【診療報酬改定で加速する身体拘束廃止】4年でたどり着いた身体拘束ゼロとその本質

神奈川県看護協会県央支部の看護研修会で身体拘束ゼロを実現するまでの実践知を発表

医療法人社団元気会

令和8年度の診療報酬改定の基本方針において、安心・安全で質の高い医療の推進に向けた具体的方向性として「身体的拘束の最小化の推進」が掲げられています。こうした中、医療法人社団元気会 横浜病院(所在地:横浜市緑区、理事長・院長:北島明佳)は、「身体拘束ゼロ」の取り組みとその実現に至るまでの試行錯誤のプロセスを、神奈川県看護協会県央支部の令和7年度 第2回看護研修会で発表しました。

■社会的背景

 厚生労働省による令和8年度の診療報酬改定の基本方針において「安心・安全で質の高い医療の推進」の具体的な方向性の一つとして、引き続き「身体的拘束の最小化の推進」が明記されました。(※1)前回、令和6年度の改定で入院基本料等の減算規定が導入されましたが、今回の改定方針では、身体的拘束の最小化に対する体制や実績が評価され、更なる推進が求められています。しかし、最新の厚生労働省による調査では、8割以上の病棟で何らかの身体的拘束が実施されています。(※2)さらに、拘束が実施されている患者様のうち、過去7日間「毎日」拘束が継続されている割合は慢性期病棟ほど高く、療養病棟では約9割に達するなど、身体的拘束が常態化しているのが実態です。(※2)このように、政策として身体的拘束の最小化が推進される一方で、現場では依然として課題が残っています。

出典:

※1 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の基本方針」,令和7年12月

※2 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第623回) 総ー2 入院について(その3) 慢性期入院医療・身体的拘束」,p61,令和7年10月

■身体拘束とは何か

 まず、身体的拘束の目的は、一時的な安全確保策です。しかし、長期的には身体機能(ADL)の低下や認知機能の悪化、また拘束から逃れようとして逆に事故が増えるといったリスクが指摘されています。さらに、ケアを行う職員の士気の低下も招く恐れがあります。

 厚生労働省の資料によると「身体的拘束」とは「抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいうこと」とされています。(※3)具体的な例としては、転落しないようにベッドに体幹や四肢をひも等で縛る、点滴や経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛るなどが挙げられます 。また、ベッド柵や薬剤使用なども含めたよりより広い概念として「本人の行動の自由を制限すること」を「身体拘束」とする考え方も示されています。(※3)当院でも、用具の使用に限らない、より広い意味での身体拘束を対象として解除の取り組みを行っています。

出典:

※3 厚生労働省「令和7年度第13回 入院医療等の調査・評価分科会【別添】資料編⑤」,令和7年9月

※4 令和5年度老人保健健康増進等事業 介護施設・事業所等における身体拘束廃止・防止の取組推進に向けた調査研究事業「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」, 令和6年3月

■横浜病院における身体拘束ゼロ

身体拘束ゼロまでの歩み

 当院は平成24年4⽉、5年以内に⾝体拘束をゼロにすることを全職員に対して宣言しました。しかし、当初から順調に進んだわけではありません。むしろ、最初の数年間は「やればやるほど現場が疲弊する」という悪循環に陥っていました。

 改革当初、私たちは教科書的なアプローチである「リスク評価」による段階的な解除を試みたものの、結果として身体拘束の数は一向に減りませんでした。「外したいけれど、万が一の事故が怖い」「命を守るためには縛るしかない」という現場の葛藤は深く、取り組みは停滞しました。このように、精神論だけでは、現場の「安全への不安」を払拭することはできなかったのです。

 その後、停滞を打破したのは「身体拘束を外すことを目的にしない」という決断です。 私たちは「いかにして拘束を解くか」という議論を止め、根本原因を探求することにしました。この視点の切り替えにより、それまで「仕方がない」と諦めていた医療やケアの慣習の中にこそ、解決の糸口があることに気づきました。そして、新たなアプローチを実践した結果、平成28年に構想から4年で身体拘束ゼロを達成することができました。その後も「身体拘束はダメだからやめる」という禁止のルールではなく、患者様の尊厳を守るケアができているという専門職としての誇りが、現在の拘束しない医療、ケアを支えています。

