ワキ汗・多汗症 疾患啓発セミナー 「親子で語ろう!“多汗”な悩み」を開催
子供の汗の悩みに約3割の親は気づけていない⁉
科研製薬株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長 堀内裕之、以下「科研製薬」)は、NPO法人多汗症サポートグループ(理事長:黒澤希)と共同で、ワキ汗・多汗症の悩みや親子での認識のギャップ、最新の治療法について解説する『ワキ汗・多汗症疾患啓発セミナー「親子で語ろう!“多汗”な悩み」』を2023年4月4日(火)に開催しました。
当日は、これまでに多くの多汗症患者を診察されてきた「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」院長の藤本智子先生に「ワキの多汗症」、「親子の認識ギャップ調査」について解説いただきました。また多汗症状が気になりはじめる年代は「中高生」が多く、特に新しい人との出会いが増える新生活の時期こそ家族の理解が大切であることから、中高生患者を代表して、17歳の女子高生 山形想さんとお母さまにもご登壇いただき、親子それぞれの立場から多汗症の悩みや治療時のエピソードなどを語っていただく座談会も実施しました。
■子供がワキ汗に悩んでいても約3割の親は気付けない可能性も…親子の認識のギャップを解説
日常生活に困るほどワキ汗が大量に生じてしまう疾患が、ワキの多汗症である「多汗症」です。
以前実施した調査(※1)では、ワキ汗の症状を意識し始めた時期が「中高生」という回答が最も多く4割以上を占めていることがわかりました。
また中高生の年代では、体や健康に関する悩みごとの相談相手として、約6割が家族や親戚を挙げていることから(※2)、多汗症患者にとっても家族の理解は必要だと考え、今回新たに中高生の多汗症患者とその母親を対象とした「ワキ多汗症の親子認識ギャップ調査」を実施しました。本セミナーでは、その調査結果を多汗症治療のスペシャリストである「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」院長 藤本智子先生に解説いただきました。
その調査結果によると、中高生の患者が多汗症状について「かなり悩んでいる」「悩んでいる」と回答した割合が90.7%だったのに対し、「子供が悩んでいると思う」と回答した母親は65.6%という結果となり、ワキの多汗症に悩んでいる子供に気付いていない親が、多くいることが分かりました。
この結果に藤本先生は、「多汗症の当事者である中高生にとっては深刻な悩みだが、当事者ではない親御さんにとっては、汗っかきなだけと感じてしまうなど、多汗症に悩んでいる子供の心理状態に気付いていない可能性が考えられる」と、親子の認識のギャップについて解説いただきました。
また、どのようなきっかけがあれば医療機関を受診したいかという問いに対しては、「子供からの訴えがあれば」と回答した母親は79.8%、「母親からのすすめがあれば」と回答した中高生は52.9%という結果となり、母親は子供からの訴えを重視している傾向が見られました。一方、「治療費が安ければ」と回答した中高生は56.8%という結果で、母親の回答の30.6%と比べると大きな差があり、中高生は治療費を気にしていることがわかりました。藤本先生によると、腋窩多汗症はまだまだ認知されていない疾患であり、皮膚科で保険治療ができることもあまり知られてない現状があると言います。
藤本先生はこの結果に対して、「当事者である子も親も医療機関への受診意欲はあるものの、子は親からのすすめがあれば、親は子からの訴えがあればと各々の訴えを待っている。思春期でお互いにコミュニケーションがとりづらいという年齢的なものもあるかも知れません。親子の間でオープンにコミュニケーションをとることが重要」とお話いただきました。
■女子高生患者と母親が本音を語る!座談会「親子で語ろう!“多汗”な悩み」
本セミナーでは、中高生患者を代表して、女子高生である山形想さん(17歳)と母親の山形淑恵さん、「NPO法人多汗症サポートグループ」代表理事の黒澤希さんも加わり、親子の認識のギャップ、治療へのプロセスなどを語っていただく座談会「親子で語ろう!“多汗”な悩み」を実施しました。
山形さんは手、足の裏、ワキ汗などの症状を抱えており、小学生の時に同級生から指摘を受けて汗が人より特に多いことに気づいたと言います。
体育の授業で人と手を繋ぐことをためらう、テスト中に汗で回答用紙が破れてしまう、髪を結っても汗でほどけてしまうなど、日常の中で様々なストレスに悩まれていたとのことです。
最初は病気であるということを知らず、ご自身でインターネットなどを調べたところ、「多汗症」という病気が存在することを知り、母親の淑恵さんに相談し、16歳の時に病院を受診されました。
座談会では、前述の調査結果をもとに、質問に対して〇×で答えていただき、当時の心境を深堀しました。また山形さん親子の感想を受けて、藤本先生、黒澤理事からはその他患者の実例、病院治療についても伺いました。
