SIP Capital、世界初フルスタック量子コンピュータ向けプロセッサを開発する米新興企業SEEQCの3,000万ドル投資ラウンドに出資
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米国を中心に革新的な技術を有する新興企業にアーリーステージから投資を行う独立系日米ベンチャーキャピタルであるSIP Capital(以下、「SIP」) は、このたび、SIP Global Tech第1号ファンド*より、量子コンピュータ向けプロセッサを開発するSEEQC, Inc.(以下、「SEEQC」)に出資したことをお知らせします(出資額は非公開)。総額3,000万米ドル(約47億円)で完了した本投資ラウンドは、NordicNinja VC、およびBooz Allen Venturesが主導し、EQT Ventures、M-Ventures(Merck KGaA、ドイツ)、BlueYard Capital、FAM & Asset Managementを含む日米欧の投資家が参加しました。
SEEQCは、世界で初めて、拡張性のあるフルスタック量子プロセッサを構築する米国の新興企業です。従来のように量子チップと室温制御装置を別々に設置するのではなく、量子チップと制御・読み出し回路を同じ環境で動作させるアーキテクチャを開発しています。このSEEQCの革新的なアプローチは、これまで量子コンピューティングシステムの大規模化を妨げていた遅延、エネルギー消費、精度、コストなどの課題に対する解決策を提示します。具体的には、量子モダリティ(異なるタイプの量子ビットの実装方式や量子ビット間の情報処理方法)に依存せず、消費電力を10万分の1に抑えると同時に、従来のアーキテクチャと比較して最大97%のコスト削減を実現します。
SIP Capitalのゼネラル・パートナーであるJeffrey Smithは、次のように述べています。
「SEEQCの独自技術は、量子コンピューティングの進化とスケール(拡張)を加速させるものと確信しています。同社のチームは、技術面とビジネス面の両方で高い専門性を備え、世界的なリーダーシップを確立するポテンシャルを有しています。」
SEEQCは、ドイツの化学大手BASF社やNVIDIA(エヌビディア)など、量子計算で業界の企業リーダー各社と提携しています。NVIDIAとの提携では、SEEQCのQPU(量子プロセッサ)をNVIDIAのGPUやCPUを搭載したデータセンター向けモジュールとリンクさせるチップ間接続を構築し、マルチモーダルコンピューティング、量子AIと機械学習の進化の支援を目指します。また、助成金ベースの共同研究には、NASA、米国エネルギー省、米国国防総省、米国国立標準技術研究所(NIST)、および主要な学術機関とのパートナーシップが含まれます。
SEEQCのCEO兼共同創業者であるJohn Levy氏は、次のように述べています。
「量子コンピューティングは、もはや“美しい物理実験”にとどまらず、現実世界の課題を解決し、企業のニーズに適合する拡張性の高いシステムへと進化する段階に来ています。古典的なコンピュータが真空管からトランジスタ、集積回路、そしてマイクロプロセッサへと進化してきたように、私たちは量子スケーリングに不可欠なチップベースのアーキテクチャを構築しています。今回の新たな資金調達により、このミッションをさらに加速させ、従来のコンピューティングと量子コンピューティングの最適化、研究から実用への移行、そして可能性から実現への架け橋としての役割を一層強化していきます。」
今回の資金調達により、SEEQCは商業展開を加速します。より幅広い量子方式へのSEEQC技術の統合や、リアルタイムのオンチップ量子誤り訂正の強化など、次世代量子チップ技術の開発を一層進めていきます。
*運用会社(GP): SIP Global Tech Fund I, Inc.
■SEEQC概要
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SEEQCは、米国ニューヨーク州エルムスフォードにある自社の多層超伝導電子チップ工場で製造される独自のSingle Flux Quantum(SFQ、単一磁束量子)チップをベースに、スケーラブルでエネルギー効率に優れた量子コンピューティングシステム向けの超伝導デジタルチップ、ファームウェア、ソフトウェアを設計・開発しています。このチップベースのアーキテクチャにより、システムの性能を向上させつつ、量子要件・複雑性・コスト・遅延といった課題に対する解決策を提示します。さらに、同社独自のファームウェアおよびソフトウェア「PRISM」によって、サードパーティ開発者が利用するさまざまなアプリケーションに対応可能です。
SEEQCは、GPU・CPUを中心としたデータセンターとの連携を通じて、量子コンピューティングシステム開発者(すべての量子方式を含む)へのソリューションを提供しています。拠点は米国ニューヨーク州エルムスフォードのほか、英国ロンドン、イタリア・ナポリにもチームを有しています。
詳細についてはSEEQCのホームページ https://seeqc.com/ をご覧ください。
■SIP Capital概要
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SIP Capitalは、AI・フォトニクス・脱炭素化など、次世代AI戦略をテコにビジネス革新をレバレッジする技術にアーリーステージから投資する独立系日米クロスボーダーベンチャーキャピタルです。40年間にわたるグローバル企業の育成経験と独自の市場アクセスを活用し、戦略投資家や機関投資家LPに対して、米国がリードする変革的イノベーション市場への足掛かりを提供します。
詳細についてはSIP Capitalのホームページ https://sipcapital.vc/ をご覧ください。
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