ART(生殖補助医療)出生児は過去最多8万6,473人、約8人に1人に

―治療の多様化で変わる生殖補助医療―JISARTが考える、これからの「医療の質」

一般社団法人JISART

 一般社団法人JISART(日本生殖補助医療標準化機関)は、日本産科婦人科学会が公表した「2024年ARTデータブック」と、厚生労働省「2024年人口動態統計(確定数)」を受け、日本における生殖補助医療(ART)の現在地と、これから求められる「医療の質」について考えます。

2024年、日本の出生数は人口動態調査開始以来の過去最少となる一方、ARTによる出生児数は過去最多を更新しました。ARTは現在、多くの人の妊娠・出産に関わる医療の一つとなっています。

※ART(生殖補助医療)とは、体外受精・顕微授精など、卵子や精子、胚を体外で取り扱う不妊治療を指します。

■出生数は68万6,173人まで減少。一方、ART出生児は過去最多に

 厚生労働省「2024年人口動態統計(確定数)」によると、2024年の出生数は68万6,173人。前年の72万7,288人から4万1,115人減少し、1899年の人口動態調査開始以来、過去最少となりました。合計特殊出生率も1.15と過去最低を記録しています。

 一方、日本産科婦人科学会の「2024年ARTデータブック」によると、ARTによって生まれた子どもは8万6,473人となり、過去最多を更新しました。厚生労働省の出生数と比較した単純計算では、ARTによる出生児は2024年の出生児全体の約12.6%、およそ8人に1人に相当します。

 また、PGT(着床前遺伝学的検査)や卵子凍結をはじめ、治療の選択肢や患者背景は年々多様化しています。こうした変化の中では、治療件数や出生児数といった数字だけではなく、患者一人ひとりに適した治療が、安全かつ適切な体制のもとで提供されているかという「質」まで含めて、生殖医療を捉えていくことが重要です。

※厚生労働省「人口動態統計(確定数)」と日本産科婦人科学会「2024年ARTデータブック」をもとに単純計算。両統計は集計対象が完全に同一ではないため、割合は参考値です。

 2024年のART総治療周期数は55万265周期で、前年の56万1,664周期から減少しました。一方、出生児数は増加しています。ただし、ARTでは、採卵した周期と凍結胚を移植して妊娠・出産に至る時期が異なるケースもあります。そのため、単年度の治療周期数と出生児数を単純に比較し、「治療効率が向上した」と評価することはできません。

 こうした特徴も含め、現在のARTの実態を理解するためには、単一の数字だけではなく、患者背景や治療内容などを含めてデータを捉える視点が必要になっています。

 治療の多様化に合わせ、「把握するデータ」も変化

 ARTを取り巻く環境の変化を象徴する動きの一つが、日本産科婦人科学会による「ART症例登録システム」の改定です。日本産科婦人科学会では、全国のART登録施設から症例ごとの治療情報を収集し、治療実態や成績を継続的に集計しています。2026年1月からは、PGTの適応拡大や二段階胚移植、卵子凍結など、近年の治療法の多様化に対応するため、登録項目の一部が見直されました。学会は改定の目的として、「日本における診療実態をより正確かつ包括的に把握すること」を挙げています。

 今回公表された2024年ARTデータは、この改定以前の症例を対象としたものですが、全国レベルでも、ARTについて「どれだけ行われたか」を把握するだけでなく、「どのような患者に、どのような治療が行われたか」を、より詳細に捉える方向へ進んでいることが分かります。

 JISARTにおいても2010年分より臨床成績の収集を継続して行ってまいりました。日本産科婦人科学会の登録項目に加え、必要に応じてJISART独自の項目も設けながら、より実態に即したデータ把握に努めています。なお、2024年分のJISART臨床成績につきましては、2026年7月のプレスリリースにて公開しております。

【プレスリリース】JISART、2024年臨床成績を公開(2026年7月15日公開)