Q. 新生活の時期が来るとワキ汗などが原因で憂鬱に感じることはありましたか?
■想さん「〇です。進級、新生活などでは人前で喋る機会が増え、普通の人でも汗をかいてしまうと思うのです
が、多汗症の人は一般の方が思う以上にたくさん汗をかいています。普段から付き合っている友達であれば、多汗症について理解してもらえていますが、新しい友達には、一から(多汗症について)説明しなければならないのが怖く、憂鬱になるときはあります」
■黒澤さん「私も〇です。制服や社会人でスーツを着るときなど、ブラウスの汗ジミが目立ち、普段の服の様に頻繁に洗えないのが憂鬱ですし、頻繁に洗えないというプレッシャーで緊張して余計に汗をかいてしまい、普段の服の様に頻繁に洗えないのが憂鬱でした。そういった負の悪循環に陥ってしまうことはあります」
Q. 初めての病院での診察を検討しているとき、ハードルを感じましたか?
■想さん「×です。多汗症が病気だということを知った時に、体質じゃなくて病気なら、治したい、病院にいきたいなと純粋に思ったので、ハードルは感じませんでした」
■淑恵さん「私は〇です。私は多汗症ではなく、最初、汗が多いと娘から相談を受けたとき、まだ多汗症については知らなかったので、“汗が多いだけで受診していいのかな”という気持ちが正直ありました。ただ娘の辛さや、多汗症について調べていくうちに、その可能性があるならば受診をしなければと思うようになりました」
■藤本先生「多汗症の患者さんの中には、汗が原因で精神的な悩みを抱える患者さんもいるので、治療を始めるだけで多汗症に加え、精神的な悩みも解決できる可能性があります。今は治療の選択肢が広がっているのでぜひ治療を考えてみてほしいです」
Q. 皮膚科で適切な診断と保険治療が受けられることを事前に知っていましたか?
■想さん「×です。最初は全く知らなかったです。16歳の時に多汗症を探究学習のテーマで調べたときに、そこで初めて保険治療ができることをようやく知りました」
■淑恵さん「私も×です。実は最初に受診させた皮膚科では治療を断られてしまい、もっと高度な治療を受けなければならないのかと考えました」
■黒澤さん「別の疾患で受診した皮膚科の先生に相談したところ、多汗症という病気で治療薬があると言われてびっくりしたのを覚えています。それまでは手汗がひどいといっても体質だと思うとしか言われませんでした」
■藤本先生「近年は治療の選択肢も増え、ようやく保険治療ができることが認知されてきたという実感があります。それまでは患者さんで知る人も非常に少なかったです。思春期の患者さんによっては、医師にワキを見せるのが恥ずかしいと思っている方もいますが、皮膚科での治療は問診を主体として診断を行いますので、ワキを見せる必要もありません。そのため構えずに、悩みがある場合はぜひ受診を考えていただければと思います」
