65歳以上の男女4000名を対象「新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性調査」 自己負担額が1000円増加すると接種意向は大幅に下がる見通し
接種率向上のためには「自治体による接種環境の維持・充実」が重要に ~感染症を担当する行政医師である後藤幹生先生が提言~
生活者の“健康と暮らし”に関する情報を発信するポータルサイト「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社(所在地:埼玉県さいたま市)では、特例臨時接種終了後に初めて自己負担で行う2024年度の「新型コロナワクチン定期接種(今年3月31日まで実施。自治体により異なる場合あり)」が実施されたことを受け、65歳以上の男女4000名を対象に新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性について調査を行いました。(実施時期:2025年1月23日~1月30日)。 また、今回の調査結果を受け、ワクチン接種の現状について感染症を担当する行政医師である静岡県感染症管理センター センター長の後藤幹生先生にお話を伺いました。
アンケートの主な結果
定期接種をしなかった人の接種意向は自己負担額が減少するほど上昇
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1000円減少した場合の接種率は14.0%、無料(0円)になると36.5%に
定期接種をした人は自己負担額が増加すると接種意向が大きく低下
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価格維持(±0円)の場合においても2025年度の想定接種率は下落傾向に
自己負担がない特例臨時接種(全額公費負担)の終了後、初となる自己負担による2024年度「新型コロナワクチン定期接種」(以下、 2024年度定期接種)が今年3月末で終了しました。特例臨時接種終了時点では、65歳以上のワクチン接種率は「53.7%※1」となっていましたが、2024年度定期接種は、新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行したことで努力義務がなくなり、さらに有料となったことで、接種率は一層落ち込んでいることが想定されています。
また、2024年度定期接種では、新型コロナワクチン接種の助成⾦制度※2によって、通常の地方交付税措置に加えて、8300円の自己負担低減策がなされていましたが、2025年度以降は継続しないとの報道も出ています。この助成金制度が終了となった場合、新型コロナワクチン接種の自己負担額は大幅に増加する可能性があることから、今回、新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性について調査を行いました。
※1:厚生労働省:新型コロナワクチンの接種回数について(令和6年4月1日公表)より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/syukeihou_00002.html 2025/3/19参照
※2:厚生労働省:令和6年度第1回 予防接種に係る自治体向け説明会(令和6年6月21日公表)より
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001266569.pdf 2025/4/8参照
調査サマリー
定期接種をしなかった人の接種意向は自己負担額が減少するほど上昇
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1000円減少した場合の接種率は14.0%、無料(0円)になると36.5%に
設問:
Q1:あなたの2024年秋冬シーズン(2024年10月以降) の新型コロナワクチンの接種・検討状況について、一番近いものをお選びください。
Q2:2024年10月以降に、あなたがそれぞれのワクチンを接種する場合の費用をご存じですか。接種の有無にかかわらず、ご存じであればその金額をお答えください。
Q3:あなたは、それぞれのワクチンに、どのくらいの費用をかけることができますか。1回の接種にかけられる、最大の金額を教えてください。
調査対象者:
2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種をしなかった人(n=164)2025年1月時点

調査ではまず、 2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種を見送った人を抽出し、自己負担額が減少した場合の2025年度定期接種における想定接種率を算定しました。その結果、定期接種をしなかった人も、自己負担額が少なくなればなるほど、接種意向が高まる傾向にあることが明らかになりました。自己負担額が1000円減少した場合の想定接種率は14.0%、2000円減少した場合は24.6%、自己負担額が3000円減少し、0円になった場合の想定接種率は36.5%まで上昇しました。
※自己負担額が減少した場合における接種率の変動 算出ロジック:
24年度の定期接種において接種をしなかった人を対象に、在住の地域における接種費用が1000円~3000円(1000円単位)の範囲で減額されたケースをランダムに表示。
25年度の定期接種において接種するか否かを確認し、接種率を算定。
定期接種をした人は自己負担額が増加すると接種意向が大きく低下
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価格維持(±0円)の場合においても2025年度の想定接種率は下落傾向に
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自己負担額が1000円増加した場合、2024年度接種率を10.0~15.0%と仮定したときの接種率は7.3~10.9pt下がる見通し
設問:
Q1:あなたの2024年秋冬シーズン(2024年10月以降) の新型コロナワクチンの接種・検討状況について、一番近いものをお選びください。
Q2: 2024年10月以降に、あなたがそれぞれのワクチンを接種する場合の費用をご存じですか。接種の有無にかかわらず、ご存じであればその金額をお答えください。
Q3:あなたは、それぞれのワクチンに、どのくらいの費用をかけることができますか。1回の接種にかけられる、最大の金額を教えてください。
調査対象者:
2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種をした人(n=271)2025年1月時点

