【日本初】移植卵巣から得た卵子による妊娠・出産に成功

悪性腫瘍治療後の若年女性で達成

学校法人聖路加国際大学

学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院

メディカルパークみなとみらい

リプロダクションクリニック大阪

聖路加国際病院女性総合診療部の佐古悠輔医師、塩田恭子医師、平田哲也医師ら、聖路加国際病院女性総合診療部を中心とするチーム(メディカルパークみなとみらい、およびリプロダクションクリニック大阪と共同)は、悪性腫瘍の治療により早発卵巣不全(POI)(注1)となった2名の若年女性に対し、治療前に凍結保存していた卵巣組織を体内に移植(注2)する「サーキュラー・ストリング法」(注3)を用い、卵巣機能を回復させ、その後、体外受精を経て妊娠・出産に成功しました。

本成果は、2025月12月8日付の「Climacterics」誌に掲載されました。


【発表のポイント】

•悪性腫瘍治療による早発卵巣不全(POI)となった2例に対して、治療前に凍結保存した卵巣

組織を移植し、移植卵巣から得られた卵子による妊娠、出産に成功した日本初の報告

• 新たに開発した卵巣移植法「サーキュラー・ストリング法」により、卵巣機能を回復し妊娠・

出産に成功

• 若年がん患者の「治療寛解後の妊娠」という願いに応える、妊孕性温存(注4)に新たな選択肢を

提供する画期的な成果


まず、悪性腫瘍の診断後、治療前に、片側の卵巣を摘出し、凍結保存しました(図1)。その後、長期間の悪性腫瘍の治療と経過観察後に寛解状態となり、妊娠が許可されましたが、患者さんはPOIのため閉経状態でした。そこで、凍結保存した卵巣組織を体内に移植したところ、卵巣機能が回復し、月経が再開。さらに体外受精を行い、移植卵巣から得られた卵子による妊娠、出産に至りました。

本報告は、悪性腫瘍治療後のPOIにおいて、移植卵巣由来の卵子での妊娠、出産が確認された日本初の報告であり、がん患者における妊孕性温存の新たな治療選択肢として大きな意義を持つものです。

移植には、卵巣組織を数珠状に並べ、子宮近傍に作成した腹膜ポケット内に配置する「サーキュラー・ストリング法」を用い、組織同士の重なりや血流障害を最小限に抑える工夫が施されています。2例ともに移植後に月経が再開し、複数回の採卵・胚移植を経て妊娠が成立しました。

本成果は、悪性腫瘍の治療を受ける若年女性にとって、「治療」と「将来の妊娠」の両立を可能にする新たな希望となるものです。

図1

【用語解説】

(注1)早発卵巣不全(POI:Premature Ovarian Insufficiency)

40歳未満で卵巣の働きが低下し、月経停止や不妊を引き起こす病態。抗がん剤や放射線療法が原因と

なることがある。

(注2)卵巣組織凍結・移植

抗がん剤や放射線治療などの治療前に卵巣を切除して凍結保存する。悪性腫瘍の治療後に寛解状態(悪

性腫瘍の治療が効果を発揮して、悪性腫瘍の再発がなく、落ち着いている状態)となり、主治医の許可

が得られた際に、凍結保存した卵巣組織を融解し、体内に移植することで卵巣機能を回復させる技術。

(注3)サーキュラー・ストリング法

卵巣組織片を数珠状に並べ、縫合糸を通したものを、腹腔内の腹膜ポケットを作成し、その中に配置す

る新たな卵巣移植法。組織同士の重なりや血流障害を最小限に抑え、移植卵巣の生着率を高めることを

目的とする。

(注4)妊孕性温存(にんようせいおんぞん) 

がん治療やその他の医療行為によって妊娠する力(妊孕性)が損なわれる可能性がある患者に対し、将

来の妊娠の可能性を残すために、卵子・受精卵・卵巣組織・精子などを凍結保存しておく方法のこと。

論文情報

論文タイトル:First live births after non-fixation cryopreserved ovarian tissue transplantation in Japan

著者:佐古悠輔1、塩田恭子1、秋谷文1、菊地盤2、北野孝満2、大原康弘3、石川智基3、杉山美智子1、横田祐子1、平田哲也1

所属:1)聖路加国際病院 女性総合診療部、2)メディカルパークみなとみらい、3)リプロダクション

クリニック大阪

掲載誌:Climacterics(国際更年期学会学会誌)

DOI:10.1080/13697137.2025.2579658

URL:https://doi.org/10.1080/13697137.2025.2579658

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41358628/

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都中央区明石町10-1
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代表者名
佐々木新一
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設立
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