東京消防庁×ゲーム技術。「視界ゼロ」の現場を再現するVR訓練、初任学生119名への効果検証で「学習の深化」と「コスト適正化」の可能性を確認
東京都主催ピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」優勝プロジェクト:ゲーミフィケーションを用いた消防教育で現場対応力を底上げへ
株式会社マンカインドゲームズ(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:仲平 光佑、以下「当社」)は、東京都主催の「UPGRADE with TOKYO」第41回優勝プロジェクト(実施期間:2025年2月~2026年1月)において、東京消防庁とともに「消防活動訓練VRアプリ」を開発しました。東京消防庁消防学校の初任学生(※1)119名を対象とした実証において、実地訓練では再現が困難な「濃煙環境」での活動などをVRで補完することで、既存の実科訓練の学習効果をさらに高める可能性が確認されました。
※1 初任学生:消防学校に入校し、基礎的な教育訓練を受けている採用後の消防職員のこと

背景:消防教育の現場が直面する「経験の壁」
消防学校では日々、実践的な教育訓練が行われていますが、実火災に近い環境を再現するには、以下の構造的な課題(制約)が存在しています。
1. 環境的制約
安全管理上、実火災のような濃煙や熱気を訓練で再現することは困難であり、現場の過酷さをイメージしきれない面がある。
2. 時間的・人的制約
危険を伴う訓練には複数の指導員配置が必須であり、学生一人あたりの体験回数や時間が制限される。
3. 経済的制約
燃焼や資機材消耗を伴う実践的な訓練には相応のコストがかかり、頻繁な実施が難しい。
当社は本プロジェクトにおいて、これらの課題に対し、最新のゲーム開発技術を活用して「安全な環境で、失敗から学ぶ経験」を創出することで、訓練の効果を高めることを目指しました。
開発したシステムの主な特徴
1.実科訓練では再現困難な「リアルな現場」の再現
当社が開発したシステムでは、ゲーム開発エンジン(※2)の活用により、濃煙による視界不良の状態を再現しています。視覚的な熱の表現など、現場特有の「生理的な焦り」や過酷さを感じられる設計としました。
2. ゲーミフィケーションによる能動的な学習
「低い姿勢を保てているか」「残圧(空気量)を確認しているか」などを検知し、不適切な行動にはアラートを出し、終了後にはスコアとして客観的な評価をフィードバックするゲーミフィケーションの要素を採用しました。これにより、学生が自ら課題を見つけて反復練習する意欲を引き出します。
3. 用途に合わせた2つの訓練モード
以下の2つの訓練モードを実装し、様々な訓練を行うことを可能としました。
①実践モード:実際の消火・検索活動をシミュレーションします。1人でCPU(AI)と訓練する「シングルプレイ」のほか、3名の学生がVR空間に同時にアクセスし、小隊長や隊員として連携行動を学ぶ「マルチプレイ」にも対応しています。
②ヒヤリハット体験モード:「バックドラフト(爆発現象)」「床抜け」「崩落」など、訓練では体験が困難な「重大事故」に至るシナリオを安全に疑似体験し、危機管理意識を高めます。
4. 省スペースで実施可能
VRゴーグルとコントローラーさえあれば、教室や寮の2m×2m程度のスペースで実施可能です。天候や施設の空き状況に左右されず、準備の手間もかかりません。
※2 ゲーム開発エンジン:グラフィック描画、物理演算、サウンド処理など、ゲーム制作に必要な基本機能を統合したソフトウェアのこと


実証内容
東京消防庁消防学校内の会議室において、集合研修の形態で119名がVR訓練を体験し、実施後にアンケートを行い、結果を集計しました。

(1) アンケート項目

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Q1 |
VR訓練は、普段の実科訓練と比べて火災現場の様子を把握しやすかった。 |
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Q2 |
VR訓練の「煙」はリアルに感じられた。 |
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Q3 |
VR訓練の「炎」はリアルに感じられた。 |
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Q4 |
VR訓練は、普段の実科訓練と比べて緊迫感があった。 |
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Q5 |
VR訓練は、普段の実科訓練と比べて意欲的に取り組めた。 |
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Q6 |
VR訓練の目的や操作方法は、すぐに理解できた。 |
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Q7 |
VR訓練中に気分が悪くなったり、VR酔いを感じた。 |
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Q8 |
VR訓練は、実際の火災現場を具体的にイメージする上で役立った。 |
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Q9 |
VR訓練を体験したことで、煙の中で状況を把握し、危険を予測する自信が高まったと感じる。 |
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Q10 |
VR訓練は、煙の中で「次に何をすべきか」を具体的にイメージする上で役立った。 |
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Q11 |
VR訓練を体験したことで、煙の危険性や脅威に対する認識が高まった(より現実的になった)と感じる。 |
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Q12 |
VR訓練を体験したことで、普段の実科訓練や座学の重要性をより強く感じるようになった。 |
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Q13 |
今回のVR訓練で特に良かった点、学びになった点を具体的に教えてください。 |
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Q14 |
今回のVR訓練で改善してほしい点、わかりにくかった点を具体的に教えてください。 |
Q1~Q12は、「1:全くそう思わない 2:そう思わない 3:どちらでもない 4:そう思う 5:非常にそう思う」の5段階評価、Q13~Q14は自由記述。
Q7については、スコアが低いほど高評価を表す(酔いを感じなかったことを示す)
(2)集計結果