Q. どういったきっかけがあれば受診しようと思いますか?
■想さん「まずは保険治療ができるという知識が中高生の間に広がれば、費用面での心配は少なくなるかと思います。自分がどれだけ困っているか勇気を出して打ち明けることも必要だと思います。また、たとえば歯が痛かったら歯医者に行くのが普通だと思いますが、同様に汗が多かったら皮膚科に行くという認識が持てればいいのかなと思います」
■淑恵さん「子供が相談をしてきてくれたときに、“そんなこと?“と思わないでしっかり聞いてあげること。一番近くにいる親として、細かい変化に気づいてあげることが大切だと思います」
■藤本先生「病院に行ったけど診断してもらえなかった、適切な治療をしてもらえなかったという声は今でも聞きます。まだまだ皮膚科医や小児科医などへの啓発も道半ばであります。最初患者さんから相談があった時に、しっかりとした多汗症に対する治療のアプローチが行えるよう、医療者側でも啓発活動を行っていきたいです」
座談会の最後は、ワキ汗や多汗症に悩む方々/多汗症の患者さんをもつ親御さんに向けてのメッセージをいただきました。
想さん「1人じゃないよ!」
多汗症は当初マイノリティだと思っていましたが、調べていくうちに周りにも患者さんがいることがわかりました。なので、困っているのはあなたひとりじゃない。諦めずいろんな人を頼ってほしいなと思います。
淑恵さん「コミュニケーション」
子供が大きくなり、思春期になってくると、コミュニケーションを取る時間が減ってきてしまうと思います。その中でも親は常に一番身近な存在だと思います。少しでも子供の悩みに気づき、勉強や生活などで本来持っているパフォーマンスを出せるような環境を作ってあげることが大事だと思います。
今回のセミナーでは、多汗症患者である山形想さんと母親の淑恵さんをお招きし、医師、患者、母親それぞれの立場から実体験を語っていただくことで、親子でのコミュニケーションの重要性や、中高生とこの世代の子を持つ親に対し、より一層ワキの多汗症の疾患啓発を行うことが重要であると再認識するイベントとなりました。新学年、新社会人など新しい人との交流が始まる新生活の時期は、まだ周りに多汗症状の理解がないために、悩みがより深刻になる傾向にあります。そのような時は決して一人で悩まずに、まずは母親など身近な家族に相談し、医療機関での治療を検討するという選択肢を持つことが大切です。
<プレスセミナー概要>
名称: 「ワキ汗・多汗症 疾患啓発セミナー2023」親子で語ろう!“多汗”な悩み
開催日時:2023年4月4日(火)14:30~15:45
主催: 科研製薬株式会社
登壇者:池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長 藤本智子先生
NPO法人多汗症サポートグループ 代表理事 黒澤希さん 山形想さん・山形淑恵さん
<登壇者プロフィール>
池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長 藤本智子先生
東京医科歯科大学医学部附属病院や東京都立大塚病院などで多様な皮膚科疾患の診療、大学病院の発汗診療などでも長年中心的な役割を担ってきた多汗症治療のスペシャリスト。2017年に池袋西口ふくろう皮膚科クリニックを設立し、日夜多くの多汗症患者の診療を行っている。
NPO法人多汗症サポートグループ 代表理事 黒澤希さん
東京都在住の48歳。着物モデル、ナレーターを経て2022年4月に「NPO法人多汗症サポートグループ」(https://npo-hsg.org/)を設立。多汗症の疾患啓発や患者同士の交流、また多汗症状がある人にも過ごしやすい社会となるよう働きかけていくことなどを目的に活動。幼いころから多汗症患者として生活をしてきた経験や汗が原因で骨にヒビが入ってしまった失敗談まで、自身の様々な体験談を発信している。
NPO法人多汗症サポートグループ 会員 山形想さん
岩手県在住の17歳、高校3年生。
小学校低学年の時に友人に指摘され多汗症について意識し始め、16歳で保険治療ができることを知り病院を受診。NPO法人多汗症サポートグループにも所属し、若者の立場から学校生活である悩みや患者の思いを発信している。
■腋窩多汗症(ワキ汗)の 疾患啓発プロジェクト「相談しませんか。”ワキ汗”のコト」「#ワキコト」
腋窩多汗症(ワキ汗)で悩む方が自分らしく安心して生活できる社会をつくるために、科研製薬は疾患啓発プロジェクト「相談しませんか。”ワキ汗”のコト」を進めています。
具体的には腋窩多汗症(ワキ汗)について広く知られ、悩む方が相談しやすく適切な治療を受けられる環境を目指します。ワキ汗の情報・サポートサイト「ワキ汗治療ナビ」による病院検索及び科研製薬公式YouTubeチャンネルの開設、そして今回の患者意識調査もそのプロジェクトの一環です。科研製薬は、ワキ汗に対する新たな情報を提供することで、より多くの患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献してまいります。 ワキ汗治療ナビ URL:https://wakiase-navi.jp/
※1 藤本智子ほか: 腋窩多汗症の患者意識調査:インターネットアンケート調査608人の結果報告. 日臨皮会誌 2022; 39(3): 431-439
※2 国立研究法人 国立成育医療センター:コロナ×こどもアンケート第2回報告書.(2020年)
https://www.ncchd.gnter/activity/covid19_kodomo/report/CxC2_finrepo_20200817_3MH.pdf
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