継続的なデータ公開と品質管理で、生殖医療の質向上を支える

~2010年度から続く臨床成績・予後調査に加え、2024年度より培養成績集計を開始~

 治療技術や選択肢が広がるほど、それぞれの症例の背景も異なります。今後、ARTの実態や医療の質を検証していくうえでは、こうした多面的なデータを蓄積し、継続的に分析していくことがより重要になります。

治療成績だけではない、生殖医療の「質」とは

 妊娠率や生産率などの治療成績は、生殖医療を検証するうえで欠かせない指標です。しかし、生殖医療の質は治療成績だけで決まるものではありません。安全な診療体制が整えられているか、胚培養を担うラボの品質が適切に管理されているか、患者が十分な情報を得たうえで治療を選択できる環境があるか。さらに、心理的な支援や倫理的な配慮、治療後・出生後までを見据えたフォロー体制なども、医療の質を構成する重要な要素です。

 特にARTは、新しい生命の誕生に直接関わる医療です。そのためJISARTでは、治療の「結果」だけではなく、その結果に至るまでに、どのような医療と支援が提供されているかという「プロセス」も含めて質を考えることが重要だと考えています。

JISARTが取り組む、生殖補助医療の標準化と品質向上

 JISARTは2003年の設立以来、生殖補助医療の標準化と質向上を目的に、加盟施設を対象とした施設認定・審査をはじめ、臨床成績の集計・公開、ART出生児の予後調査、専門職を対象とした教育・研修などを継続してきました。

 施設認定では、医師だけではなく、看護、ラボ、心理、医療事務など複数の専門分野の視点から、患者の安全やプライバシー、診療体制、スタッフ教育などを確認しています。単に治療成績を比較するのではなく、医療を提供する仕組みそのものを継続的に検証・改善していくことを重視しています。

 また、JISARTでは2010年度分から会員施設の臨床成績を継続して集計・公開しているほか、ART出生児の予後調査を実施しています。さらに2024年度からは、各施設が自施設の状況を客観的に把握し、改善につなげることを目的として、施設間の培養成績の集計も開始しました。治療が多様化する現在だからこそ、施設や職種の垣根を越えてデータや知見を共有し、医療の質を継続的に見直す仕組みが重要になっています。

今後の展望

 ARTは現在、日本の妊娠・出産を支える重要な医療の一つとなっています。同時に、技術の進歩によって治療の選択肢が広がるほど、患者背景や治療内容も複雑化しています。

 JISARTは今後も、臨床成績だけでなく、安全性、ラボの品質、患者への情報提供や心理的支援、倫理的配慮、出生後のフォローなど、多角的な視点から生殖補助医療の質を捉え、継続的な改善に取り組んでまいります。施設認定やデータの集計・公開、専門職教育、施設間での知見共有を通じて、患者一人ひとりが安心して治療を選択できる環境づくりと、日本の生殖補助医療全体の品質向上に貢献してまいります。

参考:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」

日本産科婦人科学会「2024年ARTデータブック」

JISART概要

国内唯一の生殖医療の品質管理ネットワーク
  • 名 称: 一般社団法人JISART(日本生殖補助医療標準化機関)

  • 設 立: 2003年3月

  • 代表者: 理事長 絹谷 正之

  • 本 部: 大阪府大阪市北区曽根崎新地二丁目6番23号 MF桜橋ビル5F

  • 事業内容: 生殖補助医療の実施規定・基準の作成と運用、及び学術調査研究事業

  • ウェブサイト: https://jisart.jp/

本プレスリリースに関するお問い合わせ先

一般社団法人 JISART 事務局

〒530-0002 大阪市北区曽根崎新地2-6-23 MF桜橋ビル5F

電話:06-6131-9741 / FAX:06-6131-9742

E-mail:mail@jisart.jp

すべての画像


会社概要

一般社団法人JISART

0フォロワー

RSS
URL
https://jisart.jp/
業種
医療・福祉
本社所在地
大阪府大阪市北区曽根崎新地2-6-23 MF桜橋ビル5F
電話番号
06-6131-9741
代表者名
廣川理恵
上場
未上場
資本金
-
設立
-