次に、 2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種をした人を抽出し、 2024年度の接種率を「15.0~30.0%」「10.0~15.0%」「5.0~10.0%」の3つのレンジに仮定した上で、それぞれ自己負担額が±0円または増加した場合の2025年度定期接種における想定接種率を算定しました。その結果、調査全体の傾向として、いずれのレンジにおいても、増額となった場合の接種意向は大幅に低下しており、さらに自己負担額が変わらない(±0円)の場合においても想定接種率は下がる傾向が認められました。
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接種率「15.0~30.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は13.0~26.0%、1000円増加した場合は4.1~8.2%、2000円増加した場合は3.4~6.8%、3000円増加した場合は1.3~2.6%となりました。
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接種率「10.0~15.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は8.7~13.0%、1000円増加した場合は2.7~4.1%、2000円増加した場合は2.3~3.4%、3000円増加した場合は0.8~1.3%となりました。
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接種率「5.0~10.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は4.3~8.7%、1000円増加した場合は1.4~2.7%、2000円増加した場合は1.1~2.3%、3000円増加した場合は0.4~0.8%となりました。
※自己負担額が増加した場合における接種率の変動 算出ロジック:
2024年度の定期接種において接種をした方を対象に、在住の地域における接種費用が維持または1000円~3000円(1000円単位)の範囲で増額されたケースをランダムに表示。
増額後の金額で25年度の定期接種において接種するか否かを確認し、接種率を算定した。
医師コメント

後藤 幹生 先生:静岡県感染症管理センター センター長
1989年、京都大学医学部を卒業。
小児科医として静岡県や大阪府の市民病院等で勤務したのち、2011年から静岡県に入職し、行政医師として保健所や、県庁疾病対策課で勤務。
2020年より新型コロナウイルス感染症対策を担当。2023年より、現職。
接種率向上には「自治体による接種券配布など接種環境の維持・充実」が必要に
5類感染症に移行して約2年が経とうとする新型コロナウイルス感染症ですが、その死亡数は、2024年1~9月でも約3万人 ※1 となっており、 2023年度においては死因の8位 ※1 に入っています。全国約500の基幹定点医療機関の入院者数も、自己負担での定期接種初年度となった2024年度は6%増加(前年度比)し、10万人 ※2 を超えており、依然過去の感染症とはいえない状況が続いています。
このような状況の中で、2025年度のワクチン接種にかかる自己負担額が引き上げられた場合、一層の接種率低下につながるだけではなく、入院者数のさらなる増加にともなう医療提供体制のひっ迫が発生する恐れがあります。
特に、基礎疾患がある方や介護・在宅ケアが必要な方の中で、新型コロナウイルス感染症に罹患した際に入院や重症化のリスクが高いとかかりつけ医が判断される方には、引き続きしっかりとワクチンを接種していただくための体制確保が必要と考えます。
今後、接種率を向上していくためには、自治体からの接種券個別配布などによる定期接種の周知徹底や新型コロナウイルス感染症による合併症や後遺症、基礎疾患の悪化等の啓発などを含め、新型コロナワクチンを必要とされる方が適切に接種を受けられる環境の維持・充実を図っていくことが必要ではないでしょうか。
※3:厚生労働省:人口動態統計月報(概数)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html より計算、作図 2025/3/21参照
※4:厚生労働省:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00086.html 2025/4/18参照
2023年度:G-MISデータに基づく定点医療機関における新規入院患者数(令和4年12月5日~令和5年9月24日の週次データ)の内、2023/3/27-9/24分、および定点医療機関からの報告に基づく概況の内、2023/9/25-2024/3/31を合算
2024年度:定点医療機関からの報告に基づく概況の内、2024/4/1-2025/3/31を合算
【新型コロナワクチン 定期接種の対象者】
65歳以上の人、60歳~64歳で対象となる人(※)
※心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
【調査概要】
調査名:「新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性」調査
調査対象者:65歳以上の男女かつ新型コロナワクチンに対して、強い拒否感情のない方を4000名抽出
調査手法:インターネット調査
調査時期:2025年1月23日~1月30日
参考資料
調査結果1. 自己負担額が減少した場合における接種率の変動
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自己負担額が減少した場合においては、最低でも8%以上の接種率増加という結果となった

※「在住地域の自己負担額が分からない・覚えていない」と回答したもの、およびn=100以下の自己負担額帯は除く
調査対象者:調査対象の内、24年度において接種をしなかった対象のみを抽出(n=3007)2025年1月時点

調査結果2. 自己負担額が増加した場合における接種率の変動
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25年度における想定接種率は価格維持(±0円)の場合においても下落傾向となった

※「在住地域の自己負担額が分からない・覚えていない」と回答したもの、およびn=100以下の自己負担額帯は除く
調査対象者:調査対象の内、24年度において接種をした対象のみを抽出(n=993)2025年1月時点

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