2. 「AI×現在の担当領域の経験」で生まれる転職の具体的事例
AI関連の求人は、「高度な技術者しか応募できない」と思われがちですが、実際の求人票を読み解くと、企業が求めているのは、開発そのものだけでなく、“AIを業務にどう活かせるか”を一緒に考えられる人材であるケースも見受けられます。実際の転職市場では、自らの経験や専門性をもとに、AIと関わる領域へ挑戦する動きが広がっています。本章では、そうした「AI×経験」で新たなキャリアを切り開いた事例をご紹介します。(解説者:コンサルタント 垣見大介)
■AI人材の役割の違い
これまで「AI人材」といえば、モデルの開発や実装を担うエンジニア職が中心に語られてきましたが、現在では、既存業務にAIをどう適用するかを考え、推進する“ビジネス側”の役割も増えています。以下はAI活用における役割の違いを示した一例です。

■AI関連求人のカテゴリー
AI関連求人を読み解くと、仕事内容や求められるスキル、経験に応じて「関心」から「実装」までの4段階に分類できます。
1:関心フェーズ(AIを利用したことがある・AIに関心がある)
2:知識フェーズ(AIに関して基礎的な知識があり業務での見通しを持てる)
3:活用フェーズ(AIを活用して業務の運用・改善ができる)
4:展開・実装フェーズ(AIを実装して成果を出し仕組みにできる)
■エンジニア職(AI開発・実装)におけるキャリアチェンジの事例
エンジニア職では、これまでの業務で培ってきた技術スキルや開発経験が、業界を越えて新たな役割に展開されるケースが増えています。「AIの実務経験」がなくても、構造理解・モデル構築・制御設計といった力が、評価されるポイントになっています。
・メーカーのソフトウェア開発者 → AIスタートアップへ(カテゴリー2)
AIの実務経験はなかったものの、前職での豊富なソフトウェア開発スキルが評価され、生成AI系スタートアップのプロダクト開発エンジニアとして採用された事例。コア技術そのものよりも、業務要件を理解しプロダクトに落とし込む力が期待された。
製造業のエンジニア → 半導体装置メーカーへ(カテゴリー4)
製造業のエンジニアが、装置構成や制御に関する知見を活かして、AI制御を取り入れた次世代半導体装置の開発に取り組む企業へ転職。業界は異なるものの、専門性の応用が即戦力とされ、これまでの経験が新たな領域と接続された事例。
・経済データ分析担当 → AI需給予測に挑むインフラ業界へ(カテゴリー4)
経済指標や市場データの分析に携わっていた方が、社会インフラ分野でAIを活用した需給予測モデルの構築業務に転職。複雑なデータを構造化し、予測や判断に活かすスキルが評価され、専門性が異なる領域でも発揮された事例。
■ビジネス職(AI活用推進)におけるキャリアチェンジの事例
ビジネス職においては、現場で培った経験や業務構造の理解が、プロダクトマネジメントやPoC支援などの役割に接続される事例が増えています。特に、生成AIの活用が急速に進む中で、“AIを使ってみた”“活かせると考えた”という姿勢自体が、評価対象になるケースも多く見られます。
・ミドル・シニア → AIスタートアップへ(カテゴリー1)
ソフトウェア企業で管理職経験のある50代の方が、「ビジネスでAIの実践がしたい」という意思をもとに、生成AIを活用するスタートアップに挑戦。実務経験はなかったものの、自律性やカルチャーフィットが評価され、採用に至った。
・営業職 → マーケティングDX職へ(カテゴリー2)
ソリューション営業として提案書作成業務に従事していた方が、業務の中で生成AIを使った自動化を試した経験をアピールし、マーケティング部門のDX企画職に転職。プロンプト設計や仮説構築力が評価された。
・CS職 → AIプロダクトを扱うスタートアップのPdM職へ(カテゴリー2)
ユーザーとの接点が多い業務に携わっていた方が、現場の声をサービス改善に反映してきた経験をもとに、プロダクトマネジメントの領域へ転職。技術経験よりも、業務理解や要件定義の力が決め手となった。
・データサイエンティスト → 生成AIを活用した事業開発へ(カテゴリー3)
画像解析を行っていたデータサイエンティストが、生成AIを使った新規事業開発を担う企画職へ転職。業種は異なっても、データを扱う力と論理的思考が評価された事例。
3. 自分の経験や自社の求める人物像の「分かりにくさ」を補うための言語化
このようにAIに関わるキャリアは、「AIに精通しているかどうか」だけでなく、「自分のこれまでの経験や業務視点をどう活かすか」が評価されるケースもあります。一方、「どこまでのスキルが求められるのか見極めづらい」といった声は、求職者から多く聞かれます。そうした分かりにくさを補うために、まずは自身の経験を棚卸ししてみることも重要です。