棒グラフ(青)が平均スコア、エラーバーは標準偏差(回答のばらつき)を表す。
分析結果
今回の取り組みにより、本VRシステムは、既存の訓練では再現が困難な体験を提供することで、全体の訓練効果を底上げするツールとして機能したことが示唆されました。
1. 教育面での成果
VR訓練の核となる価値である「現場イメージの具体化」や「危険性の認識」に関連する項目で高い評価を獲得しました。一方で、VR技術固有の課題である「VR酔い」など、課題となる点も明らかとなりました。
(1) 主な肯定的な効果
● 臨場感のある視界不良の体験
最も多くの学生が挙げたのが、煙や暗闇によって何も見えなくなる「視界不良」をリアルに体験できた点です。「煙で本当に周りが見えなくなると実感し、退路を常に確保しておけと言われていた意味を強く理解できた」といった声に代表されるように、座学の知識が実感を伴う学びに昇華された点が評価されました。
● 実践的動作による学習効果
VRならではの身体動作を伴う操作性が、訓練効果を高めている点も指摘されました。例えば、「実際に左右に視点を動かして残圧を確認する動作をしないといけないところがリアルに感じられて良かった」との声にあるように、残圧計を確認するために実際に身体を動かす必要があるなど、身体に覚え込ませるべき基本動作を自然に促す仕組みが教育的価値として高く評価されました。
(2) 主な改善課題
● 操作性と移動方法
一部の学生、特にVR体験に不慣れな層から、コントローラーのボタン操作や ジョイスティックによる移動方法が直感的でなく、慣れが必要だったとの意見が見られました。具体的には「初めてのVR体験ということもあったが、ゲーム のスタート方法、操作方法がすぐに理解できなかった」といった声が挙げられます。
● VR酔いの発生
定量データの傾向を裏付けるように、複数の学生がVR酔いを経験したことを回答しました。例えば「画面酔いがあったので、プレイ時間なども場面によって工夫があれば継続的にプレイしやすいと思いました」といった意見があり、継続的な利用を通じた慣れによる軽減が期待される一方で、個々の体質に配慮した運用上の工夫も求められる課題であると考えられます。
2. 運用面での効果
教育効果の深化に加え、運用面においても、コスト適正化などの有効性が確認されました。VR訓練では熱さや作業困難性を再現することは依然として困難ですが、コスト、指導員の必要数、実施スペース、準備時間といった指標において、既存のAFT(模擬消火訓練装置)による訓練を大幅に上回る効率性が実証されました。特に、実施コストは約 90%削減、必要な指導員数は100%削減を達成しています。指導員が不要になることは単なるコスト削減に留まらず、学生が自習的に高度な訓練が可能になることによって技術力の更なる向上が見込まれます。また、指導員が常時の監視業務から解放され、訓練後のフィードバックといった、より付加価値の高い活動に注力できるという利点もあり、VR訓練の導入によって、安全かつ効率的に学生の経験値増加に寄与できるものと考えられます。

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評価項目 |
既存訓練(AFT) |
VR訓練 |
削減率・効果 |
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①実施コスト (学生1回あたり換算) |
約16,666円(年間保守費用3,000万円 /1,800回) |
約1,666円(年間ライセンス費用300万円/1,800回想定) |
約90%削減 |
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②必要な指導員 |
常時2名(事故防止のため増員傾向) |
0名(学生のみで完結可能) |
100%削減 |
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③実施スペース |
専用施設必須(広大な敷地・施設までの移動や準備必須・故障やメンテナンス時に実施できない) |
2m×2m(教室・寮等の空きス ペースで実施可能) |
専用地不要(既存施設の 有効活用) |
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④準備時間 |
大(施設までの移動・装備の着装・施設での準備) |
極小(HMDの装着のみ) |
大幅短縮 |
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⑤安全性 |
負傷リスクあり(軽度な熱傷事案あり) |
リスクゼロ(不適切なVR機器の利用 による事故や心理的負担のみ) |
安全性向上 |
東京消防庁消防学校校務課 ご担当者様によるコメント
「VRを活用するメリットは、限られたスペースで少人数でできることです。実際の訓練では火災の想定シーンを作るのに時間がかかり、試行回数も限られてしまいます。VRなら、いろいろなシナリオを想定でき、自分が納得できるまで何回も訓練を繰り返すこともできるので、さまざまなシーンのイメージトレーニングをしていくことも期待しています。夏の暑い日などの訓練は熱中症対策で屋外でできなかったりと制限があります。場所や天候を問わず訓練ができるVRはその点でもメリットがあります。そのため、まずは消防学校の初任学生向けのこの取り組みを成功させ、将来的には現場の隊員も使えるツールとして消防活動訓練VRを展開できれば理想的です。」
今後の展望:技術の社会実装に向けて
今回の東京消防庁との協働により、当社のゲーム技術が、プロフェッショナル向けの訓練ソリューションとして有効である可能性が確認されました。今後は、本実証で得られた知見を応用し、官公庁、民間企業等の防災訓練を支援するソリューション「バーチャル防災訓練」を展開いたします。オフィス環境を再現するデジタルツインの構築を通じ、より効果的な防災訓練の仕組みを提供し、社会全体の防災力の強化に貢献してまいります。
株式会社マンカインドゲームズについて
当社は、前身企業からの実績を含めて過去10年間で合計約200件のゲーム、XR・メタバース開発プロジェクトに携わってきた精鋭チームによる「効率を重視した開発」を強みとしています。東京都主催のピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」での優勝実績を礎に、最先端のXR技術の産業分野への応用や、防災・安全教育などの社会課題解決への活用に注力しています。
【会社概要】
社名:株式会社マンカインドゲームズ
代表者:代表取締役CEO 仲平 光佑
所在地:東京都千代田区飯田橋1-5-8 アクサンビル9階
設立:2020年6月
事業内容:XR技術を活用したゲーム、アプリ、ソフトウェア等の開発
URL:https://mankindgames.jp/ja/
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社マンカインドゲームズ
担当:仲平
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