身体拘束ゼロを実現しての変化

 身体拘束ゼロを実現したことで、患者様は穏やかな表情を取り戻し、笑顔が増えました。また、自由に動けるようになったことで歩行機能を回復された事例もあります。加えて、経口摂食が可能な患者様の割合も増加しました。身体拘束廃止を宣言した当初は、事故の増加を懸念する声もありましたが、患者様にとって安全な療養環境の整備を徹底した結果、アクシデントの発生割合はむしろ減少しました。また、組織にも変化が生まれ、「できない理由」を探すのではなく「どうすればできるか」を多職種で考える風土が醸成されました。

転落による骨折リスクを下げ、患者様の「ベッドから降りたい」という意思を尊重した超低床ベッド
患者様が安楽な姿勢を保てるよう導入した体格に合わせて調整可能なモジュラー型車椅子

■身体拘束ゼロのその先へ

 このような当院の取り組みは、身体的拘束の最小化を推し進める社会的背景を受けて、中央社会保険医療協議会の資料(※5)の中でも紹介されました。また、身体拘束を廃止するプロセスの中で私たちが得た考え方などを、各地の研修会や講演会などでお伝えしています。神奈川県看護協会県央支部の令和7年度第2回看護研修会の参加者からは「明日から「どうすればできるか」を考えられる看護師になりたいと思います」「身体拘束を減らすには、患者さんを知ることから始めなければならないと感じました」など、自身の看護観を見つめ直し、行動を変えていこうとする前向きな感想が寄せられました。

 さらに、令和7年より新たな活動も開始しました。 当院は、身体拘束ゼロを最終ゴールとは捉えていません。その先にある「患者様を一人の人として尊重するケア」を追求するため、志を同じくする全国の医療機関と共に「ケアする病院ネットワーク」(※6)を発足し、発起人病院として参画しています。 医療が「治すこと」に偏重しがちな中で、患者様を「ケアすること」の価値を再定義し、身体拘束の最小化や多職種連携を通じて、あたたかく誇れる医療を社会に広げる活動を推進してまいります。

出典:

※5 厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第623回) 総ー2 入院について(その3) 慢性期入院医療・身体的拘束」,p73 ,令和7年10月

※6 ケアする病院ネットワーク https://care-hospital.net/

病院概要

 横浜病院は、昭和56年の開院以来、高齢者を対象とした療養型病院として多くの患者様に寄り添い、質にこだわった医療、介護サービスを提供してきました。身体拘束ゼロ活動や認知症ケアのユマニチュード®の導入、認知症外来の開設、認知症初期集中支援事業の受託など、社会的ニーズに合わせた専門性の高いケアを実践しています。特に慢性期医療で重要な認知症ケア、摂食嚥下、褥瘡治療の3領域では日本トップレベルを目指しています。また、医療も介護も、全ては「人」こそが本質だと考え、人材育成への投資を惜しまず行っています。

病院名:医療法人社団元気会 横浜病院

所在地:神奈川県横浜市緑区寺山町729

理事長:北島明佳

病床数: 326床【指定療養型医療施設】 医療療養病棟:220床 認知症治療病棟:50床【介護医療院】56床

病院ホームページはこちら http://genkikaiyokohama.jp/

公式Instagramはこちら https://www.instagram.com/genkikaiyokohama/

本件に関するお問合せ・取材や講演等のご依頼

当院の取り組みに関する取材や講演等のご依頼は、下記までお問い合わせください。

医療法人社団元気会 横浜病院 広報室 担当:宗像

電話番号:045-933-1011(代表)

FAX:045-931-2702

メールアドレス:prgenkikai@genkikai.jp

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業種
医療・福祉
本社所在地
神奈川県横浜市緑区寺山町729
電話番号
045-933-1011
代表者名
北島明佳
上場
未上場
資本金
-
設立
1991年02月