また、企業側においても、AIの専門開発スキルではなく、業務設計、社内外とのやりとりなど、ビジネス職としてのスキルが活かせる仕事も大いにあるはずです。そうした実態に合わせ、求人票や職務定義を「AIで何を解決したいのか」、「どの業務を担ってもらいたいのか」といった観点で分解していくことは、必要な人材がより自然に応募できる構造をつくる上で有効と言えるでしょう。
■求人を考える際のテンプレート(一例)
■募集ポジション:生成AI活用推進担当(営業部門)
■想定されるAI活用フェーズ:2~3(知識〜活用)
■求める経験・スキル:
【Must】現職での業務フローの見直しや改善提案の経験がある(3年以上)
【Must】社内でのツール導入または運用改善の主導経験
【Want】生成AIやBIツール・自動化系サービスの使用経験(業務外での経験も可)
【Want】AIに関する利用経験、もしくは基礎知識
■関与するAI関連業務(記入例):AIを活用した提案書作成プロセスの効率化、顧客接点データの整理とAIレコメンドロジック検討、AIベンダーとの導入要件の擦り合わせ
4. 最後に
我々が現場で転職を支援していて実感するのは、AI関連職種は、世の中でもまだ“新しい職種”であり、求人の伸び方から見ても、さらに需要が増えていく職種だということです。しかしながら、仕事内容の難易度がさまざまであることから、企業側も手探りで採用を進めている段階です。だからこそ、「業務内容にかかわらず、ちょっと使ってみた」「業務の中で試してみた」といった体験でも、キャリアの扉を開くきっかけになっているのだと思います。
とはいえ、いきなり転職活動に踏み出す必要はありません。まずは、自分がこれまでどんな業務に関わってきたのか、AIとつながる余地がないかを“棚卸し”してみること。例えば、「定型作業を効率化した経験」「情報整理や組織の基盤づくりに関わっていた経験」などは、AI活用の土台として評価されるケースが増えています。「自分には関係ない」と捉えてしまうと、選択肢が狭まってしまうことにもなりかねません。今は、必ずしもAIを極める必要はなく、過渡期だからこそ「少し関わってみる」だけでも、この先の人生の選択肢を広げられるタイミングなのではないでしょうか。
企業にとっても同様です。採用が進んでいる企業ほど、「なぜAIを使いたいのか」「どんな課題を解決したいのか」を、求人票で具体的に言語化しています。こうした発信があることで、求職者は自分の経験と照らし合わせて応募判断がしやすくなり、マッチングの精度も上がるのではないでしょうか。
もし「どこから考えればいいか分からない」と感じたときには、視点の整理を手伝ってくれる第三者に話してみるだけでも、意外と道筋が見えてくるかもしれません。

解説担当:株式会社インディードリクルートパートナーズ
ハイキャリアグローバルコンサルティングG コンサルタント 垣見大介
大手SI企業で金融SEを5年経験後、現職で20年以上にわたり人材ビジネスに従事。IT業界の人材紹介10年、RPO事業の立ち上げから拡大まで10年、うち組織長も8年経験。現在はAI人材マーケットを担当しており、企業や業界団体と共にAI人材の要件定義を策定中。
■AI関連求人の定義について
求人票の仕事の名称または仕事の概要に、AIに関連する単語(※3)が含まれる求人を抽出。その中で、AIに関係のない求人を除外するために、キーワード(“AI”を含む、AIに無関係の単語など)による除外および目視による除外を行い、残った求人を「AI関連求人」とした。
(※3)AIに関連する単語例:AI、人工知能、ディープラーニング、ディープニューラルネット、NLP、自然言語処理、LLM、大規模言語モデル、ファインチューニング、深層学習、Transformer、転移学習、教師あり学習、教師なし学習、機械学習、マルコフ決定過程など
■職種定義について
営業・企画・管理部門:マーケティング、営業、経営企画・事業企画・業務企画、経理・財務、人事、総務・広報、内部監査・内部統制、法務・知財
エンジニア系:SE、インターネット専門職、機械エンジニア、組込・制御ソフトウェア開発エンジニア、化学エンジニア、電気エンジニア

データ分析担当:株式会社インディードリクルートパートナーズ
渉外 政策渉外室 リサーチ部 リサーチセンター 研究員 菊池満帆
新卒でパナソニック株式会社に入社し、機構設計エンジニアとして特に熱設計およびCAEを用いた熱シミュレーション業務に従事。その後リクルート(旧リクルートキャリア)に入社し、ハイキャリア・グローバル・コンサルティング部に配属。営業およびコンサルタントとして、ハイキャリア領域の製造業分野の企業および求職者の支援に従事。現在は中途、新卒、アルバイト・パート領域等HR全般の市場調査やデータ分析を担当。
■調査概要
調査方法:リクルートエージェントの求人と転職者分析
調査対象:リクルートエージェントの求人と転職者のうちAIに関連するものを分析
有効回答数:非公開
調査実施期間:2025年6月~7月
調査機関:株式会社インディードリクルートパートナーズ
▼インディードリクルートパートナーズについて
https://www.indeedrecruit-partners.co.jp/
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